西日本皮膚科
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32 巻, 2 号
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図説
特別講演
  • 朝長 正允
    1970 年 32 巻 2 号 p. 123-131
    発行日: 1970/04/01
    公開日: 2012/03/26
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    白血病細胞の組織化学が現在もつとも偉力を発揮しているのは,白血病の診断およびその病型分類である。ペルオキシダーゼ,PAS,アルカリフォスファターゼ,スダンブラックBの4反応は基礎的な染色法として,その意義はすでに確立されている。著者はさらに当教室において開拓したβ-グルクロニダーゼ染色法,および非特異的エステラーゼ,酸フォスファターゼの所見を綜合するとき,白血病の診断,病型分類の客観性をより高めうることを確信し,当教室において以上の組織化学検査を如何に組合せて最終決定にもつてゆくかを具体的に説明するとともに,その場合,基本的態度として,各染色法が必然的にそれぞれの限界をもつていることに留意し,1つの方法のみに固執せず綜合的判定を行なうべきことを強調した。長崎地区における1946~1968年間の白血病638例,白血性悪性リンパ腫55例を材料として,病型別の皮膚白血病の発生頻度の統計を紹介した。
シンポジウム—皮膚疾患の準備性—
  • 武田 克之
    1970 年 32 巻 2 号 p. 132-133
    発行日: 1970/04/01
    公開日: 2012/03/26
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  • 木村 秀人
    1970 年 32 巻 2 号 p. 134-139
    発行日: 1970/04/01
    公開日: 2012/03/26
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    湿疹·皮膚炎の準備性について先天的,後天的素因の1つの因子と考えられる精神身体医学的面より,健康調査票(九大式)および面接により398症例につき調査した。
    1)湿疹·皮膚炎患者に特徴的な心理的準備性は見い出すことはできなかつた。
    2)神経症的傾向は湿疹·皮膚炎患者では51%で健康人の28%より高率にみられた。
    3)湿疹·皮膚炎患者のうちでは顔面のみに皮疹を有する女子顔面皮膚炎患者にもつとも心理的準備性が想定される。
    4)性格傾向としては全体として内向的性格が多い(約40%)。女子顔面皮膚炎群ではヒステリー性格が29%にみられた。慢性湿疹群では20%に抑うつ的性格がみられた。
    5)発病前の抑うつ的因子としては家庭内における問題が20%,精神的,肉体的過労によるものが17%にみられた。
    6)自律神経機能検査では自律神経不安定状態がもつとも多く,ついで迷走神経緊張亢進が多くみられた。
  • 森安 昌治郎
    1970 年 32 巻 2 号 p. 140-144
    発行日: 1970/04/01
    公開日: 2012/03/26
    ジャーナル 認証あり
    慢性蕁麻疹における発症準備性について,種々の方面から検討した。それを要約すると,1)蕁麻疹の発症には多くの場合,真皮マスト細胞の変化と,その顆粒内のヒスタミンの遊離とが先行する。2)慢性蕁麻疹患者の真皮組織はマスト細胞に関しては質的および量的に特異性を有していない。3)本症患者の皮膚血管は正常人のそれにくらべてヒスタミンにたいする感受性が高い。また,本症患者の多くは自律神経系,とくに副交感神経系の緊張状態にある。4)本症患者においては,アレルギー疾患の家族的発現率が高いが,このことは上述の自律系の感受性にある程度影響をおよぼすと思われた。
  • 糖尿病とカンジダ症
    西本 勝太郎, 田浦 直, 小林 敏教, 岩崎 範理, 力丸 正治, 浜田 尚徳
    1970 年 32 巻 2 号 p. 145-153
    発行日: 1970/04/01
    公開日: 2012/03/26
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    種々の培地および剥離角層をもらい,グルコースとCandida albicansの発育の関係を追求した。その結果,Candida albicansの発育は,好気的または嫌気的のいずれの条件においても,グルコースの存在により著明に促進されることが確かめられた。しかしながら,とくに,剥離角層への接種を行なつた場合,実際の皮膚カンジダ症にみられる,菌糸型のCandida albicansは,嫌気的な条件においてのみみられ,この場合グルコースは,菌の増殖はたすけるが,菌糸型の発現(→寄生形態への転換)には,影響しなかつた。以上より,健康人の表皮に,塗布によりCandida albicansを接種,空気中およびCO2ガス中において皮疹の発現を検したが,この際,CO2ガス中のものにおいて,空気中におけるよりも強い病変の発現をみた。これらのことより,カンジダ症の初発に対し,嫌気的条件の必要なことを推察し,実際の寄生時においては,間擦部がその役割をはたすことを推察した。
  • 重見 文雄, 原田 種雄
    1970 年 32 巻 2 号 p. 154-159
    発行日: 1970/04/01
    公開日: 2012/03/26
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    今回,著者らは皮膚自体の生理機能の面より,皮膚疾患準備性を検討してみた。健康人の皮膚の各部位の局所特異性では,躯幹前面,四肢の屈側はそれぞれ対照部位に比して,皮膚温度は高く,血量に富み,盛んな血行を予測させ,起炎物質による血管拡張反応も強く,よりhydrophilicであり,酸化還元能の亢進,毛細血管抵抗の減弱に加えて光線感受性の増強,貼布試験の陽性率は高くて,急性滲出性疾患にみられる所見に類似しており,したがつて同部位は溶出性疾患に対する局所的素因をもつものと解釈される。逆に躯幹背面,四肢伸側は,外来刺激に対する反応性に乏しく急性滲出性病変より,むしろ慢性増殖性病変を形成する素地をもつものと思われる。これら部位的特性を示す皮膚機能は恒常的なものでなく,それぞれの部位で部位的特性を保ちながら一定の律動をもつて常に変動している。一生を通じて年令的変動,1年を通ずる季節的の波がみられる。特に女子性周期と関連しての変動は著しく,月経前期は疾患準備性状態にあることを予測させ,月経後までは常態に復す移行期にあたり,皮膚機能は不安定状態にあつて,アレルギー病変の発症,また増悪の要因となつていると思われる。妊娠,出産という内部環境の変化,また外部環境の変化によつても皮膚機能は変動し,月経前より月経期にかけての皮膚機能を思い起させる。月経周期にみられるように,皮膚生理機能は内分泌との関係は密接であろうと思われる。なかでも副腎皮質の機能低下は皮膚疾患準備性を増大する要因と考えられる。ただし,ACTH-Z 3回投与後の副腎皮質予備能は,SLE,Scleroderma,皮膚筋炎などの患者で,異常は認められなかつた。炎症反応自体の生化学的検索はさておき,皮膚の生理機能の面から皮膚疾患の準備性を検討したわけであるが,炎症反応の成立にchemical mediatorの遊離が先行するものと思われる。そこで炎症が成立する際,皮膚生理機能上 局所の炎症反応準備状態にかかわらず,遊離されたchemical mediatorが質的,量的に起炎性が強く,chemical mediatorが主体となる場合,また遊離されるchemical mediatorの起炎性が弱く,局所の準備状態が形成されてはじめて,炎症が成立する場合もあると考えられる。
  • 中川 俊二
    1970 年 32 巻 2 号 p. 160-166
    発行日: 1970/04/01
    公開日: 2012/03/26
    ジャーナル 認証あり
    心身医学は従来考えられていたような,精神分析的な解釈による心因論的な考えではなく,体質,過労,感染,その他の要因による身体的因子とともに,心理的因子をも含めて病気の成り立ちを研究し,心身相関でしめる心理的因子の役割りを正しく評価して,これを診療面に活用しようというのが目的である。すなわち,総合医学的な立場でこれを考える学問といつた方がよかろう。われわれは以前から,アレルギーを含めて皮膚疾患の心身医学的立場からの接近をこころみ,準備性としての心理的因子の影響を調査した。さらに積極的に心理療法をとりいれた総合的な治療を行ない,そのうちアレルギー性皮膚炎,食品アレルギー,薬剤アレルギー,蕁麻疹などについて治療後の成績を追究したところ,心理療法の併用が有効である場合が少なくないという結果をえた。また心身医学的面から,症状の誘発についてセロトニン,ヒスタミンの測定を行なつて,興味ある結果をえた。
症例
  • 浜田 尚徳
    1970 年 32 巻 2 号 p. 167-169
    発行日: 1970/04/01
    公開日: 2012/03/26
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    症例は71才の男。約10年前よりほとんど全身に大豆大から拇指頭大までの多数の過角化を伴う灰褐色の皮疹が生じ,皮疹は境界鮮明で中央部ほど高く,山岳状になつている。鱗屑塊よりの虫体検出,組織学的検索にてScabies norvegicaと診断した。 3月18日入院,スカボール塗布約20日で略治したが,本患者は別に右眼下に悪性黒色腫を有し,ベータートロン療法のため,長崎原爆病院皮膚科に転科,治療を続け, Scabiesは約1週間後には全治した。
研究
  • 岸 正宏, 松本 厚生
    1970 年 32 巻 2 号 p. 170-175
    発行日: 1970/04/01
    公開日: 2012/03/26
    ジャーナル 認証あり
    紅斑性天疱瘡の光顕で棘融解をしめす細胞およびその辺緑の表皮細胞の変化,とくにtonofilament-desmosome complexの状態を主として観察した。棘融解細胞では, tonofilament-desmosome complexはほとんど消失し,細胞に高度な変性をみとめた。細胞間隙の開大とtonofilament-desmosome complexの減少は有棘層上層から基底層にまでみられ,このcomplexの形態の変化でもつとも多くみられたのはattachment plaqueにつくtonofilamentの短縮および消失とdesmosome自体の不明瞭化あるいは消失が同時におこると思われる所見であつた。
治験
  • 竹内 信親
    1970 年 32 巻 2 号 p. 176-181
    発行日: 1970/04/01
    公開日: 2012/03/26
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  • 馬場 正次
    1970 年 32 巻 2 号 p. 182-185
    発行日: 1970/04/01
    公開日: 2012/03/26
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    TBK-II A is an aerosol type antitrichophytic preparation containing 1% a new antifungal agent, 3-(p-methylbenzylideneamino)-4-phenylthiazoline-2-thione. Its clinical effects were examined on 51 patients with super-ficial trichophytosis. These 51 cases consist of 23 cases of Tinea pedis, 11 cases of Tinea interdigitalis and 17 cases of Tinea cruris. This preparation was topically applied to the patients two to three times a day and the inprovement rates were 87% for Tinea pedis, 100% for Tinea interdigitalis and Tinea cruris. No side effects were observed in any case.
  • 白取 昭, 与田 一男
    1970 年 32 巻 2 号 p. 186-191
    発行日: 1970/04/01
    公開日: 2012/03/26
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    In order to make an examination for the activity of Fibrinolytic Enzyme (FL) on the skin diseases, several observations were made on the samples of blood plasma and focal skin from those suffering from the skin diseases employing the fibrin plate method, and at the same time, the therapeutic effects of anti-FL agents were also observed clinically. The total FL activity of the blood plasma of patients of skin diseases showed an increase in activity as compared that of healthy subjects for control, but the results were, as a whole, dispersed. Significant changes in anti-FL values were detected neither with patients nor with healthy subjects. After anti-FL agent, AMCHA, was administered, the FL activity was clearly inhibited. When the activity of FL in the focal skin tissue was observed, evident promotion of the activity thereof was detected in the focus of eczema, psoriasis and heat injury. The anti-FL agent was employed in 44 subjects mainly suffering from eczema and dermatitis, and a significant therapeutic effect was obtained. These results not only indicate that FL should have an important significance in a constitution and function of inflammatory skin diseases, but also provides an adequate basis for the illustration of the anti-FL therapy.
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