西日本皮膚科
Online ISSN : 1880-4047
Print ISSN : 0386-9784
ISSN-L : 0386-9784
38 巻, 4 号
選択された号の論文の26件中1~26を表示しています
図説
綜説
治療の進歩
症例
  • ―土呂久地区廃止鉱山周辺の症例―
    中村 家政, 井上 勝平, 小野 友道, 前川 嘉洋, 佐藤 隆久, 桑原 宏始, 石井 芳満
    1976 年 38 巻 4 号 p. 554-571
    発行日: 1976/08/01
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル 認証あり
    宮崎県高千穂町土呂久地区にある廃止鉱山周辺の住民に慢性砒素中毒症が発生, 昭和50年までに48名(男子18名, 女子20名)が同症と認定されている。われわれはこれら全員を診察する機会を得たので, 同地区慢性砒素中毒症の疫学, 臨床症状(皮膚, 呼吸器, 経神症状など), 悪性化, 組織所見(光顕, 組織化学, 電顕), 発症病理, 公害病としての問題点などを検討, 次の諸点を明らかにした。
    (1) 原因は砒素塵による大気汚染と推定された。
    (2) 皮膚症状のみならず高率に内臓症状が認められた。
    (3) Bowen病4例, 表在性基底細胞癌1例, 肺癌1例を認めた。
    (4) 電顕的, 組織化学的に皮膚病変部に砒素顆粒を証明し得なかつた。
    (5) 毛髪中砒素量は正常範囲内であつた。
  •  
    倉員 正俊, 本房 昭三
    1976 年 38 巻 4 号 p. 572-577
    発行日: 1976/08/01
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル 認証あり
    62才男子および73才女子の, いずれも右大腿部にhidroacanthoma simplexを報告した。本邦報告例を中心に自験例を含めた14例について統計的, 文献的に考察した。本症は表皮内汗管への分化を示す腫瘍であり, eccrine poromaの表皮内型と考える。ただ本症は細胞分化の程度からepitheliomaに属するものと考えたい。
  • 蜂須賀 裕志
    1976 年 38 巻 4 号 p. 578-581
    発行日: 1976/08/01
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル 認証あり
    宮崎市内において6ヵ月間に9群の疥癬患者の発生をみた。6群は院内感染で3群は家族内発生であつた。Eurax H外用, ムトーハップ入浴により完治した。
  • 猿田 隆夫
    1976 年 38 巻 4 号 p. 582-585
    発行日: 1976/08/01
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル 認証あり
    Trichophyton violaceumによる頭部浅在性白癬の兄妹例を報告した。兄(6歳)から妹(4歳)に感染した例であつた。兄例から分離した菌株は, 最初から紫色を呈したが, 妹例のものは, 無色であつた。しかし継代培養するうちに, 両者はほぼ同一形態を示した。顕微鏡的にも両者は同一形態を示した。これらからT. violaceumiT. glabrumは同一菌種とする考えに同意した。最近激減していた頭部浅在性白癬は, いくつかの要因により今後増加するのではないかと警告し, 小児の頭部に落屑をみたら, 真菌の直接検査が必須であることを強調した。
  • 井上 多栄子, 神戸 直登
    1976 年 38 巻 4 号 p. 586-589
    発行日: 1976/08/01
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル 認証あり
    3才9ヵ月女児, 頭部, 腹部, 四肢に高熱, 悪寒戦慄をともなつて中心褪色傾向のある紅斑と小膿包が散在性あるいは融合性に拡がつていた。組織学的にはKogojの海綿状膿疱, 不全角化網綾の延長, 真皮乳頭層の毛細血管拡張がみられた。治療はベータメサゾン内服とACTH皮下注によく反応した。皮疹増悪因子としては上気道炎症, とくに第1回入院時は溶連菌感染症, 第2回入院時はグラム陰性桿菌感染症が考えられた。
  • ―腸管に多発性黄色腫形成を思わせ,家族性Type II b型高脂血症をともなつた症例―
    清水 康之, 島雄 周平, 勝部 吉雄, 入澤 輝男
    1976 年 38 巻 4 号 p. 590-594
    発行日: 1976/08/01
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル 認証あり
    24才男子にみられた巨大な結節性黄色腫を報告した。血清脂質の分析によりWHO分類type II b型に分類できるように思われる。家族の血清脂質の検査により, 母親および同胞4人中3人(患者を含めて)に高脂血症を認めた。本患者においてもつとも特徴的なことは, 消化管のX線学的な検索により, 空腸から回腸にかけて多数のポリープ様の陰影欠損像を認めたことであつた。これらの陰影欠損は, 消化管あるいは腸間膜に多発した黄色腫と推論された。
  • ―Fredrickson II型の兄弟例―
    田中 雅祐, 三谷 裕昭, 近森 一正
    1976 年 38 巻 4 号 p. 595-599
    発行日: 1976/08/01
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル 認証あり
    巨大な結節性黄色腫を有する兄弟例を報告した。第1例(兄)は狭心症を合併しており, 肘, 膝蓋部周囲から下腿, 足に多数の結節性黄色腫を, また巨大なアキレス腱黄色腫と手背の指伸筋腱黄色腫を有していた。血中のコレステロールとトリグリセライドの著しい増加があり, セルローズアセテート膜とディスク電気泳動によりpreβとβリポ蛋白分画が高値を示した。以上からFredrickson II 型(WHO IIb型)高脂血症と診断した。第2例(弟)の皮疹もほぼ同様であり, 巨大なアキレス腱黄色腫と多数の結節性黄色腫を呈した。
  • 大滝 倫子, 菊池 礼子
    1976 年 38 巻 4 号 p. 600-602
    発行日: 1976/08/01
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル 認証あり
    51才女姓の腹部ほぼ正中部に色素沈着を伴なつているが, 臨床的にも組織学的にも典型的なmorphea-like basal cell epitheliomaを認め, 本邦11例目として報告した。
  •  
    岡田 哲哉, 橋口 洋一, 野辺 修明, 田代 正昭
    1976 年 38 巻 4 号 p. 603-609
    発行日: 1976/08/01
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル 認証あり
    55才女子, 67才女子のサルコイドーシスの2例を報告した。2症例は福代, 仁木の分類で局面型であつた。症例1は皮膚とリンパ節, 症例2においては皮膚と眼が侵襲されているのみで他部位の病変は認められず, 軽症型のサルコイドーシスと推断した。諸種検査においてはKveim反応は不明であるが, ツ反応, DNCB試験などに無反応であり, また末梢血Tリンパ球の軽度減少が見られ, 細胞性免疫能の低下が認められた。治療はコルチコステロイド剤内服にて経過を観察し軽快の微候が認められた。
  • 森下 玲子, 岡田 哲哉, 田代 正昭, 渡辺 研之
    1976 年 38 巻 4 号 p. 610-617
    発行日: 1976/08/01
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル 認証あり
    16才女子, SLEの経過中に四肢に多数の流注膿瘍を併発し, またSLE発病4年目に意識障害, 嚥下困難, 筋強剛, 痙攣重積, 振戦など, 著明な精神神経症状をしめした。大量のステロイドホルモンの投与で一時的ではあるが症状の改善がみられたが, ついには, 痙攣重積, 意識障害が再発し, 肺炎の併発により死亡した。剖検所見は, 一般臓器では, 腎に糸状球体係蹄の肥厚, 線維化, 硝子化, 脾のonion skin lesion, リンパ節の硝子変性, また脳病理所見では, くも膜の線維性肥厚, 細小血管の変化(内皮細胞腫脹, 増殖, 壁の肥厚, 等質化など), 出血巣, 軟化巣, 神経細胞の変性, 軸索腫脹, 脱髄, 消耗色素の増加などがみられた。
  • 佐々田 健四郎, 安江 隆, 阿久津 順, 新城 寿, 原 一夫
    1976 年 38 巻 4 号 p. 618-620
    発行日: 1976/08/01
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル 認証あり
    52才男子の基底細胞上皮腫にたいし, ピシバニール0.25KEを生理的食塩水に溶解し, 病変部に直接局所分割注射を行なつた。効果は3回目より出現し, 5回で肉眼的にほとんど治癒した。病理組織学的所見においても瘢痕と萎縮のみとなり, 異常細胞は認められなくなつた。注射時軽度の疼痛を訴える以外には特記すべき副作用は認められなかつた。ピシバニールを腫瘍内に直接注射する局所的使用法は, 異型度が低く手術療法を拒否する症例に試みてよい方法と考える。
研究
  • 末永 義則, 本房 昭三, 占部 治邦
    1976 年 38 巻 4 号 p. 621-626
    発行日: 1976/08/01
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル 認証あり
    Eighteen patients with chromomycosis in Japan were treated with 5-fluorocytosine (5-FC). They received orally 5-FC in a dose of 4 to 10g daily for 1.5 to 18 months. Eight patients were cured or almost cured. Nine patients were improved, but four of them were relapsed. No response to treatment was observed in one patient. No side or toxic effects were encountered. A 47-years-old male with chromomycosis due to Fonsecaea pedrosoi was reported. He was treated with 5-FC in a dose of 8g daily and improved.
  • ―とくに超薄切片像とFreeze-Etchingについて―
    上田 恵一, 清水 千賀, 外松 茂太郎, 鷲津 良道
    1976 年 38 巻 4 号 p. 627-633
    発行日: 1976/08/01
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル 認証あり
    クロモミコーシスの病巣内菌要素ならびに本病巣から分離したPhialophora dermatitidisを電顕的に検索した。組織内の菌要素は細胞質内に大小の空胞がみられ, ミトコンドリアが散在し, 厚い細胞壁で囲まれていた。サブローブドウ糖寒天培地で培養された集落の超薄切片像では菌要素の細胞質は電子密度が高く, 小器官を認め難い菌もあつたが, 核様物, 空胞, 小胞体, ミトコンドリアなどがみられ, さらに特徴的な電子密度の高い小顆粒と空胞を有する電子密度の高いやや大型の直径0.3~0.4μの顆粒がみられた。細胞壁は組織内における菌よりも薄かつた。集落の中心部に近い菌要素は細胞質が粗であつた。Freeze-etching像では細胞質内に小器官が充満してみられ, 典型的な核, ミトコンドリア, リピド顆粒などが識別された。原形質膜は平滑なものもあつたが, 漣波様構造を示すものが多く, 細胞壁には明確な構造は認められなかつた。
  • 江藤 琉美子, 木村 秀人
    1976 年 38 巻 4 号 p. 634-642
    発行日: 1976/08/01
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル 認証あり
    乾癬患者の血清中脂質を測定し, 以下の結果を得た。
    1) 高T-G血症のものは約43%, 高β-L血症のものは約30%で, そのうち非常に高い値をしめすものは約15.7%であつた。
    2) Pre β-Lの出現率は43%であつた。他の脂質(T-L, T-Ch, P-L, NEFA)は正常域のものが多かつた。
    3) 乾癬だから高脂血症になりやすいということはないが, タイプはFredricksonのIV型が多かつた。
    4) 異常高値をしめしたものは大部分経過が良くなるにつれて正常値へ近づいた。
    5) 脂質構成脂肪酸中, パルミチン酸の上昇とリノール酸の低下が見られ, それらは経過が良くなるにつれて正常値へ近づいた。また皮疹の範囲が少なくなるにつれて正常値に近づいた。
    6) 上記の乾癬患者の血清脂質の変化は皮疹の消長と関係があると考えられる。
講座
治療
世界の皮膚科学者
feedback
Top