西日本皮膚科
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47 巻, 3 号
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図説
綜説
  • 野本 亀久雄
    1985 年 47 巻 3 号 p. 415-428
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
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    生体防御機構は, 表皮, 粘膜など体表層からの異物侵入を阻止する機序と組織内侵入後の異物を処理する機序から成りたつている。組織内への異物が侵入したとき, a) 体液中に普遍的に存在し, ただちに対応しうる液性の活性物質群 (リゾチームなど), b) 異物侵入の場で選択的に機能を発揮する液性因子 (補体, インターフェロン), c) 好中球の集合と食, 殺菌, d) マクロファージの集合と食, 殺菌, e) 未発達型免疫反応 (primitive T cell response), f) クローン的性格の強い典型的な免疫反応が時間をおつて対応する。これらの防御因子の個々がどの程度の有効性を発揮するかは, 対象となる微生物の種や株, 感染ルート, 定着の場, 感染量などによつて規制されている (比重論的な位置づけ)。この生体防御機構が微生物に対する感染防御として機能を発揮するときの特徴を, 感染後の時間的経過による防御の流れ, 各防御因子の比重論的位置づけ, 各防御因子間の相互協力による防御効果の効率化などの観点からまとめてみたい。
症例
  • 清島 真理子, 米田 和史, 森 俊二, 北島 康雄
    1985 年 47 巻 3 号 p. 429-433
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
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    89才女子の右頬部に認められたspindle cell squamous carcinomaの1例を報告した。十数年前より頬部, 額部に角化をともなう丘疹が多発していた。初診の3ヵ月前より右頬部の丘疹が増大し, 初診時には32×29×18mmの半球状の腫瘤となつた。この腫瘤は組織学的に紡錘形の腫瘍細胞からなり, その核は異型性に富み, 多核, 核分裂像も多く観察された。腫瘍細胞はvan Gieson染色で黄染した。Spindle cell squamous carcinomaと診断し, Mohs’ chemosurgeryの変法で治療した。
  • 山野 龍文, 松本 忠彦, 占部 治邦
    1985 年 47 巻 3 号 p. 434-439
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
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    昭和59年7月から9月にかけて9例のマラセチア毛包炎を経験した。ケトコナゾールの内服で治療した2例は軽快し, 副作用はみられなかつた。菌学的検討, および自験例9例と本邦既報告例7例の考察によつてつぎの結果を得た。
    1) マラセチア毛包炎は稀な疾患ではなく, 誤つた診断の多い疾患である。鑑別診断として, ステロイドざ瘡と夏季ざ瘡が重要である。
    2) 疾患名としてはピチロスポルム毛包炎よりマラセチア毛包炎が適当である。
    3) ケトコナゾールによる治療は効果が期待できる。
  • 井上 成史, 木村 栄, 岩堀 泰隆, 古谷 達孝
    1985 年 47 巻 3 号 p. 440-445
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
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    59才男子, 82才女子, 65才男子に生じ, 臨床的に広基性やや有茎性, 半球状に隆起, 非潰瘍性, 色素沈着性, ある時点より急速に増大, しかも硬さにおいて弾力性軟などの諸点で通常みられる型とは異なる比較的稀な臨床型を呈した基底細胞上皮腫(BCE)の3例につき報告した。自験例はその呈する臨床的所見のために, 当初臨床的にはseborrheic keratosis, BCE, malignant melanoma, 皮膚付属器腫瘍などが疑われたが, 病理組織学的検索によりBCEと診断された。半球状ないし球状に隆起し, 中央部に潰瘍化が認められない症例は臨床的に比較的稀と思われ報告した。
  • 成沢 寛, 坂崎 善門, 城野 昌義, 嘉月 博
    1985 年 47 巻 3 号 p. 446-452
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
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    43才女子のSézary症候群症例を約5年7ヵ月にわたつて観察した。典型的な紅皮症で初発し, 約3年後に巨大皮膚腫瘤を形成した。腫瘍細胞の形態学的所見としては, 初期(紅皮症期)には光顕所見はmedium-sized cell type, 電顕所見はSézary cell small cell variantの像を呈し, 進行期(結節·腫瘤期)には光顕所見はpleomorphicあるいはimmunoblastic type, 電顕所見はlymphoblastoid cellを認めた。腫瘍細胞の免疫細胞学的特徴は, 初期·進行期ともにhelper T cellの性状を示した。紅皮症期にみられた末梢血, 骨髄, 組織中の著明な好酸球増加は, 分化したSézary細胞により産生されたeosinopoietic factorによると推察した。
  • 北出 勘治, 小西 清隆, 市川 澄子, 谷口 芳記, 水谷 仁, 清水 正之, 濱口 次生, 田中 公, 鵜飼 幸太郎
    1985 年 47 巻 3 号 p. 453-458
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
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    51才男子の鼻粘膜扁平上皮癌を合併した皮膚T細胞リンパ腫と考えられる症例を報告した。全身皮膚に米粒大から小指頭大までの紅色浸潤性丘疹および小結節を播種状に認めた。腋窩および鼠径部の表在リンパ節腫脹を認めたが, 肝脾腫は認めなかつた。皮疹部病理組織では真皮乳頭層から皮下組織にかけ, クロマチンに富む大型の核を有し, 核分裂像を散見する異型細胞の瀰漫性浸潤をみとめた。腋窩リンパ節の病理組織では正常構造は破壊され, 皮疹部と同様の大型細胞の瀰漫性浸潤をみ, LSG分類におけるdiffuse lymphoma, large cell typeの非ホジキン悪性リンパ腫と考えた。末梢血および骨髄塗抹標本では異型細胞は認めなかつた。腋窩リンパ節腫瘍細胞はE-rosette陽性, OKT3, OKT4, OKIa陽性を示し, inducer/helper T細胞の腫瘍性増殖と考えられた。血清免疫グロブリン値は正常範囲内で, ツ反およびPHA皮内反応は陽性, DNCB感作も成立したが, PHAおよびConAリンパ球幼若化反応は低下を示した。鼻閉を訴えたため耳鼻科的検索を行い左鼻堤部粘膜に小腫瘤を認めた。生検にて腫瘤は分化型扁平上皮癌と診断された。Adriamycin, vincristine, cyclophosphamide, prednisoloneの4剤併用療法により鼻粘膜扁平上皮癌の消失をみたが, 皮膚T細胞リンパ腫は寛解·再発を繰り返している。悪性リンパ腫と他の悪性腫瘍との合併に関し文献的考察を行つた。
  • —3例の報告と毛細管の性格に関する検討—
    勝岡 憲生, 鈴木 裕介, 加藤 一郎
    1985 年 47 巻 3 号 p. 459-464
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
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    Angioma serpiginosumと診断した3例を報告した。そのうちの1例は15才男子に生じた汎発型angioma serpiginosumで, 稀な症例である。3例の組織標本についてalkaline phosphatase染色, 超微細構造および第VIII因子関連抗原の局在の検討を行い, 毛細管の性格について考察した。Angioma serpiginosumはnevoidの性格を有する毛細血管の拡張および増生であると判断した。
  • 荒川 雅美, 武井 洋二, 植木 宏明
    1985 年 47 巻 3 号 p. 465-468
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
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    34才女子の皮膚筋炎に伴う四肢, 躯幹の移動性皮下結節の1例を報告した。皮下結節は拇指頭大までで, 圧痛を伴い, 一部は円盤状から索状に触知され, 消退後には陥凹や瘢痕は認めなかつた。皮膚筋炎の皮下結節について, 他の報告と比較検討した。
  • —肝機能障害および糖尿病と本症との関連について—
    前川 嘉洋, 乃木田 俊辰
    1985 年 47 巻 3 号 p. 469-473
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
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    Lichen myxoedematosusは甲状腺疾患を合併しないscleromyxoedemaの限局型と考えられている。著者らは甲状腺疾患を伴わないが, 肝機能障害を合併した46才女子例と, 62才男子例を経験した。これらは糖代謝, 蛋白代謝の異常が本症に関与していることを示唆しているが, 第2例において肺癌の合併もあることから, 悪性腫瘍の皮膚表現であることも考慮される。第1例においては血小板減少を伴つていたが, 本症との関連については不明であつた。
  • 山本 明男, 御子柴 甫
    1985 年 47 巻 3 号 p. 474-481
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
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    12才女子。初診約1ヵ月前から, 右手関節屈側に, 何ら外傷の既往なく, 1個の淡紅色疼痛性皮疹が出現し, 漸次増大した。初診時, 4×4×2mm, やや硬い半球状隆起性淡紅色小腫瘤を認め, 周囲に紅暈を伴い, 圧痛を有する。病理組織学的には, 下方増殖性の強い充実性上皮性腫瘍であり, 乳頭腫症および角質増生を伴う。有棘層深層∼角層直下の細胞では, 細胞質内および核内にeosinophilic inclusion bodiesを認め, また有棘層中層∼浅層では, 核内にbasophilic inclusion bodiesが観察された。電顕的には, 細胞質内および核内のeosinophilic bodiesはともに, 境界明瞭な高電子密度の均質無構造物質として観察され, その構成要素としてのvirus粒子の存在は確認されなかつた。一方, basophilic bodiesは, 核小体のreticulumの内側および一部その周囲に, 多数のvirus粒子の集積したものとして観察された。以上の所見から, われわれは本例をmyrmeciaと診断した。そしてmyrmeciaに特徴的な臨床所見, 病理組織学的所見, 電顕所見, 分子生物学的所見およびcommon wartsやsuperficial, mosaic-type palmoplantar wartsなどとの鑑別に関して若干の文献的検討を加えた。
  • 奥村 之啓, 宮脇 由美子, 桑原 宏始, 影下 登志郎
    1985 年 47 巻 3 号 p. 482-484
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
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    転移性肝癌に対しフトラフール内服療法中に顔面, 前胸部, 前腕の露光部に臨床および組織学的にDLE様皮疹を生じた59才男子例を経験した。抗核抗体, 高γ-グロブリン血症, 低補体価などの血清学的異常をみとめず, 蛍光抗体直接法にて基底膜部に線状のフィブリノーゲンの沈着をみとめた。
研究
  • 大西 信悟
    1985 年 47 巻 3 号 p. 485-495
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
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    Trichophyton mentagrophytesを感染させた実験白癬モルモットを作製し, 白癬菌菌体内多糖類を使用した精製トリコフィチンを抗原とする皮内反応およびmacrophage migration inhibition test(MIT), 粗製トリコフィチンを抗原とする貼付試験を, 感染後経時的に施行し, 以下の結果を得た。
    1) トリコフィチン皮内反応は, 菌接種1週後から陽性化し, 2週後には強陽性となり4週後も強陽性が持続した。24週後には半数が陰性化するが, 1年を経ても陽性を示す例があつた。
    2) MITは, 菌接種1週後では全例陰性であつたが, 2週後には半数が陽性を示した。4週後には6匹中5匹と陽性率は高くなつたが, 24週後には陽性を示したのは6匹中1匹のみとなつた。
    3) 貼付試験の組織学的検討では, 菌接種2週後から上行性単核球遊出を伴う海綿状態が認められ, さらに3週後には角層下の好中球性膿疱形成および真皮内では瀰漫性に濃密な単核球, 好中球浸潤が認められた。これらの所見は, トリコフィチン皮内反応が陰性化すると認められなくなつたが, 皮内反応陽性例では, 菌接種1年後でも組織学的に陽性反応が認められた。
    以上の所見は, トリコフィチン皮内反応とMITおよび貼付試験の相互陽性所見と関連を明らかにしえたと考えた。
講座
統計
  • 第2編 Vasculitis Allergica Cutis(Ruiter)の経過ならびに予後
    加藤 一郎, 斉藤 隆三
    1985 年 47 巻 3 号 p. 504-508
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    昭和46年から昭和58年の間に当科を受診した患者のうち病理組織学的に確定した12例のvasculitis allergica cutisについて検討した結果, 1) 成人女子に好発する, 2) 季節的には夏に少ない, 3) 病型では多型小結節型が多い, 4) 多彩な皮疹を呈するのが特徴であり, 6ヵ月以内に治癒する例が多い, 5) 全身症状を伴う例は少なく, また重篤な合併症もみられない, 6) 検査所見では一過性の炎症反応を伴う例が多い, との結論を得た。
  • 大田 知子, 岡 大介, 植木 宏明
    1985 年 47 巻 3 号 p. 509-514
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    爪囲紅斑について当科を受診した膠原病患者143人, Raynaud’s syndrome 6人について検討した。爪囲紅斑には, 肉眼的に紅斑, 血管拡張, 出血があり, 爪上皮の延長を伴うものもあつた。健常者ではみられず, 皮膚筋炎で100%, MCTDで77%, PSSで63%, SLEで50%と高頻度に認められた。Raynaud’s syndromeでは83%であつた。SLE, 1. DLEが紅斑を, PSS, DM, MCTDが血管拡張を示す傾向にあつた。レイノー現象との相関関係はPSSで認められたが, SLEでは逆相関があるように思えた。毛細血管顕微鏡下での爪廓の毛細血管変化は, Minkinらに従い, 皮膚硬化型(SD型), 紅斑性狼瘡型(LE型), 非特異型, 正常係蹄の4型に分けて検討した。SD型は, PSS, DM, MCTDに, LE型は, SLE, 1. DLEに多くみられた。また, 健常者においても6%に血管係蹄の異常を認めた。爪囲紅斑は, 膠原病の診断に有力な一所見と考えた。
  • 西嶋 摂子, 中川 光子, 朝田 康夫
    1985 年 47 巻 3 号 p. 515-519
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    昭和52年から57年の6年間に関西医科大学皮膚科において皮膚感染病巣より分離された一般細菌638株につき統計的に観察を行つた。最も多く分離されたのは黄色ブドウ球菌であり, ついで表皮ブドウ球菌, グラム陰性桿菌の順であつた。この6年間に分離された菌種に大きな変遷はみられなかつた。黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌については抗生物質感受性, 単独分離か複数分離かについても検討した。黄色ブドウ球菌は単独で分離されることが多く, 表皮ブドウ球菌は混合感染病巣から分離されることが多かつたが, 最近単独で分離される率の増加がみられた。PCG, EM, OL, CLDM, KM, ABPCに対する黄色ブドウ球菌の薬剤感受性は, この6年間に徐々に低下し, ほとんど50%以下と低値を示すに至つた。それに比して表皮ブドウ球菌ではPCG, KM以外はあまり大きな変化は認められなかつた。
  • 木村 敦子, 小林 博人, 田辺 俊英, 石崎 宏, 福井 米正
    1985 年 47 巻 3 号 p. 520-522
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    金沢医科大学, 黒部市民病院患者 1,010名を対象に鶏眼の保有率を性別, 年令別に調査した。20才以上では保有率は男子5.6%, 女子7.5%と女子の保有率が男子の1.3倍であつた。男子保有者の平均年令は61.4才, 女子は50.8才で, 男子保有者の年令が有意に高かつた(0.01<P≤0.05)。また, 20才代の女子の保有率は13.7%で他の年代の保有率に比べて高かつた。
治療
  • TMS-19-Q臨床試験班
    1985 年 47 巻 3 号 p. 523-529
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
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    浅在性皮膚感染症患者374症例の膿汁から分離された518株の菌について, 菌の同定および各種抗生剤に対する感受性測定を行い, 次の結果を得た。
    1) 全分離菌株中S. aureus 208株(40.2%)とS. epidermidis 140株(27.0%)の2菌種が群をぬいて高率に分離された。嫌気性菌では特定の菌種が高率に分離される傾向はないが, 嫌気性菌全体の分離率は102株(19.7%)と高かつた。いつぽうグラム陰性菌は18株(3.5%)とごくわずかであつた。
    2) S. aureus, S. epidermidisおよび嫌気性菌のいずれかが分離された症例が全症例の94%を占めており, これが浅在性皮膚感染症の主な原因菌であると考えられた。
    3) 新マクロライド剤TMS-19-Q(TMS)を含むjosamycin(JM)·midecamycin(MDM)·erythromycin(EM)のマクロライド4剤と, 繁用β-lactam剤ampicillin(ABPC)·cephalexin(CEX)の合計6薬剤の抗菌力を比較した。全分離菌株に対しCEXを除く5薬剤はいずれも良好な抗菌力を示し, とくにTMS, EM, ABPCの抗菌力が強かつた。しかしEMは耐性菌株が多く, またABPCは主要原因菌であるS. aureusに対する感受性が低いなどの問題点があつた。TMSは耐性菌株がいずれの薬剤よりも少なかつた。
    以上の結果より, マクロライド剤はβ-lactam剤と同様, 浅在性皮膚感染症に対する第一選択剤として有効であると推察された。
  • Diflorasone Diacetate研究班
    1985 年 47 巻 3 号 p. 530-537
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    Diflorasone diacetate(以下DDAと略)は, 米国アップジョン社で合成された外用コルチコステロイド剤である。今回, DDAの軟膏, クリームを一般診療で使用する量を長期使用した場合にみられる全身への影響を血清コルチゾール値, 末梢血好酸球数および一般臨床検査値を指標として検討し, あわせてその臨床効果, 局所皮膚への影響についても解析を行つた。臨床効果は軟膏, クリームともきわめて高い全般改善度, 有用性が得られた。局所皮膚への影響の発現率は, 本剤の血管収縮能の強さを考慮すると, 少ないといつてよいと思われる。血清コルチゾール値, 好酸球数は治療前·中·後を通じて余り変化のない例が多かつた。治療後間もなく低下をみた例では治療中に治療開始前のレベルにもどる傾向がみられた。一般臨床検査値では, 本剤によると思われる検査値の異常は1例も認められなかつた。
  • 中山 秀夫
    1985 年 47 巻 3 号 p. 538-545
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    Minon creamは保湿剤と脂質を主成分として, ステロイドホルモンは含有していないが, Minon石鹸を台所洗剤としてもちいる方式の併用により, ステロイド外用剤の連用ですらなおらない家婦湿疹, 乾皮症など38例の治療に成功した。このような「洗剤のおきかえ+保湿剤外用療法」は, 現在広くおこなわれている治療法の盲点をついており, セット治療として正しく理解され, 応用されるならば, 主婦の手荒れやステロイド皮膚症の治療に新分野を開く可能性があり, 有望と思われる。
  • 桐生 博愛, 江口 一彦, 柳沢 一明, 末永 義則
    1985 年 47 巻 3 号 p. 546-551
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    本邦で開発された710674-Sクリームおよびゲル剤の表在性皮膚真菌症に対する臨床効果と安全性を検討した。試験症例は足白癬10例, 手白癬1例, 体部白癬10例, 股部白癬8例, 癜風4例, 間擦疹型皮膚カンジダ症8例, カンジダ性指間糜爛症5例, カンジダ性爪囲炎2例計48例(クリーム31例, ゲル17例)であり, 以下の成績を得た。
    1) 総合効果判定の有効率(著効+有効)は白癬のクリーム60∼100%, ゲル25∼100%, 癜風のクリーム67%, ゲル100%, カンジダ症のクリーム100%, ゲル50∼100%であつた。
    2) 菌の陰性化率は白癬のクリーム60∼100%, ゲル25∼100%, 癜風のクリーム67%, ゲル100%, カンジダ症のクリーム100%, ゲル50∼100%であつた。
    3) 有用率(非常に有用+有用)は白癬のクリーム33∼100%, ゲル25∼100%, 癜風のクリーム33%, ゲル100%, カンジダ症のクリーム0∼100%, ゲル50∼100%であつた。
    4) 副作用は4例に認められ, 発生率はクリーム6.9%, ゲル11.8%であつたが, その症状は刺激感(3例), 紅斑·丘疹(1例)でいずれも軽度なものであつた。
    以上により, 710674-Sは皮膚真菌症に対して安全で有効な外用剤であると考えられた。
  • 木下 正子, 庄司 道子, 犬井 三紀代, 建石 徹
    1985 年 47 巻 3 号 p. 552-557
    発行日: 1985/06/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    広汎な丘疹, 結節, 腫瘤からなる皮疹, 表在リンパ節腫大, 肝脾腫があり, 白血化し末血白血球数15×104/mm3に達し, 熱発, 細菌, 真菌などの二次感染を伴つたadult T cell leukemiaで種々の治療に抵抗した症例に, HFIF(human fibroblast interferon)の静注法(300万u/日を隔日10回を1クールとして2クール)を試みたところ, 皮疹, リンパ節腫脹に対しよく反応し, endoxan(Exと略), predonine(Prと略)およびHFIFの三者併用により, ほぼ寛解導入できた。現在, 末血白血球数(異型細胞の存否), 血清LDH, 表在リンパ節の触知などを指標としてEx, Prの間欠投与で経過観察中である。HFIF試用による副作用として健常皮膚の一過性の紅皮症様変化を認めたが, 逆にこれが, 細胞性免疫能の賦活化を助長しているかとも考えられる症例であつた。
世界の皮膚科学者
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