西日本皮膚科
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47 巻, 6 号
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図説
症例
  • 中野 廸子, 今山 修平
    1985 年 47 巻 6 号 p. 1015-1018
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    66才女子の顔面に生じた孤立性腫瘍で, 臨床的にso-called mixed tumorを思わせたsolitary trichoepitheliomaの1例を報告した。腫瘍は10×12mmと比較的大形の結節で, 淡紅色の色調を有し, 表面は光沢を帯び, 毛細血管の拡張を伴つていた。一方, 組織像は大小の角質嚢腫と索状構造を有する腫瘍細胞巣より成り, 典型的なsolitary trichoepitheliomaと考えられた。このような臨床像と組織像の両面で見られた異なる態度に着目してsolitary trichoepitheliomaの症例をso-called mixed tumorと対比検討した。
  • 藤田 和夫, 堀 真
    1985 年 47 巻 6 号 p. 1019-1025
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    77才男子。陰嚢部に発生した汗器官腫瘍について光顕的, 電顕的に検討した。臨床的に腫瘍は鮮紅色, 表面顆粒状の湿潤性局面を呈していた。組織学的に腫瘍巣は主として表皮内に管腔様構造を形成して増殖し, 一部では真皮内汗管, 表皮内汗管にも腫瘍細胞の増殖が見られた。腫瘍細胞は基底膜は破らず表皮内に限局していた。電顕的に管腔様構造の壁には典型的なmicrovilliが認められ, 胎児の真皮内汗管発生時にみられる細胞間管腔もみられた。したがつて自験例は真皮内汗管由来の腫瘍と考えられ, eccrine ductocarcinoma in situと診断した。
  • 大田 知子, 荒川 雅美, 稲垣 安紀, 中川 昌次郎, 植木 宏明, 山本 晋一郎
    1985 年 47 巻 6 号 p. 1026-1031
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    48才女子。原発性胆汁性肝硬変に対し, Dペニシラミンを5ヵ月間, 総量35g内服し躯幹にそう痒を伴う浮腫性紅斑と小水疱が出現した。Nikolsky現象は陽性で粘膜疹は認めなかつた。組織像は, 棘融解性表皮内水疱で多数の好中球, 好酸球の浸潤を認めた。蛍光抗体直接法は陰性, 間接法で抗表皮細胞間抗体が64倍, 抗核抗体が4倍まで陽性であつた。ステロイド全身投与で皮膚症状は漸次軽快し血中抗表皮細胞間抗体も8倍に低下したが, 4ヵ月後再検したところ128倍と再上昇しており, 現在も持続している。本剤による天疱瘡様皮膚病変本邦報告例をまとめ統計的観察を行つた。また, 本症の発症機序に関し文献的考察を加えた。
  • 長野 博章, 古城 八寿子, 浦田 賢治, 吉永 愛子
    1985 年 47 巻 6 号 p. 1032-1035
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    68才男子。背部のDarier病の皮疹部にカルブンケルが出現し, 切開排膿後, 肺膿瘍に波及, その後, 肺水腫, 腎不全, 肝障害, 消化管出血, 意識障害など, いわゆる多臓器不全に陥り, 全身状態の悪化に伴いDarier病の皮疹が増悪, 集中治療による全身状態改善とともに皮疹は改善した。免疫学的異常, 易感染性など種々の興味ある所見がみられた。
  • 岡崎 美知治, 武富 功雄, 井上 勝平, 丸山 理留敬, 河野 正
    1985 年 47 巻 6 号 p. 1036-1040
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    57才男子の右足背から右陰股部にかけて発症した壊死性筋膜炎の1剖検例を報告し, 本症の本邦報告例21症例について臨床統計的に若干の考察を行つた。21例中3例の死亡例がみられ, それらはすべて基礎疾患に糖尿病をもち陰股部に病変を有していた。また本症の壊死病変の拡大には嫌気性菌の関与が大きいと推察された。
  • 黒田 真臣, 瀬口 俊一郎, 新海 浤, 高安 進
    1985 年 47 巻 6 号 p. 1041-1046
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    水疱性類天疱瘡患者2症例にplasmapheresisを施行した。症例1は52才男子で, 副腎皮質ホルモン剤投与により著明な血糖値の上昇をきたし, 血糖値のコントロールが困難なために, 症例2は84才男子で, 胃癌を合併し手術目的にて副腎皮質ホルモン剤の投与を避けたいためにいずれもplasmapheresisの適応を考えた。2症例ともplasmapheresis施行後に抗基底膜抗体価の減少とともに皮疹の改善がみられた。
  • 児島 孝行, 藤田 優, 岡本 昭二, 鈴木 信夫
    1985 年 47 巻 6 号 p. 1047-1052
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    49才男子の顔面に基底細胞上皮腫を多発したバリアント型色素性乾皮症の1例を報告した。患者由来線維芽細胞によるDNA修復能力に関する実験では, 不定期DNA合成能力は正常であつたが, コロニー形成法で軽度紫外線感受性があり, HSV-Iによる宿主細胞回復能も軽度低下していた。これらは除去修復能の異常を示唆した。またアルカリ蔗糖勾配法では紫外線照射によるDNA鎖切断からの回復が悪く, これはカフェインによつてさらに増強された。したがつて, 除去修復以外の修復機構の異常もありうることが示唆された。
  • 成沢 寛, 日野 由和夫, 幸田 弘
    1985 年 47 巻 6 号 p. 1053-1059
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    典型的Gardner症候群の家系例を経験したので, 本症の概説とともに嚢腫性病変の特徴について臨床病理学的検討を加え報告した。発端者と考えられる男子は52才で直腸癌にて死亡し, 成人例4例すべてに腸管ポリポーシス, 下顎骨の骨腫, 嚢腫性病変を認め, 小児例2例(4才男児, 3才女児)にも, すでに嚢腫性病変の出現を認める。自験家系例は, 多発した嚢腫性病変が特徴的であり, 従来報告されてきた表皮嚢腫とは臨床病理学的にも異なるものであつた。そこで, 嚢腫性病変の臨床病理学的特徴をあげ, 皮膚病変からGardner症候群を推測する手がかりを示した。
  • 末永 義則, 中山 管一郎, 白石 正憲, 嘉多山 直人
    1985 年 47 巻 6 号 p. 1060-1065
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    78才男子。9年前右耳介の基底細胞癌のため某病院で切除およびデルモパン照射をうけ治癒した。1年前再発したので焼灼してもらつたが, 4ヵ月前から潰瘍を形成, 耳介の穿孔をきたした。治療は切除後double transposition plastyによる植皮を行い, 2年後の現在再発はない。組織学的に, 初診時の生検標本では基底細胞癌であつたが, 手術標本において基底細胞癌に隣接して有棘細胞癌を認めた。すなわち基底細胞癌治療後の慢性放射線皮膚炎に発生したいわゆる混合癌mixed carcinomaであつた。本症例の診断と治療を中心に報告するとともに, 放射線照射により発生した変形癌metatypical carcinomaの本邦報告について文献的考察を加えた。
研究
  • 四本 秀昭, 田代 正昭
    1985 年 47 巻 6 号 p. 1066-1069
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    マウスの接触皮膚炎反応へおよぼす外的因子について検討した。1) 抗原の投与量が接触皮膚炎へおよぼす影響を検討した。Oxazolone(OX)では300μgから3mgが至適投与量で, picryl chrolide(PCl)では500μgが至適投与量であつた。PCl 5mg投与では反応の大きさがむしろ減弱した。2) 抗原の投与経路が接触皮膚炎におよぼす影響を調査した。PClは腹壁, 尾へ塗布したところ感作できたが, 経口投与では感作できなかつた。Dinitrofluorobenzeneを腹壁, 足蹠に塗布したところ感作できたが, 尾に塗布した場合, 感作できなかつた。3) 抗原を溶解する溶媒が接触皮膚炎へおよぼす影響を検討した。アセトンに抗原を溶解した場合が反応は最も小さく, cyclophosphamide(CY)による効果からアセトンで溶解した場合, 反応の抑制が誘導されやすいと考えた。外的要因ではないが, 加令による影響を検討した。PClによる接触皮膚炎では13ヵ月令マウスで反応の減弱が認められた。接触皮膚炎反応は以上のような条件の違いによりその大きさが変化することが明らかとなつた。
  • —電顕およびX線微量分析による検索—
    荒井 亮, 神崎 保, 宮沢 七郎
    1985 年 47 巻 6 号 p. 1070-1073
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    過剰輸血により惹起された続発性ヘモクロマトーシスの患者の皮膚, とくにエクリン汗腺について, 電子顕微鏡学的に検討した。その結果, 電子密な小粒子がエクリン汗腺の細胞内およびその周囲の大食細胞内に認められた。エクリン汗腺においては, 澄明細胞内の管腔側に多く認められ, X線微量分析により多量の鉄が含まれていることを確認した。
  • —Tape Strippingによる検討—
    岡 大介
    1985 年 47 巻 6 号 p. 1074-1079
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    1. JY-1モルモットの耳介にDNCBを塗布し3時間後に採取した皮膚から調製した表皮浮遊細胞(DNP-EC)を同系モルモットの耳介に皮内注射するとDNCBに対する接触過敏症(CS)は成立するが, 注射部位の皮膚をセロハンテープでstrippingしておくと感作の率, 程度とも減じた。しかしDNP-ECに同系モルモットの腹腔マクロファージ(PM)を加えることによりCSは再び成立した。この成績よりstrippingは真皮のマクロファージ系の免疫学的機能を抑制するものと推測される。
    2. PMのかわりに同系モルモット正常表皮細胞(EC)をDNP-ECに加えてstrippingした皮膚に投与しても同様の結果が得られた。加えるECをあらかじめ抗Ia抗体と補体で処理するとCSの成立は抑制された。またJY-1とIa抗原が共通するstrain 13モルモットから得たECを加えると感作は回復したが, 共通の組織適合性抗原をもたないstrain 2のECは効果がなかつた。
    3. Strippingを行いCSの成立が抑制された動物にDNCBを塗布して再感作を試みたところ, 感作の成立は弱く, 免疫学的寛容の誘導がみられた。
    以上の実験成績から, DNCBと表皮細胞のin vivoでの結合物をIa陽性表皮細胞(ランゲルハンス細胞)が免疫学的に処理して免疫担当細胞に提示し, その結果CSが成立する経路の存在が推測された。
  • —条件の一致したざ瘡群·正常群女子ボランティア間の比較—
    松永 佳世子, 早川 律子
    1985 年 47 巻 6 号 p. 1080-1087
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    尋常ざ瘡の病態に果たす脂質の役割を明確にする目的で, 年令·生活条件の一致した18才から23才の女子ボランティア67名を募り, 顔面, 頭部, 血清中の脂質について検討した。ざ瘡群36名は正常群31名に比し, 顔面皮表脂質では総脂質量(以下TLと略記), 遊離脂肪酸(以下FFAと略記)%, 総脂肪酸組成中C12, C14%が有意に高く, C18%が有意に低く, 頭部皮表脂質ではFFA%, C14%が有意に高く, トリグリセライド(以下TGと略記)%が有意に低い結果であつた。FFA%とFFA%+TG%は顔面, 頭部の両者において, TLに伴つて増加した。血清脂質ではTL, 成分ともにざ瘡群と正常群の間に有意差を認めなかつた。同時に測定した白血球数はざ瘡群が正常群に比し13%高い値を示し有意差を認めた。以上の結果をもとに尋常ざ瘡の病態に果たす脂質の役割について, 内分泌因子, Propionibacterium acnesとの関連を文献的に考察し, 脂質の役割はざ瘡の炎症過程に重要ではあるが, 面皰形成過程, 炎症過程初期においては, 第一の重要因子ではないと推定した。
  • 内藤 静夫, 池澤 善郎
    1985 年 47 巻 6 号 p. 1088-1092
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    金チオリンゴ酸ナトリウムと金チオグルコースでモルモットを感作し, 1, 3週後に皮内試験とリンパ球幼若化試験(LTT)を施行した。
    1) 感作3週後には両薬剤とも皮内試験で全例陽性を示し, 感作が成立した。よつて, 両薬剤とも比較的感作原性の高い薬剤と考えられる。
    2) 感作3週後のLTTでは, 両薬剤とも明らかな増殖反応が認められた。
    3) 以上のように, 感作3週後では感作金製剤(特異抗原)による皮内試験とLTTがすべて陽性であるにもかかわらず, 両薬剤間の交叉反応性はそれに比較してあまり高いものでなかつた。この低い交叉反応性に関して, 金化合物と生体内蛋白質との結合による抗原生成の面から若干の考察を加えた。
講座
治療
  • 御子柴 甫, 武井 峯男, 高瀬 吉雄, 二條 貞子, 下里 文子, 野本 昭三
    1985 年 47 巻 6 号 p. 1101-1104
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    トラネキサム酸(TA)内服による肝斑の治療を報告した。40例にTA1∼1.5g/日投与したところ著効9例, 有効24例, やや有効5例であり無効は2例のみであつた。また効果発現までの期間が4週間以内の例が33例あり比較的短期間のうちに臨床効果をあらわした。肝斑に対する内服療法として, TAの投与は最初に試みられるべき治療法と考えた。試験管内においてTAはメラニン生成を阻害した。しかしTAが肝斑に対して有効な理由にはなお不明の点があり, 肝斑の発症に局所線溶活性(plasminogen-plasmin)が関与している可能性を指摘した。
  • —密封法と単純塗擦法による比較検討—
    渡辺 靖
    1985 年 47 巻 6 号 p. 1105-1111
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    Difluprednate(DFBA)外用剤の血管収縮能の検討をbetamethasone 17, 21-dipropionate(BDP)外用剤を対照薬とし, 健常成人男子22名の上背部において密封法(ODT)および単純塗擦法(SA)の二つの外用方法により同時に行い, 以下の結果を得た。
    (1) ODTでは, DFBA外用剤の血管収縮能はBDP外用剤の血管収縮能と同等であつた。またDFBAでは軟膏の血管収縮能はクリームの血管収縮能よりすぐれていたが, BDPでは軟膏の血管収縮能はクリームの血管収縮能と同等またはそれ以上であつた。
    (2) SAでは, DFBA外用剤の血管収縮能はBDP外用剤の血管収縮能と同等であつた。またDFBA, BDPともに軟膏の血管収縮能はクリームの血管収縮能より有意にすぐれていた。
    (3) ODTとSAを比較すると, 軟膏の血管収縮能はDFBA, BDPともにODTとSAでほぼ同等であつた。一方クリームの血管収縮能はDFBA, BDPともにODTがSAよりすぐれ, 外用方法の相違による影響を受けやすかつたが, DFBAクリームはBDPクリームに比べ影響を受けにくかつた。
  • 中川 秀己, 安藤 厳夫, 玉置 邦彦, 久木田 淳
    1985 年 47 巻 6 号 p. 1112-1119
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    抗ヒスタミン作用と抗アレルギー作用の両作用を有する新しい経口薬剤であるketotifenを慢性蕁麻疹およびアトピー皮膚炎に用い, その有用性と安全性の検討を行つた。慢性蕁麻疹の最終全般改善度は中等度改善以上で80%, アトピー皮膚炎では全例に改善を認めた。副作用は眠気を中心とするものが, 慢性蕁麻疹20例中4例(20%), およびアトピー皮膚炎20例中11例(55%)に認められた。最終全般改善度を加味した有用度は有用以上で慢性蕁麻疹65%, アトピー皮膚炎75%の結果が得られた。総合的に評価して, ketotifenは慢性蕁麻疹およびアトピー皮膚炎の両疾患に有用な薬剤であると考えられた。
  • 溝口 昌子, 竹島 真徳
    1985 年 47 巻 6 号 p. 1120-1123
    発行日: 1985/12/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    小児の蕁麻疹とアトピー皮膚炎患者を対象に, 化学伝達物質遊離抑制作用と抗ヒスタミン作用をあわせて有するketotifenを0.2mg/ml含有するシロップ剤を用い臨床的有用性を検討した。対象症例は5ヵ月から9才までで, 蕁麻疹8例, アトピー皮膚炎6例である。全般改善度は蕁麻疹では8例中著明改善が6例, 中等度改善0例, 軽度改善と不変が各1例であつた。アトピー皮膚炎では6例中著明改善1例, 中等度改善1例, 軽度改善1例, 悪化3例であつた。本剤投与による副作用および臨床検査値異常の発現はなかつた。有用率は蕁麻疹では有用以上の有用率75%, やや有用以上の有用率は87.5%と非常に高かつた。アトピー皮膚炎では有用以上の有用率33.3%, やや有用以上の有用率50%であつた。全般改善度, 有用性ともに蕁麻疹が高かつた。
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