西日本皮膚科
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48 巻, 1 号
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図説
綜説
  • —特に間質線維成分との関連—
    小野 友道
    1986 年 48 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 1986/02/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    真皮メラノサイトはヒトにおいては生理学的意義はないとされており, そう大きな関心が寄せられている細胞ではなさそうである。したがつて本細胞の生物学的性格はなおベールに包まれた部分が多い。たとえば蒙古斑がいかなる機作によつて消退してゆくのか, また成人真皮にメラノサイトが存在するのか否か, 存在するとすればいかなる形で何をしているのかなど, まだ検討されねばならない点が多々残されている。本論文では真皮メラノサイトの性質の一端を明らかにする目的で, 本細胞と真皮結合織との関連について考察を試みた。そして真皮メラノサイトはコラーゲンあるいは弾性線維など間質成分と密接な関連を有していることを指摘した。
症例
  • 入来 敦, 今山 修平, 宮岡 達也, 占部 治邦
    1986 年 48 巻 1 号 p. 9-12
    発行日: 1986/02/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    63才男子。昭和57年3月頃右側腹部の結節に気づき, 近医で2回切除術を受け, 同時に抗結核剤内服治療を受けた。しかし昭和58年10月頃同部に自覚症状のない同様の結節が2個再発したため当科を受診した。摘出術により同部から虫体を発見したが, 同時に肝臓にも直径9cmの壁の石灰化を伴う巨大な空洞病変を確認した。寄生虫学的検討の結果, Echinococcus granulosusによるunilocular echinococcosisであるとの診断を得た。
  • 豊島 弘行, 藤田 和夫, 広瀬 寮二, 堀 真, 吉田 彦太郎
    1986 年 48 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 1986/02/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    51才女子の左第3指指腹部に発生したintravascular papillary endothelial hyperplasiaの1例を報告した。臨床的には軽度の圧痛を伴う小豆大の皮下腫瘤として発症した。組織学的には真皮中層に壁構造を有する類円形の腫瘍塊が数個隣接して存在するのが認められた。壁構造には, Weigert染色陽性のよく発達した内弾力板および豊富な弾力線維を有し, 動脈壁の構造を示す部分がみられた。内腔面に位置する細胞成分は毛細血管様の管腔構造を形成し, capillary hemangiomaの像を示した。動脈壁様構造とその内腔にみられるcapillary hemangiomaの間には器質化した血栓がみとめられた。以上の所見より, 真皮の小動脈と思われる管腔内に血栓が生じ, その後recanalizationがおこつたために毛細血管の新生が生じたと考えられた。なお, 動脈内に発生した本症は稀有である。
  • —臨床ウイルス学的検討—
    安元 慎一郎, 大谷 朋子, 森 良一, 安田 勝, 水田 良子, 棚瀬 一幸, 吉田 紀子, 橋本 俊彦, 酒井 好古
    1986 年 48 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 1986/02/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    悪性胸腺腫患者に合併した陰部疱疹と疱疹性ひょう疽が, 長期にわたつて持続した1例について, 臨床ウイルス学的に検討した。患者血清は単純ヘルペスウイルス(HSV)に対し比較的高い中和抗体価を有していたが, リンパ球のレクチンによる芽球化反応は著しく低下しており, 病変の慢性化の背景に細胞性免疫の不全状態があると考えられた。陰部および手指の病巣から分離された2株のHSVはいずれも2型と判定された。制限酵素を用いたDNA解析により, 2株のウイルスDNA間に高い相似性が認められ, 陰部より手指へのHSVの波及を示唆するものと考えた。
  • 杉原 久美子, 伊藤 充広, 出来尾 哲, 大畑 力
    1986 年 48 巻 1 号 p. 24-27
    発行日: 1986/02/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    52才男子の左耳介舟状窩上方に生じたpseudocyst of the auricleの1例を報告した。嚢腫は豌豆大で, 圧痛などの自覚症状を欠いていた。組織学的に嚢腫は軟骨内に存在し, 内壁に上皮成分を有さない仮性嚢腫であつた。治療は嚢腫前壁軟骨を切除後, 圧迫固定をする方法で良好な結果を得た。本症は一般に自覚症状を欠くことがあるので放置されているものがかなりあるものと考えられ, 本症の発見と治療法の確立に努めるべきであると考えられた。
  • 園田 礼子, 前川 嘉洋
    1986 年 48 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 1986/02/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    コルチコイドと金製剤の併用療法中の53才男子の尋常天疱瘡患者に, 金製剤投与285mgにて, ジベルばら色粃糠疹様皮疹を生じ, その後Hamman-Rich症候群を思わせる急性間質性肺炎を惹起した1例を報告した。コルチコイドの大量投与により寛解を得ることができたが金製剤の使用に際しては間質性肺炎という重篤な副作用の可能性もあるため, 慎重な観察が必要であると考えた。
  • —嚢腫内容物の分析—
    嘉月 博, 前川 嘉洋
    1986 年 48 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 1986/02/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    母親, 兄弟, 子供などにpachyonychia congenita, 皮下腫瘤, 先天歯を有する27才男子の1例を報告した。頭部には鳩卵大の躯幹·上肢には拇指頭大におよぶsteatocystoma multiplexを有し, 先天歯, 爪甲の変形, 掌蹠の角化性病変, 躯幹には毛包炎, 毛孔一致性の角化性丘疹, 多汗傾向がみられた。嚢腫内容物をクロロホルム·メタノール混合液に溶解し, 薄層クロマトグラフィーに展開したところ, 主成分としてtriglyceride(33.9%), wax ester(24.2%)およびsqualene(15.4%)が得られ, 脂腺細胞由来の脂質と考えられた。
  • —本邦報告例の臨床的考察—
    佐藤 敬子, 前川 嘉洋
    1986 年 48 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 1986/02/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    33才女子, 右前腕屈側部のnodular fasciitisの1例を報告し自験例も含め, 現在まで本邦皮膚科領域で報告された41例につき, 若干の臨床的考察を行い, つぎの結果を得た。本症の臨床像は30∼50才の壮年期にみられ男子にやや多く, 前腕や大腿に好発し, 示指頭大ないし拇指頭大の主として表面常色ときに圧痛を訴える弾性硬の単発性皮結下節であり, 全摘すればほほんど再発しない腫瘤である。
  • —自験例の報告と本邦報告例80例の統計的観察—
    幡本 明利, 三原 公彦, 宮岡 達也, 林 紀孝, 利谷 昭治
    1986 年 48 巻 1 号 p. 44-47
    発行日: 1986/02/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    眉間部に境界鮮明な光沢のある紅斑性浸潤性局面を単発した11才男児の典型的なfollicular mucinosisの1例を報告し, あわせて1983年までに文献上収載された本邦例80例について統計的観察を行い, 以下の成績をえた。
    1) 本症の男女比は4:3で, 10∼30代に症例が集中している。
    2) 皮疹は顔面に好発し(55例), とりわけ頬部に多い(24例)。
    3) 皮疹としては紅斑性浸潤性局面(49例), 集簇性毛孔性小丘疹(38例)および脱毛(20例)がみられる。
    4) 特発型では皮疹を単発することが多く(28例中19例), 症候型では多発する傾向がみられる(12例中8例)。
  • 渡部 利枝子, 桜井 由美子, 鈴木 正, 石川 研二, 田嶋 公子, 川村 太郎, 池田 重雄
    1986 年 48 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 1986/02/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    放射線治療が奏効し, 凝固線溶系異常が改善したKasabach-Merritt症候群の1例を報告し, 光顕的および電顕的所見, ならびに電子線照射と検査所見の正常化との関係について考按した。
  • —本邦症例の統計的検討—
    柳瀬 信一, 山崎 雙次, 古谷 達孝
    1986 年 48 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 1986/02/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    77個の腫瘍の発生をみた55才男子の多発性血管脂肪腫の1例を報告した。本症例は本邦人における最多発症例である。腫瘍は躯幹, 四肢にほぼ対側性に多発し, 発病初期の腫瘍にのみ軽度圧痛が認められた。摘出腫瘍8個について組織学的に検索し, 比較的最近発生したものとみなし得る腫瘍に比較的豊富な血管腫様所見が認められたが, 陳旧性と思われる4個においては血管腫様所見は認められなかつた。本邦における本症の報告58例ならびに多発性脂肪腫17例につき統計的検討を試みた。
研究
講座
治療
  • —湿潤型および苔癬化型湿疹·皮膚炎に対する旧軟膏製剤とのWell-Controlled Comparative Study—
    TO-102研究班
    1986 年 48 巻 1 号 p. 79-87
    発行日: 1986/02/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    0.1% Hydrocortisone 17-butyrate(Locoid)新軟膏製剤(白色ワセリン基剤: TO-102V)の有用性と安全性を検討する目的で, 湿潤型および苔癬化型湿疹·皮膚炎を対象疾患とし, 旧軟膏製剤(プラスチベース基剤: TO-102N)を対照薬とした左右対比較によるwell-controlled comparative studyを5施設の協同研究として実施した。湿潤型湿疹·皮膚炎では, 最終全般改善度はかなり軽快以上を有効とした場合の有効率はTO-102Vは94.5%, TO-102Nは93.2%で, 優劣比較, 有用性の判定, 有用性の比較のいずれも同等であつた。苔癬化型湿疹·皮膚炎では, 有効率は前者が95.8%, 後者が91.5%で, 優劣比較, 有用性の判定, 有用性の比較のいずれもTO-102VがTO-102Nよりも有意に優れていた。副作用の発生率は144例中, TO-102Vは2.8%, TO-102Nは3.5%で, その程度は軽度であつた。上記成績からTO-102Vは湿潤型湿疹·皮膚炎に対してはTO-102Nと同等で, 苔癬化型湿疹·皮膚炎に対してはTO-102Nに比べより高い有用性を示すことが確認された。
  • 末永 義則, 山元 修
    1986 年 48 巻 1 号 p. 88-91
    発行日: 1986/02/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    II度熱傷における局所療法の基本は局所の安静, 感染の予防, 疼痛の緩和, 浮腫の抑制, 滲出液の減少化により早期に上皮化をはかることである。今回, われわれは17例の主としてII度の限局性熱傷に対して, 抗生物質添加外用副腎皮質ホルモン剤の一つであるケナコルトAG軟膏を使用し, 以下の結果をえた。
    1) 17例中きわめて有用14例(82%), 有用2例(12%), やや有用1例(6%)の成績をえた。
    2) 4日ないし20日間の観察期間内において, ケナコルトAG軟膏による局所的副作用, とくに感染はまつたく認められなかつた。
    3) 血液, 生化学, 尿検査を行いえた症例のうち, ケナコルトAG軟膏による全身的異常は認められなかつた。
    以上より, ケナコルトAG軟膏は限局性II度熱傷に対し, 有効かつ安全な薬剤であると考えられる。
  • 加茂 紘一郎, 平井 昭男
    1986 年 48 巻 1 号 p. 92-97
    発行日: 1986/02/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    慢性蕁麻疹患者20例に対し, ケトチフェンシロップを投与し, 有用性を検討した。その結果, 有効率90%(18/20), 副作用0%(0/20), 有用率90%(18/20)の成績が得られた。また, ケトチフェンシロップ投与終了後の再発の有無の観察では, 観察し得た14例中10例(71.4%)に再発をみなかつた。再発を抑制ないし軽減しうるという意味でケトチフェンは新しい形の蕁麻疹治療薬であり, 使用が勧められる薬剤と考えられた。
  • Ketotifen皮膚科研究班
    1986 年 48 巻 1 号 p. 98-107
    発行日: 1986/02/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    6施設の皮膚科に通院あるいは入院中の患者で, 担当医によつて蕁麻疹およびアトピー皮膚炎と診断されたそれぞれ40例および28例の合計68例を対象に抗アレルギー剤ketotifenの有効性, 安全性および有用性について検討したところ, 以下の成績を得た。
    1. 蕁麻疹の最終全般改善度は, 中等度改善以上が80.0%(32/40), 軽度改善以上が82.5%(33/40)であつた。アトピー皮膚炎は同様にそれぞれ53.6%(15/28), 82.1%(23/28)であつた。
    2. 蕁麻疹の安全度は「副作用あり」が12.5%(5/40)であり, その種類と程度は, 軽度の眠気4例と中等度の眠気1例であつた。アトピー皮膚炎ではまつたく副作用は発現しなかつた。
    3. 蕁麻疹の有用度は有用以上が82.5%(33/40)であつた。アトピー皮膚炎は有用以上が46.4%(13/28), やや有用以上が85.7%(24/28)であつた。
    4. 蕁麻疹の皮膚所見であるそう痒, 膨疹, 紅斑の3症状は投与前と比較してすでに3日後で有意に改善する結果が得られた。一方, アトピー皮膚炎のそう痒, 丘疹, 紅斑の3症状は蕁麻疹と同様の結果が得られた。
    5. 投与前後に実施した臨床検査でketotifenと直接関係のある異常所見は認められなかつた。
  • 中山 樹一郎, 松本 忠彦, 和田 秀敏, 西谷 敬子, 八島 豊, 武石 正昭, 伊川 知子, 占部 治邦
    1986 年 48 巻 1 号 p. 108-113
    発行日: 1986/02/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    トランサミン注射剤の急性湿疹·皮膚炎群, 蕁麻疹, 薬疹·中毒疹に対する臨床効果を検討した。
    1) 試験実施症例65例のうち脱落症例8例を除いた57例を解析対象とした。
    2) 臨床症状の改善率は73.7%であつた。経過とともに改善率が上昇した。
    3) 副作用は脱落例を含めた58例中5例にみられた。重篤な副作用はみとめられなかつた。
    4) 25例に一般臨床検査を実施した。投与後の異常値はみられなかつた。
  • 藤本 篤夫, 佐川 禎昭
    1986 年 48 巻 1 号 p. 114-118
    発行日: 1986/02/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    掌蹠膿疱症の患者13名に対して温清飲および小柴胡湯のそれぞれ5g/日を2分服として経口投与し, 11名の有効症例は投与後1∼2ヵ月で膿疱の新生が減少した。また紅斑, 鱗屑も徐々に軽快してステロイド外用剤の塗布回数も減少した。無効の2例のうち1例は慢性扁桃炎, 他の1例は慢性副鼻腔炎を合併していたので治療経過を報告し若干の文献的考察を加えた。
  • —Well-Controlled Comparative Study, Double Blind StudyによるBetamethasone 17-Valerateとの比較—
    DFBA外用剤臨床研究班
    1986 年 48 巻 1 号 p. 119-135
    発行日: 1986/02/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    0.05% Difluprednate(DFBA)軟膏およびクリームの臨床的有用性を検討するため, 湿潤型湿疹, 苔癬化型湿疹, 乾癬, 紅皮症, 急·亜急性痒疹および慢性痒疹を試験対象として, 0.12% betamethasone 17-valerate(BV)軟膏およびクリームを対照薬としたwell-controlled comparative study, 一部をdouble blind studyによる左右比較試験を, 全国30施設の共同研究により実施し, 以下の結果を得た。
    1. 効果解析対象例は, 軟膏269例, クリーム269例, 軟膏(同一基剤)53例, 計591例であり, 副作用集計対象例数は軟膏274例, クリーム270例, 軟膏(同一基剤)54例, 計598例であつた。
    2. DFBA外用剤の有効率はBV外用剤に比し同等, またはそれ以上であり, 両薬剤間の全般改善度または優劣比較の検定の結果, 湿潤型湿疹(軟膏), 乾癬(軟膏, クリーム), 紅皮症(軟膏), 急·亜急性痒疹(クリーム), 慢性痒疹(軟膏)でDFBA外用剤は, BV外用剤に比し有意に優れた。湿潤型湿疹(クリーム), 苔癬化型湿疹(軟膏, クリーム), 紅皮症(クリーム), 急·亜急性痒疹(軟膏), 慢性痒疹(クリーム)では有意差が認められなかつた。
    3. 副作用の発生率はDFBA 3.3%(598例中20例), BV 3.5%(598例中21例)で, 両薬剤間に有意差は認められなかつた。
    4. DFBA外用剤の有用率はBV外用剤に比し同等, またはそれ以上であり, 両薬剤間の有用性の判定または有用性の比較の結果, 湿潤型湿疹(軟膏, クリーム), 乾癬(軟膏, クリーム), 紅皮症(軟膏), 急·亜急性痒疹(クリーム)および慢性痒疹(軟膏)でDFBA外用剤は, BV外用剤に比し有意に優れていた。苔癬化型湿疹(軟膏, クリーム), 紅皮症(クリーム), 急·亜急性痒疹(軟膏), 慢性痒疹(クリーム)では有意差が認められなかつた。
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