全国10施設の大学病院皮膚科外来において, 白癬·スポロトリコーシス·クロモミコーシスを対象として, 新しく作つたペプチド抗原と, 従来の皮内反応抗原による皮内反応を比較し, 多数例の解析によつてその有用性を検討した。
1) 白癬では,
Trichophyton mentagrophytes,
T. rubrumから作製した抗原は, いずれも75%前後の高い陽性率を示した。菌株特異性は少なかつた。
2) Trichophytinの陽性率は25%でかなり低かつたが, この陽性率の差は, 濃度の再検討により相当程度に調整可能と思われる。
3) 症例による反応のつよさのばらつきが非常に大きく, 紅斑径が40mmをこえるような強陽性例が5%あつた。
4) 即時型反応が高率(85%)にみられた。
5) ケルスス禿瘡は, 一般の表在性白癬と同程度のつよさの反応を示した。
6)
Microsporum canisによる白癬では,
M. canisから作製したペプチド抗原が陽性反応を示したが, 他の白癬菌の抗原もかなり反応し, 菌株による特異性はそれほど高くなかつた。
7) スポロトリコーシスでは, ペプチド抗原と従来のsporotrichinは, いずれも陽性反応を示したが, 陽性反応の弱い例が一部にみられた。
8) スポロトリコーシスの場合も, 過半数の症例が即時型反応を示した。
9) クロモミコーシスでは,
Fonsecaea pendrosoi,
Phialophora dermatitidisの2株から抗原を作製したが, 5例中3例が陰性で, 診断的有用性は低いと思われた。
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