43才主婦。身長141cm。体重31kg。両眼白内障手術の既往があり, 細い四肢と円筒状の躯幹をもち, 両足趾の外反を示すWerner症候群で, 家族歴では兄弟6人中, 姉, 妹が同症で乳癌に罹患し, 姉は死亡している。長姉の娘も同症と診断されている。初診の2年ほど前, 左内果下方に黒色斑が出現, 徐々に隆起し, 1983年2月9日当科初診した。左内果下方に4.5×3.2cmの半球状肉芽腫様腫瘤を認めた。入院後諸検査で, 糖尿病, 高血圧症, 高脂血症, 原発性卵巣機能不全, 軽度動脈硬化, 骨粗鬆症の診断が得られた。3月2日, 腫瘍広汎切除術および左鼠径リンパ節郭清術を施行した。組織学的に, 結節型悪性黒色腫, pT
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1, Stage IIと診断した。術後, 化学療法(DTIC, ACNU, vincristine)3クール施行し, 経過良好であつたが1984年1月末再発し, その後, 肝臓, 左大腿部皮膚への転移がみられ, 種々の治療を行うも, 肝不全となり, 1985年1月12日死亡した。剖検にて, 肝をはじめ, 肺, 脾, 後腹膜リンパ節など広範囲に転移が認められた。本邦で悪性腫瘍を伴つたWerner症候群は, 自験例を含めて21例の報告があるが, そのうち悪性黒色腫が8例と, 約1/3を占めている。
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