西日本皮膚科
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50 巻, 4 号
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図説
症例
  •  
    左野 喜實, 三原 基之, 島雄 周平, 中久喜 茂也
    1988 年 50 巻 4 号 p. 611-614
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    39才女子, 職業: トランスの組立作業。約2年前より両手の全指に紅斑が出現し, しだいに硬くなつてきた。ときに軽度のそう痒感があつたほかは自覚症状はなかつた。近医にて処方されたステロイド外用剤を塗布するも症状の改善がみられなかつた。初診時, 両手の全指の指節間関節伸側部に弾性硬の隆起性紅斑を認めた。血液検査, 生化学検査では異常を認めなかつた。皮膚生検の病理組織像では表皮に角質肥厚, 表皮肥厚, 表皮内多核白血球浸潤, 真皮全層にわたる膠原線維の増生と真皮上∼中層の血管周囲性リンパ球浸潤がみられたが, 好中球破壊性血管炎の所見はみられなかつた。特徴的な臨床像と真皮の膠原線維の増生所見より慢性期の持久性隆起性紅斑を強く疑い, DDS(1日75mg)の投与を開始した。その2ヵ月後より皮疹の軽快がみられはじめ, 8ヵ月間DDSを継続投与した現在, 皮疹の著明な改善をみたので最終的にEEDと診断した。慢性期のEEDでは特徴的な臨床像にもかかわらず, 時期によつて, あるいは部位によつては本例のように組織学的に明らかな血管炎の像を認めないこともあると考えられた。
  • 鈴木 裕介, 尾立 朱実, 木下 正子, 国府田 静生
    1988 年 50 巻 4 号 p. 615-620
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    無疹性SLEの経過中に過度の紫外線照射を機会として光線過敏症を獲得し, 全身性の紅斑·水疱形成を認めるようになつた28才女子例を経験した。皮膚症状の発現は現在まで2回のエピソードがあり, どちらもSLE自体の増悪期に一致して出現し, 粘膜疹や黄色ブドウ球菌による皮膚の2次感染を伴つていた。臨床的には滲出性紅斑様皮疹からはじまり急速に拡大融合してTEN様皮疹へと進展したが, パルス療法によつて皮疹, SLEともに改善し得た。組織学的には表皮下水疱, 表皮全体の広汎な壊死, 基底層の著しい液状変性を主体とし, 真皮内炎症性細胞浸潤はわずかで水疱内への多形核白血球の侵入はまつたく認められなかつた。すなわち組織像はTENに合致する像であり, 水疱性SLEとは異なつた所見であつた。PAS染色, 抗ラミニン抗体による免疫組織化学では水疱部位の組織学的断裂はlamina lucidaまたはそれより下方で生じていることを示した。水疱に隣接する紅斑部位の直接蛍光抗体法では, IgG, IgM, C1, C3, fibrinogenが基底膜および毛包など付属器において線状に陽性でSLEとしての所見に一致した。以上より自験例の紅斑·水疱発現については, 治療により寛解導入が容易になつた最近の特殊型SLEともいうべき現象であり, sun burnによつて獲得したSLEの光線過敏症を基盤として発症した急性型SLEの一種で, 臨床および組織学的にはTEN型SLEに合致する症例と考えた。
  •  
    武 信昭, 末永 義則, 渕 曠二
    1988 年 50 巻 4 号 p. 621-625
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    30才女子。帝王切開手術創が発赤腫脹し, 種々の治療に抵抗し腹部全面におよぶ潰瘍を形成して当科を紹介され受診した。初診時, 正中部を除く腹部全体に境界明瞭な浅い潰瘍が認められ, 脂肪織が露出し多量の浸出液がみられた。潰瘍辺縁部には汚い壊死物質が付着し, 創周囲に発赤腫脹が認められた。入院中に嫌気性菌を含めた細菌培養を数回施行するも細菌は検出されず, 生検標本にも真菌, 細菌は検出されなかつた。前医の組織標本には多数の好中球浸潤と, 大型のグラム陽性桿菌が認められたことから, 原因菌は同定できなかつたが細菌性壊疽と診断した。
  •  
    加藤 直子, 足立 柳理, 青柳 俊, 大河原 章, 富樫 武弘, 崎山 幸雄
    1988 年 50 巻 4 号 p. 626-630
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    好中球機能異常症に対しHLAの一致をみる兄をdonorとして骨髄移植術を施行した患者にみられたgraft-versus-host diseaseの1例を報告した。患者は23才男子, 移植後12日目から肩および背部に帽針頭大の丘疹の多発と, 腹部に小豆大の丘疹の散発が観察された。組織学的に表皮の細胞間浮腫, 細胞間の亀裂, dyskeratotic cellおよび基底層の液状変性が観察された。真皮にはリンパ球を主体とする細胞浸潤が一部は血管周囲性, 一部は瀰漫性に存在し, 所によりexocytosisを認めた。同時期に500ml以下の下痢を認めたが肝機能障害はなく, 体表面積の約20%にmaculopapular rashが出現した, skin+, grade 1のacute GVHDと診断した。さらに移植後75日目頃から500∼1,000mlの下痢が始まり, 19mg/dl以上の高ビリルビン血症を認めたため腸管+, 肝臓++++のgrade 4のchronic GVHDと診断した。同時期に全身, とくに下肢の皮膚が魚鱗癬様乾燥症状を呈した。組織学的に角層のhyperkeratosisのみが認められ, chronic GVHDの皮膚症状であるsicca syndromeの一表現型である可能性も呈示した。GVHDの病態につき文献的に考察した。
  •  
    室 慶直, 安江 隆
    1988 年 50 巻 4 号 p. 631-635
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    SLEなどの基礎疾患を有しないループスアンチコアグラント(LA)陽性患者に生じた下腿潰瘍の1例を報告した。患者は28才主婦で, 2回の自然流産歴がある。左下腿前面に発赤·腫脹·疼痛が出現し, 潰瘍化した。梅毒血清反応偽陽性, PT·APTTの延長が認められたので, 正常血漿添加によるAPTT補正試験を施行し, LAの存在を確認した。潰瘍部の組織像は鬱血性皮膚炎の像で, 血管炎は認められなかつた。下腿の静脈造影により左下腿深部静脈血栓症が確認され, 本症例の潰瘍はそれによる循環障害に起因するものと考えられた。免疫学的検査にて抗核抗体偽陽性, 抗ss-DNA(IgG)高値が発見されたが, LAが陽性となるような基礎疾患の存在は否定的であつた。
  • 小堀 幸子, 狩野 俊幸, 金沢 一也, 加藤 英行, 北島 康雄, 矢尾板 英夫
    1988 年 50 巻 4 号 p. 636-640
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    65才男子。Stage IVの悪性黒色腫患者の皮膚転移巣にγ-interferon(γ-IFN)の局注, interleukin-2(IL-2)の局注を行い無効であつたが, 癌性腹膜炎に対しシスプラチンの腹腔内投与およびビンブラスチン·ダカルバジンの静脈内投与を行い, 腹水の一時減少·皮膚転移巣の縮少傾向がみられた。2回施行後, 腎機能障害が生じ, 3回目投与は行えず死亡した。剖検で, 腹腔全体に墨を塗つたような転移巣が認められた。
  •  
    鈴木 秀美, 相原 満里子, 碇 優子, 千葉 紀子, 下田 祥由, 関 建次郎, 大湊 政之
    1988 年 50 巻 4 号 p. 641-644
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    汎発性尋常白斑に悪性貧血を合併した60才男子例を報告した。自験例は, 胃壁細胞抗体, 胃内因子抗体を有し, 無酸症であつた。蛍光抗体間接法, 補体法にて, 抗メラニン抗体, 抗メラノサイト抗体を検索し, 電顕的観察を行つた。尋常白斑に悪性貧血を合併した男子例の報告は少ない。
  • 廣谷 由佳里, 荒田 次郎, 藤田 泰宏, 山口 龍彦
    1988 年 50 巻 4 号 p. 645-649
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    47才女子の両側性手根管症候群を伴つた全身性進行性硬化症(以下PSSと略)の1例を報告した。患者は臨床的, 組織学的に, PSSおよびSjögren症候群と確認され, 理学所見上, 手根管症候群と診断した。手根管にステロイドの局注を施行したが, 両手指の正中神経領域の疼痛, 痺れは改善されず無効であつたので, 両側横手根管靱帯縦切術を施行し自他覚症状の著明な軽快をみた。肥厚した横手根幹靱帯は, 組織学的に膠原線維の増生がみられ, PSSによる変化と思われた。
  •  
    三砂 範幸, 幸田 弘
    1988 年 50 巻 4 号 p. 650-656
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    大動脈炎症候群にSweet症候群の顔面限局型であるrecurrent neutrophilic dermatosis of the faceを併発した45才女子例を報告した。大動脈炎症候群の診断を受けた約5年後に, 右頬部に紅色結節が多発しそれらが融合して隆起性紅斑局面を呈した症例で, 同時に発熱と, 好中球増多, 血沈亢進, CRP高値が認められた。プレドニソロン50mg/日内服により, 症状は改善し, プレドニソロン減量中に一時的にざ瘡様皮疹の出現がみられたが, これも消退し, 現在はプレドニソロン7.5mg/日で維持療法中である。自験例は, 大動脈炎症候群に併発したSweet症候群としては最初の報告であり, またSweet症候群と壊疽性膿皮症との関連性を示唆する症例である。
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    比江嶋 睦典
    1988 年 50 巻 4 号 p. 657-661
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    73才女子の顔面にみられた皮角の1例を報告した。光顕所見では細胞内に好酸性均質物質を有する表皮細胞が多数認められた。電顕所見ではこの好酸性均質物質は細線維の凝集塊であつた。免疫組織化学的には抗パピローマウイルス抗体によるABC法にて角層内に陽性顆粒を認めた。以上の所見からウイルス性疣贅を考えた。腫瘤の中心部には多核ないし多形核の巨細胞や個細胞角化を多数認め, 疣贅のBowen病化と考えた。電顕的にウイルス粒子は確認できなかつた。発癌に関しウイルスと日光との関係について考察した。
  •  
    吉田 紀子, 井料 香代子, 矢野 延子
    1988 年 50 巻 4 号 p. 662-666
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    インドメタシン内服および外用で著効をみた好酸球性膿疱性毛包炎の3症例を報告した。いずれも内服後1週間で急速に皮疹の消退がみられた。しかしインドメタシン減量中に皮疹が出現する症例にはインドメタシンの外用を併用したところ皮疹はみられなくなつた。インドメタシンは好酸球に影響をおよぼす, LCF(lipid chemotactic factor), HHT(12-L-hydroxy-5,8,10, heptadecatrienoic acid), PG(prostaglandin)などの合成を抑制するために効果があると思われた。
  •  
    野中 薫雄, 大神 太郎, 入船 弘子, 村山 史男, 鈴木 公子, 赤星 吉徳
    1988 年 50 巻 4 号 p. 667-670
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    53才男子の長期アルコール大量摂取歴, 尿中ポルフィリン体軽度増加を伴う扁平苔癬の1例を報告した。病理組織学的にPAS陽性物質の沈着, 蛍光抗体法直接法で免疫グロブリンの沈着も認められ, porphyria cutanea tarda(PCT)を疑わせる症例であつた。しかし, 尿中ポルフィリン体coproporphyrin(CP)優勢でPCTの特徴的所見ではなく, 糞便中ポルフィリン体も正常像を示していた。手背皮膚の病理組織学的所見は扁平苔癬に一致したが, 蛍光抗体法直接法で真皮上層血管周囲の免疫グロブリンの沈着も著しかつた。以上の所見から, 本症例を軽度の尿中ポルフィリン体上昇を伴つた扁平苔癬と診断したが, PCTとの異同に注意を要する症例と思われた。
  •  
    黒田 真臣, 片桐 一元, 板見 智, 高安 進
    1988 年 50 巻 4 号 p. 671-674
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    単クローン性高グロブリン血症を合併したアミロイド苔癬の1例を報告した。患者は78才男子, 約5年前より四肢伸側·腰臀部にそう痒性角化性丘疹が出現した。検査所見にて高IgG血症, 高IgA血症, 蛋白分画像にてM蛋白帯出現, 免疫電気泳動にてIgG κ type, IgA κ typeのM蛋白がみられたが, 骨髄穿刺では異型細胞は認めなかつた。組織学的に真皮乳頭部および真皮上層にダイロン染色陽性物質がみられたが, 真皮の小血管·直腸粘膜には認められなかつた。真皮アミロイド塊に一致して, DACM法によるS-S結合染色および抗ケラチン抗体染色ともに陽性所見を示した。以上の所見より, 本症例は現時点では, 原発性アミロイドーシスの一つであるアミロイド苔癬と良性単クローン性高γ-グロブリン血症の共存例と考えられた。治療は, 副腎皮質ホルモン剤外用にて効果を認めないため, 外科的に皮疹の切除を行つた。
研究
  • 近藤 靖児, 佐藤 吉昭, 山口 潤, 阿部 純子, 黒木 登志夫
    1988 年 50 巻 4 号 p. 675-679
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    尋常乾癬患者5例の皮疹部, 無疹部および対照健常人由来の各培養表皮細胞における, 活性型ビタミンDのDNA合成抑制効果を検討した。乾癬皮疹部からの表皮細胞の培養にはfeeder layerを必要としたが, 乾癬無疹部および正常皮膚ではそれを必要としなかつた。正常表皮細胞では, そのDNA合成が活性型ビタミンDの1 nM添加で抑制されたのに対して, 乾癬表皮細胞では皮疹部, 無疹部ともに活性型ビタミンDに抵抗性を示し, そのDNA合成は100 nMの添加ではじめて抑制された。活性型ビタミンDは表皮細胞の分化を促進し, 尋常乾癬の治療に有効のことがすでに知られている。本研究の結果は, 尋常乾癬の病態に活性型ビタミンDが何らかの形で関与していることを示唆している。
  • 進藤 泰子, 秋山 純一, 岡部 好位, 高瀬 吉雄, 中田 和義
    1988 年 50 巻 4 号 p. 680-683
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    17才男子の左肩に生じたデスモイド腫瘍由来培養非上皮性細胞を, 健常人正常皮膚線維芽細胞(12才男児)を対照として, それらの細胞学的性状を比較検討した。(1)デスモイド細胞は培養可能日数は約1年で, 線維芽細胞と比べて短縮していた。(2)細胞の形態は紡錘形のものが大部分で変わりがないが, デスモイド細胞は増殖能の低下がみられた。(3)〔3H〕プロリンの取り込みによる%コラーゲン値は両者に相違はなかつた。(4)デスモイド細胞での組織球機能検査はすべて陰性で線維芽細胞と同様であつた。
  • 鈴木 正之, 矢尾板 英夫, 渡辺 千絵子
    1988 年 50 巻 4 号 p. 684-691
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    天疱瘡, 類天疱瘡および妊娠性疱疹の患者血清およびそれらより分離したIgG 3画分とIgG 1. 2. 4. 画分を補体成分とともに培養液中に加えて健常人皮膚を器官培養した。その器官培養皮膚の経時的形態変化と免疫組織学的所見(蛍光抗体法)を検討した。天疱瘡の場合患者血清, IgG 1. 2. 4. 画分と反応させると, 表皮細胞間にIgGの沈着と棘融解様変化が認められた。IgG 3画分と反応させると棘融解様変化は認められたが, 表皮細胞間にIgGの沈着は認められなかつた(3/3例)。類天疱瘡の場合, 患者血清と反応させると基底膜部へのIgGの沈着とdermo-epidermal separation(以下DESと略す)が認められた。IgG 1. 2. 4. 画分と反応させると基底膜部へのIgGの沈着は認められたが, DESは認められなかつた。IgG 3画分と反応させると基底膜部へのIgGの沈着も, DESも認められなかつた(3/3例)。妊娠性疱疹の場合, 患者血清と反応させると基底膜への補体(C3)の沈着とDESが認められた(3/3例)。IgG 3画分と反応させるとDESは認められたが, 基底膜部へのC3の沈着は認められなかつた。IgG 1. 2. 4. 画分と反応させると基底膜部へのC3の沈着もDESも認められなかつた(2/2例)。したがつて天疱瘡, 類天疱瘡, 妊娠性疱疹ではIgG subclass抗体の水疱形成への関与機構が多少異なることが示唆される。
  • 清島 真理子, 桑原 まゆみ, 柳原 誠, 森 俊二
    1988 年 50 巻 4 号 p. 692-697
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    ダンスロン(1,8-dihydroxyanthraquinone)を白色ワセリンに混合し, 1%および10%のダンスロン軟膏を作製し, 尋常乾癬21例に1日1回単純塗布あるいはODTを施行した。外用を開始後4週間を経過した時点で臨床効果を判定した。その結果, 著効5例, 有効9例, やや有効3例, 無効4例で, 悪化を示した症例はなかつた。やや有効∼著効を示した17例ではダンスロン軟膏外用開始後4∼6日目より主に紅斑および皮膚の肥厚が減少したが, そう痒については全例で変化がなかつた。1例で外用部位に発赤と灼熱感があつたが, 他の20例では皮膚萎縮, 毛のう炎, 発赤, 灼熱感などの副作用はなかつた。ダンスロンの乾癬に対する作用について若干の文献的考察を加えた。
  • —とくにその血清の単球修飾能について—
    馬場 徹, 星野 稔, 内藤 至子, 上野 賢一
    1988 年 50 巻 4 号 p. 698-701
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    進行性全身性硬化症に環状肉芽腫が合併した症例を経験し, その患者血清の健常人単球修飾(spreading, 凝集)活性について検討した。単球のspreadingは単球活性化の形態的初期表現と考えられているが, 環状肉芽腫を有する患者血清は健常人血清に比してより顕著に健常人単球をspreadさせる。本患者血清の単球spreading活性は環状肉芽腫単独の患者血清に比して有意に低下しており, 健常人血清のそれとの間に差異は認められなかつた。また, 環状肉芽腫を有する患者血清は健常人血清に比してより著明に健常人単球を凝集させるが, 本患者血清の単球凝集活性はspreading活性とは逆に環状肉芽腫単独の患者血清の単球凝集活性に比して有意な高値を示した。
講座
統計
  • 本間 喜蔵, 今福 武, 西本 勝太郎
    1988 年 50 巻 4 号 p. 707-711
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    1977年から1986年までの10年間に長崎市およびその近郊で発症したMicrosporum canis感染症114例について統計的観察を行つた。発症年令は生後1ヵ月から76才までで, 男女とも20才以下, とくに10才以下の小児に多くみられた。男女比は52:62でやや女子に多くみられた。年次別発症数は10年間をとおして増加傾向を示した。月別頻度では特定の傾向はみられなかつた。病型別頻度は, tinea corporis 51例(43.2%), tinea capitis 45例(38.1%), kerion Celsi 19例(16.1%)の順に多く, そのほかtinea unguium 2例, tinea pedis 1例がみられた。家族内発症は16組35例であつた。感染源は, 検索した範囲内ではネコが多かつた。交配試験で57株中12株がmating type(-)であることを確認した。
治療
  • 大浦 武彦, 占部 治邦, 大島 良夫
    1988 年 50 巻 4 号 p. 712-724
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    全国22施設で実施された分層皮膚採皮後のdonor site 104例に対してキチン膜と対照にLPS(凍結乾燥豚皮)を主としたhalfside testを行い, 使用効果について検討した。LPSは67例で, 総合評価として10.4%がすぐれている, 26.9%がややすぐれている, 44.8%が同等であるとの成績を得た。またコラーゲンと比較した場合, 18.8%がすぐれている, 43.7%がややすぐれている, 37.5%が同等であるという良い結果を得た。止血, 鎮痛, 表皮形成が対照よりすぐれているという印象であり, 密着, 乾燥, 融解に関しては差を認めなかつた。ただし, 滲出液に関しては対照にくらべ治療の初期に多い傾向がみられた。治癒完了日はLPSにくらべ平均値の差は0.7日であり, 統計的に有意に早い傾向を示し, 創部が早期に治癒することを示唆した。また, 使用方法(交換, 重ねばりなど)によつて, キチン膜の効果がとくに異なるということはなかつた。創傷の深さと治療効果に関しては, とくに17/1,000インチ以下のような浅い傷に対して良い成績が得られた。創面の状態の観察を目的として頻回の包交を行つた症例においては結果が不良であり, キチン膜の使用にあたつては不要な包交を避けるとともにトレックスガーゼや木綿ガーゼを残し, 滲出液の多いときは外側のみかえるのがよいことが明らかとなつた。2∼3日目に湿潤状態となり, 感染と間違われることがあつた(感染でないことを確認)。この取り扱いが今後の課題であることがわかつた。また, 副作用は発現しなかつた。
  • 中北 隆
    1988 年 50 巻 4 号 p. 725-730
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    1才10ヵ月女児の浴槽内転落による広範囲熱傷例を報告し, その際局所外用剤として使用したネチリン·エレース混合軟膏について若干の考察を行つた。ネチリン(硫酸ネチルマイシン)はグラム陽性, 陰性菌に広範囲かつ殺菌的な抗菌力を示し, 他のアミノグリコシド系薬剤に比較して聴覚障害などの副作用が少ない薬剤であり, ネチリン·エレース混合軟膏は製剤の安定性もあり, 熱傷, 褥瘡に対し有用な外用剤であると考える。
  • —グリテール軟膏治療が奏効した2例—
    堀内 保宏, 種井 良二
    1988 年 50 巻 4 号 p. 731-734
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    ステロイド剤の外用, 内服を繰り返し, 全身の皮膚に白癬菌の感染が拡大していた58才と73才の高IgE血症を伴う老人性全身湿疹の患者を報告した。グリテール含有軟膏(グリメサゾン軟膏)により皮疹はすみやかに改善しえた。
  • 田沼 弘之, 西山 茂夫
    1988 年 50 巻 4 号 p. 735-738
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    病巣感染が明らかでない掌蹠膿疱症(PPP)10例に対するオキサトミド(セルテクト)の有用性について検討を加え, 次の結果を得た。
    1) 著効1例, 有効6例, やや有効3例で有効率(有効以上)は70%であつた。
    2) 一般にオキサトミド投与後では, NBT還元テストは低下する傾向を呈した以外には, 臨床検査成績では投与前後で差は認められなかつた。
    3) 今後, 本剤の白血球機能に対する作用機序についてさらに検討を加えたい。
  • —組織学的検索を中心として—
    水谷 智子, 中村 保夫, 清水 正之
    1988 年 50 巻 4 号 p. 739-742
    発行日: 1988/08/01
    公開日: 2012/03/07
    ジャーナル 認証あり
    健常成人男女5人を対象として, 溶連菌製剤OK-432より抽出された蛋白質成分Su-DPを用いた皮内反応を施行し, その意義および安全性に関して検討した。皮内反応は48時間後に最高となり, 理学的, 血液生化学的には副作用は認められず, 自覚的に注射時の疼痛を認めたが, とくに問題とはならなかつた。病理組織学的には, Su-DP皮内投与後48時間の皮膚切片において, 真皮の軽い浮腫と真皮浅層から中層にかけてのリンパ球を主体とする浸潤像であつた。電顕的には, 浸潤細胞はリンパ球中心で, clustered dense bodyがしばしば認められ, 一部にゴルジ装置の発達やリボゾームの増加などの所見が認められた。以上より, Su-DP皮内反応は遅延型免疫反応と考えられ, 個体の細胞性免疫能の程度を推定する上で有用かつ安全と考えられた。
世界の皮膚科学者
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