33才女子。昭和58年8月中旬頃より, 全身に虫さされ様の皮疹が出現した。好酸球性膿疱性毛包炎と診断し, 皮疹再燃時にdiaminodiphenyl sulfone(DDS)を内服していたが, 昭和60年頃より, DDS内服後, 一時的に口唇, 口囲に水疱が出現し, 増悪傾向がみられるようになつたとの訴えがあり, 精査のため当科に入院した。入院時, 口唇, 口囲にかけて粟粒大膿疱が散在集簇し, 表面には黄色痂皮の付着がみられた。躯幹, 四肢には, 爪甲大までの, 円形の褐色調色素斑, 表面に粟粒大膿疱が集簇して紅斑が散在していた。
(1) Biotropismによる単純性疱疹を考え, herpes simplex I, II型の蛍光抗体を数回繰り返したが, すべて陰性だつた。
(2) 10%DDSパッチテストは陰性だつた。
(3) DDS 1錠の内服テストで, 内服後15分より皮疹再燃傾向を示した。
以上より, DDSによる固定薬疹と診断した。次に
(4) DDS 1錠連日内服テストを行い, 3日目より徐々に皮疹は軽快傾向を示すことが判明した。
(5) 連続投与期間を1日, 2日, 3日とあけて内服すると, 5日目投与で皮疹は再燃した。
(6) 構造式類似であるスルファメトキサゾール(シノミン)を内服後, DDSを内服させたが, 皮疹の再燃はみられなかつた。
以上の結果より, 固定薬疹の惹起に必要な因子が, 連続投与により, しだいに消耗(飽和?)され, 皮疹が出現しなくなつたものと推測する。
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