長崎市のある皮膚科開業施設における昭和60年1月から61年12月にいたる2年間の白癬患者統計, および白癬菌培養成績について述べた。同期間内における白癬患者数は1,185名で, 外来新患総数に対する割合は10.1%であつた。病型別では足白癬が884例(74.6%)と最も多く, 次に体部白癬147例(12.4%), 陰股部白癬78例(6.7%), 以下手白癬, 爪白癬, 頭部白癬の順であつた。2年間の全分離白癬菌株数は732株, 内訳は
Trichophyton rubrum 426株(58.2%),
T. mentagrophytes 279株(38.1%),
Microsporum canis 20株(2.7%)でその他に
Epidermophyton floccosum 4株,
T. glabrum 2株,
T. violaceum 1株がみられた。病型別の原因菌種頻度は, 足白癬では
T. rubrum 252株(48.1%),
T. mentagrophytes 271株(51.7%),
M. canis 1株が分離され, 体部白癬ではそれぞれ102株(87.2%), 0株, 13株(11.1%)と, ほかに
E. floccosum,
T. violaceum各1株がみられた。陰股部白癬ではそれぞれ56株(87.5%), 6株(9.4%), 0株のほか
E. floccosum 2株がみられ, 頭部白癬では6株すべて
M. canisであつた。
T. rubrumと
T. mentagrophytesの比は全白癬については1.53であつたが, 足白癬のみでは0.93と
T. mentagrophytes優位を示した。また,
T. mentagrophytesについては,
T. rubrumに比べ夏季に急増し, 秋季にかけて急減するパターンが認められた。
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