西日本皮膚科
Online ISSN : 1880-4047
Print ISSN : 0386-9784
ISSN-L : 0386-9784
54 巻, 5 号
選択された号の論文の27件中1~27を表示しています
図説
症例
  • 村山 実, 末永 義則
    1992 年 54 巻 5 号 p. 859-862
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    9歳男児の両下肢に数個の紅斑性局面がみられ, 末梢血では好酸球増多があり, 病理組織学的に, 真皮から皮下組織にかけて高度の好酸球浸潤とflame figureを認め, Wells’ syndromeと診断した1例を報告した。
  • 田中 稔彦, 杉田 康志, 森田 栄伸, 山田 悟, 山本 昇壯
    1992 年 54 巻 5 号 p. 863-866
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    発熱を伴い膝関節炎を起こしたBehçet病の1症例において, 血清中および関節液中のインターロイキン-1(IL-1)濃度をELISA法を用いて測定した。患者血清中のIL-1αおよびIL-1βの濃度は症状発現時および消退時とも健常人と有意差はみられなかった。炎症症状出現時の膝関節液中では, IL-1α 40pg/ml, IL-1β 295pg/mlであり, 血清中のそれらの値に比して著明に高値であった。IL-1は炎症反応において種々の生物学的活性をもっていることが知られており, 本症例の膝関節炎の発症にIL-1が重要な役割を担っていることが推察された。
  • 檜垣 祐子, 山下 浩子, 肥田野 信, 佐藤 和人
    1992 年 54 巻 5 号 p. 867-872
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    回帰性リウマチの5例を報告した。四肢の関節炎発作を年余にわたりくりかえすほか足底, 手掌, 指趾に圧痛のある浸潤性または滲出性紅斑などが出没する。さらに3例では発作関節周囲にも紅斑を認めた。臨床検査所見では血沈の亢進, CRPの上昇を3例で発作時のみ, 2例で持続性に認めた。皮疹の組織学的検討で, 足底などの浸潤性紅斑は真皮の血管周囲に軽度の浮腫とリンパ球主体の細胞浸潤を認め, 種々の程度に好中球が混在していた。関節部の滲出性紅斑は真皮乳頭層へのフィブリン析出とリンパ球, 好中球浸潤, 核破片が混在し, 血管壁と表皮真皮境界部にC3の沈着を認めた。
  • 荻山 幸子, 千原 太, 比嘉 信喜
    1992 年 54 巻 5 号 p. 873-878
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    症例: 29歳女子。10年前に蝶形紅斑, 蛋白尿および多発性の関節炎が出現し, SLEと診断された。ステロイドは使用せずにジピリダモールの使用のみで蛋白尿は改善し, 臨床検査成績も安定していた。1990年6月, 発熱と躯幹四肢の環状紅斑を主訴として当科を受診し, 肺高血圧症の存在とSjögren症候群, 慢性関節リウマチの合併が明らかとなった。また初発時には陰性であった抗RNP抗体が高値となり, リウマチ因子陽性, 高γグロブリン血症, 白血球減少, 抗SS-A抗体陽性など, 肺高血圧症を伴う膠原病に高率にみられる所見が認められた。右心カテーテル検査によって, 諸種の血管拡張剤の肺高血圧症に対する効果を検討した。その結果プロスタグランジンE1, ニフェジピン, ニカルジピン, デノパミンは肺血管抵抗をよく下げるが, 同時に体血管抵抗をも下げてしまうことがわかった。体血管抵抗への影響の少ない薬剤として硫酸イソソルビドを選び, 夜間酸素療法を併用中である。肺高血圧症の治療に種々の血管拡張剤が用いられるが, 症例によってそれらの薬剤への反応が異なるため, その使用には慎重を期すべきであると考える。
  • 福田 英三, 今山 修平
    1992 年 54 巻 5 号 p. 879-883
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    代謝拮抗剤テガフールと免疫調節剤ウベニメクスによる多剤感作薬疹の1例を報告した。症例は77歳女子。両薬剤の同時投与により光線過敏症型薬疹を発症し, 両者の投与中止により皮疹は消退した。しかし後者の再投与により新たな薬疹が続発した。病歴, 臨床経過および光パッチテストの成績から光線過敏症型薬疹はテガフールによると考えられた。一方その後みられた紅斑はウベニメクスの単独投与により誘発されたことから, 同剤による薬疹と診断した。しかしこれらの薬剤は構造式上共通部分がなく, したがって交叉反応は考え難く, 多剤感作薬疹と診断した。
  • 水谷 恵津子, 水谷 仁, 岡田 浩明, 清水 正之
    1992 年 54 巻 5 号 p. 884-888
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    手掌, 足底のflexion creases(屈曲しわ)に限局して角化性丘疹が多発する特異な臨床像を呈するkeratosis punctata of the palmar creases(KPPC)の1例を経験した。手掌の丘疹の病理組織所見は不全角化のない肥厚した角質栓によって表皮が受皿状に陥凹し, 陥凹部では顆粒層の菲薄化と表皮突起の消失を認めた。連続切片による観察では病巣部中央に汗管が認められた。本疾患は1947年Arnoldの報告以来世界で20弱の報告をみるが, 過去においては手掌, 足蹠に散在性に角栓様角質塊を有するkeratosis punctata palmaris et plantaris(KPPP)と区別されず, 統計学的に一括して集計されているため, その正確な罹患率が把握出来ない状態である。黒人におけるKPPCの罹患率は3∼8%とかなり高頻度とされているのに対し, 白人の報告は少なく, KPPCの罹患率には人種差の存在が考えられる。東洋人においては本邦におけるKPPPとして報告されているものの中にKPPCと考えられる報告例が過去に2例あるに留まり, KPPCという名称での発表は自験例が最初の報告である。われわれは日本人におけるKPPCの罹患率を知る目的で, 外来患者300名につきKPPCの頻度の調査を行ったが, KPPCは一例も認められず, KPPPを一例認めたのみであった。これより, 黒人における報告と異なり, 日本人では白人同様KPPCは罹患率の低い疾患と考えられた。
  • 石原 剛, 松永 若利, 吉岡 進
    1992 年 54 巻 5 号 p. 889-892
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    5歳女児, 3歳男児のcongenital dermal sinusの2例を報告した。2例ともMRIにて脊髄円錐の低位すなわちtethered cordを認め, 今後さらに予防的根治術を行う必要があると考えられた。
  • —Vicious Cycleをきたした1例—
    藤木 崇弘, 中村 猛彦, 小野 友道
    1992 年 54 巻 5 号 p. 893-896
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    糖尿病患者にみられた重篤な膿皮症の1例を経験した。症例は, 68歳男子。66歳の頃, 糖尿病を指摘されていたが未治療であった。半年程前より項部に痒みを伴う皮疹が出現した。放置していたが徐々に増大し, 痛みを伴い, 項部全体に拡大し全身状態も悪化し, 血糖のコントロール不良となった。インスリン療法に加え, 抗生剤投与, デブリードマン, 植皮術など, 膿皮症に対する十分な治療を行うことで, 血糖値の安定が得られた。糖尿病と膿皮症のいわゆるvicious cycleを呈した1例を報告した。
  • 篠田 英和, 西本 勝太郎, 本間 喜蔵
    1992 年 54 巻 5 号 p. 897-902
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    エレキバン®, エスパーシール®等の円形絆創膏貼付部に発生した真菌症の9例を報告した。絆創膏の種類はエレキバン®8例, エスパーシール®1例であった。女性が8例と圧倒的に多く, 年齢は30歳, 40歳台が約半数を占め自験例が従来の報告より若年化傾向を示した。受診月は6月∼9月までが6例で67%を占め, 高温多湿期に多く, また発症までの貼付日数は2日から長い症例では30日間であった。原因菌はTrichophyton rubrum 6例, Candida albicans 1例でT. rubrumが多くみられた。合併する他部位の白癬は足白癬3例, 足爪白癬1例であり, その原因菌はT. rubrum 1例, Trichophyton mentagrophytes 1例, 不明2例であった。感染源と推定される白癬病巣を有する症例は9例中3例のみであり予想外に少なく, これはこの様な症例の感染源が必ずしも他部位の白癬病巣からとは限らず環境中からの感染を示唆していると考えた。臨床症状は辺縁隆起性環状紅斑が多かったが, 接触皮膚炎様を呈する症例や, 接触皮膚炎と診断され副腎皮質ホルモン外用を受けた症例もみられることから真菌学的検索を含めた充分な発疹の観察が重要と思われた。
  • 鳥越 利加子, 山田 琢, 下江 敬生, 神崎 寛子, 秋山 尚範, 多田 讓治, 荒田 次郎
    1992 年 54 巻 5 号 p. 903-906
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    岡山で発症した黒癬の症例を報告した。患者は7歳の男児で, 左手掌の自覚症状のない類円形の茶褐色斑を主訴として来院した。1年ほど前に気付き, 徐々に拡大し直径9mmであった。同部の角層を擦過して得られた鱗屑のKOH標本にて真菌要素が多数みられ, 培養により黒色コロニーを形成した。病理組織標本では角層にPAS染色陽性の菌糸が観察された。以上より黒癬と診断した。イミダゾール系抗真菌薬外用が有効であった。黒癬は, 主として南アジア, アフリカ, 南アメリカなど熱帯, 亜熱帯地方に多い皮膚浅在性真菌症で, 日本ではまれである。今までに沖縄, 九州, 四国での報告が12例あるが, 本州での発症例はなく, 本症が初めてと思われる。
  • 園田 忠重, 片桐 一元, 寺師 浩人, 倉田 荘太郎, 高安 進, 瀬口 俊一郎
    1992 年 54 巻 5 号 p. 907-911
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    色素性母斑を先行病変とし, 組織学的に同一組織内に色素性母斑と悪性黒色腫(以下MM)の共存が認められた1例を報告した。52歳男性。10歳頃より背部に黒色腫瘤あり。4年前より増大し, 初診1ヵ月前より出血するようになり, 平成3年1月25日当科を受診した。肩甲骨間部に色素性母斑と思われる拇指頭大の黒色腫瘤があり, これに連続して表面に糜爛を呈する腫瘍が認められた。左腋窩には拇指頭大のリンパ節を1個触知した。HE染色所見は, MMと色素性母斑(真皮内母斑)が同一組織内にあり, 両者の大部分は少量の膠原線維で境されているが, 一部連続している部分もみられた。MM辺縁部の表皮基底層には境界部活性および異型メラノサイトが多数認められた。HMB-45染色所見は, 悪性黒色腫細胞巣と周囲の表皮基底層のみ陽性であった。遠隔転移は認められず, 広範囲腫瘍切除, 両側腋窩リンパ節郭清, DAV療法, IFN局注, BCG内服療法を施行した。左腋窩リンパ節に転移を認めたが現在再発はない。自験例は病歴, 組織所見より色素性母斑が悪性化してMMが生じたと推測される。色素性母斑はMMの発生母地としてよく知られているにもかかわらず, 組織学的に検討した報告は少ないので報告した。
  • 白石 正憲, 伊与田 修, 末永 義則, 旭 正一
    1992 年 54 巻 5 号 p. 912-917
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    産業医大開設以来, 12年9ヵ月の間に経験した爪部悪性黒色腫3例およびその早期病変3例を報告した。6例ともに1984年以降に経験した症例であった。悪性黒色腫3例は61歳女, 86歳男, 66歳女で, いずれも第1指に生じ, 数年以上の先行する色素性病変があり, 2例は外傷の既往があった。3例ともacral lentiginous melanomaであった。早期病変malignant melanoma in situ3例は, 49歳男, 51歳男, 65歳男のそれぞれ第2指, 第1趾, 第3指に生じ, 1例に外傷の既往, 2例に先行する色素性病変があった。各症例について概略を記載し, 統計的事項, 先行病変, 治療および黒色腫の早期病変について若干の文献的考察を加えた。
研究
  • 前田 学, 市來 善郎, 渡部 裕子, 松原 勝利, 平野 久代, 森 俊二
    1992 年 54 巻 5 号 p. 918-921
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    62例の全身性強皮症患者(男:女=8:54)を対象に1年間にわたって, 指爪病変を調査した。その結果, 縦溝41例(66.1%), pitting 19例(30.6%), 黒色線条16例(25.8%), 横溝7例(11.3%), splinter hemorrhage 3例(4.3%), 爪甲粗ぞう, 白斑, 色調変化が各々2例(3.2%)に, 爪甲剥離, 肥厚, 亀裂が各々1例(1.6%)にみられたが, 爪病変とPSSの重症度や罹患期間の間には相関関係は認められなかった。黒色線条はSLE患者には認められず, PSS患者の拇指に最多で, 示指, 中指, 薬指の順に多いことやRaynaud症状以外の初発症状を有する患者に多いことからPSSの病態に密接に関与している可能性も考えられた。
  • 河野 映理, 伊崎 誠一, 北村 啓次郎
    1992 年 54 巻 5 号 p. 922-926
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    Seborrheic keratosis(SK)12例ならびにIrritated SK 8例を材料とし, 各種抗ケラチン抗体を用いて免疫組織化学的に検討した。SK病変の主体を構成するbasaloid cellは, 抗基底層型ケラチン抗体と強く反応した。一方, irritated SKの病変を構成するsquamous cellでは, 抗基底層型ケラチン抗体との反応性が減弱し, 抗角化型ケラチン抗体との反応を示し, squamous eddies(SE)においては同様の角化亢進が巣状に観察された。すなわち, irritated SKでは, basaloid cellからsquamous cellへ変化し, SEが形成されるに伴い, ケラチン表現も基底層型から角化型へ変化することが確認された。
  • —特に病理組織学的所見を中心に—
    松永 若利, 石原 剛, 吉永 愛子
    1992 年 54 巻 5 号 p. 927-931
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    1973年Brownstein & Helwigによって分離, 提唱された皮下皮様嚢腫は胎生期の顔裂閉鎖時に, 骨の縫合線に沿って皮膚が迷入して発症するとされる疾患である。われわれは過去3年間に経験した28例について病理組織学的に検討した。その結果, 本症では手術時年齢によって, 嚢腫壁の構造や, 皮膚付属器の発達程度に差があることが判明した。生後1歳頃迄に切除された嚢腫では皮膚付属器の発達は未熟で, 嚢腫内腔に角化物が充満するが毛は少なく, 嚢腫は全周性に有棘細胞層よりなる嚢腫壁で取り囲まれている。その後加齢とともに, 皮膚付属器は発達し, 有棘細胞層よりなる嚢腫壁が異物肉芽腫によって置換され, 成人の摘出例では, 有棘細胞層は消失し, 完全に異物肉芽腫により置換されていた。また嚢腫内腔の角化物は減少し, 剛毛が多数存在していた。加齢とともに有棘細胞層が異物肉芽腫により置換されるという現象は興味深い所見と思われた。
  • 安田 浩, 白石 正憲, 益雪 浩一, 末永 義則, 上野 輝夫
    1992 年 54 巻 5 号 p. 932-935
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    1990年にChiuが報告したtransthecal digital blockによる指伝達麻酔法を20名の種々の手指の手術, 皮膚生検に用い効果を検討した。その結果, 従来の指伝達麻酔法に比べ患者の麻酔時の疼痛が少なく, 良好な麻酔効果が得られた。日常診療上, 手指に対し小手術を行うことは, 皮膚科, 形成外科医にとって少なからず遭遇するので, 患者に対し侵襲の少ない本麻酔法は極めて有用な手技と考えた。
講座
治療
  • TJN-318液剤研究班
    1992 年 54 巻 5 号 p. 944-953
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    新規外用抗真菌剤TJN-318 1%液剤の皮膚真菌症に対する治療効果ならびに安全性を, 17施設からなる研究班を組織し, 1日1回塗布により検討した。投与総症例526例のうち不採用61例を除く465例について安全性を, 390例について有効性を, 391例について有用性を検討した。皮膚所見ならびに菌陰性化を考慮した最終総合効果判定の有効率は, 足白癬, 体部白癬, 股部白癬, カンジタ性間擦疹, カンジタ性指間糜爛症, 癜風のいずれの疾患においても80%以上であり, とくに股部白癬においては92.0%, 癜風においては90.0%と高い治療効果が認められた。副作用は11例(2.4%)に認められ, その内訳は刺激感, 発赤, 角化の悪化, 接触性皮膚炎であり, また臨床検査でGOTの軽度上昇が認められた例が1例あった。しかしながら重篤な副作用は1例も認められず, いずれも適切な処置により軽快した。有用性の判定結果では足白癬82.7%, 体部白癬86.4%, 股部白癬94.0%, カンジタ性間擦疹88.9%, カンジタ性指間糜爛症88.5%および癜風88.0%の有用率であった。以上の成績から, TJN-318 1%液剤は皮膚真菌症に対して有用な薬剤であると考えられた。
  • TJN-318クリーム研究班
    1992 年 54 巻 5 号 p. 954-961
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    皮膚真菌症に対する新規イミダゾール系抗真菌剤, TJN-318の1%クリーム1日1回塗布による臨床的治療効果および安全性を検討することを目的として15施設からなる研究班を組織し, オープントライアルによる前期第II相臨床試験を実施した。投与総症例243例中不採用例を除く226例について安全性を評価し, 201例について有効性および有用性を評価した。皮膚所見および菌所見の推移を総括して判定した最終総合効果(有効性)判定における有効率は, 足白癬で73.1%, 生毛部白癬で95.4%, 皮膚カンジダ症で97.0%および癜風で96.0%であった。副作用は226症例中4例(1.8%)に発現した。その内訳は, 潮紅·腫脹1例, 塗布亀裂部の乾燥1例, 接触性皮膚炎1例および小水疱出現1例であった。それらはいずれも軽度な症状であり, 自然軽快または外用ステロイド剤の投与によって軽快した。有効性および安全性を総合的に考慮した有用性における有用率は, 足白癬で76.9%, 生毛部白癬で95.4%, 皮膚カンジダ症で97.0%および癜風で92.0%であった。以上の成績から, TJN-318の1%クリームは, 1日1回の投与により, 皮膚真菌症に対し有用な薬剤になり得ると考えられた。
  • TJN-318クリーム研究班
    1992 年 54 巻 5 号 p. 962-976
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    TJN-318クリームの皮膚真菌症に対する至適用量を設定することを目的として, 35施設よりなる研究班を組織し, 皮膚所見の改善, 真菌学的効果および安全性を指標として, 本剤の0.5%および1%クリームについて二重盲検法による比較臨床試験を実施した。治験薬剤は676例に投与され, 不採用例とされた57例を除く619例について解析を行った。最終的に619例について安全性を, 525例について最終総合効果判定(有効性)を, 526例について有用性を評価した。皮膚所見に関する成績では, 股部白癬の中間必須観察日においてそう痒の改善および皮膚所見の総合判定について両群間に差が認められ(p<0.05), 1%群が有意に優る成績が得られた。しかし, 最終必須観察日である2週目においてはこの差は認められなかった。その他の疾患においても両群ともに良好な皮膚症状の改善効果が認められ, カンジダ性爪囲炎に対しても1%群で91.7%の改善率(改善以上)が得られた。菌所見については, 両群間に有意差は認められず, 共に顕著な菌の陰性化作用がみられた。カンジダ性爪囲炎ならびにカンジダ性間擦疹においても両群共に100%と著明な菌陰性化率を示した。総合効果判定および有用性についてはいずれの疾患においても両群共にすぐれた治療効果を示し, 有意差は認められなかった。本治験においてみられた副作用は接触性皮膚炎が5例, 刺激感および趾間の亀裂がそれぞれ1例で, 重篤なものはなく, いずれも適切な処置により軽快に至った。その発生率は0.5%群で1.6%(5/309), 1%群で0.6%(2/310)と低く, 両群間に有意差は認められなかった。以上の成績より, TJN-318クリームの皮膚真菌症に対する至適用量として1%が選択された。
  • TJN-318クリーム研究班
    1992 年 54 巻 5 号 p. 977-992
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    TJN-318クリームの皮膚真菌症に対する有用性を検討することを目的として, 41施設よりなる研究班を組織し, 皮膚所見の改善, 真菌学的効果および安全性を指標に, ビフォナゾールクリームを対照薬として二重盲検法による比較臨床試験を実施した。対象は, 初診時直接鏡検により菌陽性と判定され, 足白癬(趾間型および小水疱型), 生毛部白癬(体部白癬および股部白癬), 皮膚カンジダ症(カンジダ性間擦疹およびカンジダ性指間糜爛症)あるいは癜風と診断された患者とし, 1日1回の塗布による治療効果を検討した。治験薬あるいは対照薬は, 合計960例に投与され, 不採用例とされた98例を除く862例について安全性を, 774例について有効性および有用性を評価した。評価にあたっては, 従来行われている有意差検定に加えて同等性検定を採用し, TJN-318ならびにビフォナゾール両群の同等性についても統計学的に証明することを試みた。本治験の実施により, 両群ともに良好な治療効果が確認され, 有意差検定においては, 皮膚所見, 菌所見, 有効性および有用性について両群間に統計学的な有意差は認められなかった。また, TJN-318群は, 有用性の同等性検定において, すべての対象疾患でビフォナゾール(BFZ)群との同等性が検証された(Δ=5または10%; p<0.05)。副作用についても両群間に有意差は認められなかった。またその発現率はTJN-318群で0.90%(442例中4例), BFZ群で0.71%(420例中3例)と低いものであった。以上の成績より, TJN-318クリームはビフォナゾールクリームと同等の効果ならびに安全性が期待でき, 外用抗真菌薬として皮膚真菌症の治療に対し有用な薬剤であると考えられた。
  • 松本 忠彦
    1992 年 54 巻 5 号 p. 993-997
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    1%トルシクラート含有ローション剤(SMW-101)の効果および安全性を検討する目的で, 足白癬2病型(小水疱型, 趾間型)の計31例を対象とし, 臨床評価を行った。改善が認められた症例は小水疱型, 趾間型ともに100%であり, 菌の陰性化は小水疱型62.5%, 趾間型100%であった。副作用は2例に認められた。いずれも軽微で使用を継続できた。有用率は両病型をあわせて80.6%, 小水疱型で62.5%, 趾間型で100%であった。以上の結果より, SMW-101は足白癬に対し有用性が高く安全性の面においても優れた製剤であることが示唆された。
  • —北海道地区多施設による比較対照試験の成績—
    大浦 武彦, 皆川 英彦
    1992 年 54 巻 5 号 p. 998-1004
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    創傷被覆保護材ベスキチンW®はすでに皮膚欠損傷に対して多くの臨床応用がなされている。今回さらにこの臨床上の特性を明らかにするために採皮創に対してLPD®(凍結乾燥豚真皮)とのハーフサイドテストを多施設で行い, 検討した。その結果, ベスキチンW®は貼付後に止血, 鎮痛効果という創部の治療に必須な要因がとくに良好であるという点が特色と考えられた。これらは密着性の良さ, 融解しにくいという点が関与すると考えられ, また, この密着性および融解耐性は治療の上で使用しやすいということにもつながっている。また, 上皮化も速く, 治癒後の創面も滑らかである点も好ましいと考えられた。したがって, ベスキチンW®は現在使用されているバイオロジカルドレッシングの中でもとくにバランスのとれた材料であると考えられた。
  • —ソフラチュールの併用効果について—
    大浦 武彦, 皆川 英彦
    1992 年 54 巻 5 号 p. 1005-1008
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    ベスキチンW®(以下BCW)は, 皮膚欠損傷の保護材として多くの臨床応用がなされている。治癒に至るまでの経緯として, 貼付数日後に湿潤状態になることが特色であり, その時点での創面の安定性, およびガーゼ交換時の離脱を防止するために, BCW上部に使用する保護材の選択がその特色を良好に引き出すために重要であると考えられた。その材料として, ソフラチュール®の効果を他材(局方ガーゼ, シリコンガーゼ)と比較した。その結果, 総合評価として28例中18例が, ソフラチュール®を使用した方が結果が良好であった。上皮化, 融解耐性, 簡便性という創傷保護材の主要な要因がその理由であった点を考えると, BCWの特性を十分に発揮させるためには, その上層へのソフラチュール®の使用は好ましいと考えられた。
  • —カロヤン®Sとの治療効果比較試験—
    武田 克之, 石橋 康正, 渡辺 亮治, 新村 眞人, 渡辺 靖, 朝田 康夫, 中溝 慶生, 柴崎 敏昭, 佐久間 昭
    1992 年 54 巻 5 号 p. 1009-1024
    発行日: 1992/10/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    ミノキシジル外用剤の男性型脱毛症に対する臨床的有用性を検討する目的で, カロヤン®Sを対照薬剤に選び, 電話割り付け法により群間比較試験を行った。
    (1)208例が登録され, 201例を概括安全度解析対象とした。
    (2)全般改善度ではミノキシジル群で「中等度改善」以上が30.4%(24/79)であったのに対し, カロヤン®S群では12.8%(10/78)で有意差をもってミノキシジル群が優れていた(P=0.002)。なお, 委員会判定では有意差を認めなかった。
    (3)概括安全度では, 両群間に有意差は認められず, ともに問題となる副作用および臨床検査値の異常変動はみられず安全性は高いと考えられた。
    (4)有用度では, ミノキシジル群で「かなり有用」以上が17.3%(14/81)であったのに対しカロヤン®S群では7.7%(6/78)で, 有意差をもってミノキシジル群が優れていた(P=0.006)。
    以上の結果から, ミノキシジルは男性型脱毛症に対して有用性の高い外用薬剤と判定された。
世界の皮膚科学者
feedback
Top