56歳男性。20歳頃より毎日清酒約2合の飲酒を続けていた。4年前より左耳後部, 前胸部, 背部の皮膚に硬化局面を生じ, 次第に拡大してきた。初診時左耳前部から耳後部, 胸骨前面, 背部正中線上の色素沈着と脱失を伴う硬化局面および顔面, 手背の瀰漫性色素沈着, 小瘢痕, 多毛などが認められた。検査所見ではGOT, GPT,
γ-GTP, 血清鉄, 腫瘍マーカー(
α-fetoprotein, CEA)などの上昇を認めたが, 血清補体価, 抗核抗体, 抗セントロメア抗体, 抗Scl-70抗体などは正常もしくは陰性であった。尿中uroporphyrinは4975.22nmol/l, heptacarboxyl porphyrinは3019.73nmol/l, coproporphyrin IIIは1315.40nmol/lといずれも著明に上昇していた。硬化局面の病理組織像では過角化, 表皮萎縮, 真皮肥厚, 真皮上層と毛嚢周囲の膠原線維の迂曲断裂, 表皮真皮境界部, 血管周囲のPAS陽性物質の沈着, solar elastosisなどの所見がみられた。以上より強皮症様変化を伴った晩発生皮膚ポルフィリン症と診断し, 本邦報告例とその皮膚病変の発生機序について考察した。
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