西日本皮膚科
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59 巻, 1 号
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図説
症例
  • 小辻 智恵, 星野 稔, 岩田 充, 大塚 藤男
    1997 年 59 巻 1 号 p. 3-6
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
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    ネル製寝巻の染色に使用されたnaphthol-AS(以下N-AS)による色素沈着性接触皮膚炎の76歳の女性例を報告した。寝巻に残留したN-AS量(366μg/g)はこれまでの報告例の中では最低であった。患者が脳梗塞で寝たきりの状態になり寝巻の着用時間が長くなった点, 6年もの長期間にわたってネルの寝巻を使用した点がこのような低濃度のN-ASで感作の成立した原因と考えた。本症の報告は1990年に衣類の残留N-AS濃度が1000μg/g以下に自主規制されて以来減少しているが低濃度でも本例のように長時間の着用により発症する危険性があるので注意を要する。
  • 山本 淳子, 園田 忠重, 藤原 作平, 高安 進
    1997 年 59 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    65歳の男性の浸透性木材保護着色染料(商品名キシラデコール®)を使用後に発症した毛孔性紅色粃糠疹の1例を報告した。2日間キシラデコール®を使用し, その翌日日光曝露, その翌日より漸次顔面, 足蹠, 膝蓋に灼熱感および紅色皮疹が出現し手掌足蹠に角質増殖が著明となった。毛孔性紅色粃糠疹と診断しトレチノイントコフェリル(オルセノン®)軟膏, 1%エトレチナート(チガソン®)軟膏外用, エトレチナート内服療法を試みた。その経過中両下肢の腫脹が出現し抗生剤, 消炎剤の投与, アズノール®軟膏ガーゼ処置により腫脹は軽減, 一方躯幹の皮疹は白色ワセリン外用にて消退した。またHTLV-1抗体陽性であったが検査上免疫不全を示唆する所見は得られなかった。
  • 白崎 文朗, 山岸 雄二, 大槻 典男
    1997 年 59 巻 1 号 p. 12-14
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    乾癬の経過中に好酸球性膿疱性毛嚢炎(EPF)がみられた1例を報告した。症例は33歳の男性。10年来の乾癬の経過中, 顔面, 背部に膿疱を伴った局面が, 掌蹠に紅斑性角化局面と膿疱が出現した。病理組織像では毛包内に好酸球·好中球からなる多房性膿瘍を, 末梢血ではEPF発症前には認められなかった好酸球増多が認められた。インドメサシン1日50mgを投与後, EPFの皮疹は急速に消退し少数の膿疱が周期的に新生する程度に改善した。一方, 乾癬の典型的皮疹はインドメサシンに反応しなかった。従って自験例では乾癬にEPFが合併した症例と考えた。このような症例の報告は調べ得た限りではみられなかった。
  • 前田 学, 掛札 啓資, 雄山 瑞栄, 可知 久代, 北島 康雄
    1997 年 59 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    症例1は48歳の女性, 1985年寒冷時に右手示指にレイノー症状が生じ, その範囲は次第に両手の示指·中指へ広がった。1988年手指, 顔面, 頚部に硬化が認められ近医を受診し当科に紹介された。1990年7月よりプレドニゾロン1日5mgとDペニシラミンの内服を開始した。1991年9月よりフォトフェレーシスを計5回施行した。1992年3月頃にうつ状態となり精神科を受診するようになったため来院困難になった。この頃より全身の皮膚硬化が悪化し躯幹にも波及し当科に入院した。入院後, 経中心静脈的プロスタグランディンE1長期持続注入療法施行により急速に皮膚硬化は改善し前腕の伸展も可能になった。症例2は46歳の男性で症例1の弟。1984年春レイノー症状出現, 1987年呼吸困難出現し, 1988年1月大阪病院に入院し肺線維症を指摘され2月より在宅酸素療法を受けていた。1990年11月よりフォトフェレーシスを計5回施行したところ硬化は改善傾向をみたが, 1991年末頃にうつ状態が出現した。1992年2月呼吸困難, 全身倦怠感が出現し1993年5月肺性心のため死亡した。両者とも抗Scl-70(トポイソメラーゼI)抗体陽性, HLAは共にDR4, Cw3, B35, A2陽性である。本例は稀な家族内発症の姉弟例であると考えられた。
  • 辻 淳子, 西村 百合香, 高橋 さなみ, 川口 博史, 佐々木 哲雄, 中嶋 弘, 片倉 仁志
    1997 年 59 巻 1 号 p. 20-23
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    53歳の男性のWeber-Christian病の1例を報告した。発熱と体幹を中心に発赤を伴う有痛性皮下硬結を主訴に当科受診。血清CRP, GOT, GPT, ALP, γ-GTPの上昇, 抗核抗体640倍陽性であった。病理組織学的に脂肪細胞間の細胞浸潤, 肉芽腫性変化と脂肪織隔壁の線維化による肥厚が認められた。膠原病, 悪性リンパ腫, cytophagic histiocytic panniculitis, サルコイドーシス, その他の内臓疾患は否定された。プレドニゾロン内服開始後, 臨床症状, 検査所見ともに改善したが1年後の現在なお維持療法を続け経過観察中である。
  • —とくに耳介軟骨細胞の病理組織学的·電顕的観察—
    長治 順子, 清川 千枝, 西岡 昭二, 津田 眞五
    1997 年 59 巻 1 号 p. 24-27
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    62歳の男性に生じた再発性多発軟骨炎の耳介病変部軟骨細胞を病理組織学的·電顕的に観察した。初診の4ヵ月前より左右耳介に有痛性の発赤腫脹を発症した。両側肩および手関節炎, 右伝音性難聴を合併していた。白血球増多, 血沈亢進, CRP陽性, 血清IgG増多が認められた。病理組織学的所見: 耳介軟骨に沿って好中球, リンパ球が浸潤し, 軟骨細胞は核がghost化しalcian blue染色やMasson染色所見より基質の変性が示唆された。電顕所見: 開口分泌を示す細胞やライソゾームの増加, 細胞質の空胞化, 微絨毛の減少と短縮, 粗面小胞体の減少などを示す変性軟骨細胞が観察された。マトリックスではフィラメント成分が減少しamorphousな物質が増加していた。患者血清中の抗軟骨細胞抗体は陰性。発病初期と思われる本症の形態学的所見の記載は比較的少ないため病変耳介部の電顕所見を中心に報告した。
  • 平岩 厚郎, 安立 あゆみ, 松本 義也
    1997 年 59 巻 1 号 p. 28-30
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    右足外果に生じたfibroma of tendon sheathの39歳の女性の1例を経験したので報告した。本疾患の本邦皮膚科領域での報告は少なく, その臨床および病理組織学的特徴について概説を加えた。
  • —免疫組織化学的検討の考察を含めて—
    奥田 知規, 大井 綱郎, 古賀 道之, 清水 亨
    1997 年 59 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    54歳の男性。小学生の頃からある頭部脱毛斑部の外傷後に出現した有茎性の腫瘍を主訴に来院した。病理組織学的には真皮内に基底細胞様細胞の胞巣状増殖および未熟な毛包が認められた。腫瘍頚部では表皮が嚢腫状に陥凹し, その底部から乳頭状に増殖する組織が認められた。乳頭状増殖部は円柱および立方上皮からなる2層の上皮でおおわれ間質には形質細胞浸潤が認められた。以上より類器官母斑上に生じた基底細胞上皮腫と乳頭状汗管嚢胞腺腫と診断した。乳頭状汗管嚢胞腺腫の起源や分化についてはいまだ不明な点が多く, これらの点につき免疫組織化学的染色を用いて過去の報告例との比較を含め考察した。
  • 小辻 智恵, 飯島 茂子, 岩田 充, 大塚 藤男, 角田 克博
    1997 年 59 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    40歳の男性。自覚症状のない左肩甲骨部の示指頭大の皮下結節を主訴に来院した。病理組織学的に線維性偽被膜に囲まれた境界明瞭な腫瘍で内部は結合織により数個に分葉していた。腫瘍細胞は細胞質に乏しく好塩基性, 楕円形で大型の核をもつ比較的未分化なbasaloid cellであった。Primary epithelial germ様の蕾状の突起もみられたが完全な毛包の形成はなく自験例をtrichoblastic fibromaと診断した。各種抗サイトケラチン抗体を用いた免疫組織化学染色を行ったところ, その上皮性腫瘍細胞とbulge areaのケラチン染色パターンが一致した。これまで言われているようにtrichoblastic fibromaは毛芽細胞へ分化していることが示唆された。
  • 荒木 嘉浩, 影下 登志郎, 小野 友道
    1997 年 59 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    症例は27歳の日本人男性。10歳頃より躯幹や上肢を中心に色素斑が多発してきた。初診の2年前に右背部に黒色腫瘤が出現し漸次増大してきた。全身に239個の色素斑が観察され, そのうち36個は淡褐色調で不整形のものであった。また右背部に存在する黒色腫瘤は20×15×4mmの大きさであった。臨床および病理組織学的に不整形色素斑をatypical mole, 黒色腫瘤を表在性拡大型黒色腫(pT3aN0M0, level IV, tumor thickness 2.1mm, stage II)と診断した。患者の家族内にはatypical moleや悪性黒色腫を有するものはなく, 本例をnonfamilial atypical molesに悪性黒色腫を併発したものと考えた。
  • 川上 泰二, 山元 修, 安田 浩, 末永 義則, 旭 正一
    1997 年 59 巻 1 号 p. 45-47
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    熱傷受傷後, 長期経過した熱傷瘢痕より有棘細胞癌や基底細胞癌など種々の悪性腫瘍が発生することが知られているが, 今回我々は頭頂部と手背部に発生した熱傷瘢痕癌の2例を経験したので報告した。症例1は70歳の女性で2歳の頃いろりの火で頭部に熱傷を受傷し, 5∼6年前に頭頂部の瘢痕部に結節が認められ, 次第に難治性潰瘍になった。生検で有棘細胞癌と診断された。頭蓋骨の一部は腫瘍の浸潤により破壊されていたが脳実質への浸潤は認められなかった。症例2は79歳の男性で3歳時左手背, 左膝部に熱湯により受傷, 2∼3年前に左手背の熱傷瘢痕部に隆起性局面が出現した。生検で有棘細胞癌と診断された。以上2例の報告とあわせて昭和54年7月産業医科大学皮膚科開設以来平成7年6月までの16年間に, 当科で熱傷瘢痕癌と診断された13例を統計学的に検討した。男女比はほぼ1:1で, また発症部位はほぼ全例が露出部であった。また病理組織型はすべて有棘細胞癌で大半が高分化型であった。
  • 森脇 由紀, 武藤 正彦, 清水 隆弘, 安井 宏夫, 古元 礼子, 麻上 千鳥, 田尻 雅夫
    1997 年 59 巻 1 号 p. 48-51
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    73歳の女性。肺結核罹患2年後, 外因性の自家または他家接種感染した尋常性狼瘡(潰瘍型)の1例を報告した。会陰部に生じた単発性潰瘍は病理組織学的に乾酪壊死を伴う類上皮細胞肉芽腫であった。チールニルセン染色は陽性。初診時およびそれ以前の胸部X線像には全肺野, 特に下肺野に網状陰影から顆粒状陰影が認められたが肺結核病変の確認はできなかった。その他の臓器では結核病変は認められなかった。INAH, RFPの抗結核治療開始後2ヵ月半で会陰部潰瘍の消失および発熱症状, 会陰部疼痛は消退した。
  • 山田 夏恵, 竹川 恵, 杉田 泰之, 佐々木 哲雄, 中嶋 弘
    1997 年 59 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    多彩な臨床像を呈しながら病理組織学的にはいずれも壊死を伴う肉芽腫と血栓を伴う血管炎を主所見とする結核疹の1例を報告した。症例は67歳の男性。59歳時から両下肢に硬結を伴う紅斑が出現, 一部には膿疱も出現した。64歳時, 亀頭部にも同様の皮疹が出現し一部は潰瘍化した。全身症状は認められなかった。病理組織学的には亀頭, 下腿, 大腿のいずれの皮疹においても壊死を伴う肉芽腫と血栓を伴う血管炎が認められたが, 結核結節, 乾酪壊死, Langhans型巨細胞などは認められなかった。ツ反陽性。陰茎部病巣からの抗酸菌培養陰性。大腿部および下腿部病巣からのPCR法による結核菌DNA陰性。以上より結核あるいは結核疹としての確証は得られなかったが結核疹を疑い抗結核療法を6ヵ月間行った。その結果, 皮疹は急速に消退傾向を示し4週後には略治状態となり, 中止後1年6ヵ月の現在再発はない。
  • 石濱 幸代, 中川 俊文, 中嶋 邦之, 高岩 堯
    1997 年 59 巻 1 号 p. 57-59
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    55歳の女性に生じた白癬菌性肉芽腫を報告した。1991年8月, 肝移植をうけ, その後FK506とプレドニゾロン(プレドニン®)を内服中である。1993年頃に顔面に浸潤を伴う紅斑と結節が出現し徐々に拡大した。病理組織学的には好中球性膿瘍と肉芽腫反応がみられPAS染色で真菌要素が認められた。培養では指爪, 左頬部の組織片からT. rubrumが同定された。本症例では健常部皮膚のランゲルハンス細胞が著明に減少していた。これが白癬菌性肉芽腫の発症の一因であると推測された。
  • 日比 泰淳, 小野 博紀, 荻山 幸子, 渡辺 大輔
    1997 年 59 巻 1 号 p. 60-63
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    30歳の女性の下肢に生じた悪性腫瘍切除後の骨露出部の被覆にひらめ筋を使用した1例を報告した。腫瘍切除後, 骨露出を呈した場合の再建方法は種々あるが近年, 筋膜皮弁, 血管柄付筋膜皮弁またマイクロサージャリーを使用した遊離組織移植が多く用いられている。しかしながら手術手技が難しい, 手術時間が長い, 皮膚壊死の危険性があるなどの問題が挙げられる。我々はこれらの点を考慮し, 古くより使われているひらめ筋弁を用い良好な結果を得た。
研究
  • 竹内 吉男, 大橋 則夫, 盛田 千登世, 露木 重明, 石川 文雄
    1997 年 59 巻 1 号 p. 64-70
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎(以下AD)患者では1)血清IgE値, Df-RAST score, 皮疹の重症度の間に互いに正の相関がみられた。2)Df特異的IgG1抗体価とDf-RAST scoreの間に正の相関がみられた。3)Df特異的IgG1·3·4抗体価と皮疹の重症度の間に正の相関がみられた。4)Df特異的IgG2抗体価はDf-RAST score, 皮疹の重症度いずれの間とも相関はみられなかった。以上より血清総IgE抗体, Df特異的IgE抗体と共にDf特異的IgG1·3·4抗体はそれぞれがADの皮疹の重症度と関連していると推測された。
  • 松本 忠彦, 小島 勇己, 大石 雅彦, 吉田 博史, 田口 茂
    1997 年 59 巻 1 号 p. 71-78
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    そう痒を有する皮膚疾患において微量元素を始めとする生体内金属がどのような変動をしているのか検索すべく「湿疹·皮膚炎群」, 「蕁麻疹群」および「皮膚そう痒症群」患者の血中および尿中の金属濃度を測定し, 疾患群やそう痒との相関性を検討した。また多面的な検討を行うべく, 治療前の一時点における生体内金属濃度および薬剤治療による生体内金属濃度の経時的変化を検討した。その結果, いくつかの生体内金属の変動を捉えることができた。また, その変動は各疾患群において著しく異なり, 疾患群の特徴づけとなる可能性を明らかにした。特に「皮膚そう痒症群」における血清中Cu上昇ならびにCu/Zn比の上昇はそう痒との関連で注目されそう痒のメカニズムへの関与が示唆された。
  • 王 黎曼, 峰下 哲, 王 建中, 山本 貴嗣, 宮下 英夫
    1997 年 59 巻 1 号 p. 79-82
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    ベーチェット病の成因に関してはまだ不明の点が多い。今回炎症に関するインターロイキン-8(IL-8)および活性酸素に関するスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)との関係について検討した。43例のベーチェット病患者および46名の健常人について血清中のIL-8およびSODを測定した。血清中のIL-8値に関してはベーチェット病患者では14.6±3pg/mlで, 健常人では10.8±3pg/mlであった。血清中のSOD値に関してはベーチェット病患者では13.1±3%で, 健常人では6.7±3%であった。これらはいずれも有意差があり, この結果はIL-8およびSODはベーチェット病の病態の形成および症状の再燃になんらかの影響を有することを示唆している。
  • 足立 邦明, 小野寺 孝夫, 西澤 寛昭, 芹澤 哲志, 横山 大三郎
    1997 年 59 巻 1 号 p. 83-86
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    男性型脱毛の定量的評価法として頭皮の拡大写真を用い成長期毛髪数を測定する方法を考案した。各被験者の頭皮に正確に特定された評価部位の硬毛数と軟毛数を精度良く測定することができる。育毛有効薬剤であるglyceryl mono-pentadecanoate(PDG)を用いて, この方法の有用性を検討した。男性型脱毛の20名の被験者にPDG製剤を6ヵ月間塗布した。その結果, 試験期間中に6.8%(p<0.05)の成長期毛髪数の増加が認められた。男性型脱毛に対する薬剤の臨床評価に際して, 本方法は精度が高く適切な方法であることが確かめられた。
講座
統計
  • 横田 田鶴子, 安居 千賀子, 土屋 喜久夫, 嶋崎 匡
    1997 年 59 巻 1 号 p. 94-97
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    平成2年から平成6年までの市立札幌病院皮膚科を受診した伝染性軟属腫患者について統計的観察を行い以下の結果を得た。1. 症例数は148例で外来患者総数の約0.6%であった。2. 初診月別頻度では1月と3月と7月に多く受診していた。3. 男女比は1:1.14で女性にやや多くみられた。4. 年齢別では4歳児と5歳児にピークがみられた。5. アトピー性皮膚炎が29例(20%)に, アトピー皮膚が38例(25%)にみられ両者併せて全体の約45%を占めた。6. 発生部位では体幹が73例(52%)と最も多かった。あわせて臨床的, 病理組織学的に興味ある症例を報告した。
  • —第5報 5年間(1988年∼1993年)の予後などに関する集計—
    野上 玲子, 前川 嘉洋
    1997 年 59 巻 1 号 p. 98-102
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    熊本県(推定人口約180万人)における全身性強皮症の患者数, 予後などを知る目的で, 医療機関調査と特定疾患医療受給者証交付申請用紙を検討することによって, 第1回(1988年7月∼1989年6月), 第2回(1989年7月∼1991年6月), 第3回(1991年7月∼1993年6月)の疫学調査を通算5年間に亘って行った。罹患率は人口10万対平均1.08, 有病率は第1回調査時の人口10万対5.7から第3回調査に至り9.16へ増加した。5年間の把握患者総数169例, 内13例が調査期間内に死亡し, 5年生存率は93.5±2.3年であった。Kaplan-Meier法により生存率を比較したところ45歳以上での発症例は有意に予後不良で, 性別, Barnett病型別では有意差はなかった。経過の明らかな91例を軽快, 不変, 進行, 死亡と順序尺度により並べBarnett病型別に比較したところBarnett III型は他型との間に統計学的差を有し, さらに順位相関の検定によるとBarnett III型は進行, 死亡の経過をとる方への偏りがみられるのに対しBarnett I型は軽快する方への偏りを示した。
治療
  • 石井 則久, 中嶋 弘, 加藤 安彦, 吉田 貞夫
    1997 年 59 巻 1 号 p. 103-106
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    皮膚潰瘍治療薬として最近, 微小循環改善作用を有する薬剤ベラプロストナトリウム(ドルナー®)の治療効果が注目されている。そこで皮膚潰瘍を有する患者26例(男性13例, 女性13例, 平均年齢58歳)にベラプロストナリトウムを1日60∼120μg, 6週間以上連日投与し皮膚潰瘍に対する改善効果を検討した。その結果, 潰瘍所見の改善と縮小が認められ自覚症状の改善も観察された。これらの効果はベラプロストナトリウムの微小循環改善作用によるものと示唆された。
  • ラミシールクリーム研究班
    1997 年 59 巻 1 号 p. 107-114
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    アリルアミン系抗真菌剤塩酸テルビナフィン(ラミシール®クリーム)の1日1回塗布による表在性皮膚真菌症に対する有効性と安全性を埼玉県内皮膚科15施設で研究班を組織し共同臨床試験を実施した。総症例数は258例であり, このうち2例は解析対象から除外した。また21例は安全性評価のみとした。従って有効性, 有用性評価は235例, 安全性評価は256例を解析対象とした。皮膚所見と菌検査の結果を考慮した総合効果判定は有効以上でそれぞれ足白癬75.9%, 体部白癬95.8%, 股部白癬73.7%, 皮膚カンジダ症81.8%および癜風85.7%であった。副作用の発現率は256例中4例(1.6%)であった。有用性は有用以上がそれぞれ足白癬74.7%, 体部白癬95.8%, 股部白癬73.7%, 皮膚カンジダ症72.7%および癜風85.7%であった。塩酸テルビナフィン(ラミシール®クリーム)は表在性皮膚真菌症に対して有用な薬剤と考えられた。
  • 坪井 良治, 小川 秀興, 古賀 道之, 露木 重明, 西岡 清, 森嶋 隆文
    1997 年 59 巻 1 号 p. 115-122
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    小水疱型と角質増殖型の足白癬を対象に塩酸アモロルフィンクリーム(ペキロン®クリーム)単独塗布群〔P群〕と尿素軟膏併用群(重ね塗り)〔PU群〕の有効性と安全性を1日1回, 8週間外用することにより比較検討した。小水抱型の登録症例はP群53例, PU群48例, 総合効果判定症例はおのおの27例, 24例であった。角質増殖型の登録症例はP群67例, PU群67例, 総合効果判定症例はおのおの40例, 35例であった。小水疱型の最終菌陰性化率はP群85.2%(23/27), PU群75.0%(18/24), 角質増殖型ではP群70.0%(28/40), PU群57.1%(20/35)であった。総合効果判定は小水疱型の有効以上でP群85.2%(23/27), PU群75.0%(18/24), 角質増殖型はP群では70.0%(28/40), PU群57.1%(20/35)であった。副作用は小水疱型のPU群で2例, 角質増殖型のP群で2例に認められた。各病型のP群, PU群の間に統計学的有意差は認められなかったが, P群の方が有効率が高い傾向が認められた。以上の結果から塩酸アモロルフィンクリームは従来の外用抗真菌剤と異なり角質増殖型足白癬に対して尿素軟膏などの角質溶解剤を併用しない単純塗布でも高い治療効果が認められた。従って本クリームは小水疱型のみならず角質増殖型においても高い抗菌活性と角質浸透性, そして角質内での充分な抗菌活性の維持をin vivoにおいても発揮しているものと示唆された。
  • 角田 寿之, 早川 千絵, 西内 徹, 斎藤 次郎
    1997 年 59 巻 1 号 p. 123-125
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    尋常性疣贅44例に対し3%ビダラビン外用療法を行い, その効果を検討した。3ヵ月の観察期間の結果, 有効率63.6%, 治癒率54.5%であった。増悪, 再発した症例は認められなかった。また治療時に疼痛を伴わず治療後も瘢痕を残さないという利点もあり, ビダラビン外用療法は尋常性疣贅に対する有用な治療法のひとつと考えられた。ビダラビンのヒトパピローマウイルスに対する作用機序はDNA依存DNAポリメラーゼの選択的阻害によるものと推察された。
  • 前田 学, 可知 久代, 市橋 直樹, 高木 肇, 北島 康雄, 中島 智子
    1997 年 59 巻 1 号 p. 126-132
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    全身性強皮症(PSS)や他の膠原病患者には冷感やしびれ感など各種の不定愁訴を伴うが, その背景に振動覚や末梢神経学的異常が存在するか否かは不明のままである。岐阜大学医学部附属病院皮膚科で診断·治療中のPSS 53例(Barnett I型; 32, II型; 13, III型; 8例), 全身性エリテマトーデス(SLE)·皮膚筋炎13例, シェーグレン症候群を伴うPSS非典型例26例および健常人20例の計112例に対して, リポPGE1製剤(以下PGE1)が各種の自覚症状に有効か否かを検討する目的で投与前後の振動覚閾値を追跡し, かつ朝の手のこわばり, 疼痛(関節痛), しびれ感, 知覚鈍麻, 冷感, 熱感の計6項目の自覚症状を重症度別に点数化しおのおのの改善状態を検討した。PGE1投与群では点数減少(改善)例が66%, 不変例が21%, 増加(悪化)例が13%で一方, 非投与群では改善例が35%, 不変例が49%, 悪化例が16%であった。PGE1投与12ヵ月後の各自覚症状の平均点数の推移は非投与群に比べ有意差はなかったが, しびれ感と冷感は改善傾向が認められた。初回, 6ヵ月後, 12ヵ月後に各自覚症状の重症度の推移を検討したところ, PGE1非投与群ではどの自覚症状も重症度の変化は有意ではなかった。一方PGE1投与群のPSS(Barnett III型)患者では投与前は8例中4例がしびれ感なしで軽微と軽度が各2例存在したが, 投与1年後には全例しびれ感なしとなり症状の有無別で比較すると投与群と非投与群間に有意差がみられた。一方, 振動覚閾値はPGE1投与群と非投与群で初回, 6ヵ月後, 12ヵ月後の3回測定し比較·検討したが, どのタイプのPSSも有意差はなかった。以上より, しびれ感や冷感の重症例に対してPGE1を試みる価値はあると考えられた。
  • 三好 逸男, 神崎 保
    1997 年 59 巻 1 号 p. 133-140
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    普通肌, 脂性肌, 脂漏性皮膚炎, 尋常性ざ瘡の症例, 計60人を対象に優れた洗浄力と低刺激性を両立させる目的で開発されたピアベルピアソープ®を用いて原則として1日2回, 4週間洗顔させ, 使用者本人の評価と医師による客観的評価を行いその有用性を検討した。その結果, 治療補助効果(普通肌を除く), 使用者自身の評価および概括安全度を総合した有用性は, やや有用以上が普通肌で22例中17例(77.3%), 脂性肌で19例中11例(57.9%), 脂漏性皮膚炎で9例中6例(66.7%), 尋常性ざ瘡で10例中7例(70.0%)であった。概括安全度で安全性に問題なしは78.3%であった。使用後の刺激症状では乾燥感ありが12例, そう痒感を伴った発赤が1例あった。これらはワセリンを数回外用した1例を除き使用中止により無治療で速やかに症状の消失をみた。以上から本石鹸は普通肌, 脂性肌, 脂漏性皮膚炎, 尋常性ざ瘡のスキンケアに適するとともに, 特に脂漏性皮膚炎, 尋常性ざ瘡については高い治療補助効果を持ち非常に有用と考えた。
  • 敷地 孝法, 野本 正志, 大浦 一, 桑名 隆一郎, 中瀬 美穂
    1997 年 59 巻 1 号 p. 141-146
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    アクアチム®クリーム(ナジフロキサシン; 大塚製薬)はP. acnesに対し強力な抗菌作用を持ち耐性菌も出現しにくい製剤とされている。今回, 我々は尋常性ざ瘡の患者23例を対象にミノマイシン®とアクアチム®クリームを併用し, 治療対象部位の閉鎖性面皰, 開放性面皰, 丘疹, 膿疱に対する有用性について検討した。その結果, 本疾患に対するアクアチム®クリームとミノマイシン®併用療法とアクアチム®クリームとミノマイシン®短期併用療法は共に8割以上の全般改善が認められた。特にアクアチム®クリームとミノマイシン®短期併用療法はミノマイシン®を1週後に投与中止しているにも関わらず治療効果が減弱していなかった。すなわち尋常性ざ瘡の治療は内服剤が主と考えられているが, 経過観察を十分行えば外用剤での病状維持または治癒治療が可能とも考えられた。以上より尋常性ざ瘡に対しアクアチム®クリームは有効であり, 内服剤の減量が必要な場合にはアクアチム®クリームとミノマイシン®短期併用療法は試みるべき治療方法と考えられた。
  • 宋 寅傑
    1997 年 59 巻 1 号 p. 147-151
    発行日: 1997/02/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    昭和大学医学部附属病院皮膚科を受診した湿疹·皮膚炎患者16例, 蕁麻疹患者14例を対象としてアステミゾール(ヒスマナール®錠)投与の有効性, 安全性を検討した。臨床症状の推移を観察し得たのは湿疹·皮膚炎12例, 蕁麻疹8例であった。全般改善度は「著明改善」および「改善」の合計が湿疹·皮膚炎において66.6%, 蕁麻疹においては50.0%であった。症状別重症度推移では湿疹·皮膚炎におけるそう痒に関して投与前「中等度」91.7%, 「軽度」8.3%であったものが, 投与終了時には「中等度」8.3%, 「軽度」33.3%, 「症状なし」58.3%となった。皮膚症状に関しては投与前「中等度」91.3%, 「軽度」8.3%であったものが, 投与終了時には「中等度」8.3%, 「軽度」50.0%, 「症状なし」41.7%となった。蕁麻疹においてはそう痒に関して投与前「中等度」100%であったものが, 投与終了時には「高度」12.5%, 「中等度」50.0%, 「症状なし」37.5%となった。皮膚症状に関しては投与前「中等度」100%であったものが, 投与終了時には「高度」12.5%, 「中等度」25.0%, 「軽度」25.0%, 「症状なし」37.5%となった。副作用は30例中2例(6.7%)に軽度の眠気が認められたが従来の抗ヒスタミン剤の発現頻度に比し低率であった。以上のことから本剤はそう痒性皮膚疾患に対する有用な薬剤のひとつであると考えられた。
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