西日本皮膚科
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60 巻, 5 号
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図説
症例
  • 三好 経子, 高須 博, 宮田 聡子, 矢口 厚, 太田 幸則, 勝岡 憲生
    1998 年 60 巻 5 号 p. 603-607
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2010/10/15
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    46歳, 男性。骨髄線維症で北里大学医学部附属病院血液内科入院中に, 下腿に有痛性の隆起性紅斑が生じ同院皮膚科受診となった。初診時, 左下腿外側上方に拇指頭大で紅色の浸潤を有する結節性の紅斑が認められた。右下腿伸側から内側にかけては小児手拳大, 暗紅色の消退傾向にある浸潤性紅斑が認められた。その後も同様の紅斑が下腿や前腕などに出没した。無治療で経過観察していたところ, 初診から約1ヵ月半後に右下腿伸側に胡桃大, 暗紫紅色で軟らかな出血性の紅斑が再発し, その組織像では, 真皮中下層から脂肪織にかけて, 瀰漫性および巣状を呈する多数の好中球と出血が認められた。生検部位は直ちに難治性の潰瘍となったが, ステロイド剤の内服と局所処置の徹底により上皮化した。紅斑はその後も増悪·寛解を繰り返し, 皮膚病変と骨髄線維症の病勢とに相関があり, 自験例の紅斑は, 骨髄線維症に関連して生じたものと考えた。ステロイド治療の継続により皮膚病変はしばらく寛解期が継続していたが, 骨髄線維症の進行と肺炎の合併により死亡した。
  • 今井 健, 古谷野 妙子, 前田 益孝
    1998 年 60 巻 5 号 p. 608-612
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル 認証あり
    64歳の女性。紫斑出現の約半年前から喘息様症状が先行し, 1994年7月19日から四肢の知覚障害としびれ感が出現した。翌日から下腿に紫斑が多数出現し, 取手協同病院皮膚科を受診した。初診時に著明な好酸球増多症が認められた。胸部X線で右肺野への結節状の浸潤影がみられ, 検尿で著明な血尿および蛋白尿が認められたため腎生検を施行した。皮膚および腎の病理組織像で, 共に壊死性血管炎の像が認められ, 腎では半月体形成像がみられたが肉芽腫性病変はなく, 好酸球の浸潤は腎では著明であったが皮膚ではごく軽度であった。ステロイドパルス療法が奏効したが, 漸減中に胃潰瘍が発生した。自験例のように高度な腎障害を含む多臓器障害をきたしたChurg-Strauss症候群は稀と考え報告する。
  • 並木 剛, 小森 一哉, 松永 剛
    1998 年 60 巻 5 号 p. 613-615
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2010/10/15
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    7歳の女児。土浦協同病院皮膚科初診の1週間前から38℃台までの発熱を生じ躯幹四肢のそう痒を伴う紅斑, 口唇の発赤腫脹, 両手指足趾の発赤腫脹を生じた。病理組織学的には表皮内に膿疱があり, 多数の多核白血球を入れるいわゆる海綿状膿疱の像が認められた。心電図, 心エコー上はとくに異常なく, 冠状動脈病変の合併は否定的であった。γ-グロブリン, アスピリンの投与で発熱, 皮疹ともに約10日間で消退した。1ヵ月後には両手指の落屑を残すのみとなった。川崎病の予後を決める上で冠状動脈病変の有無は重要であり, その予測のためのスコア表が作成されているが, 小膿疱合併例と非合併例のスコアを比較した場合, 合併例は非合併例に比べスコアが低く軽症例が多い傾向にあるという結果が得られた。すなわち川崎病の小膿疱合併例では冠状動脈病変が合併する確率が低いと考えられた。
  • —歯科金属換装による寛解例—
    栗原 伸之, 原 弘之, 本多 章乃, 山口 全一, 森嶋 隆文
    1998 年 60 巻 5 号 p. 616-619
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル 認証あり
    48歳の女性。初診2ヵ月前から掌蹠にそう痒を伴う紅斑および黄褐色角化局面が出現した。足縁では扁平隆起し紅褐色調を呈した。また, 頬粘膜には白色粘膜疹が存在した。臨床および病理組織学的所見から扁平苔癬と診断した。原因として歯科金属アレルギーが考えられ歯科金属貼付試験, 口腔内電流測定をおこなった。その結果をもとに金属冠の換装をおこなったところ口腔内電流値の減少と臨床症状の改善が認められた。歯科金属アレルギーを想定した扁平苔癬例では, 金属貼付試験のほか口腔内電流の測定を積極的におこなうべきである。
  • 湊原 一哉, 丸山 隆児, 松永 剛
    1998 年 60 巻 5 号 p. 620-623
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル 認証あり
    症例1は54歳の女性。初診の8年前に糖尿病を指摘された。初診時に顔を除くほぼ全身に米粒大から大豆大の紅色の丘疹が播種状に多発し, 中央は潰瘍化し痂皮が固着していた。症例2は60歳の女性。初診の20年前に糖尿病を指摘され, 糖尿病性腎症に対し2年前から血液透析を継続中であった。顔を除くほぼ全身に症例1と同様の皮疹を認めた。症例1, 2ともに病理組織学的には中央部の表皮は欠損し, その部分に変成した角質および膠原線維束を入れ, その底部では膠原線維束の経皮排出像がみられた。Acquired reactive perforating collagenosisと診断し, いずれの症例も外用PUVA療法を施行したところ7∼8週目には自覚症状および皮疹は著明に改善した。その機序としてPUVAの止痒作用により掻破による真皮膠原線維の破壊が抑制されたことが考えられた。
  • 阿南 隆, 波多野 豊, 高安 進, 山口 都美子, 加藤 征治
    1998 年 60 巻 5 号 p. 624-629
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル 認証あり
    80歳の女性。5年前から両下肢に腫脹が認められていた。3ヵ月前から左膝蓋部に腫瘤が出現し, 以後膝窩部へも拡大した。生検で血管肉腫と診断された。rIL-2静注, 局注, dacarbazinとpirarubicinの化学療法はいずれも無効であった。電子線照射は局所病変には有効であったが, 2ヵ月半後全身の浮腫とDICのため死亡した。病理解剖で肝, 脾, 腰椎, ならびに左外腸骨, 大腿動脈, 傍大動脈および気管周囲リンパ節に転移が認められた。剖検により得られた患肢の横断面とplain CT所見を比較検討したところ真皮, 筋膜の連続性病変はCTでよく描出されていたが, 皮下の結節性病変は一部しか認められず造影CTが必要と考えられた。また正常リンパ管を染色する5'-nucleotidase反応は腫瘍周辺のリンパ管では陰性であった。
  • —本邦における小児MFH22例のまとめ—
    半仁田 優子, 高宮城 敦, 萩原 啓介, 長嶺 安司, 上原 啓志, 野中 薫雄
    1998 年 60 巻 5 号 p. 630-633
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル 認証あり
    7歳の女児の下腿に生じたmalignant fibrous histiocytoma(以下MFH)の1例を報告した。初診時, 左下腿に11×9×3mmの紅褐色結節が認められた。病理組織学的に腫瘍細胞の脈管への浸潤が疑われた。腫瘍の辺縁から十分に離して切除し, 同時に左鼠径部リンパ節廓清を施行した。本邦における過去17年間の小児MFH報告例は22例で, そのうち11例が10歳以上15歳未満であり躯幹発症が6例(臀部2例), 四肢発症(下腿)は1例のみであった。
  • 安川 香菜, 小野塚 貴, 加藤 直子, 田中 克彦
    1998 年 60 巻 5 号 p. 634-638
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル 認証あり
    43歳の女性。5年前から拇指頭大までの固い結節が臀部, 胃部, 左肘窩, 前胸部に生じた。臀部の結節は一部に石灰化を伴う境界明瞭な多嚢腫状の腫瘍で, 腫瘍細胞は好酸性の胞体を有し, 核が消失するshadow cellであった。以上から多発性毛母腫と診断した。また特発性心室頻拍, 耳下腺多形性腺腫の既往があり跛行, 発語不明瞭, 独特のオノ様顔貌が認められ, 筋緊張性ジストロフィー(MyD)の合併を疑い精査し確定診断に至った。MyDに合併する毛母腫は本症例と同様に, 多発し, かつ頭部に好発する傾向があった。両疾患が合併する理由として共通の遺伝的背景が示唆されており, 毛母腫はMyDの皮膚症状のひとつと銘記したい。また最近ではMyDと耳下腺多形性腺腫の関連も示唆されている。
  • 服部 瑛, 田村 多繪子, 堤箸 延幸
    1998 年 60 巻 5 号 p. 639-642
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル 認証あり
    1歳9ヵ月の女児にみられた若年性黒色腫を報告した。この腫瘍は右頬骨部にあり, 5×5mm, 半球状隆起, 淡紅色であった。病理組織学的に典型的で, 腫瘍細胞は大部分が大型の紡錘形細胞からなっていた。腫瘍細胞は, 免疫組織化学的にS-100蛋白陽性, HMB 45は陰性であった。初診(1996年4月)の1ヵ月後, 腫瘍をくりぬき法で切除した。2週間で再発し, 同年6月再切除した。同年9月再び再発し, 10月に3度目の手術(広汎に切除)を施行した。最後の手術の約1年後の現在(1997年10月), 再発は認められていない。自験例において腫瘍, とくに再発した腫瘍の増殖速度の速いことが特徴的であった。また, 急速に増大する本症では, 広範囲の切除を要する症例もあると考えられた。
  • —ホルモン受容体測定と細胞増殖能の検討を加えて—
    岡田 知善, 原 弘之, 涌井 史典, 下島 博之, 本庄 三知夫, 落合 豊子, 森嶋 隆文
    1998 年 60 巻 5 号 p. 643-647
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル 認証あり
    乳癌切除20年後に頭部に径35mmの紅色腫瘤, 手術創痕近くに径17mmの紅色腫瘤が生じた乳癌の皮膚転移を示す79歳の女性例を報告した。病理組織学的に頭部の結節は未分化型腺癌で, 胸部の結節は高分化型腺癌であった。各種細胞増殖能の検討では, いずれの病変も高い細胞増殖能を有していた。転移巣は悪性度が高いと考えたが, 組織中のエストロゲンレセプター(ER)は高値を示したことから, エストロゲン刺激により20年もの長い間, 癌細胞の増大が停止あるいは緩徐であったものと推測した。
  • 松村 文子, 古賀 哲也, 利谷 昭治
    1998 年 60 巻 5 号 p. 648-652
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル 認証あり
    43歳の男性。1991年10月に左耳前部に自覚症状のない小指頭大の皮下腫瘤が認められ, この時点での病理組織像では好酸球浸潤を伴うリンパ濾胞様構造は明らかではなかった。摘出後一部残存していたが放置した。1994年から全身に痒性皮疹が出現し, 近医皮膚科でアトピー性皮膚炎と診断され, ステロイド外用剤および内服剤で治療されたが難治であった。1995年5月から左耳前部の皮下腫瘤残存部位が徐々に増大し, 半年後その下方にも皮下腫瘤が出現したため1997年6月再摘出術を施行し, 病理組織学的に好酸球の浸潤を伴う濾胞形成が明らかで, 末梢血好酸球増多, 血清IgE高値から木村病と診断した。術前, 全身にみられたアトピー性皮膚炎様皮疹術後には徐々に改善し, 末梢血好酸球や血清IgEも術後徐々に低下した。本症例にみられたアトピー性皮膚炎様皮疹は木村病に伴うものと考えた。
  • Vibrio vulnificus, Aeromonas sobria, Aeromonas hydrophila感染の各1例—
    立山 直, 宮国 均, 津守 伸一郎, 江良 幸三, 緒方 克己
    1998 年 60 巻 5 号 p. 653-659
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル 認証あり
    肝硬変に重症軟部組織感染症と敗血症を併発して死亡した3症例を報告した。症例1(65歳の男性)は, 腹水治療のため入院中であり, 刺身を食べた翌朝になって振戦を伴った高熱で発症し, 左手背に出血壊死性病変が生じ, Vibrio vulnificusが動脈血培養から同定された。デブリードマンを施行したが死亡した。症例2(52歳の男性)は, 肝硬変は放置していたが, 刺身を食べた翌夕に高熱と右下肢の激痛のある出血性腫脹と腎不全を併発し緊急入院となった。血疱の塗擦グラム染色でグラム陰性桿菌(後日Aeromonas sobriaと同定)が多数認められ, 直ちに右下肢切断術をおこなったが, 1日後に死亡した。症例3(58歳の男性)は, 通院中であり, 主治医は魚介類の生食は避けるように指導していたが, 高熱と右腕の深部静脈血栓症が疑われ緊急入院となった。病変は急速に進行し24時間以内に死亡した。その後Aeromonas hydrophilaが同定された。V. vulnificus感染症とAeromonas感染症を対比して考察した。
  • 栗崎 道紀, 津崎 祥一郎, 崎山 仁, 小野 友道
    1998 年 60 巻 5 号 p. 660-663
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル 認証あり
    72歳女性の右臀部から外陰部(S2-4領域)の帯状疱疹に併発した神経因性膀胱を報告した。患者は排尿障害が高度で, 排尿筋無反射で低コンプライアンスの神経因性膀胱と診断された。Acyclovir 7日間の点滴で皮疹は第8病日には痂皮化し, 神経因性膀胱も7週後にほぼ改善した。
  • 山田 七子, 葉狩 良孝, 井上 忠典, 小出 隆, 三原 基之, 清水 康之
    1998 年 60 巻 5 号 p. 664-666
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル 認証あり
    52歳の女性。死んだ熱帯魚を処分し水槽内を清掃した1ヵ月後に右第1指の爪周囲に結節が生じ, その後右手関節部にも結節が出現, さらに前腕屈側に皮下結節を生じた。スポロトリキン反応は陰性で, ツベルクリン反応が強陽性であった。病理組織像は乾酪壊死を伴う類上皮細胞性肉芽腫であった。生検組織の培養では抗酸菌が分離され, DNA-DNAハイブリダイゼイション法でMycobacterium marinumと同定された。塩酸ミノサイクリンの内服3ヵ月で右第1指と手関節部の結節は平坦となり縮小したが, めまいと顔面浮腫が生じたためレボフロキサシンに変更し, さらに2ヵ月間内服した。その後, 残存した右前腕の皮下結節を切除し略治状態となった。
  • 相浦 佐和子, 萱場 光治, 三砂 範幸, 成澤 寛
    1998 年 60 巻 5 号 p. 667-670
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル 認証あり
    症例は60歳の女性。てんかん, 神経症のため精神科で複数の内服薬で治療中であったがtoxic epidermal necrolysis(TEN)型薬疹を生じたため佐賀医科大学附属病院皮膚科に入院した。ほぼ全身の紅斑, 糜爛が認められたが, ステロイド全身投与を一切おこなうことなく, 輸液のみで全身管理をおこない, 広範囲熱傷に準じた局所療法に専念した。経過中, 重篤な敗血症および局所感染をおこすことなく, 完全に上皮化し軽快退院した。退院後施行したリンパ球幼若化試験とパッチテストの両方に陽性を示したカルバマゼピン(テグレトール®)を今回の原因薬剤と判定した。TEN型薬疹におけるステロイドの全身投与に関しては, 現在議論の別れるところであり, これに関し最近の欧米での流れをふまえ, 若干の考察を加え報告した。
  • 松島 弘典, 大類 聡明, 今倉 樹里子, 松浦 千華, 角田 寿之, 角田 真理
    1998 年 60 巻 5 号 p. 671-673
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル 認証あり
    23歳の女性。初診の約2週間前から感冒様症状のため市販の総合感冒薬2種類を, 10日前から近医内科から処方されたセファクロル, PA錠を, また5日前から塩酸クロフェダノールを処方され内服していた。その後, 熱発と全身のそう痒を伴う紅斑および丘疹を生じ国保旭中央病院皮膚科に入院となった。プレドニゾロンの点滴静注により皮疹は徐々に消退したため, 約10日後に中止し皮疹も略治した。原因薬剤の検討として内服していたすべての薬剤の内服誘発テストを施行したところ, 1回常用量内服でセファクロルおよびPA錠によって紅斑を生じた。PA錠は4種類の薬剤による配合感冒薬であるため成分別内服誘発テストを施行した結果, サリチルアミドでのみ紅斑を生じた。以上からセファクロルおよびPA錠中のサリチルアミドによる多剤感作薬疹(播種状紅斑丘疹型)と診断した。
講座
統計
  • 藤岡 彰, 高須 博, 武村 俊之, 浅井 俊弥, 亀山 孝一郎, 米元 康藏, 西山 茂夫, 勝岡 憲生
    1998 年 60 巻 5 号 p. 681-684
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル 認証あり
    北里大学医学部附属病院皮膚科における過去25年間の転移性皮膚癌48症例の検討をおこなった。全例とも病理組織学的に確認され, 原発巣も明らかであるが, 間葉系腫瘍および皮膚癌からの皮膚転移は除いた。転移性皮膚癌の原発巣は肺癌, 乳癌, 胃癌の順で全体の70%を占めた。しかし, 全科の悪性腫瘍の発生頻度は1位が胃癌, 2位が結腸, 直腸, 肛門癌, 3位が気管, 気管支, 肺癌の順であり, 原発巣の頻度と皮膚転移とは必ずしも相関しなかった。皮膚への転移しやすさを求めると, 乳癌, 肺癌, 食道癌, 膵臓癌, 卵巣癌, 胃癌の順であった。なお, 頻度の高い転移性皮膚癌が発見された年齢は食道癌を除き50歳台と比較的若く, 皮膚転移から死亡にいたる期間は乳癌の25.60ヵ月を除くと3から5ヵ月で非常に短かった。転移などの悪性度を示すといわれるepidermal growth factor receptor(EGFR)が乳癌では皮膚転移巣, 原発巣ともに全例発現していた。以上から皮膚転移を起こしやすい癌と起こしにくい癌があるが, 胃癌のように胃集団検診や診断技術の向上が著しいと皮膚転移を起こす進行癌が減り, 結果として皮膚転移が減少していた。乳癌におけるEGFRの発現は皮膚転移を起こしやすい良いマーカーと思われるが, 転移性皮膚癌が先にみつかったあとで原発巣が発見されることは稀で, 治療に貢献することは皆無に等しい。他科との連携を良くして原発巣, 皮膚転移巣を総合的に解析していくことが今後の課題と思われた。
治療
  • FK 506軟膏研究会
    1998 年 60 巻 5 号 p. 685-698
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎に対する新規免疫抑制剤FK 506(タクロリムス)軟膏の濃度設定を目的として, 顔面·頚部の急性型病変および躯幹·四肢の慢性型病変を対象にFK 506軟膏のそれぞれ3濃度(急性型: 0.03%, 0.1%, 0.3%を1週間塗布, 全152例, 慢性型: 0.1%, 0.3%, 0.5%を3週間塗布, 全147例)の有効性および安全性を二重盲検群間比較試験で検討した。急性型病変に対して最終全般改善度で各濃度とも90%以上の改善率(「中等度改善」以上)を示し, 3日後全般改善度では濃度依存的な傾向が認められた。各濃度とも塗布部位に一過性の刺激感を示した(約60%)が, 感染症, 臨床検査値異常変動は0.3%群においてのみ認められた(それぞれ3/51例および2/51例)。慢性型病変に対しては, 最終全般改善度で「中等度改善」以上が3濃度とも85%以上の高率であったが, いずれの観察時期においても用量依存性は認められなかった。各濃度とも塗布部位での刺激感が同程度(32.6∼54.2%)に認められたが, 感染症, 臨床検査値異常変動は0.5%群においてのみ認められた(いずれも1/48例)。以上よりFK 506軟膏の有効濃度は両病変とも大差なく, 有効性, 安全性より0.1%が妥当であることが示唆されたが, 慢性型病変に対して, さらに低濃度での検討が必要と結論された。
  • 竹内 吉男
    1998 年 60 巻 5 号 p. 699-701
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル 認証あり
    51例の血液透析患者の皮膚そう痒症を対象にサーノルローション®を1日数回外用してもらいアンケート調査をおこなった。その結果, 使用感については, 「良い」が32例(63%)であり, その内容としては, 「さっぱり」が29例(57%), 「すっきり」, 「すべすべ」が各12例(24%)で多かった。一方では「香料が強い」が12例(24%)あった。この点については本調査後香料のみを除いた製品として発売になっている。痒み止めとしての効果については, 「かなり減った」が13例(26%), 「少し減った」が19例(37%)で両者をあわせると63%であった。以上からサーノルローション®は透析患者の皮膚そう痒症に対するスキンケアのための治療補助製品として有用であると考えられた。
  • 渡辺 靖, 鏑木 公夫, 戸沢 孝之
    1998 年 60 巻 5 号 p. 702-706
    発行日: 1998/10/01
    公開日: 2010/10/15
    ジャーナル 認証あり
    乾燥性皮膚のスキンケアを目的とした薬用あれ肌ケアローション(XDV-1)は, 抗炎症効果を有するグリチルリチン酸ジカリウムに, 保湿成分として海藻ダービリア(Durvillea antarctica)のエキス末, トリメチルグリシンおよびグリセリンを配合した無香料, 無着色のローション剤である。今回, 乾燥性の皮膚症状を有する患者(乾皮症, アトピー性皮膚炎, 急性湿疹, 主婦湿疹)34名を対象として, その有効性を検討した。その結果, 皮膚乾燥, 落屑, そう痒, 紅斑, 丘疹, 苔癬化, 掻破痕の皮膚所見に改善がみられた。全般改善度は著明改善5例(14.7%), 改善18例(52.9%), やや改善8例(23.5%), 不変3例(8.8%)であり, 34例中改善以上23例(67.6%), やや改善以上31例(91.2%)の高い改善効果が示された。一方, 副作用や症状の悪化は認められなかった。アンケートにより使用感を調査した18例中, 総合評価がよい以上55.6%, ややよい以上83.4%であった。以上の結果からXDV-1は, 乾燥性皮膚のスキンケア剤として小児から高齢者まで適用できる有用性の高い製剤と考えられる。
世界の皮膚科学者
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