症例は30歳, 男性。上気道炎症状出現後に, 四肢, 体幹に紫斑が出現し, 関節症状も伴うようになったため佐賀医科大学附属病院皮膚科を受診。アナフィラクトイド紫斑病の診断で外来治療をおこなっていたが, 皮疹は自然消退傾向にあるものの尿蛋白定性で3(+)となったため入院。下肢, 臀部, 手背に触知可能な紫斑が認められ, 皮膚の生検所見では, leukocytoclastic vasculitisを認めた。血清総蛋白5.5g/dl, 尿蛋白5.0g/dayとネフローゼ状態を示したため腎生検をおこなったところ, その組織像はメサンギウム増殖性糸球体腎炎で, 直接蛍光抗体法ではメサンギウム領域へIgA, C
3の顆粒状沈着が認められた。以上より, アナフィラクトイド紫斑病, および紫斑病性腎症と診断した。当院皮膚科でこれまで経験したアナフィラクトイド紫斑病32例において, 尿所見と予後との関連を検討したところ, 試験紙法による尿検査で蛋白, または潜血が(±)∼1(+)の例では安静等で軽快したが, 蛋白3(+)および潜血1(+)以上を示した例では腎症に対しステロイド全身投与による治療が必要であった。試験紙法による尿検査の所見が, 予後の上でも指標の一助になると考えられた。
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