西日本皮膚科
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61 巻, 3 号
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図説
症例
  • —サイクロスポリン長期投与の効果と安全性についての検討—
    久保田 由美子, 今山 修平, 宮原 裕子, 棚橋 朋子, 上村 陽子, 古江 増隆
    1999 年 61 巻 3 号 p. 271-278
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    移植免疫抑制剤(cyclosporin A, CyA)による重症の成人型アトピー性皮膚炎(AD)の治療は1987年より施行され, 適応のある患者を選択し, 経過観察を厳密に行えば長期投与でも満足のいく効果を得られるとされる。我々は, 1992年よりステロイド内服を必要としていた重症AD患者30人(男性19人(19∼63歳), 女性11人(3∼58歳))の同意を得て, CyA内服療法を行ってきた。総投与期間は1∼42ヵ月(M)(平均12.4M: 6M以下13人, 7∼12M 6人, 13∼24M 9人, 25M以上2人)であった。治療成績は, 軽快後CyAを中止したまま既存の治療で良好な状態のものは14人(46.7%), 再燃時にのみ再投与するという間歇的投与を行ったものは7人(23.3%)で, そのうち4人は既存の治療で経過良好, 2人は再燃時に他施設での別の治療法を選択した。現在もCyAの継続治療中のものは5人(16.7%), CyA中止後ステロイド内服に戻ったものは3人(10%), 皮疹の増悪や血圧上昇のためにCyA内服を中断したものは2人(6.7%)であった。有効以上の効果のあったものは23人(76.6%)であった。全例において現在までCyAの長期内服によると思われる副作用は認めない。
  • 平松 正浩, 清野 みき, 長瀬 彰夫, 新井 達, 向井 秀樹, 田代 征夫
    1999 年 61 巻 3 号 p. 279-282
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    74歳, 男性。1994年9月, ボーエン病の既往あり。1996年10月胃癌が判明。12月より上肢, 大腿中心に10cm大までの類円形から楕円形, 環状から木目状で辺縁にわずかに浸潤を触れ表面に鱗屑を付着した紅斑を認めた。病理組織では真皮血管周囲にリンパ球の浸潤を認め, 蛍光抗体直接法で基底膜にIgG, C3の沈着を認めた。個疹は, 2∼3週間の経過で胃癌を切除することなしに消失。また心不全があるため全摘不可能であったが, 以後再発は全くみられていない。本邦における悪性腫瘍に伴う環状紅斑は17例みられ, そのうち皮疹が先行したのは10例みられた。治療との相関がみられた症例は9例のみであり, 従来ほとんどの症例で相関があると考えられていたが, 実際には必ずしも相関しない症例もみられ経過中皮疹を注意深く観察する必要がある。
  • 緒方 喜美子, 広瀬 康昭, 清家 正博, 安井 喜美, 三好 研, 刈谷 公美, 平田 靖彦, 池田 光徳, 山本 康生, 小玉 肇, 佐 ...
    1999 年 61 巻 3 号 p. 283-286
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    38歳, 男性。深部静脈血栓症による下腿潰瘍を呈した。抗カルジオリピンβ2グリコプロテインI抗体, ループスアンチコアグラントおよび抗核抗体陽性で, 原発性抗リン脂質抗体症候群と考えた。通常の治療では難治であった潰瘍は, ワーファリン®とブコローム内服により短期間で治癒した。ワーファリン®単独投与では効果が不十分な場合には, トロンボテストを指標にブコロームを併用することが重要である。潰瘍再発の4ヵ月前に小腸イレウスを発症し, Degos病類似の皮疹が出現したが, 腸穿孔はなく, 皮疹の病理組織像には特徴的な所見は認められなかったことから, 抗リン脂質抗体症候群に伴うDegos病様症候と考えた。
  • 前川 和代, 新垣 志乃, 浜田 祐子, 丸野 元美, 細川 篤, 野中 薫雄
    1999 年 61 巻 3 号 p. 287-290
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    37歳の男性。両手指·手掌, 両足趾および足底に限局する鱗屑, 膿疱, 痂皮を主訴として来院した。膿疱の細菌培養·真菌培養では有意な菌は検出されず, 病理組織学的には表皮内の好中球を主体とした海綿状膿疱を認めた。以上の結果より本症例を稽留性肢端皮膚炎と診断し, ステロイド外用およびPUVA療法を開始したが, 経過良好である。稽留性肢端皮膚炎は膿疱性乾癬の1亜型といわれている比較的稀な疾患であり, 本邦では我々の調べ得たかぎり本症例を含め36例の報告にとどまっている。治療法としてはステロイド以外にも, 外国例も含めエトレチナートやシクロスポリンの有効例の報告があるが, 近年活性化ビタミンD3外用剤であるcalcipotriolが有効との報告もあり, 今後の症例の蓄積が待たれるところである。本症例においては扁桃誘発テストが陽性との結果を得ており, 現行の治療に抵抗することがあれば扁桃摘出術も考慮にいれるべきであると思われる。
  • 山上 美江, 市川 薫, 向野 哲, 衛藤 光
    1999 年 61 巻 3 号 p. 291-293
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    2歳の女児の汎発性環状肉芽腫を報告した。皮疹は腹部, 腰部, 下肢に一部環状を呈する小豆大から大豆大までの結節が散在性に認められた。病理組織学的には膠原線維の変性とそれをとり囲む組織球の浸潤を認めた。生検後も小結節の新生が続いたためトラニラスト51mg/日の内服を開始した。約2ヵ月の経過で色素沈着を残して治癒した。環状肉芽腫の治療としてトラニラストの内服は有効であると考えた。
  • 大澤 徳哉, 石原 政彦, 安岐 敏行, 浦島 玲子, 三原 基之
    1999 年 61 巻 3 号 p. 294-297
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    58歳, 男性。大腸癌根治手術の術中, 左手背部よりマイトマイシンCの点滴静注が行われ, 術後, 同部位に腫脹を伴う有痛性紅斑が出現した。保存的治療に抵抗し, 広汎な皮膚壊死に陥ったため, デブリードマン後真皮欠損用グラフト(テルダーミス®)で被覆した。この後, 良好な肉芽形成は認められなかったものの, 深部及び辺縁組織への壊死の拡大傾向は抑制された。同時に指伸筋の腱の温存も可能であった。最終的には浅腸骨回旋動脈を栄養血管とする鼠径部皮弁を用いて再建を行い, 機能的に良好な結果を得た。
  • 進藤 真久, 石原 政彦, 三原 基之, 廣澤 壽一, 法正 恵子, 神戸 貴雄
    1999 年 61 巻 3 号 p. 298-300
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    症例1: 62歳男性。排気ガス自殺企図にて急性一酸化炭素中毒。3日後, 臀部に有痛性紅斑を認めた。症例2: 72歳女性。肝癌に対し, 経カテーテル的肝動脈塞栓術でスマンクス®, マイトマイシンC投与。20時間安静を保った後, 左臀部の有痛性紅斑に気づいた。2例とも, 紅斑部より皮膚生検を行い, 汗腺壊死像が認められた。症例1は, 昏睡後初期に臀裂部に水疱形成があったと考えた。また, 圧迫部位とはやや離れた臀部にも紅斑が見られた。病理組織学的に汗腺壊死が認められ, 典型的coma blisterと考えた。症例2は塞栓療法後絶対安静を保ち, その8時間後に仙骨部上部に紅斑が生じており, 病理組織学的に汗腺壊死を認めたが, いわゆる脊麻後紅斑に近い状態と思われた。
  • 末木 博彦, 三浦 健太郎, 所 眞弓, 永田 茂樹, 宋 寅傑, 飯島 正文
    1999 年 61 巻 3 号 p. 301-303
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    症例: 19歳女性。現病歴: 母親の曖昧な記憶では先天性か否か定かでないが, 本人の記憶では10歳頃より後頭部の脱毛斑を自覚していた。成長に応じてわずかに増大した。外傷の既往はない。看護学校入学を機に当科を受診した。現症: 後頭部に径8mmで境界明瞭な脱毛局面が存在。色調は淡い青灰色調を呈する部分と淡紅色を呈する部分が混在していた。軽度に隆起し浮腫性に触知した。臨床的にfocal dermal mucinosis, 血管腫を疑い全摘術を施行した。病理組織学的所見: 真皮乳頭下層∼網状層に浮腫と真皮メラノサイトの増生があり, 毛嚢を圧排し, 脂腺, 立毛筋が消失していた。エクリン汗器官は残存していた。臨床および病理組織学的所見から本症と診断した。本症例では真皮メラノサイトおよび間質が皮膚付属器を圧排性に増生し, 脱毛を生じたものと考えた。
  • 沈 國雄
    1999 年 61 巻 3 号 p. 304-309
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    22歳の女性。19歳時, 腺腫様甲状腺腫を全摘。20歳時, 顔面中央部, 耳介, 耳後部, 手背, 足背部に多数, 手掌, 手指に数個隆起性の結節, 舌背部に敷石状の結節が出現した。顔面の結節の病理組織学的所見はhyperkeratotic acanthoma, inverted follicular keratosis, 手にhyperkeratotic papilloma, Schwannomaなどが認められた。その他, アデノイド顔貌, 巨大頭蓋, 副耳, 高弓口蓋, 舌の肥大·亀裂がみられた。食道粘膜に本症に特徴的な表面光沢性白色調の顆粒状ポリポーシスを認めた。本疾患は諸臓器に三胚葉由来の過形成性または異常増殖を主体とした疾患である。本邦で報告された60症例を集計したところ, 本症に皮膚病変(顔面の丘疹98.3%, 口腔粘膜95%, 四肢の丘疹78.3%, 掌蹠の点状陥凹60%)と消化管ポリポーシス(90%)はほぼ必発であり, 甲状腺病変(68.3%)は高率に発症し, 乳癌(20%)の合併頻度が高く, 甲状腺癌, 大腸癌, 結腸癌, 生殖器癌とともに若年発症の傾向があることが見出された。
  • 岡澤 ひろみ, 長谷 哲男, 中嶋 弘, 堀内 義仁
    1999 年 61 巻 3 号 p. 310-313
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    放射線療法による完全寛解(CR)導入42ヵ月後に皮膚, 54ヵ月後に皮膚, リンパ節, 上咽頭, 肺, 肝に再発し, 死亡したprimary cutaneous CD 30-positive large T-cell lymphomaの1例を報告した。初発時の腫瘍細胞の表面形質はCD 43, CD 30陽性, 再発時はCD 2, CD 3, CD 4, CD 5, CD 30, HLA-DR陽性であったが, 再々発時はCD 3, CD 4, CD 5は陰性, CD 2, CD 30, HLA-DRが陽性であった。またEB陽性, p 80陰性であった。
  • 凌 太郎, 井上 卓也, 田中 達朗, 成澤 寛, 宮原 正晴, 佐野 雅之
    1999 年 61 巻 3 号 p. 314-318
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    72歳の男性。初診の4ヵ月前より歩行時の右大腿部疼痛を自覚し, その後発熱, 右下肢の発赤·腫脹が出現した。皮下の病理組織所見では真皮深層の血管周囲及び脂肪織に異型リンパ球の浸潤を認め, これらの細胞は免疫組織学的にT-cell marker(MT-1, UCHL-1)陽性を示し, T-cell receptor(TCR)Cβ1の遺伝子再構成を認めた。骨髄所見では細胞貪食性マクロファージを4.3%認めた。血液検査ではIL-6およびsoluble-IL 2 receptorが高値を示した。大腿部MRIでは皮下を中心に筋·骨組織に及ぶ広範な病変を認めた。以上よりhemophagocytic syndromeを伴ったsubcutaneous panniculitic T-cell lymphoma (lymphoma-associated hemophagocytic syndrome)と診断し化学療法を開始したが, 汎血球減少の進行および肝機能障害·DICを併発し, 初診約2ヵ月後に永眠した。
  • 小西 さわ子, 力久 航, 山元 修, 廣川 久忠, 旭 正一
    1999 年 61 巻 3 号 p. 319-322
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    IL-2動注療法によって寛解に至った80歳の女性のangiosarcomaの1例を報告した。1996年6月より前頭部右側に紅斑及び半米粒大の小結節が出現した。同部への打撲の既往があった。病理組織学的に楕円形及び紡錐形の腫瘍細胞から成る充実性胞巣と乳頭状増殖を伴う管腔様構造が認められ, 免疫組織化学的にCD 31陽性であったためangiosarcomaと診断した。当科第1回目入院時は, interleukin-2(IL-2)を1日量80万国内標準単位にて50日間持続動注し, その後60日間連日ワンショットで動注し, あわせて電子線6MeVを計5800cGy照射した。第2回目入院時は, 30日間のIL-2ワンショット動注単独療法にて治療し, その結果臨床的, 病理組織学的に改善がみられた。免疫組織化学的検索にてキラーT細胞と思われるCD 8陽性細胞とMAC 387陽性マクロファージの増加およびそれに伴う異型細胞の減少を認め, IL-2の効果によるものと思われた。その後再発抑制のため, 3回目の入院にて, 30日間IL-2のワンショット動注単独療法を行い, 初診より1年10ヵ月が経過した現在, 局所再発, 遠隔転移を認めていない。臨床的, 病理組織学的改善に伴いサーモグラフィー所見にも改善が認められた。
  • 竹尾 直子, 波多野 豊, 片桐 一元, 藤原 作平, 上尾 哲也, 石井 宏治, 坂田 利家, 岡本 壽男
    1999 年 61 巻 3 号 p. 323-327
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    症例は49歳男性。昭和60年頃より, 背部に無自覚性の暗赤色皮疹出現。その頃より総蛋白の上昇, 血尿を指摘されていた。初診時, 頚部両側, 腋窩, 腹部, 背部に無自覚性, 淡褐色から茶褐色の爪甲大までの局面を認め, 頚部と鼠径部に表在リンパ節を触知した。検査所見にて貧血, ポリクローナル高γグロブリン血症, CRP高値, ESR亢進, 血清IL-6上昇を認め, 多発性のリンパ節腫脹, 脾腫を認めた。リンパ節生検像にてリンパ濾胞間に形質細胞の増殖を認め, 皮膚生検像にて真皮内の形質細胞を中心とした結節状の細胞浸潤を認めた。以上の所見よりmulticentric Castleman’s diseaseと診断し, prednisolone 30 mgにて治療を開始した。皮疹は消退傾向を示し, リンパ節は縮小, 異常所見も改善した為, prednisoloneを漸減した。なお半定量的RT-PCR法による末梢血単核球のIL-6 mRNAの発現は対照に比し有意差はなく, 治療前後においても変化を認めなかった。
  • 下舞 浩二, 東 裕子, 山口 圭子, 神崎 保
    1999 年 61 巻 3 号 p. 328-330
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    29歳の男性。約3年の経過で徐々に増大した左第2指末端の結節と圧痛を主訴に来院した。X線検査の結果, 指末節骨と連続性のない, 骨と同等の透過性を持つ病変が認められ, この組織は外科的に摘出された。病理組織学的には皮下に発生した骨組織であることが確認され, 我々はosteoma cutisと診断した。病変部位に外傷, 炎症性の疾患, 皮内母斑などの既往がないこと, 患者やその家族にカルシウム及びリン酸代謝異常が見られないことなどから, 報告数の非常に少ない, primary osteoma cutisであると思われた。
  • 斎藤 研二, 長野 徹, 市橋 正光, 松村 武男, 荒木 国興
    1999 年 61 巻 3 号 p. 331-333
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    53歳, 女性。初診3週間前に左下腹部を蚊に刺された。同部に無症候性の皮下硬結を生じ切除目的にて当科初診。病理組織学的には表皮に著変なく真皮内に著明な好酸球とリンパ球の浸潤を認め細胞浸潤内に2ヵ所虫体の断面を認めた。虫体断面の所見ならびに患者血清を用いたELISA法により本症を皮膚イヌ糸状虫症と診断した。本邦では肺イヌ糸状虫症が一般的であり皮膚イヌ糸状虫症は自験例も含め12例の報告があるに過ぎない。蚊に刺された後, 無症候性の硬結が生じた場合本症も念頭に置く必要があると考え報告した。
  • 大野 友也, 小池 俊一, 柳原 健志, 出来尾 哲, 地土井 襄璽
    1999 年 61 巻 3 号 p. 334-337
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    19歳の男性。中学生の頃よりアトピー性皮膚炎があったが, 最近増悪し近医にてステロイド外用剤による治療を受けていた。初診の4∼5日前, 両下肢に紅斑性皮疹が生じ, 急速に拡大, 増悪し, 疼痛を訴えるようになった。初診時に鏡検にて皮疹部の鱗屑, 痂皮に白癬菌を証明した。培養所見よりその真菌はTrichophyton mentagrophytesと同定された。病理組織像は真皮全層にわたり好中球, リンパ球を主体とした炎症細胞の密な浸潤があり, 一部に肉芽腫性炎症の像がみられた。イトラコナゾール(100mg/day)内服にて約6週間後に治癒した。
  • 佐々木 哲雄, 竹下 芳裕, 早川 広樹, 中嶋 弘, 馬場 浩, 宇田川 俊一
    1999 年 61 巻 3 号 p. 338-341
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    下腿骨折後の装具下に生じた原発性膿皮症様アスペルギルス症の37歳女性例を報告した。下腿の装具の当たる部位に紅色丘疹·膿疱を伴う紅色局面が生じた。皮疹のKOH直接検鏡で特徴的な菌糸と分生子頭を認め, 培養にてAspergillus flavusA. nigerの重複感染と診断した。抗真菌剤外用で軽快した。予防的措置と本症を疑い検鏡することの必要性を述べた。
  • 中島 由起子, 長戸 紀, 高崎 由美, 西本 勝太郎
    1999 年 61 巻 3 号 p. 342-345
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    68歳の女性。Adult T-cell lymphoma (ATL) の診断にて1997年10月16日より化学療法および副腎皮質ステロイドを経口投与中, 翌17日頃より右肩の手掌大, 灰色の厚い鱗屑痂局面に気づく。10月20日当科初診時に, 鱗屑痂の真菌検鏡で菌糸および胞子型の菌要素の集塊を認めたが, 毛への寄生形態は不明。サブロー培地にてMicrosporum gypseumを分離した。抗真菌剤外用で1ヵ月後には軽快, 脱色素斑となった。臨床およびカセイカリ標本所見より生毛部黄癬に一致するものと考えた。我が国では生毛部黄癬は10例の報告があり, うち8例からM. gypseumが分離されている。ATLに基づく免疫不全が本症の特異な臨床像に関与したものと考えた。
  • 井上 佳代, 濱本 嘉昭, 倉田 佳子, 中村 知恵, 武藤 正彦
    1999 年 61 巻 3 号 p. 346-349
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    非サイアザイド系の降圧剤, メチクランによる薬疹の1例を報告した。症例は65歳の女性。同薬の内服開始約2年半後に顔面, 頚部および上肢にそう痒性の浮腫性紅斑が生じた。その3ヵ月後, 皮疹は白斑黒皮症様となった。メチクラン内服, 内服照射試験ともに陽性。メチクランによる薬疹と診断。初期では光化学反応を介さない機序が関与していることが考えられた。
講座
治療
  • —特に機械性蕁麻疹における有用性について—
    高森 健二, 吉池 高志, 相川 洋介, 三浦 優子, 角田 美英, 小川 秀興
    1999 年 61 巻 3 号 p. 355-362
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    慢性蕁麻疹患者50例を対象としてフマル酸エメダスチン(ダレン®)の2mg/日, 5週間投与(可能なものは9週間投与)による臨床効果を, 医師による客観的評価と患者アンケートによる自己申告法により検討した。慢性蕁麻疹の発症因子とその頻度は, 物理性(94.0%), 心因性(18.0%), コリン性(10.0%), アトピー性と思われるもの(8.0%), 食事性(6.0%), 薬剤性(4.0%), 接触性(0%)であり, 物理的原因による蕁麻疹が最も多かった。物理性蕁麻疹の発症因子は, 機械性(59.6%), 温熱(55.3%), 寒冷(8.5%), 日光(6.4%)の順であった。かかる背景を有する症例50例に対しての本剤投与による臨床効果であるが, 全般改善度は中等度改善以上が63.0%(29例/46例)であった。最も多かった物理性蕁麻疹の発症因子別全般改善度は, 機械性, 温熱がそれぞれ74.1%(20例/27例), 52.0%(13例/25例)であった。例数は少ないもののコリン性, 心因性, アトピー性はそれぞれ80.0%(4例/5例), 44.4%(4例/9例), 100%(3例/3例)であった。概括安全度は「安全性に問題なし」が96.0%(48例/50例)で, 2例に副作用(軽度の眠気と重度の眠気を呈したもの各1例)が認められた。以上の結果からダレン2mg/日(朝, 就寝前各1mg)投与は, 慢性蕁麻疹, 特に難治性とされる機械性蕁麻疹の治療に有用であることが示された。また, 今回用いた患者アンケート調査は発症因子や, 増悪因子を検索する上で非常に有用であった。
  • 加藤 則人, 野田 洋介, 安野 洋一, 加賀美 潔, 永田 誠, 前田 基彰, 池田 佳弘, 小西 啓介, 上田 英一郎, 山田 一雄, ...
    1999 年 61 巻 3 号 p. 363-368
    発行日: 1999/06/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    最近, 十分な治療効果とより高い安全性を両立させたシクロスポリンによる乾癬治療を目的とした低用量投与法の試みが, いくつかの施設から報告されている。今回, シクロスポリンの初期投与量を2mg/kg/日とする低用量寛解導入療法を行い, その有用性について検討した。中等症から重症の乾癬患者を対象に, 2mg/kg/日のシクロスポリンを投与, PASIスコア70%以上の改善率が得られた時点で寛解とみなし, その投与量を維持量として24週継続投与した。解析対象は15名で, 開始時平均23.9であったPASIスコアは, 終了時には平均5.0となった。PASIスコアの改善率でも, 8週後には平均改善率が70%の寛解ラインを越え, 観察終了時の平均改善率は86.3%と良好であった。シクロスポリンの最終平均投与量は, 2.1mg/kg/日であった。副作用は, 高血圧, コレステロール上昇などが31.8%の症例にみられたが, いずれも軽度で内服継続が可能であった。最終評価では, 「著明改善」が40%, 「改善」が46.7%となり, 86.7%の症例で「改善」以上の評価が得られた。有用度では「極めて有用」との評価が33.3%で, 8割の症例で「有用」以上の評価であった。初期投与量2mg/kg/日のシクロスポリン内服は, 中等症から重症の乾癬に対して試みる価値のある治療法と考えられた。
世界の皮膚科学者
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