西日本皮膚科
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62 巻, 1 号
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図説
綜説
症例
  • 板倉 英潤, 安田 勝, 森本 健, 山本 政弘, 酒井 好古, 竹下 盛重
    2000 年 62 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
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    Sjögren症候群を合併し,経過中に難治性皮膚潰瘍を生じた,筋症状のない皮膚筋炎(amyopathic dermatomyositis)の40歳の女性例を経験した。病理組織学的には,右第2指中手指節関節(MP関節)部伸側の紅斑はいわゆるリンパ球性血管炎の像を呈していた。経過中右第3指伸側の近位指節間関節(PIP関節)が露出し,伸筋腱が壊死に陥り,脱臼を呈した。皮膚潰瘍に対しては,メチルプレドニゾロンのミニパルス療法が効果的であった。悪性腫瘍や間質性肺炎の合併は認めなかった。発病後12ヵ月経過後も筋症状はみられない。
  • 横山 眞爲子, 田中 達朗, 成澤 寛
    2000 年 62 巻 1 号 p. 14-17
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    27歳の女性。21歳頃,解熱剤の静注で一過性の皮疹を認めたが詳細は不明。今回,第二子出産後の会陰裂傷のためミノサイクリン(ミノマイシン®),チアラミド(ソランタール®)の内服2日後に,紅斑と発熱を認め,急速に小膿疱が多発したため当科へ入院となった。入院時,体幹,四肢及び間擦部にびまん性潮紅を認め,小膿疱がほぼ均一に密生していた。検査所見では,好中球の増加と炎症所見を認めた。ベタメタゾン1日5mgより治療を開始し,皮疹及び全身状態は速やかに改善し,投与を中止しても再燃は認めなかった。病理組織学的には,表皮の不規則な肥厚,主に好中球による角層下膿疱,Kogojの海綿状膿疱,角化細胞の個細胞壊死,真皮浅層の浮腫,血管壁の膨化,小血管周囲のリンパ球,好中球,好酸球浸潤を認めた。以上の臨床像,病理組織学的所見より,本例を急性汎発性発疹性膿疱症と診断した。薬剤の摂取が誘因として考えられたが,パッチテスト,DLSTは陰性で,内服テストは施行できなかった。先行する感染症状はなく,水銀との接触歴もなかった。
  • 木本 由紀, 力久 航, 山元 修, 旭 正一, 伊豆 邦夫
    2000 年 62 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    病理組織学的に筋層内の肉芽腫が確認された3例を報告した。症例1: サルコイドーシスに伴う多発性の腫瘤型筋層内肉芽腫。症例2: 放線菌感染症に伴う下顎部の筋層内肉芽腫。臨床的に外歯瘻との鑑別が問題となった。症例3: 交通外傷による異物肉芽腫。偏光顕微鏡によってシリカの結晶体が確認された。筋層内肉芽腫は整形外科領域では症例報告が散見されるが皮膚科領域では極めて稀である。統計的な報告はほとんどなく今後の症例蓄積,解析が待たれる。
  • 永田 祥子, 東 裕子, 川畑 久, 福留 由紀, 神崎 保
    2000 年 62 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    5歳の男児。生下時より爪の白濁,変形がみられ,頭毛は疎であった。次第に全身皮膚の角化傾向が著明となり,視力低下,難聴も明らかとなった。1998年5月,当科入院精査。全身性のkeratoderma,耳鼻科にて高音域を中心とした感音性難聴(deafness),眼科にて血管増殖性角膜炎(keratitis)と診断された。また下腿の疣贅状結節からの生検でPAS染色にて菌糸が認められ,更に培養の結果, Candida albicansを検出した。歯科的にはC3以上のカリエスが多数みられたが,身体的発育異常やアキレス腱の短縮や神経学的異常はみられなかった。発汗テストにおいて低発汗症が認められた。以上の所見から皮膚カンジダ症を併発したKID(Keratitis, Ichthyosis, Deafness)症候群と診断した。
  • 溝口 雅子, 籏持 淳, 新海 浤, 後藤 眞
    2000 年 62 巻 1 号 p. 28-30
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    54歳の女性。低身長·低体重,細い四肢とビヤ樽状体幹,鳥様顔貌,白髪,禿頭,両側白内障,皮膚·皮下組織の萎縮,皮膚潰瘍,アキレス腱の石灰沈着,糖尿病などが認められ,典型的なWerner症候群と診断された。両親はいとこ婚で,9人兄弟中,6人に肺癌,肝細胞癌,甲状腺癌など,悪性腫瘍の発生が認められた。患者末梢血細胞のゲノムDNAを用い,Werner症候群遺伝子(WRI)における既知の主要な3種の突然変異について検索したが,いずれも検出されなかった。Werner症候群,家族における悪性腫瘍の頻度,Werner症候群遺伝子(WRN)について若干の考察を加え報告した。
  • 平 嘉世, 田中 達朗, 三砂 範幸, 成澤 寛
    2000 年 62 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
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    症例は42歳の男性。初診時,全身の広範囲に鱗屑の付着を認めるTrichophyton rubrumによる体部白癬を呈し,右大腿内側に鶏卵大の腫瘤を認めた。皮疹部の病理組織学的所見と抗HTLV-I抗体高値,proviral DNAのmonoclonalな増殖とあわせて皮膚腫瘤型の成人T細胞白血病(ATL)と診断した。一方,早老性外貌,皮膚の萎縮,硬化,線維芽細胞の継代培養の低下よりWerner症候群を合併していた。抗真菌剤の外用,内服にて体部白癬は治癒したが,ATLについては, CHOP少量療法のLSG-4のプロトコールとPUVA療法を併用し1年9ヵ月の生存期間を得た。Werner症候群とATLとの合併は極めて稀と考えられた。
  • 佐藤 恵実子, 豊福 一朋, 板倉 英潤, 桐生 美麿, 古江 増隆, 詫間 由一
    2000 年 62 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    6歳の男児。後頭部正中に発生したrudimentary meningocele(RMC)の1例を報告するとともに,本邦報告9例を集計した。以前はprimary cutaneous meningiomaのvariantとして報告されることの多かったRMCであるが,最近では病理組織学的に独立した非腫瘍性の疾患として分類されるようになってきている。病変から索状物がのび,骨欠損部を通じて,硬膜と連絡していた症例もみられるため,今後日常診療の場において,後頭部正中に生下時あるいは生直後からみられる結節,脱毛局面,発毛異常をみた場合は,稀ではあるがRMCも疑い,頭蓋骨単純X線検査, MRI, CTなどの画像診断をおこなうべきであると考える。
  • 市川 薫, 向野 哲, 山上 美江, 衛藤 光, 村上 通敏
    2000 年 62 巻 1 号 p. 40-43
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    63歳の男性。頭部の多発性難治性潰瘍を主訴に受診。頭部の生検組織では診断に至る特異的な所見は得られず,一般的な潰瘍治療を行うが難治であった。経過中,手背に水疱の出現を繰り返し,尿中ウロポルフィリン,コプロポルフィリンの増加を認めた。この臨床像,組織所見及び検査所見より晩発性皮膚ポルフィリン症と診断し,頭部の多発性潰瘍も同症の修飾された一症状であると結論付けた。治癒が遷延した要因として,不適切な治療による細菌の二次感染に加え,本症に特有の皮膚の脆弱性が基盤にあるものと考えられた。
  • 梅林 芳弘
    2000 年 62 巻 1 号 p. 44-46
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    症例1:41歳の男性。鼻背部の結節。症例2:49歳の男性。上口唇部の結節。病理組織学的にはいずれも,管腔を形成しつつ増殖する腫瘍細胞からなり,一部の細胞は断頭分泌像を示す腺様構造を呈していた。間質成分は浮腫性で粘液腫様であった。症例2では,好酸性無構造物を容れた嚢腫が認められた。抗ケラチンモノクローナル抗体を用いた検索では,症例1の大部分の細胞は,汗管と分泌部の移行部に,腺様構造は分泌部へ分化していると考えられた。症例2は,分泌部から汗管までの分化を示しているものと思われた。嚢腫は拡張した汗管と考えた。
  • 松浦 宏, 籏持 淳, 新海 浤
    2000 年 62 巻 1 号 p. 47-49
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    35歳の女性。初診の5年前左足内足縁の常色の丘疹に気付いていた。平成8年頃より徐々に増大。皮疹は小指頭大の半球状隆起する表面平滑な淡紅色腫瘤で,圧痛及び自覚症状はない。病理組織像は表皮直下から脂肪織にかけて線維性被膜を有する腫瘍で,所々に血管を有し,楕円形の核を有する紡錘形の細胞とその周囲は細線維が交錯し,比較的太い線維束がみられる。線維はElastica van Gieson染色で黄色,Azan-Mallory染色で赤色に染色されangioleiomyomaと診断した。下肢に生じた本症は通常有痛性皮下結節で,自験例は特異な臨床像と考えた。
  • 高橋 聡, 松村 文子, 野中 由紀子, 久保田 由美子, 古賀 哲也, 中山 樹一郎, 今福 信一
    2000 年 62 巻 1 号 p. 50-53
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    69歳の男性。64歳時に膀胱癌の既往あり。平成9年4月頃に亀頭部にそう痒伴う紅斑出現し次第に拡大,一部びらんが生じてきた。病理組織像では表皮は棍棒状に肥厚し,表皮全層にわたり核の大小不同,配列の不整,異常角化細胞が散見されたが基底層は保たれていた。腫瘍細胞はPAS染色陰性でありerythroplasia of Queyratと診断した。全身精査において転移の所見はなく,電子線(週6回, total 55 Gy),ペプロマイシン筋注(週3回, total 60 mg)による併用療法により略治した。また病変部よりhuman papillomavirusを検索したが,抗原,ゲノムともに陰性であった。
  • 高濱 英人, 能登 重光, 相崎 一雄, 千島 由朗, 佐藤 好信, 野呂 昌巳, 石黒 匡史, 瀬崎 晃一郎, 馬場 タカ子, 田所 衛
    2000 年 62 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    73歳の女性。7年前より左腋窩に小結節が出現,徐々に増大し,1998年1月出血を伴う様になってきたため当院受診した。左腋窩に直径35×32mrnの凹凸不整の紅色腫瘤。硬性で皮膚と癒着,下床と癒着なく可動性良好。生検にて転移性腺癌を考えられ,全身検索されるも他病変を認めなかった。腋窩部,断頭分泌像よりアポクリン腺癌が疑われ,腫瘍切除,リンパ節郭清術施行された。切除標本の乳腺系免疫組織染色にて陽性像を呈した。切除標本は乳頭腺管癌と硬癌よりなり乳癌取り扱い規約に基づき浸潤性乳癌(硬癌)と病理診断された。臨床所見を加味し異所性乳癌と臨床診断された。異所性乳癌について若干の文献的考察を行い報告する。
  • 渡辺 千春, 奥田 知規, 加藤 雪彦, 大井 綱郎, 古賀 道之, 大谷 方子, 清水 亨, 千葉 友紀
    2000 年 62 巻 1 号 p. 58-61
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    83歳の男性。初診の約3ヵ月前より右腋窩に自覚症状を欠く皮疹出現。近医受診。右腋窩に小指頭大の結節を認め,その近傍に拇指頭大の皮下硬結を触知した。生検にて汗腺系悪性腫瘍が疑われ東京医科大学附属病院皮膚科にて,結節部全剔術及び右腋窩リンパ節郭清術を施行。病理組織では豊富な好酸性胞体を持つ異型細胞が真皮内に増殖して管腔構造を示し,一部では断頭分泌像が認められた。所属リンパ節は腫瘍細胞で置換され,ジアスターゼ抵抗性PAS(+),アルシアンブルー(+), EMA(+), CEA(-), secretory-component(+), GCDFP-15(+), BRST-3(+)であった。電顕にて細胞内に管腔形成,分泌顆粒を認め総合的にアポクリン腺癌と診断した。内臓悪性腫瘍の合併はなかった。全剔術後6ヵ月現在再発を認めていない。
  • 中村 康博, 籏持 淳, 石井 啓子, 松浦 宏, 遠藤 秀治, 新海 浤
    2000 年 62 巻 1 号 p. 62-65
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    症例1: 78歳の男性。主訴は右鼻翼の黒色腫瘤。同部は鼻中隔前部まで浸潤した基底細胞上皮腫(以下BCE)であり,眼周囲,耳介周囲,腰部と併せて計6個(充実型5個,表在拡大型1個)のBCE。発症誘因としてコールタール使用歴が疑われた。症例2: 88歳の女性。前額部に対称性に存在した黒色斑を主訴に来院。同部は複数のBCEからなり,上背部,大腿内側と併せて計8個(表在拡大型4個,充実型3個,充実型+表在拡大型1個)のBCEが存在。症例3: 80歳の男性。主訴は右肩,腰部の黒色腫瘤。同部位の他に項部,耳輪部,下顎にも計5個(充実型2個,表在拡大型1個,充実型+角化型1個,表在拡大型+腺様嚢胞型1個)のBCE。
  • —症例報告と文献的考察—
    藤原 けい, 幸野 健, 前川 直輝, 中川 浩一, 石井 正光, 古川 雅祥, 谷口 彰治
    2000 年 62 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    症例1: 62歳の男性。1988年肝細胞癌にて,肝右葉切除。再発のため96年に部分切除。98年右眉毛部に無症候性の紅色腫瘤出現。病理組織像にて真皮中層以下に肝細胞類似の腫瘍細胞巣を認め,肝細胞癌の皮膚転移と考えた。症例2: 67歳の男性。1982年頃より慢性肝炎。98年肝腫瘍を認め,生検にて肝細胞癌と診断,腹部血管造影下に肝動脈塞栓術施行したが著効見られず,化学療法を併用。経過中に胸部左側に皮下腫瘤が出現,病理組織像にて肝細胞類似の腫瘍細胞をみとめ,肝細胞癌の皮膚転移と診断。肝臓癌皮膚転移の既報24例についてまとめた。内訳は,肝細胞癌21例,胆管癌3例で,平均年齢57.9歳,男女比7:1,部位は頭頚部が59%であった。皮膚転移から死亡までの期間は平均4ヵ月であった。
  • —PCR法を用いた結核菌DNA断片の検出—
    小松 奈保子, 清水 千博, 大槻 典男, 徳永 周二, 佐賀 務, 高木 泰孝
    2000 年 62 巻 1 号 p. 71-76
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    症例1(陰茎結核疹): 44歳の男性。結核の既往はない。陰茎冠状溝に半小指頭大の潰瘍とその皮下に大豆大の硬結を認めた。ツ反は強陽性。他臓器に結核病巣はない。真皮全層に乾酪壊死を伴う類上皮細胞性肉芽腫。抗酸菌染色,polymerase chain reaction(PCR)法での結核菌DNAは陰性。ミノサイクリンの内服にてわずかに瘢痕を残し上皮化した。症例2(バザン硬結性紅斑): 57歳の男性。陳旧性肺結核あり。両側下腿に鳩卵大までの浸潤を触れる紅斑,痂皮をつけたやや深い潰瘍が散在している。右下腿外側と左下腿屈側皮下から筋肉内に手掌大の皮下硬結を認めた。いずれも自覚症状は少ない。ツ反は強陽性。真皮中層から脂肪織に類上皮細胞性の肉芽腫形成とリンパ球浸潤。小血管壁では,リンパ球及び類上皮細胞の浸潤や,血管壁の肥厚がみられた。イソニアジド,リファンピシンの2剤併用療法にて上皮化,皮下硬結も消退した。抗酸菌染色,抗酸菌培養,PCR法による結核菌DNAは陰性。真性皮膚結核,結核疹でのPCR法による結核菌DNA検出の本邦報告例に関する考察を含めて報告した。
  • 八幡 陽子, 村上 信司, 佐山 浩二, 橋本 公二, 宮内 俊次
    2000 年 62 巻 1 号 p. 77-79
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    23歳の女性。熱帯魚を飼育。右肘関節外側に膿瘍と右上肢屈側に痂皮を付着する赤色の結節が数個出現。赤色結節の病理組織では類上皮細胞性肉芽腫を認めた。生検組織と患者の飼育している熱帯魚と水槽の水の抗酸菌培養で各々よりMycobacterium(以下M.と略)marinumを検出。治療としてミノサイクリン内服を行ったが無効であったため,クラリスロマイシン800mg/日内服に変更。3.5ヵ月間の内服で治癒し以後再発を認めていない。M. marinum感染症の本邦報告例150例中本剤単独で治療した症例はなかった。今後クラリスロマイシンは本症治療の第1選択薬となりうる可能性が示唆された。
  • 梅林 芳弘
    2000 年 62 巻 1 号 p. 80-82
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    68歳の男性。初診の1ヵ月前から塩酸メキシレチン150mg/日,塩酸ジルチアゼム90mg/日を内服していた。約3週後,痒みを伴う紅斑が出現し,急速に紅皮症の状態となった。38℃台の発熱あり。上記2剤を中止し,プレドニゾロン20mg/日の内服とプロピオン酸デキサメタゾンの外用を行った。経過中,肝機能障害出現。1ヵ月後プレドニゾロンを中止したところ,2週後発疹が再燃した。塩酸メキシレチン,塩酸ジルチアゼムの原末を用いた貼布試験陽性で両薬剤による紅皮症型薬疹と診断した。リンパ球刺激試験陰性。パラフィンプロックからHHV-6, HHV-7DNAは検出されなかった。
研究
  •  
    秀 道広, 山村 有美, 森田 栄伸, 高路 修, 山本 昇壯
    2000 年 62 巻 1 号 p. 83-88
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    近年我が国において,アトピー性皮膚炎を対象として行われているいわゆる民間療法の内容を調査し,整理·分類した。また過去に広島大学医学部皮膚科を受診したことのあるアトピー性皮膚炎患者を対象としてアンケート調査を行い,これらの療法の施行実態を分析した。その結果,少なくとも148種類の素材または成分が利用され,ほとんどの療法は,それらを単一または組み合わせて「皮膚につける」「飲む」「食べる」「つかる」あるいは「洗う」ことにより成り立っていた。アンケートでは301人より回答を得,そのうちの203人(67.4%)の患者が何らかの民間療法の経験があった。医療機関に対する満足度では,民間療法施行群,未施行群での違いは認められなかったが,重症の患者ほど多くの療法を試みており,94人(46.3%)が副腎皮質ステロイドの使用を避けたかったことを理由にあげていた。有効性については85人(41.9%)の患者が症状が改善したと回答したが,特定の療法または患者背景に特異性はなく,20人(9.8%)は逆に悪化したと回答した。従って,これらの療法の有効性には偶発性が高く,いずれもアトピー性皮膚炎の一般的治療手段としては不適切なものと結論づけられる。
  • 片山 一朗
    2000 年 62 巻 1 号 p. 89-94
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    蕁麻疹患者における治療内容とその効果を検討する為に長崎大学皮膚科を受診した患者につき,アンケートによる予後調査を施行した。急性蕁麻疹患者(73名),慢性蕁麻疹患者(61名),寒冷蕁麻疹患者(13名),日光蕁麻疹患者(9名),機械性蕁麻疹患者(18名)にそれぞれアンケート用紙を送付し回収できた69名と回収出来なかった症例23名はカルテにてその経過を検討した。現在の蕁麻疹の状況に関して,治癒している患者は急性蕁麻疹80%,慢性蕁麻疹32%,その他32%で,物理性蕁麻疹を含む慢性蕁麻疹患者では,急性蕁麻疹に比し,治療効果が低い傾向が見られた。治療に関しては,抗ヒスタミン剤,抗アレルギー剤の内服と外用療法が主体を占めたが,無治療と答えた患者も各群で16~20%程度に見られた。急性蕁麻疹患者では今回観察期間が5年と短いこともあったが,多くが発症後1年以内に軽快していた。逆に慢性蕁麻疹患者では,発症後1年以上持続している患者が半数以上見られた。このほかアレルギー歴は物理性蕁麻疹患者で低い傾向が見られたが,全身症状の有無,出現時間帯に差は見られなかった。いわゆる物理性蕁麻疹患者では,複数の因子により蕁麻疹が誘発され,必ずしも単一の原因で発症するのではないという結果が得られた。
講座
治療
  • 飯島 茂子, 宮田 美穂
    2000 年 62 巻 1 号 p. 99-106
    発行日: 2000/02/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    骨が露出した頭部の悪性血管内皮細胞腫の拡大切除,および筋,腱が露出した下腿の壊死性筋膜炎のデブリドマン後の重度皮膚欠損例に対して,真皮欠損用グラフト·テルダーミス®(AD-T)を貼付し,二期的に分層植皮を行い良好に治癒した症例を経験した。また,足底および爪部の良性腫瘍切除後の軽度皮膚欠損症例にも試用した。AD-Tを使用することにより,従来,遊離植皮単独では治療適応外であった症例にも,遊離植皮を利用しての修復が可能となり,比較的簡略に創面を閉鎖することができた。AD-Tは,高齢者などの皮弁形成術では手術侵襲が大きく治療困難な症例や,全身状態が悪く皮膚欠損部の母床の形成が不良な症例にも,遊離植皮単独での治療を可能にするものと考えた。皮膚科領域でもAD-Tの適応可能な症例は多く,使用法を自由に工夫することにより,今後使用例が増えるものと思われた。
世界の皮膚科学者
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