蕁麻疹における原因と治療を考える上で行うべき検査につき検討した。長崎大学医学部附属病院皮膚科を1985~1999年に受診した患者を対象とした。内訳は急性蕁麻疹患者(36名),慢性蕁麻疹患者(56名)であった。総白血球数,好酸球(%),CRP, IgG, IgM, IgA, IgE, GOT, GPT,アルカリフォスファターゼ,抗核抗体,CH
50の12項目につき施行例の検討を行った。今回の検討で蕁麻疹患者では初診時,CRP値異常が多い事(急性60.7%,慢性59.5%),慢性蕁麻疹患者で抗核抗体の陽性率が高い事(25%,44%),白血球数4000未満が多いこと(6.25%,15%)が明らかとなった。逆に肝機能異常を示す患者はそれぞれ11.1%,7.3%と低かった。血清IgE値は300U/l以上の高値を示した者がそれぞれ30.7%,24%であった。好酸球数は慢性蕁麻疹患者で比較的高値であった。これらの結果より慢性蕁麻疹患者では自己免疫的な側面を呈する患者が比較的多く存在すること,急性,慢性を問わず何等かの感染症が蕁麻疹発症と関連する可能性があると考えられた。逆に従来蕁麻疹と関連の深い検査項目と考えられた肝機能異常は予想より低く,アレルギー素因もIgE値で見た場合30%程度と比較的その関与が低いと考えられた。これらの結果より蕁麻疹患者の検査項目として膠原病などの免疫異常,ウイルス,細菌感染の検討も必要と考えられた。
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