症例1: 80歳の女性。1940年(23歳時)ごろLL型で発症し,スルフォン剤にて1960年(44歳時)ごろ寛解。29年後の1989年(72歳時),両手指の「冷たい」感じが出現し,その後運動障害も加わって,漸次増強した。さらに9年後の当科初診時,両手の著明な知覚·運動障害を認め,菌陽性であった。神経幹内に,抗酸菌を有する泡沫細胞とリンパ球浸潤を認めた。OFLX, DDS, RFPを2年間投与し,両手の不快感は著明に改善したが,運動機能の改善はほとんど認められなかった。症例2: 39歳のブラジル人男性。初診の約4年前ブラジルにて発症(病型不明)。RFPとDDSの少量·短期間内服で寛解した。約4年後右上肢痛が出現し,その2週後当科初診となった。皮膚の菌検査は陰性で,複数の神経幹に,肥厚·圧痛を認めた。皮膚では未分化群様の組織像を呈し,神経幹では,BT型に類似する肉芽腫とともに,初期の境界反応の所見を認めた。MDT/MB(PSL併用)を開始した。治療開始2週後,境界反応が明らかになり,一時PSLを増量した。1年間の治療終了時には皮疹,運動障害とも見られなかった。両症例とも,初診時には皮疹が見られず,神経症状が主訴であった。ハンセン病は,早期より何らかの末梢神経炎症状を伴うことが多く,後遺症を防ぐためには,その早期の診断と適切な治療が大切である。
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