西日本皮膚科
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63 巻, 3 号
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図説
綜説
  • 末木 博彦
    2001 年 63 巻 3 号 p. 221-225
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
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    Alpha-hydroxy acids (AHAs) are carboxylic acids characterized by a hydroxy group on the α carbon atom of the molecules. The constituents of AHAs include glycolic acid, lactic acid, malic acid and tartaric acid. The profound effect of AHAs on disorders of keratinization was first to report by Van Scott and Yu in 1974. Recently, medium concentrations of AHAs have been used in the chemical peeling of photo-aged skin, acne and some skin disorders in Japan. However, the overall knowledge of the pharmacological actions of AHAs on the human skin remains insufficient. I herein briefly reviewed our data and the most recently reported information. The principal action of lower concentrations (5-12%) of AHAs, when applied topically to human skin, is based on an accelerated detachment of corneocytes. The pharmacological effects of a medium concentration (15-30%) of AHAs are a thickening of epidermis, a decreased number of atypia in basal cells, an increase in the amount of acid mucopolysaccharides in the papillary dermis, and an increased expression of factor XIII a transglutaminase in the dermal dendrocytes associated with an increased level of mast cell degranulation. Ultrastructurally, AHAs-treated photo-aged skin samples show a decreased number of desmosomes and thus results in an accumulation of tonofilaments and opening of intercellular spaces of kerationocytes, while no appreciable changes are observed in the melanocytes. In vitro studies revealed that AHAs could induce an increased degree of fibroblast proliferation and collagen production, while they may also suppress tyrosinase activity in human melanoma cell line. Recently, AHAs are becoming one of the unique rejuvenating agents in Japan. Dermatologists have to establish more effective and safer protocols in order to widely use AHAs and also further verify the action mechanisms of AHAs, utilizing image, biochemical and molecular biological analyses.
症例
  • 氏原 真弓
    2001 年 63 巻 3 号 p. 226-229
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    症例は44歳女性。初診の約1ヵ月前,左前腕伸側に紅色丘疹が数個集簇して生じ,虫刺されと思い放置していたが,それらは融合して局面となり,次第に遠心性に拡大した。初診時,同部に45×30mm,馬蹄状,扁平隆起性で,触診上は柔軟な紅色局面が単発する。外縁は境界明瞭で連圈性,隆起の頂点はやや黄色調を呈する。なだらかに平坦化してきた中央部は表面粗慥で軽く落屑する。自覚症状,全身症状はない。臨床像は,尋常性狼瘡に類似したが,菌は組織学的にも培養でも陰性であった。組織所見が,真皮上層の著明な浮腫と,核破壊を伴う好中球主体の真皮細胞浸潤を示したことより,好中球性紅斑と診断した。非常に強いツベルクリン反応を呈したこと,及び生検部位に皮疹が新生拡大したことは,好中球性紅斑の特徴である素因のhypersensitivityによると考えた。1975年,篠と中溝が提唱した好中球性紅斑は,その重症型であるSweet症候群から,そのvariantであるrecurrent neutrophilic dermatosis of the face,及び軽症型までを,臨床像と組織所見が共通することより包括した概念であり,共通の病因や病態生理があることを窺わせる点ですぐれている。Neutrophilic dermatosisとは別個の概念であることを確認したうえで,好中球性紅斑を病名として用いる時は,neutrophilic dermatosisと混同しないよう,本例のような軽症型に使うのが妥当との意見を述べた。
  • 田中 了, 山本 剛伸, 山崎 修, 多田 讓治, 荒田 次郎, 真邊 泰宏
    2001 年 63 巻 3 号 p. 230-234
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    全身性強皮症に抗リン脂質抗体症候群を合併した症例を経験した。50歳,女性。手指硬化,仮面様顔貌,poikiloderma,多発性皮膚潰瘍,間質性肺炎,洞不全症候群,食道機能障害を呈した。抗核抗体,ループスアンチコアグラントは陽性。全身性強皮症と診断したが急速進行性。ステロイド,次いでステロイドパルス療法により治療。しかし病勢強く,全身状態徐々に悪化し,肺梗塞併発。急激な経過をたどり永眠された。最終的に抗リン脂質抗体症候群と診断した。
  • 稲沖 真, 長谷川 洋一, 有川 佳代, 越後 岳士, 竹原 和彦, 竹田 公英, 原田 ゆかり
    2001 年 63 巻 3 号 p. 235-239
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    副腎皮質ホルモン剤内服に問題のあった水泡性類天泡瘡患者4名にテトラサイクリンとニコチン酸アミドの併用内服療法(TC/NA療法)を行い有効であった。症例1: 70歳女性。水痕性類天泡瘡に対するプレドニゾロン内服の減量時に再燃した。DDSやアザチオプリンの併用は無効で, TC1000mgとNA1500mgの併用により皮疹は消退した。症例2: 99歳女性。水疱性類天疱瘡に対するベタメタゾン内服治療中に副腎皮質ホルモン剤によるせん妄が出現した。オキサゾラム内服でせん妄はコントロールされたが,水疱性類天疱瘡の再燃時に副腎皮質ホルモン剤を増量したところせん妄が増悪した。TC1000mgとNA600mgを併用して副腎皮質ホルモン剤を減量することによりせん妄は軽減した。症例3: 91歳女性。水疱性類天疱瘡の再燃時にプレドニゾロンを増量したところ,消化管出血を起こしDICの状態に陥った。副腎皮質ホルモン剤を中止し,メシル酸ガベキサート点滴などの治療で全身状態は回復した。その後水疱が再発したが,TCとNAの内服で消退した。症例4: 75歳女性。脳梗塞の既往のため副腎皮質ホルモン剤は投与せず,TCとNAの内服を行い皮疹は消退した。過去の報告および自験例の経過よりTC/NA療法は中等症以下の水疱性類天疱瘡に対して有用と考えられた。また,副腎皮質ホルモン剤内服によるコントロール不良の水疱性類天疱瘡の場合,TCとNAの併用により副腎皮質ホルモン剤の減量を試みることも有用と思われた。
  • 宇宿 一成, 持冨 勇二, 川畑 久, 三好 逸男, 松下 茂人, 神崎 保
    2001 年 63 巻 3 号 p. 240-242
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    54歳男性。18歳時より習慣的喫煙歴があった。1977年にバージャー病の診断を受け,加療されていた。1993年から趾端潰瘍を生じ近医外科で加療されたが難治であった。当科受診し,外用剤,消毒薬による接触皮膚炎を疑われ,初診時パッチテストで陽性となったポビドンヨードを治療から除いた。その後も治療に反応しなかったため,再度外用剤,消毒薬によるパッチテストを行ったところ,グルコン酸クロルヘキシジンも陽性となった。グルコン酸クロルヘキシジンによる消毒を中止したところ,著明な改善が得られた。
  • 磯村 巌, 森田 明理, 細川 裕子, 辻 卓夫
    2001 年 63 巻 3 号 p. 243-247
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    72歳,男性。1997年より手掌,足底にそう痒を伴う角化局面が出現。ステロイド外用治療に対し抵抗性であった。咳,血痰その他の全身症状は認めなかった。胸部X線において右下肺野に腫瘤陰影を認め,その後の精査で腫瘍は肺腺癌と診断された。腫瘍はリンパ節転移を伴っていた。腫瘍切除及びリンパ節郭清術が行われた結果,手掌,足底の角化局面は消失した。臨床,病理学的所見からは当初診断が困難であったが,術後の皮疹経過からBazex症候群と診断した。本症例において,皮膚症状が改善するにつれ腫瘍マーカーであるCEAも減少し,これらの関連が示唆された。
  • 中谷 友美, 高田 実, 川原 繁, 打出 喜義
    2001 年 63 巻 3 号 p. 248-251
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    妊娠による悪化を来した汎発性膿疱性乾癬(GPP)患者の治療経過を報告した。妊娠初期および中期の膿疱化にはシクロスポリンA(Cy-A)2~4mg/kg/日の内服が有効であった。しかし,妊娠後期の膿疱化にはCy-A 5.5mg/kg/日の大量投与もプレドニゾロン40mg/日とCy-A 4mg/kg/日の併用も無効であり,高度の発熱と全身状態の悪化を認めたため,妊娠31週で帝王切開を行い児を娩出した。児は出生時体重1672gで新生児ICUでの全身管理を要したが,以後順調に発育し退院した。患者に対しては分娩の翌日からエトレチナート50mg/日の投与に変更したところ,臨床症状の劇的な改善をみた。Cy-Aは妊娠に伴うGPPの治療に使用可能な薬剤のひとつと思われるが,子宮内胎児発育遅滞や催奇性のリスクが低いながら存在するので,その使用に際しては十分な説明を行い患者の同意を得る必要がある。
  • 益雪 浩一, 末永 義則
    2001 年 63 巻 3 号 p. 252-255
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    2歳,男児。人工受精により出生。恥骨前部の排膿をともなう瘻孔を主訴に受診。MRI像では恥骨前部皮下に筋組織と同信号の構造物を認め,手術所見では瘻孔は垂直下方に恥骨下縁にまで達しており,その先端は盲端となっていた。病理組織像は,皮膚側の管腔壁は扁平上皮で覆われていたが,深部では移行上皮で覆われており,先天性恥骨前瘻孔と診断した。
  • 小楠 優子, 三浦 由宏, 中房 淳司, 三砂 範幸, 成澤 寛
    2001 年 63 巻 3 号 p. 256-259
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    症例は47歳女性。23歳時第1子を出産したより両下肢の知覚が徐々に低下し,その後両足底に潰瘍を形成し増大した。また42歳頃からは尿意の消失と尿失禁を認めていた。初診時,両足底外側荷重部に深くえぐられたような潰瘍を認め,周囲皮膚の角質肥厚を伴っていた。また,両足底から下腿にかけL5~S1の領域に温痛覚,振動覚,位置覚の低下を認めた。患者は幼少時より腰仙部に皮膚陥凹を認めており,脊髄MRIにて脊椎管内脂肪腫に伴う低位脊髄円錐および二分脊稚の所見を認めた。以上の所見により脊髄係留症候群およびこれに起囚した足穿孔症と診断した。脊髄係留症候群に伴う足穿孔症について過去の報告例をもとに文献的考察を加えた。
  • 鈴木 康之, 森 徹, 三砂 範幸, 成澤 寛
    2001 年 63 巻 3 号 p. 260-262
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    生後7ヵ月,男児。症例は第1子。満期産,正常分娩,出生時体重3220g。母乳栄養。生後3ヵ月頃より臀部にびらん及び紅斑が生じ,その後,頭部,顔面にも紅斑が出現した。また,一部後頭部の疎毛を認め,下痢症状も認めた。初診時患児の血清亜鉛濃度は13μg/dlと低値,母親の血清亜鉛濃度は113μg/dlと正常範囲であったが,母乳中亜鉛は37μg/dlと低値を示していた。以上より低亜鉛母乳による腸性肢端皮膚炎と診断した。治療は硫酸亜鉛(無水)50mg連日投与し,2週後には皮膚症状の軽快が見られ,10週後には完全に紅斑が消失した。
  • 延藤 俊子, 幸田 衞, 植木 宏明
    2001 年 63 巻 3 号 p. 263-266
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    73歳,男性。18歳時に被爆。初診の約1年前から便秘し易く,近医で貧血を指摘されていた。数ヵ月前から全身にそう痒を伴う紅斑が出現し,血液検査でLDH 1753IU/l, GOT 54IU/l, CK 2348IU/l(CK-MM 92.3%), aldolase 14.9IU/lと筋原性酵素の著しい増加を認めた。筋力低下,Gottron丘疹,蝶形紅斑などは見られなかった。セレスタミン内服により紅斑が消退するに従い,皮膚の乾燥·粗ぞう,浮腫性硬化が明らかとなり,皮膚生検で真皮全層にムチンの沈着を認めた。TSH 53.99μIU/ml, free T4 0.4ng/dl未満, free T3 1.0pg/ml未満で,抗マイクロゾーム抗体が陽性であった。超音波検査で甲状腺はやや萎縮性で腫瘤は見られず,心電図で低電位·T波平坦化,心臓超音波で心嚢液貯留を認めた。甲状腺ホルモン剤内服により筋原性酵素値は低下し,皮膚の浮腫性硬化,貧血·血小板減少も軽快した。それまで自覚されていなかった難聴,毛髪の減少,動作·言語の緩慢さなども改善された。自験例は血中筋原性酵素が筋炎を疑わせる程著明に増加し,これが甲状腺機能低下症の主要な所見となっていた興味ある症例である。甲状腺機能低下症は特異的な症状に乏しく,自験例のように筋症状が本症の主症状となることもあり,注意すべきであると考えられた。
  • 具志 亮, 吉井 典子, 四本 信一, 神崎 保
    2001 年 63 巻 3 号 p. 267-270
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    57歳の女性。初診の5年程前より自覚症状を欠く頭頂部の皮膚結節に気付く。大きさは不変で放置するも,改善傾向なく当科紹介受診となる。頭頂部に表面平滑で赤色,径10mmの弾性硬で可動性良好の結節を認めた。また来院時,鼻部にも径2mmまでの表面常色の多発性丘疹を認めた。組織学的に頭頂部はcylindromaの,鼻部はtrichoepitheliomaの典型像で, solitary cylindromaとmultiple trichoepithelimaの合併例であった。本邦では極めて稀な付属器腫瘍の合併例で,その発生起源につき文献的考察を加え報告した。
  • 森田 美保子, 安元 慎一郎, 森 理, 橋本 隆
    2001 年 63 巻 3 号 p. 271-273
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    37歳女性の両上下眼瞼および前額部に生じたclear cell syringomaの1例を経験したので,文献的考察と合わせて報告した。本症は通常型のsyringomaと臨床的に差異は認められないが,組織学的にclear cellの集塊をみることを特徴とする。本邦では自検例を含む41例が報告されている。本症は糖尿病との関連が示唆されており,記載のない7例を除いた34例中28例に糖尿病の合併が認められた。自験例でも糖尿病の合併があり,本症を見た場合,常に糖尿病の存在を念頭におく必要があると思われる。
  • —偽癌性増殖についての検討—
    山嵜 峰子, 三砂 範幸, 平島 徳幸, 萱場 光治, 成澤 寛
    2001 年 63 巻 3 号 p. 274-278
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    41歳男性の左上腕に,表面疣状のドーム状に隆起した結節を認め,74歳女性の右腰部にはわずかに隆起した結節を認めた。2例ともに,結節は病理組織学的にはgranular cell tumor(以下GCTと略す)であったが,前者では表皮の偽癌性増殖pseudoepitheliomatous hyperplasia(以下PEHと略す)を伴っていた。GCTがPEHの有無で臨床病理学的に相違がみられるのか,自験例の観察を含め文献的に検討した。その結果,有意な所見は得られなかったが,一部の症例は,機械的刺激を受けやすい部位に発症しており,臨床像が乳頭状,疣状を呈していた。
  • 関山 光弘, 瀬戸山 充, 米良 ゆかり, 持冨 勇次, 神崎 保
    2001 年 63 巻 3 号 p. 279-281
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    37歳の男性。初診の約1年前より右腋窩に皮疹出現。放置していたが,次第に増大してきたため当科受診。初診時右腋窩に5×4cmの可動性良好で圧痛を伴わない腫瘤を認めた。生検にて汗腺系悪性腫瘍が疑われたため,当科にて腫瘤全剔術および右腋窩リンパ節郭清術を施行した。所属リンパ節16個中4個に転移がみられた。HE染色および特殊染色結果よりアポクリン腺癌と診断した。術後化学療法として5-FUとCDDPを用いたlow dose FP療法を4クール施行した。
  • 甲斐 宜貴, 佐藤 俊宏, 渋谷 博美, 寺師 浩人, 藤原 作平, 高安 進
    2001 年 63 巻 3 号 p. 282-285
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    69歳女性。仙骨部下方から尾骨部にかけて圧痛を伴う径約5cmの皮下嚢胞を認めたため摘出した。内腔表面は平滑黄色で,突起物があり,米粒体も数個認めた。組織学的には,内腔壁の大部分にフィブリンが析出し,一部に滑膜細胞が認められた。これらの所見より,仙骨部から尾骨部にかけての滑液包炎と診断した。滑液包炎がこの部位に生じたとする報告はこれまでほとんどなく,部位より仙骨皮下包炎が最も考えられた。摘出術後約1ヵ月で急速な再発を認め,再手術を施行した。嚢胞は仙尾連結部と連続し,同部は裂隙を形成し,関節様構造を呈していた。これらを含めて摘出したところ,術後10ヵ月現在,再発を認めず経過している。
  • 渡辺 晴二, 筏 さやか, 望月 隆, 石崎 宏, 及川 陽三郎, 篠永 哲
    2001 年 63 巻 3 号 p. 286-289
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    65歳,日本人男性の両下腿の象皮病(elephantiasis nostras)の潰瘍部に生じたヒロズキンバエ(Phaenicia sericata)による偽性ハエ症(semispecific myiasis)を報告した。患者は初診2ヵ月前より,下肢に“虫”が這っていることに気付いたが放置していた。患者および同居の妻は病識,衛生観念を欠き,外部との交流は殆どなかった。また,患者には糖尿病が認められた。
研究
  • 飯島 茂子, 立石 優美絵
    2001 年 63 巻 3 号 p. 290-295
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    血清中のsIL-2R濃度は, in vivoのT cellの活性化状態を知る指標であり,T cellの関与する種々の疾患における重症度の指標となりうる可能性が考えられる。我々は,皮膚炎惹起の病態にT cellが重要な役割を演じているアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis, AD)において,血清中sIL-2RがADの病勢を反映するかの評価を行った。対象は,AD患者64例(0~85歳,21.4±16.3歳)101検体で,各時点での臨床的な重症度と各種臨床検査値(末梢血白血球数,好酸球%,好酸球数,血清LDH値,sIL-2R,血清総IgE値)との相関性を検討した。また,乾癬,慢性湿疹患者各5症例でのsIL-2Rも測定し,AD患者のものと比較した。その結果,(1)7歳以上のAD患者の重症度はLDHと最もよく相関した(rs=0.639)。(2)sIL-2Rも重症度をよく反映し(rs=0.516),軽快-増悪間の重症度の変化との相関性は,LDHのそれに匹敵した(それぞれrs-0.827, rs=0.825)。(3)0~60歳までのAD患者におけるsIL-2Rは,低年齢ほど高値を示す傾向があった。(4)IgEはADの重症度を反映しなかった。(5)sIL-2Rは,乾癬や慢性湿疹,特に紅皮症の患者でも高値であり,ADに特有のものではなかった。以上の結果から,sIL2RはADにおける特異的な指標とはなり得ないが,臨床上の重症度を反映する指標として活用できると結論した。
  • 橋壁 道雄, 大塚 俊, 原 典昭, 山蔭 明生, 山崎 雙次
    2001 年 63 巻 3 号 p. 296-302
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    当科における全身性強皮症(以下SSc)患者62例に閉口時および最大開口時に顎関節単純X線検査を行い,関節可動域を見ることにより開口障害の有無について検討を行い,SSc 62例中24例(38.7%)に開口障害を認めた。病型別,検査所見などにっいては,diffuse type,抗Topoisomerase I抗体(以下Topo I)陽性例,開口度40mm未満の症例,橋本病合併例に有意に開口障害を伴うことが多く,また,pitting scar(+)例に開口障害を伴う割合が高い傾向がみられた。開口障害(+)例は開口障害(-)例に比べ有意に顔面のスキンスコアが高値であり,トータルスキンスコア高値,罹病期間長期,血漿エンドセリン高値,血清トロンボモジュリンが高値の傾向であった。SSc患者に顎関節単純X線検査を行うことは,関節可動域や下顎頭の形態変化を観察でき,SScの重症度を評価する上で有用な方法であると思われた。
講座
治療
  • 水野 寛, 岩崎 泰政, 野田 英貴, 河合 幹雄, 山本 昇壯, 竹末 芳生
    2001 年 63 巻 3 号 p. 309-313
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    肛囲Paget病の治療は外科的切除が第一選択であるが,術後に肛門機能が温存できるか否かが大きな問題となる。そのため手術方法の選択が重要になるが,いまだ肛囲Paget病に対する手術方法には確立されたものはない。今回われわれは肛囲Paget病を3例経験し,その手術方法について検討を加えた。症例1: 66歳,男性。びらんを伴う紅斑性局面があり,肛門縁から歯状線まで連続する病変を認めた。症例2: 78歳,男性。びらんを伴う紅斑性局面があり,歯状線を越え直腸まで連続する病変を認めた。症例3: 55歳,男性。紅色腫瘤を伴う紅斑性局面,および肛門から口側1cmまで連続する病変があり,さらに直腸には非連続性の腫瘤も認めた。病理組織学的には3例ともPaget病であり,症例3の直腸病変はadenocarcinomaであった。病変が歯状線を越えていない症例1では,肛門括約筋を温存して腫瘍摘出術を行い,両側V-Y伸展型臀部皮弁で再建を行った。浸潤が歯状線を越え直腸に達している症例2と,直腸癌を合併した症例3では人工肛門造設術および腹会陰式直腸切断術を行った。3例とも再発転移は認めていない。Paget病変の口側への浸潤が歯状線にとどまる場合は,直腸粘膜を引き出すことにより肛門機能の温存が可能と考えられた。
  • —フマル酸エメダスチン(ダレン®カプセル)の影響—
    加藤 則人, 平野 眞也, 末広 晃宏, 池永 健治, 安野 洋一
    2001 年 63 巻 3 号 p. 314-317
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    慢性成人型アトピー性皮膚炎(AD)患者の皮疹増悪時とフマル酸エメダスチン(ダレン®カプセル)を含む薬物治療による皮疹軽快時に,それぞれTh2, Th1のマーカーとされる血漿中可溶性CD30(sCD30)値,CD26(sCD26)値を測定した。皮疹増悪時のAD患者40例の血漿中sCD30値,sCD26値は,ともに非アトピー対照12例より有意に高値であった。解析症例40例のうち20例がフマル酸エメダスチン,20例がd-マレイン酸クロルフェニラミンを内服した。両群間の治療前の血漿中sCD30·sCD26値,血清IgE値,血清LDH値,末梢血中好酸球数,皮疹スコア·面積に有意な差は認められなかった。フマル酸エメダスチンあるいはd-マレイン酸クロルフェニラミン内服を含む平均治療日数192±113日の前後で皮疹スコア·面積や血清LDH値,好酸球数は両群ともに有意に低下した。血清IgEは両群とも治療前後で有意な変動を認めなかった。AD患者の血漿中sCD30値はフマル酸エメダスチン内服群では有意に低下したがd-マレイン酸クロルフェニラミン内服群では有意な変動はみられなかった。一方,血漿中sCD26値は,両群とも有意な変動を認めなかった。以上より,フマル酸エメダスチンは直接的あるいは間接的にTh2の活性化を抑制する作用を有することが示唆され,ADをはじめとするアレルギー疾患の治療薬として有用であると考えられた。
  • —ケトコナゾールクリームを用いた検討—
    白方 裕司, 橋本 公二, 町野 博, 和田 民子
    2001 年 63 巻 3 号 p. 318-321
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2010/09/02
    ジャーナル 認証あり
    脂漏性皮膚炎患者51例で,外用抗真菌剤ケトコナゾールクリーム(商品名: ニゾラール®クリーム)の臨床的有用性を検討した。今回は,外用剤が塗布しにくい被髪頭部に病変を有する患者を対象とし,より効果的に薬剤を投与するために補助具(アダプター)を使用した。併せて,その使用感·塗布状況などについてを患者アンケートを実施し調査した。患者の塗布状況で層別比較してみると,患者アンケート調査で「うまく塗れた」と回答した群での改善率は95.0%(19/20例),「まあまあうまく塗れた」と回答した群を合わせると改善率は81.3%(13/16例)であり,「うまく塗れなかった」と回答した群の改善率25.0%(3/12例)に比し有意に高かった。アダプターを装着した投薬は,塗布しにくい被髪頭部などにおいて薬剤コンプライアンスを高めるのに有効であり,その結果として良好な治療成績を得ることができると思われた。
世界の皮膚科学者
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