31歳,女性。22歳時,顔面の環状紅斑の既往がある。28歳頃から長時間の立位後,下肢に紫斑を生じることがあったが,妊娠後,増悪するため,妊娠8ヵ月時に当科を受診した。初診時,両下腿に径2~3mmの紅斑ないし紫斑が多発,一部癒合して局面を形成し,色素沈着を伴っていた。抗SS-A抗体30.8 ELISA index,抗SS-B抗体138.4 ELISA index,
γグロブリン2.0g/dl。ガムテスト正常, Schirmerテスト正常,Rose-Bengal染色テストおよびfluorescein染色テスト陽性。組織は真皮血管周囲性の好中球性細胞浸潤が主体で,核塵と赤血球の血管外漏出がみられた。紫斑は安静のみで妊娠約9ヵ月で色素沈着を残し軽快した。出生した児は環状紅斑と心室中隔欠損を伴い,抗SS-A, SS-B抗体高値で新生児エリテマトーデス(LE)と診断された。以上より,自験例の紫斑は血管炎に
γグロブリンおよび血液粘稠度の増加,妊娠に伴う循環血漿量の増加や子宮の圧迫による下大静脈還流障害などが加味されて生じたと考えられ,高
γグロブリン血症性紫斑と診断した。しかし,抗SS-A, SS-B抗体高値であること,乾燥性角結膜炎が疑われ,新生児LE児を出産したことより,厚生省の改定診断基準を完全には満たしていないが,基礎疾患としてSjögren症候群を有する可能性も考えられる。高
γグロブリン血症性紫斑の妊婦では抗SS-A, SS-B抗体を確認し,胎児の心症状に留意することが肝要である。
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