西日本皮膚科
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65 巻, 2 号
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図説
症例
  • 松本 美緒, 植木 理恵, 坪井 良治, 小川 秀興, 山本 恵美子, 山本 純子, 小島 豊, 片見 厚夫, 平井 周
    2003 年 65 巻 2 号 p. 117-121
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    症例1, 42歳, 男性。症例2, 26歳, 男性。両症例とも上腹部痛を伴って両下腿に紅色丘疹と紫斑が多発した。両者とも, 血液検査では凝固系機能に異常なく炎症所見のみ上昇し, 紫斑部生検ではleukocytoclastic vasculitisを認めた。また上部消化管内視鏡検査では十二指腸第2部に多発性潰瘍を認めたため, 消化器症状を伴うSchönlein-Henoch紫斑病と診断した。症例1はプレドニン80mg/日の投与, 症例2はソルメドロール1g/日のパルス療法により腹部症状及び皮疹は著明に軽快し, 内視鏡所見も改善した。腹部症状の重篤な症例では早期に内視鏡検査を施行し, 副腎皮質ステロイドの大量投与療法を実施することが望ましいと考えた。本邦過去15年間の十二指腸病変を合併した報告例を検討したところ, 十二指腸第2部の病変が報告の約80%を占め, 本疾患に特徴的な病変であると思われた。
  • 長井 秀明, 王生 淳子, 杉山 博子, 玉田 康彦, 松本 義也
    2003 年 65 巻 2 号 p. 122-125
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    58歳,女性。1998年よりシェーグレン症候群と診断され経過観察中,両下肢に蕁麻疹様紅斑,紫斑が出現,次第に上肢,体幹へ拡大,持続する為,2000年11月精査目的で入院。病理組織像にて,leukocytoclastic vasculitisの所見を認め,蛍光抗体直接法では,真皮乳頭層の血管壁にIgG, IgM, C3の沈着を認めた。IgG 2880mg/dl, IgA 1450mg/dl,クリオグロブリン陽性。免疫電気泳動法において,IgA κ-type M蛋白を認めたが,尿中Bence Jenes蛋白陰性,骨髄生検にて異常はみられなかった。以上よりシェーグレン症候群に続発した二次性蕁麻疹血管炎と診断した。治療においてはステロイド抵抗性でDDS(レクチゾール)が著効した。Multiple myelomaや類縁疾患への移行も配慮し,今後も定期的なγ-グロブリンの検査が必要であると考えた。
  • 阿部 俊文, 河野 通良, 山本 暢宏, 森 理, 橋本 隆, 天谷 雅行
    2003 年 65 巻 2 号 p. 126-129
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    74歳女性に生じたD-ペニシラミンにより誘発されたと考えられる疱疹状天疱瘡の1例を報告した。15年前に近医整形外科にて慢性関節リウマチと診断され,4年8ヵ月前よりD-ペニシラミンを内服していた。全身のそう痒とともに右大腿部と腰背部に辺縁に小水疱を伴う環状の浮腫性紅斑が出現し全身に拡大してきたため当科に紹介された。組織像では表皮内水疱を認め,好酸球性海綿状態を伴っていた。蛍光抗体直接法および間接法においてIgG抗表皮細胞間抗体を認めた。免疫プロット法では陰性であった。ELISA法では初期の血清では,抗デスモグレイン(Dsg)1·Dsg 3抗体とも陰性であったが,後に抗Dsg 1抗体のみ陽性となった。以上の臨床症状,検査所見と薬剤誘発性天疱瘡を好発するD-ペニシラミン内服の既往よりD-ペニシラミン誘発性疱疹状天疱瘡と考えた。
  • 渡辺 幸恵, 森田 明理, 新谷 洋一, 辻 卓夫
    2003 年 65 巻 2 号 p. 130-133
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    26歳,男性。8歳時に左前腕の皮下結節でサルコイドーシスを発症し,ステロイド内服により一進一退の経過を辿っていた。14歳頃から魚鱗癬様の皮疹や難治性の潰瘍が出現しはじめ,次第に表在リンパ節腫脹や筋力低下などを伴ってきた。生検にて皮膚,筋肉,リンパ節,胸骨髄に類上皮細胞結節を認め,サルコイドーシスによる症状と診断した。ステロイドの増量はサルコイドーシスの病勢を安定させたが,皮疹の肉眼的所見の改善にはあまり効果が無かった。
  • —骨腫を伴った1例を含めて—
    小林 眞理, 菊池 麻紀, 栗村 理恵, 石崎 純子, 繁益 弘志, 原田 敬之
    2003 年 65 巻 2 号 p. 134-137
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    症例1: 65歳,女性。初診の3年前より前額部から鼻根部に小結節が多発してきた。患部には特にカフェ·オ·レ斑や眼病変等は伴わず,また家系内に類症やレックリングハウゼン病を疑わせる者はいない。症例2: 75歳,男性。40歳頃より右後頚部に小結節が生じ,徐々に増数し,さらに右腰背部にも出現した。症例3: 51歳,女性。20代半ばに後頭部に,47歳頃右顎部にそれぞれ小結節が生じた。3例とも病理組織学的に神経線維腫と診断。また症例1は骨腫と石灰化を伴っていた。3例の分布および骨腫の合併について若干の考察を加え報告した。
  • 濱田 洋, 神崎 保, 瀬戸山 充, 内田 裕一, 納 光弘
    2003 年 65 巻 2 号 p. 138-141
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    68歳,男性。1992年8月頃より,「ろれつがまわらない,歩行時にふらつく」などの症状が出現,同年10月当院神経内科に入院した。10月中旬頃より腰部と両下肢に自覚症のない皮疹が現れた為,当科紹介受診となった。皮膚生検組織の病理組織検査にて悪性リンパ腫と診断され,1993年2月22日精査加療を目的に当科に転科入院した。入院後インターフェロンγを連日筋肉内投与したところ,皮膚症状·神経症状ともに著明に改善した。また病理組織学的にも真皮上層から中層における浸潤細胞の減少を認めた。原疾患を加療することにより神経症状の改善を認めたことより,本症例の中枢神経症状を腫瘍随伴性小脳変性症と診断した。興味深い症例であり,若干の文献的考察を加えて報告した。
  • 菊池 英維, 黒川 基樹, 瀬戸山 充, 黒木 正臣, 清水 哲哉, 浅田 祐士郎
    2003 年 65 巻 2 号 p. 142-145
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    61歳,男性。出生時より右下腿後面に黒色斑を認めたが増大傾向なく放置していた。1年前より同部に腫瘤を形成し,徐々に増大してきたため,2001年8月15日当科を受診した。右下腿後面に13×13mmの濃淡のある頂部の潰瘍化した黒色ドーム状腫瘤を認め,excisional biopsyの結果,悪性黒色腫と診断し,同年8月23日精査加療の目的で入院した。胸部CTにて右肺下葉S6胸膜直下に径約10mmの腫瘤像を認め,当初は悪性黒色腫の肺転移と診断していたが,胸部CTガイド下の針生検では扁平上皮癌の組織所見を認めた。悪性黒色腫と肺癌の重複癌は極めて稀であり,また肺の腫瘤性病変に対する生検方法についての文献的考察も行ったので報告する。
  • 小林 美和, 山元 修, 安田 浩, 旭 正一
    2003 年 65 巻 2 号 p. 146-149
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    症例1は57歳の男性。外傷を契機に臀部慢性膿皮症を発症し,罹病約2年で有棘細胞癌を併発した。両鼠径リンパ節転移があり,化学療法,放射線療法および手術療法を行ったが,8ヵ月後に遠隔転移がみつかった。症例2は68歳の男性。20年前より臀部慢性膿皮症で治療を受けていたが,有棘細胞癌を併発した。放射線療法,手術療法を行い術後3年まで再発および転移はみつかっていない。臀部慢性膿皮症は有棘細胞癌の発生母地として取り扱い,早期に根治的手術療法を行うべきである。
  • 山本 純照, 宮川 幸子, 谷口 夏子
    2003 年 65 巻 2 号 p. 150-154
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    89歳,女性。寝たきりの高齢糖尿病患者の仙骨部褥瘡から生じた非クロストリジウム性ガス壊疽の1例を報告した。X線及びCTにて皮下ガス像を認め,同部に握雪感を触知した。切開にてガスとともに強烈な腐敗臭を伴う大量の膿を認めた。膿の培養にてBacteroides distanosis及びBacteroides uniformisが検出された。病理組織学的所見として,真皮から皮下組織にかけてガスの貯留によると思われる多数の大小の裂隙と真皮下層までの広範囲の変性,壊死,さらに小動静脈の血栓形成,血管壁の膨化を認めた。治療としては高齢,コントロール不良の糖尿病,全身状態の悪化などを考慮し,広範囲デブリードマンは施行し得ず,抗生物質の投与,高カロリー輸液,血糖コントロール及び創部の洗浄,消毒,壊死組織の除去を行ったが,患者は入院後23日目に死亡した。
  • 宇宿 一成, 福丸 聖太
    2003 年 65 巻 2 号 p. 155-157
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    Gianotti-Crosti症候群は種々のウイルスに対する宿主の非特異的な皮膚反応と考えられる。ポリオワクチン接種後,熱発に引き続いて顔面,四肢遠位部に掻破痕を伴う紅色丘疹を生じた。皮疹の分布と性状,病理組織所見およびHBs抗原陰性だったことからGianotti-Crosti症候群と診断した1歳女児の症例を2例経験した。症例1はワクチン接種後2日,症例2では接種後3日で皮疹が出現した。いずれも重篤な全身症状を呈することなく,4週間で軽快した。同様の皮疹をみたときには予防接種歴を聴取することも必要と考えた。
  • 小笠原 弓恵, 武藤 正彦, 小笠原 万里枝, 愼村 浩一, 比留間 政太郎
    2003 年 65 巻 2 号 p. 158-161
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    症例は35歳,女性,主婦。約2週間前に鼻根部付近に示指頭大の比較的境界明瞭な同心円状の紅斑,丘疹が出現し,次第に皮疹は拡大した。初診時鼻根部付近に胡桃大の境界不明瞭な紅斑丘疹病変を認め,KOH陽性,体部白癬と診断した。同時期ペットのチンチラ(Chinchilla laniger)に脱毛斑があり,両者より皮膚糸状菌を分離し,発育性状からTrichophyton(以下T.)mentagrophytesと同定した。本分離株は,核リボゾームRNA遺伝子におけるinternal transcribed spacer 1(ITS 1)領域の塩基配列の解析により,Arthroderma vanbreuseghemiiと再同定された。治療はイトラコナゾール内服にて患者およびチンチラのいずれも治癒した。ここ数年ペット,特に齧歯類から感染したと推測されるT. mentagrophytes complexによる白癬の報告が散見されており,このようなケースではペットが感染源である可能性を考え,積極的に真菌検索を進めることが重要であると考えた。
  • 東 佳織, 山口 隆広, 清水 昭彦, 久保田 由美子, 桐生 美麿, 中山 樹一郎
    2003 年 65 巻 2 号 p. 162-164
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    熱帯魚飼育歴のある55歳男性の上肢に生じたMycobacterium marinum(以下M. marinum)感染症の1例を報告した。水道工事中に右III·V指に擦過傷を生じ,2週後同部に発赤,腫脹,右前腕に数個の紅色丘疹,上腕内側に小結節が出現。抗生剤,鎮痛剤投与を受けるも,結節が増大してきたため,2001年1月27日当科受診。熱帯魚飼育歴があったことよりM. marinum感染症を疑い,ミノサイクリンおよびニューキノロン系抗菌剤を投与するも,結節はリンパ行性に増加した。右前腕内側紅色結節の生検では,真皮から皮下組織にかけて膿瘍と肉芽腫形成を認めた。組織片の28℃での小川培地培養では10日間で黄白色のS型集落を形成。DNA-DNA hybridization法でM. marinumが同定された。薬剤感受性のみられたリファンピシン,エタンブトールの投与に変更したところ,約2ヵ月で皮疹は縮小し,6ヵ月で消退した。
講座
治療
  • 森田 栄伸, 松尾 裕彰, 出来尾 哲
    2003 年 65 巻 2 号 p. 172-174
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    人工蕁麻疹に対するアレロック®(塩酸オロパタジン)の臨床効果を検討した。総症例13例のうち12例で臨床効果が判定できたが,1例は眠気のため服薬状況が50%以下であり効果判定不能であった。4週後の改善率は58.3%,8週後の改善率は75.0%であった。改善率は週数の経過とともに上昇した。8週間の投与により臨床検査値の異常はみられなかった。以上の結果から,アレロック®は人工蕁麻疹に対して有用な薬剤であると考えた。
  • 窪田 泰夫, 勝浦 純子, 森上 徹也, 松岡 由恵, 中井 浩三, 杉村 知江子, 青山 正子, 高井 郁美, 沼原 利彦, 吉田 智子
    2003 年 65 巻 2 号 p. 175-182
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    今回我々は中等症以上の19例の苔癬化または痒疹結節を混じる躯幹·四肢の成人アトピー性皮膚炎の治療において,まず導入期治療としてタクロリムス軟膏とベリーストロング以下のステロイド軟膏との交互併用療法を2週間行い,その後皮疹の状態に応じてタクロリムス軟膏単独外用の維持療法に移行する連続療法を実施し,その効果を組織学的所見も含めて検討した。特に上肢では開始2週目から皮疹およびそう痒の改善が統計学的に有意に認められ,その後も改善状態が維持された。しかも苔癬化病変ならびに痒疹結節などのアトピー性皮膚炎の慢性皮膚病変に対しても連続療法開始2週間で皮疹重症度スコアが半減し,改善の持続が認められた。また結節部の組織所見においても治療後は表皮肥厚が著明に減少し,真皮の炎症性細胞浸潤も浅層にわずかに認めるのみとなった。タクロリムス軟膏の効果的な使用にあたってはステロイド軟膏との上手な併用により,両者の優れた特徴を活かすことで,アトピー性皮膚炎患者の苦痛を速やかに軽減し,かつ副作用の発現を最小限に抑えて,長期にわたる安全かつ良好なアトピー性皮膚炎の病変のコントロール並びに患者QOLの改善,維持が期待できるものと思われる。
  • —シクロスポリンMEPC製剤(ネオーラル®)のモニタリング法について—
    梅澤 慶紀, 金野 美果, 馬渕 智生, 飯塚 万利子, 松山 孝, 小澤 明
    2003 年 65 巻 2 号 p. 183-187
    発行日: 2003/04/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    シクロスポリン(CYA)の乾癬に対する臨床的有用性はほぼ確立した。しかし,その腎毒性,高価な薬剤費からも血中濃度モニタリング(therapeutic drug monitoring, TDM)に基づくより有用な治療法の確立が必要となってきた。しかし,既存のCYA製剤であるサンディミュン®では,その吸収,血中動態に問題があり,現実的にモニタリングが困難であった。そこでCYAをマイクロエマルジョン製剤化し,サンディミュン®に比べ,患者間での吸収のバラツキが少なく,個体内での吸収のバラツキも少なくなったとされるCYA-MEPC製剤であるネオーラル®を用いて, TDMに基づく治療法の確立が可能か否かを,その血中動態から検討した。今回,ネオーラル® 3.0mg/kg/日(分2)内服を行った尋常性乾癬患者13例におけるCYAの12時間の血中動態を観察した。その結果,トラフレベル(薬物血中濃度底値, trough level)は61.5~232.5 ng/ml,血中濃度—時間曲線下面積(area under the concentration-time curve, AUC)は2065.8~6123.3ng·hr/mlを示し,症例毎に血中動態のバラツキを認めた。しかし,その推移において,血中最高濃度(Cmax)は,いずれも内服4時間までに認められ,既存の剤型であるサンディミュン®と比較して,明らかに改善が認められた。同一症例における再現性については,各症例2回観察で,13例中10例では,トラフレベル,AUCの差が20%以内であり,血中動態の再現性があることが確認された。また,トラフレベルとAUCの問に有意な相関(r=0.83, p<0.01)を認めた。以上のことから,乾癬に対するCYA療法において臨床におけるTDMを基盤としてより有用な治療法が確立できる可能性が示唆された。また,AUCとトラフレベルの相関性が認められたことから,トラフレベルが治療指標として用いることができる可能性も示唆された。
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