西日本皮膚科
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65 巻, 5 号
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図説
綜説
症例
  • 中野 純一郎, 上里 博, 新垣 肇, 野中 薫雄, 久貝 雪野, 金城 福則, 佐久田 斉
    2003 年 65 巻 5 号 p. 429-432
    発行日: 2003/10/01
    公開日: 2008/05/23
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    口腔内アフタ性潰瘍,血栓性静脈炎,陰嚢部潰瘍を認め,眼症状を欠いた不全型ベーチェット病の24歳,男性。初診より約6ヵ月後,右第3指指尖部壊疽を認め,血管造影により手動脈弓,指動脈に数カ所の動脈閉塞,狭窄部を確認し末梢動脈閉塞型の血管ベーチェット病と診断した。皮下の血栓性静脈炎など細小面管の炎症性病変はベーチェット病の基本的な病態像であるが,中大血管に病変を生じることがあり,それに伴って多彩な症候を呈する場合,血管ベーチェットとよばれ,特殊病型として扱われる。そのなかでも自験例のような末梢動脈閉塞型の報告は稀である。また自験例は消化器にも多発性潰瘍を形成するなど病変が多彩であり,今後も定期的にRIベノグラフィやCTなどの検索を行い,他部位での発症を早期発見する必要があると思われた。
  • 久保田 由美子, 中山 樹一郎
    2003 年 65 巻 5 号 p. 433-437
    発行日: 2003/10/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    14歳の男子。1996年5月22日当科初診。典型的な皮膚症状(蝶形紅斑,ヘリオトロープ疹,Gottron’s sign)と四肢近位筋の脱力,筋原性酵素の上昇,筋電図,皮膚,筋生検で小児皮膚筋炎と診断し,ステロイド内服治療を約1年行いほぼ完治状態であった。その後顔面の紅斑と肘,膝,手指関節背面の紅斑は出没を繰り返していたが,ステロイド外用で軽快していた。2001年,皮膚筋炎の皮疹部に一致してそう痒のある角化性紅斑が出現。左上腕部紅斑は病理組織学的に乾癬の像であり,皮疹はマキサカルシトール軟膏外用で軽快した。一方,上背部紅斑の生検では,表皮の萎縮と基底膜の肥厚が認められた。検査所見では抗核抗体が80~160倍以外異常なく,筋症状もない。爪の小陥凹も認められ,皮疹はビタミンD3軟膏に反応するが,乾癬様皮疹は以前の皮膚筋炎の皮疹部に一致することより現時点では皮膚筋炎の皮疹と考えた。
  • 樋口 雅子, 名嘉眞 武国, 安元 慎一郎, 橋本 隆
    2003 年 65 巻 5 号 p. 438-442
    発行日: 2003/10/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    大型犬による飼い主以外の犬咬傷の3例を経験した。症例は高齢者2例と小児であり,いずれも上肢を受傷していた。高齢者の2例では広範囲の皮膚欠損により植皮術を要し,8歳男児例では受傷後早期に閉鎖された創の縫合不全がみられた。犬咬傷では創汚染がほとんど必発であり,初期治療としては創の閉鎖を急がずにとりあえず開放創とすべきであると考えた。感染予防対策としては予防的抗生剤の投与を行い,場合によっては破傷風トキソイドと抗破傷風免疫グロブリンの投与を考える必要がある。近年のペットブームにより,今後比較的大きな皮膚欠損を認める犬咬傷を診療する機会が増えるものと考えられ,本疾患に対するプライマリケアの知識は重要と考えた。
  • 宇宿 一成
    2003 年 65 巻 5 号 p. 443-445
    発行日: 2003/10/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    症例1は13歳,女性。3ヵ月前頃より入浴後に両手の手掌,指腹が著明に白色浸軟化するようになった。入浴後20分で症状は消退する。繰り返すうちに徐々に手掌が角化し,違和感を感じるようになった。浸水試験によって上記症状が再現され,病理組織学的には過角化と汗管の開大を認めたため,aquagenic palmoplantar keratodermaと診断した。また,1年ほど前から毎日のようにケミカルピーリングを素手で行っている皮膚科医の手指に症例1と同様の症状が認められ,バリア機能の障害が本症の重要な成因のひとつとして推測されると考えた。
  • 平林 香, 諏訪部 寿子, 松山 孝, 小澤 明, 栗原 誠一
    2003 年 65 巻 5 号 p. 446-450
    発行日: 2003/10/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    症例1: 57歳,男性。幼少時から日光曝露により露光部に紅斑,小水疱が出現するようになった。原因が不明のまま,皮疹が出現した時のみ近医で外用療法を受けていた。症例2: 7歳,男児。2,3歳頃から露光部に被刺激感とともに浮腫性紅斑が出没していた。2000年9月,長時間の日光曝露で同様の症状が出現し,湘南皮膚科を受診した。ポルフィリン症を疑われ,当科を紹介された。両症例とも尿中ポルフィリン体は認められなかったが,光溶血試験は陽性で,赤血球プロトポルフィリンの高値を認めた。臨床症状,病理組織所見および赤血球蛍光現象で蛍光赤血球も認められたことから,両症例を骨髄性プロトポルフィリン症と診断した。症例1ではGOT,GPT,γ-GTPの軽度上昇を認めた。症例2では肝機能に異常は認めなかったが,腹部超音波検査で胆石症を指摘された。2症例とも誘発テストでは皮疹の再現はできなかったので,本症の本邦報告例における誘発テストについても考察した。また,骨髄性プロトポルフィリン症に合併する肝障害や胆石症について文献的考察を加えて報告した。
  • 小林 順一, 中野 龍治, 桐生 美麿, 吹譯 紀子, 古江 増隆
    2003 年 65 巻 5 号 p. 451-454
    発行日: 2003/10/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    53歳女性の項部に生じた顆粒細胞種の1例を報告した。免疫組織化学的検索の結果, S-100蛋白, neuron specific enolase(NSE), vimentin, α1-antichymotrypsin, CD68が陽性。α-smooth muscle actin(SMA), HHF35は陰性であった。透過型電顕観察の結果, 腫瘍細胞は基底膜構造を有し, 細胞質内の顆粒はlysosomeであった。また, 腫瘍細胞には神経鞘腫でみられるangulated bodyが散見され, 腫瘍の一部は軸索とともに皮膚末梢神経の形態を保っていた。以上の所見より本腫瘍の組織起源はシュワン細胞由来であると考えられた。さらに, α1-antichymotrypsin, CD68が陽性であるlysosomeの解析が本症の今後の病態解明の手がかりになると考えた。
  • 竹内 善治, 園田 忠重, 阿南 隆, 高安 進, 藤原 作平, 澁谷 博美, 浅田 裕司
    2003 年 65 巻 5 号 p. 455-458
    発行日: 2003/10/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    74歳,男性。約20年前より外陰部にそう痒性皮疹が出現。皮疹は徐々に拡大。生検の結果乳房外パジェット病と診断。術前,病変部に対して5-aminolevulinic acidによるphotodynamic diagnosis(PDD)を行ったところ,病変部に一致して赤色蛍光が認められた。肉眼的には正常にもかかわらず,赤色蛍光を発し,病理組織でパジェット細胞を認めた部位が3ヵ所存在した。手術ではPDDにて蛍光を発した部分および明らかな病変部辺縁より3cm遠位にて腫瘍を切除した。術後3年の経過観察中であるが,再発·転移は認めていない。また,大分医科大学皮膚科において最近3年間に経験した本例の他8例の乳房外パジェット病に対しても,腫瘍範囲の決定に際してPDDの有用性を検討した。偽陽性を減少させる手技上の工夫が今後必要と考えられたが,乳房外パジェット病にPDDを応用すれば,腫瘍範囲の決定が容易となると考えられた。
  • 平林 香, 諏訪部 寿子, 松山 孝, 小澤 明, 宮北 英司
    2003 年 65 巻 5 号 p. 459-461
    発行日: 2003/10/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    63歳,男性。2000年2月頃,顔面の3ヵ所の皮疹に気付いた。2月29日,当院泌尿器科にて腎細胞癌のため右腎臓摘出術施行。その後,肺転移のため呼吸状態悪化。その間,皮疹は徐々に増大し,また,易出血性であったため2000年7月29日当科依頼となった。皮疹は皮表から隆起した,境界明瞭,表面ほぼ平滑でやや凹凸のある,立ち上がりのはっきりした暗赤色の腫瘤であり,血管拡張性肉芽腫様の外観であった。症例の既往や臨床的特徴から腎細胞癌皮膚転移を考え生検施行。病理組織学的所見は摘出された右腎腫瘍と一致していた。今回,腎細胞癌由来転移性皮膚腫瘍について本邦報告例を検討し,また,このような血管拡張性肉芽腫様概観を来たす転移性皮膚腫瘍について文献的考察を行った。
  • 三浦 由宏, 藤崎 伸太, 安芸 雅史, 林 秀樹, 桑原 守正
    2003 年 65 巻 5 号 p. 462-464
    発行日: 2003/10/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    症例は75歳女性,2000年6月肉眼的血尿を主訴に当院泌尿器科を受診し,膀胱鏡下生検にて膀胱癌(transitional cell carcinoma[以下TCCと略す],組織学的異型度: Grade[以下Gと略す]2,T2[癌浸潤が筋層に及ぶ])と診断,同年9月膀胱全摘および尿管皮膚瘻造設術を受けた(TCC,G3,pT3b[肉眼的に膀胱周囲組織への浸潤が確認できる],N0[所属リンパ節転移なし],M0[遠隔転移なし])。手術後8ヵ月目に腹部正中から左下腹部にかけて丹毒様の紅斑と左下肢の浮腫が出現してきた。皮膚生検にて真皮深層から脂肪織にかけて異型性に富む細胞を多数認め,膀胱癌皮膚転移と診断した。抗癌剤(M-VAC)による化学療法を予定していたが,皮疹が出現してから約1ヵ月後,心不全にて死亡した。
  • 福丸 聖太, 内野 ゆり, 武田 浩一郎, 四本 信一, 金蔵 拓郎, 神崎 保
    2003 年 65 巻 5 号 p. 465-468
    発行日: 2003/10/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    症例1: 75歳,男性。腰痛症に対してカルバマゼピン投与開始約3週間後より右大腿に紅斑が出現し,全身に拡大。発熱や口腔粘膜のびらんを伴い.左右鼠径リンパ節の腫脹もみられた。症例2: 53歳,男性。脳梗塞後遺症にてカルマバゼピン内服開始約5ヵ月後より顔面,陰嚢に紅斑が生じ,全身に拡大。発熱や全身倦怠感を伴い,両側の頚部リンパ節および鼠径リンパ節も触知した。2例ともヒトヘルペスウイルス6(似下HHV-6) 抗体価の上昇が認められた。
研究
  • —カラゲニン浮腫モデルによる検討—
    安田 浩, 小林 美和, 山元 修, 木下 涼子, 中川 英華, 戸倉 新樹
    2003 年 65 巻 5 号 p. 469-471
    発行日: 2003/10/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    皮膚科領域では外用ステロイドをしばしば保湿剤等と混合して用いているが,その是非については意見が分かれるところである。今回ラット足蹠でのカラゲニンによる急性浮腫モデルにおいて,種々のステロイド外用剤を保湿剤と等量混合した場合と単剤使用した場合とでその抑制効果を比較検討をした。その結果,ほとんどの組み合わせで混合剤はステロイド単独時と同等の浮腫抑制効果を示した。ステロイド混合使用は利点もあるが,欠点も多く指摘されている。今回の検討からは,混合により抑制効果を柔らげるという意味合いは薄いと考えられた。
講座
統計
  • 菊池 英維, 天野 正宏, 黒川 基樹, 緒方 克己, 瀬戸山 充
    2003 年 65 巻 5 号 p. 479-482
    発行日: 2003/10/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    宮崎医科大学医学部皮膚科学教室の開講以来25年間に経験した熱傷瘢痕癌16例について,予後,治療法も含めて臨床的検討を行った。全16例中12例が有棘細胞癌(SCC)であり,次いで悪性黒色腫(MM)が3例,残る1例は基底細胞癌(BCC)であった。男女比は9:7であり,年齢は25~78歳にわたり平均は58.3歳(男性62.4歳,女性53.5歳)であった。発生部位では下肢が7例と最も多く,次いで頭部が4例,その他の部位が5例であった。またSCC例は同期間中に当科で経験した全SCC 230例(表皮内癌は除く)中5.2%,一方,MMは同188例中1.6%,BCCでは同322例中0.3%を占めていた。熱傷受傷から癌と診断されるまでの期問は18~74年にわたり平均50.6年と非常に長く,また受傷時年齢が高いほど癌化までの期聞が短かった。予後については,とくにSCCにおいて5年生存率が64.3%を示し,熱傷瘢痕癌以外のSCCのそれに比べて悪かった。
治療
  • 飯島 茂子, 津田 毅彦, 並川 健二郎, 鈴木 靖子
    2003 年 65 巻 5 号 p. 483-489
    発行日: 2003/10/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    長期の喫煙歴,糖尿病を有する閉塞性動脈硬化症Fontaine IV度の74歳男。虚血性潰瘍の治癒後に継続する足部のシビレ·冷感·安静時疼痛に対して,多価不飽和必須脂肪酸の一つであるγリノレン酸を試みた。γリノレン酸含有オイルの外用にて臨床的に症状は改善し,中止にて再燃した。γリノレン酸150mg/日の内服にても症状が改善し,内服12週後には症状は消失した。内服前後で,下肢のサーモグラフィによる皮膚温は,特に患側の左足において明らかに改善し,比濁法による血小板凝集能も抑制された。このことから,サーモグラフィによる皮膚温の上昇は,血小板凝集を抑制する結果,血液の流れを改善させたことによると考えた。γリノレン酸の投与により,病変の改善と血小板凝集抑制効果を同時に明らかにした臨床例は,渉猟しえた限りで報告はない。γリノレン酸は通常の食事からは摂取されにくいので,栄養学的な観点からも,難治性の場合にはγリノレン酸の投与も治療の一つになりうると考えた。
  • 横田 浩一, 松村 和子, 清水 忠道, 澤村 大輔, 清水 宏
    2003 年 65 巻 5 号 p. 490-494
    発行日: 2003/10/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    爪白癬に対し,イトラコナゾール200mg/日,1週間投薬,3週間休薬というパルス投与を6サイクル行い,治療効果および安全性について検討した。総症例数は24例で,そのうち安全性評価22例,有効性評価20例を解析対象とした。爪甲の混濁比は投与前平均8.2であったが,漸減し,投与終了時には,2.0まで改善した。また,治癒症例は,投与開始後3ヵ月目から認められ,経時的に増加した。投与終了時の治癒率は40.0%で,著効以上および有効以上を示した割合は,それぞれ65.0%,90.0%であった。安全性に関しては,副作用として,咳1例,顔面腫脹1例が認められたが,いずれも投薬中止により改善した。また,臨床検査値の異常変動は認められなかった。有効性と安全性を勘案した有効性評価は,「極めて有用」が65.0%,「有用」以上は90.0%であった。以上の成績より,イトラコナゾールのパルス療法は爪白癬に対して有用かつ安全な治療法と考えられた。
  • 久保田 由美子, 中山 樹一郎
    2003 年 65 巻 5 号 p. 495-501
    発行日: 2003/10/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    2001年4月より2002年7月に福岡市近郊の医療機関で治療を行った15歳以上のアトピー性皮膚炎患者62名を対象として,抗アレルギー剤塩酸オロパタジンの臨床効果とQOL(quality of life)に及ぼす影響を検討した。日中·夜間のそう痒の程度,皮膚症状の程度はともに2週目より有意に改善し,投与8週後における改善度はそう痒が95%,皮膚症状が97%であった。治療前後の日常生活上ストレスの変化に対するアンケート調査では治療前に比べて治療後は経時的にQOLの改善が認められた。QOL項目の中でも特に服装の選択や,友人·知入とのつきあいにおける制限が改善されており,アトピー性皮膚炎患者におけるQOL改善に塩酸オロパタジンは有用であった。
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