症例は両下腿の丘疹・紅斑及び紫斑などを主訴とする16歳の女学生。2001年8月より両下腿に痒みを伴った丘疹及び紫斑が出現し,上肢にも拡大した。初診の1週間前より再燃し,2002年5月7日当科を受診した。既往歴・家族歴には特記すべきことはなかった。血液検査ではWBC 10300/mm
3とやや上昇,赤血球528万/mm
3とやや多血症傾向で,IgE上昇(950IU/ml)以外は異常所見はなかった。左下腿部の病変から皮膚生検を施行したところ,表皮は不規則に延長肥大し,表皮内に海綿状変化を認め,真皮には上層に限局して好酸球を混じた単核球の細胞浸潤が目立った。自験例が使用していた靴下止め糊(ソックタッチ
®)の皮膚貼布試験は48,72時間共に小水疱を伴う紅斑を形成し,本邦判定基準で陽性(+++)と判定したが,各成分別の同試験は患者の同意が得られなかったために未施行。躯幹の皮疹は自家感作性皮膚炎(イド反応)として矛盾しないものと考えられた。ソックタッチ
®は白元(株)製のアクリル系粘着剤の液体靴下止めで,スティックのり状になっており,接着剤成分としてポリアクリル酸ナトリウム・トリエタノールアミン塩の混合物(CH
2・CH・COONa)n,(CH
2・CH・COON(C
2H
4OH)
3)nのジュリマーを5~15%含有し,局方エチルアルコール10~30%,グリセリン15%以下,香料微量,精製水残量から構成されていた。
抄録全体を表示