西日本皮膚科
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67 巻, 1 号
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図説
症例
  • 舛 貴志, 芳賀 貴裕, 角田 孝彦
    2005 年 67 巻 1 号 p. 3-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/18
    ジャーナル 認証あり
    11歳の男児。顔面の皮疹にアルメタ®軟膏を外用後,皮疹が悪化したため当科を受診した。受診時,鼻部から頬部にかけて境界明瞭な浮腫性紅斑を認めた。パッチテストで,アルメタ®軟膏の主剤であるプロピオン酸アルクロメタゾンが陽性であり,自験例をプロピオン酸アルクロメタゾンによる接触皮膚炎と診断した。他のステロイド外用剤のパッチテストでは,メサデルム®軟膏,ブデソニド,ロコイド®軟膏,パンデル®軟膏で陽性であり,交差反応を生じたものと考えられた。
  • 前田 学, 藤沢 智美, 日置 加奈, 永井 美貴
    2005 年 67 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/18
    ジャーナル 認証あり
    症例は両下腿の丘疹・紅斑及び紫斑などを主訴とする16歳の女学生。2001年8月より両下腿に痒みを伴った丘疹及び紫斑が出現し,上肢にも拡大した。初診の1週間前より再燃し,2002年5月7日当科を受診した。既往歴・家族歴には特記すべきことはなかった。血液検査ではWBC 10300/mm3とやや上昇,赤血球528万/mm3とやや多血症傾向で,IgE上昇(950IU/ml)以外は異常所見はなかった。左下腿部の病変から皮膚生検を施行したところ,表皮は不規則に延長肥大し,表皮内に海綿状変化を認め,真皮には上層に限局して好酸球を混じた単核球の細胞浸潤が目立った。自験例が使用していた靴下止め糊(ソックタッチ®)の皮膚貼布試験は48,72時間共に小水疱を伴う紅斑を形成し,本邦判定基準で陽性(+++)と判定したが,各成分別の同試験は患者の同意が得られなかったために未施行。躯幹の皮疹は自家感作性皮膚炎(イド反応)として矛盾しないものと考えられた。ソックタッチ®は白元(株)製のアクリル系粘着剤の液体靴下止めで,スティックのり状になっており,接着剤成分としてポリアクリル酸ナトリウム・トリエタノールアミン塩の混合物(CH2・CH・COONa)n,(CH2・CH・COON(C2H4OH)3)nのジュリマーを5~15%含有し,局方エチルアルコール10~30%,グリセリン15%以下,香料微量,精製水残量から構成されていた。
  • 井上 卓也, 三浦 由宏
    2005 年 67 巻 1 号 p. 11-14
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/18
    ジャーナル 認証あり
    19歳の男性。1週間前からの食欲不振と嘔気を主訴に来院し,糖尿病性ケトアシドーシスと診断された。嘔気が出現した同じ時期より,上背部,腰部などにそう痒を伴う紅色丘疹が多発してきた。皮疹は網目状の色素沈着を伴っていた。病理組織学的所見では,真皮上層の血管周囲性の炎症細胞浸潤と軽度の液状変性を認め,苔癬様組織反応に相当する所見と考えた。以上より,色素性痒疹と診断した。インスリン療法によりケトーシスは改善したが,そう痒と皮疹が残存したため,ミノサイクリン療法を開始したところ,軽快した。今回,糖尿病と関連した色素性痒疹の本邦論文報告例を検討し,ケトーシスと皮膚症状との関連について,文献的考察を加え報告した。
  • 竹尾 直子, 大石 正樹, 佐藤 俊宏, 馬場 真澄, 関川 紀子, 三浦 芳子
    2005 年 67 巻 1 号 p. 15-18
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/18
    ジャーナル 認証あり
    症例は26歳,女性。第1子出産前より両腋窩に皮疹を生じ徐々に悪化したため,出産から1ヵ月後の1998年7月に当科を受診した。初診時,両腋窩に鱗屑を有す米粒大暗赤色丘疹が環状に配列し,前腕屈側にも粟粒大暗赤色丘疹が多発していた。その後,皮疹は粟粒大の膿疱を伴うようになり,病理組織検査では規則的な表皮突起の延長を伴う表皮肥厚及び角層下膿疱を認め,当初我々は汎発性膿疱性乾癬と診断した。皮疹はさらに多発したためプレドニゾロン25mg/日の内服,PUVA療法を開始したが効果に乏しくプレドニゾロンは漸減した。1999年6月歯周囲炎に罹患し歯科治療後,皮疹の新生は止まり,2000年5月プレドニゾロンの内服を中止した。2001年8月躯幹,上肢に皮疹が再燃。2002年8月第2子妊娠後より皮疹は膿疱を伴うようになった。治療はステロイドの外用のみを行い,皮疹は軽減した。患者は2003年5月に低出生体重児を出産し,3ヵ月後には皮疹は完全に消退した。このため我々は本患者を疱疹状膿痂疹と最終診断した。低出生体重児を出産した原因として第2子妊娠時では妊娠初期から本症を発症しており罹患期間が長期に及んだためと考えられた。
  • 中山 りわ, 渡辺 秀晃, 秋山 正基, 末木 博彦, 飯島 正文
    2005 年 67 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/18
    ジャーナル 認証あり
    26歳の女性。約1年前より右足背に腫瘤が出現し,徐々に増数してきたため当科を受診した。右足背に小児手拳大の淡紅色斑を認め,その局面内に米粒大から大豆大までの弾性硬の皮下腫瘤を計8個触知した。被覆表皮との癒着はなく下床と癒着していた。多発性毛包嚢腫,静脈石を考え生検を施行したところ,真皮下層から皮下組織にかけて線維化が著明で,線維芽細胞と毛細血管の増生および軽度のリンパ球浸潤を伴っていた。当初診断に苦慮し,足背に生じたfibromatosisを考え,残存腫瘤に対し,さらに2回の摘出術を施行した。病理組織学的に,真皮下層から皮下織にかけてムチン沈着を伴う膠原線維の変性がみられ,その周囲に組織球・リンパ球の浸潤をみる肉芽腫性病変を認め,線維芽細胞および毛細血管の増生を伴っていた。組織学的に皮下型環状肉芽腫,リウマチ結節を考えたが,リウマチ性疾患を疑わせる臨床症状がないため皮下型環状肉芽腫と考えた。
  • 稲福 寿史, 稲福 和宏, 宮城 嗣名, 野中 薫雄
    2005 年 67 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/18
    ジャーナル 認証あり
    Hydroxyurea(以下HU)は,慢性骨髄性白血病(以下CML)の治療薬として現在外来で広く使用されているが,本剤を長期にわたって維持投与された症例に下腿潰瘍を合併したとする報告例が増加している。症例は57歳の男性。1997年9月CMLと診断され,HUの投与(1000~1500mg/日)が開始された。投与12ヵ月後,外顆部に有痛性の潰瘍が出現し始め,近医にて種々の外用療法を行ったが改善はみられなかった。潰瘍出現の原因検索と潰瘍治療法の選択のため,当科紹介入院となった。病理組織学的には真皮中層から深層にかけて小血管と結合織の増生,炎症細胞の浸潤を軽度認めた。血管壁の膨化や変性はなく,血管炎の所見も認められなかった。本症例の潰瘍の原因は,うっ滞性,糖尿病性,血管炎性などが疑われた。入院4日目よりHUを中止し,アクトシン®軟膏外用の保存的治療で約2ヵ月で略治したのでHUによる潰瘍と診断した。HU中止後3年6ヵ月の現在に至るまで潰瘍の再発はみられない。
  • 古賀 佳織, 田宮 正恵, 吉田 雄一, 久保田 由美子, 中山 樹一郎, 山口 隆広, 岩崎 宏, 桐生 美麿
    2005 年 67 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/18
    ジャーナル 認証あり
    85歳の女性の項部に生じたlow grade sebaceous carcinomaの1例を報告した。2年前よりある項部の腫瘤を近医整形外科にて切除されたが,2回再発したため当科紹介受診。項部に,周囲に硬結を伴った径5mmと径7mmの連続性黄白色の結節が2個あり単純切除を行ったが,3ヵ月後に同部に再発した。病理組織学的には,真皮内に表皮と連続して境界明瞭な腫瘍塊があり,各結節のシルエットは比較的左右対称であった。しかし,腫瘍塊は細胞異型を伴う好塩基性小型円形細胞と澄明な泡沫状胞体を有する脂腺細胞で構成され,変性壊死像も観察された。安齋らの分類に従ってlow grade sebaceous carcinomaと診断した。従来,良性腫瘍とされていたsebaceous adenomaをlow grade sebaceous carcinomaと呼び悪性病変に分類する安齋らの分類は妥当であると考えられる。
  • 小川 徹, 和田 秀文, 和田谷 美紀, 立脇 聡子, 秋山 朋子, 千葉 由幸, 花田 美穂, 長谷 哲男, 池澤 善郎, 柳町 祐美, ...
    2005 年 67 巻 1 号 p. 31-33
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/18
    ジャーナル 認証あり
    74歳の女性。2000年に,子宮頸癌にて子宮内放射線照射の既往あり。2001年秋頃より外陰部に黒色病変が出現した。拡大傾向があるため,2002年7月24日,藤沢市民病院皮膚科を受診した。同部位の生検を施行し,Bowen病と診断された。同年8月8日,手術目的にて当科を紹介受診した。初診時,両側陰唇から会陰にかけて,馬蹄型を呈する黒色局面が認められた。2002年8月および9月に,切除術を施行した。5カ月後再発し,2003年6月,12月に再手術を施行したが,断端陽性であったため,放射線治療施行中である。
  • 牧野 公治, 平井 俊二
    2005 年 67 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/18
    ジャーナル 認証あり
    32歳の男性,漁師。2003年9月7日昼,熊本県八代市の海岸でエイに右足背を刺された。激痛があり,当院救急外来を受診,創の洗浄と消毒,セフゾン®やセレスタミン®が投与された。翌日,疼痛の持続と気分不良が強く,当科受診,入院となった。創部浸出液のグラム染色は陰性だったが,培養でVibrio vulnificus (V. vulnificus),Vibrio parahaemolyticusを検出,エイによる魚刺傷部に外傷性のV. vulnificus感染症を伴ったものと診断した。チエナム®倍量,塩酸ミノサイクリン,免疫グロブリン投与及び強酸水による頻回の洗浄を行い,9月25日後遺症もなく退院した。軽症にて改善した理由として(1)基礎疾患がなかったこと,(2)早期の抗菌剤による治療,(3)足浴と創内部の洗浄が奏効した,などを考えた。
  • 凌 太郎, 中房 淳司, 三浦 由宏, 三砂 範幸, 成澤 寛, 西 眞範, 浜崎 雄平, 西本 勝太郎
    2005 年 67 巻 1 号 p. 38-41
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/18
    ジャーナル 認証あり
    妊娠37週6日,体重2526gで出生した女児。出生時より,顔面を除く全身の皮膚に小水疱と落屑を認めた。直接鏡検にて集簇する胞子と仮性菌糸を認め,先天性皮膚カンジダ症と診断した。口唇口蓋裂を認めるものの呼吸状態を含む全身状態は良好で,画像検査にて明らかな異常がなかったことから,塩酸テルビナフィンの外用単独で治療を開始した。しかし,翌日CRP値およびβ-Dグルカン値の上昇を認めたため,病変の拡大や内臓病変の存在を考慮しフルコナゾールの点滴を追加した。その後の経過は良好で,日齢12日に治療を中止したが,再燃を認めていない。
研究
  • 新垣 肇, 上里 博, 武居 公子, 金城 紅子, 稲福 和宏, 新濱 みどり, 野中 薫雄, 翁長 小百合, 仲宗根 勇, 山根 誠久
    2005 年 67 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/18
    ジャーナル 認証あり
    皮膚結核は,Ziel-Neelsen染色による病変部組織における抗酸菌の存在,小川培地などを使用した培養検査により病変部から結核菌が証明されることによって最終的な診断が下される。一般に抗酸菌における遅発育菌の場合,その同定には2~3週間を要する。しかし最近迅速な検出方法としてDNA-DNAhybridization,アンプリコア®マイコバクテリウムなどが臨床的に利用されているが,それらのDNA診断法は培養不成功の症例には使用できない。今回我々は,皮膚腺病3例,皮膚疣状結核1例の4症例に対し,nested PCR法を使用して皮膚病変部から結核菌を証明した。さらに増幅された結核菌DNAの塩基配列をシークエンス法で決定し,原因菌が抗酸菌のなかのMycobacterium tuberculosisと同定した。以上のことから,皮膚結核の診断にnested PCR法を使用すれば,従来のPCR法よりさらに検出感度が上がり,またダイレクトシ-クエンス法を加えれば原因菌の同定が容易に行なえたのでここに報告した。
講座
  • 自験例からのメッセージ
    西川 武二
    2005 年 67 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/18
    ジャーナル 認証あり
    日本で記載された皮膚疾患,皮膚真菌症,水疱症および膠原病のうちから,印象に残っている症例をその後の経過を含め,あらためて紹介し,それらが皮膚科学にいかなる貢献をしたかを著者の観点からまとめた。好酸球性膿疱性毛包炎(太藤)ならびに色素性痒疹(長島)についてはこれらの疾患が著者の時代における日本発の国際的な皮膚疾患であり,国際レベルでの認知度を含め紹介した。ついで異なった黒色真菌が永い年月を隔てて同一患者に感染したという稀有な症例を取り上げ,さらに分離菌Exophiala jeanselmeiが黒色真菌研究にもたらした成果をあげた。IgAが表皮細胞間に沈着する疾患のなかからは,粘膜疹を認めた小児例を取り上げ,その自己抗体の性状分析が病型分類にもつながった経過を紹介し病名の適性について言及した。最後に環状紅斑を主徴とするシェーグレン症候群とエリテマトーデス合併例の中から,自己抗体と環状紅斑について焦点を当てて考察した。今後も臨床から得られた知見をもとに,病態解明,診断あるいは治療につながる研究が行われ,臨床に還元される成果が得られんことを期待したい。
治療
  • 小河 祥子, 中原 剛士, 深川 修司, 國場 尚志, 古江 増隆
    2005 年 67 巻 1 号 p. 56-59
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/18
    ジャーナル 認証あり
    タクロリムス軟膏はアトピー性皮膚炎に有用な外用薬であるが,使用時の刺激感が多くの患者を困惑させている。そこで今回,精製ツバキ油配合アトピコウォーターローション(Atopico® Water Lotion)を用いて,タクロリムス軟膏塗布時の刺激感に対する緩和作用の検討を行った。左右同程度の皮疹を有するアトピー性皮膚炎患者18例の右側にはタクロリムス軟膏のみを外用させ,左側にはアトピコウォーターローションを使用後にタクロリムス軟膏を外用させ,刺激・使用感および皮疹の程度について左右比較を行った。結果,タクロリムス軟膏の副作用である灼熱感などの刺激に関し,顔面では右側よりも左側の方が刺激が緩和されたとの結果を得られた(p<0.05)。患者の感じる臨床効果には有意な左右差はなかった。また,アトピコウォーターローションを併用した場合のタクロリムス軟膏塗布時の使用感に関しては,「刺激が和らいだ」,「ローションの併用で軟膏が塗りやすい」との利点が認められた。以上より,アトピコウォーターローションはタクロリムス軟膏特有の刺激感を緩和しうる有用な皮膚保湿剤と考えられた。
  • 伊藤 義彦
    2005 年 67 巻 1 号 p. 60-66
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/18
    ジャーナル 認証あり
    当診療所における乾癬治療の現状とネオーラル®療法について検討した。ネオーラル®は乾癬治療においてその有効性が認められていることから,多くの医療機関で使用されている。しかし,ネオーラル®による治療費は高額になる。したがって患者の重症度,年齢,罹病期間,職業,経済的背景に応じて,医師と患者が十分なコミュニケーションをとりながら最適な使用方法を選択する必要がある。以上のことから,ネオーラル®の低用量内服療法や隔日内服療法など,治療効果を維持しながら患者の経済的負担を軽減する投与法について述べた。
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