西日本皮膚科
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67 巻, 6 号
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図説
症例
  • 石上 剛史, 辻上 幸司, 多田羅 潔, 佐伯 圭介
    2005 年 67 巻 6 号 p. 563-565
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/14
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    38歳,女性。6歳時,二分脊椎症に伴う腸閉塞のため一時的下行結腸ストーマ造設術をうけた。2000年10月に潰瘍性大腸炎を発症し,2004年5月よりストーマ周囲に有痛性の潰瘍が出現し急速に拡大した。ストーマ周囲に15×25cmの境界明瞭な潰瘍を認め,潰瘍辺縁に軽度浸潤を触れる紅斑がみられた。臨床像および潰瘍性大腸炎に罹患していることよりperistomal PGと診断した。局所処置とプレドニゾロン40mg/日を開始したところ,1週間後には潰瘍は急速に縮小し,40日目にすべて治癒した。本邦での皮膚科領域からの報告例は少ないが,皮膚科医として知っておくべき疾患と思われる。
  • 岩本 孝, 木藤 正人, 小野 友道
    2005 年 67 巻 6 号 p. 566-568
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/14
    ジャーナル 認証あり
    口腔粘膜に水疱や血腫をきたす原因としては,血液疾患,水疱性疾患などいろいろ挙げられる。1967年Badhamは,こういった全身性疾患とは無関係に口腔内に血疱を生ずる病態に対しangina bullosa haemorrhagica(ABH)と命名した。今回われわれは48歳,男性のABHの1例を経験した。本来ABHは良性の疾患であり,本例でも数日で後遺症を伴わず治癒しているが,過去に血疱による気道閉塞の症例報告もあり,注意が必要である。
  • 渡辺 徹心, 進藤 真久, 葉狩 良孝, 山元 修, 三原 基之
    2005 年 67 巻 6 号 p. 569-571
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/14
    ジャーナル 認証あり
    2歳と4歳の女児の姉妹。出生時より肛門付近に小結節を認めていた。病歴,典型的な臨床所見からinfantile perianal pyramidal protrusionと診断した。その後特に加療はせず経過観察中であるが縮小傾向にある。姉妹での発症例は本邦では報告がないため珍しく,遺伝的な素因や生活習慣がその発生に関連している可能性が考えられる。また,治療については4歳まではwait and seeの原則で良いものと思われる。
  • 松下 祥子, 稲沖 真, 藤本 亘
    2005 年 67 巻 6 号 p. 572-575
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/14
    ジャーナル 認証あり
    Folliculosebaceous cystic hamartoma(FSCH)の27歳,男性例を報告する。11歳時より左鼠径部と大腿部の2ヵ所に軟性結節を認め,自壊し分泌物を伴うこともあった。摘出された結節は病理組織学的には真皮内に多数の脂腺小葉で取り囲まれた上皮性の嚢腫構造とその周囲の層状線維増生を認め,さらに間質に膠原線維束,小静脈,脂肪細胞,汗腺管腔構造の増生を伴っていた。FSCHは顔面頭部に孤立性結節として生ずることが多い。自験例において大腿部と鼠径部に結節嚢腫性の病巣として生じた点はFSCHとして稀である。
  • 田代 あかり, 今福 信一, 桐生 美麿, 中守 真理
    2005 年 67 巻 6 号 p. 576-579
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/14
    ジャーナル 認証あり
    68歳の男性。数年前より右頬部に結節を自覚するも放置していた。徐々に隆起してきたため,2004年6月当科受診。初診時,右頬部に一部にびらんを伴った1.5×1cmの境界明瞭な隆起性結節を認めた。脂腺腺腫などを疑い同年7月切除術施行した。病理組織像では,境界明瞭で左右ほぼ対称的な広基性の腫瘤を認め,底部は一部凹凸不整を呈していた。腫瘍の構成細胞は好塩基性に染まる小型の暗調細胞と,泡沫状の細胞質を有する脂腺細胞類似の細胞で,異型が強く核分裂像も多く認めた。免疫組織化学的染色では,低分子ケラチン,EMA,MIB 1が陽性で,S-100蛋白は陰性であった。以上の結果より自験例をsebaceous carcinomaと診断した。脂腺腫瘍の分類はいまだ確立されたとは言い難いが,自験例はその組織学的所見から,2002年に提唱されたlow grade sebaceous carcinomaに相当するものと考えられた。
  • 吉木 竜太郎, 村田 宏爾, 戸倉 新樹, 安田 浩, 橋本 昌典
    2005 年 67 巻 6 号 p. 580-583
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/14
    ジャーナル 認証あり
    70歳,女性。出生時より右頭部に脱毛斑が存在していた。62歳より同部位に痂皮が付着し,潰瘍を形成するようになった。腫瘍の増大,多量の浸出液,悪臭のため当院を受診。初診時,右側頭部から頭頂部にかけて30×20cmの巨大な潰瘍性病変を認めた。生検から基底細胞癌を疑い,切除および遊離大腿皮弁を用いた再建を行った。摘出検体の病理学的検討から,泡沫状の空胞を有する細胞を認めたため脂腺癌と診断した。術後1年4ヵ月で腫瘍の局所再発を認めた。
  • 山本 忠正, 武市 幸子, 福本 大輔, 滝脇 弘嗣, 荒瀬 誠治, 橋本 一郎, 安藤 勤, 生島 仁史, 飛田 泰斗史, 藤野 正晴
    2005 年 67 巻 6 号 p. 584-589
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/14
    ジャーナル 認証あり
    外陰部に生じ,骨盤内への浸潤がみられた基底細胞癌に対し手術と放射線療法の併用,単独放射線療法で良好な結果を得た2例について報告した。症例1は84歳の女性で,膣口を中心に潰瘍を伴う約8×8cmの黒褐色斑がみられた。腫瘍の浸潤が膣口および直腸にもみられたため,切除可能な範囲で切除術を施行し,その後残存腫瘍に対してはX線を40Gy照射した。術後1年5ヵ月間腫瘍の再発は認められていない。症例2は81歳の女性で,恥丘部から両側大陰唇,肛門にかけて15×10cmの範囲で黒褐色の腫瘤が集簇していた。左鼠径部の皮膚にも小腫瘤があり,両側鼠径リンパ節腫脹も認められた。患者および家族の要望もあったため手術は行わず,X線60Gyを照射した。初診より1年3ヵ月後,明らかな腫瘍の再発はなかったが,敗血症からのDIC併発し,多臓器不全で永眠した。基底細胞癌が生じた外陰部という特殊な発生部位,大きさ,転移,放射線治療に対する反応について考察を加えた。
  • 中村 充貴, 梅林 由実子, 内平 孝雄, 亀井 敏昭, 内平 信子, 村本 剛三
    2005 年 67 巻 6 号 p. 590-593
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/14
    ジャーナル 認証あり
    血管平滑筋腫の2例を報告する。症例1は74歳,女性。初診の3ヵ月前に自覚した左V指皮下の圧痛を伴う結節を主訴に受診した。同部に径4mmの境界明瞭,可動性良好な皮下結節を認めた。症例2は63歳,男性。初診の4ヵ月前に右足底に皮下結節を自覚するも,疼痛もなく,大きさにも変化がないため放置していた。前医を受診した際に摘出を勧められ当科を受診した。同部に径12mmの無痛性,境界明瞭,可動性良好な皮下結節を認めた。両症例とも局所麻酔下に摘出し,病理組織学的に血管平滑筋腫と診断した。現在まで再発を認めていない。2症例の組織学的な違いから,疼痛の発生機序について検討するとともに,本邦報告例について統計学的考察を加え報告する。
  • 尾形 美穂, 中房 淳司, 永瀬 浩太郎, 三浦 由宏, 三砂 範幸, 安藤 高志, 福岡 麻美
    2005 年 67 巻 6 号 p. 594-598
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/14
    ジャーナル 認証あり
    53歳の維持透析中の女性。口囲の潮紅と口唇のびらん,両腋窩の潮紅とびらんがあり,右手背に水疱を伴う紅斑を認め,Nikolsky現象陽性であった。下肢に浸潤を触れる紫斑が散在していた。発熱などの全身症状があり,強い炎症所見を認め敗血症と考えた。感染病巣と考えられる部位より表皮剥脱毒素産生Staphylococcus aureusが検出された。病理組織検査にて右手背の水疱部は表皮の顆粒層レベルで水疱形成がありブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群と診断した。また,下肢の紫斑部は真皮の小血管に血栓を認め,血管壁内と周囲に炎症細胞浸潤がみられ敗血疹と診断した。腎不全と透析,およびNSAIDsの内服が誘因となって両者を合併したと考えた。
  • 川合 さなえ, 山中 新也, 藤沢 智美, 清島 真理子, 川端 寛樹
    2005 年 67 巻 6 号 p. 599-603
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/14
    ジャーナル 認証あり
    61歳,女性。岐阜県大垣市在住。群馬県に旅行後,左肩に,丘疹を中心にして環状紅斑が出現し,徐々に拡大した。初診時,左肩に40×30cmの境界明瞭な環状紅斑がみられ,中心に大豆大の紅色丘疹を伴った。血清中の抗ボレリア抗体はELISA法で陽性を示した。血清を用いたWestern blot法により,Borrelia gariniiあるいはBorrelia afzeliiによるライム病と診断した。塩酸ドキシサイクリン100mg/日内服を14日間行ったところ,内服3日後には紅斑は消退した。1999年4月以降に届出のあったライム病の症例は64例で北海道が最も多かったが,東京都・神奈川県などの都市部でも,海外感染例や他県での感染による報告があることから,流行地に限らず全国で注意が必要である。
  • 山口 和記, 久保田 由美子, 徳丸 良太, 古村 南夫, 中山 樹一郎
    2005 年 67 巻 6 号 p. 604-610
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/14
    ジャーナル 認証あり
    40歳,女性。2004年1月,全身性エリテマトーデス(SLE)と診断され,2月よりプレドニゾロン(PSL)やsulfamethoxazole-trimethoprim合剤(ST合剤;バクタ®錠)などの内服治療中であった。5月23日,日光曝露後より口唇腫脹,口腔内糜爛が出現し当科を紹介された。単純ヘルペス感染症の治療をするも顔面,手掌,足底に水疱を伴う紅斑が出現した。SLEの増悪あるいは薬疹を疑いPSLを増量したが紅斑は全身に拡大し6月9日当科に入院した。手掌の紅斑の生検ではGVH型組織反応の所見を呈し,免疫蛍光抗体直接法では皮疹部,無疹部ともに表皮真皮境界部にIgMとC3の沈着を認めた。内服薬を中止しステロイドミニパルス療法を行い皮疹は一旦軽快した。入院21日目にステロイド長期服用による呼吸器感染症の予防目的でST合剤を1錠内服したところ,6時間後に皮疹の再燃を認めた。一連の臨床経過と病理組織学的所見の結果,ST合剤によるStevens-Johnson症候群と診断した。抗SS-A抗体は紫外線とともにSLEの皮膚病変を形成すると言われており,また薬疹のリスクファクターの可能性も示唆されている。自験例も抗SS-A抗体が陽性であったためその関与が疑われた。
  • 屋宜 宣武, 青木 武雄, 仲村 将泉, 野中 薫雄
    2005 年 67 巻 6 号 p. 611-614
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/14
    ジャーナル 認証あり
    81歳,女性。2000年1月上旬に近医から処方された総合感冒薬,消炎鎮痛剤(フェンブフェン:ナパノール®)内服2週間後に全身紅斑,発熱,血圧低下が出現したため,1月26日に八重山病院を受診した。初診時はほぼ全身の紅斑,皮膚弛緩を認め一部はびらんの状態であった。臨床的にtoxic epidermal necrolysis(TEN)型薬疹と診断し初日ステロイド全身投与を行った。翌日の検査所見では白血球の極度な左方偏位及び炎症反応の増加を認め敗血症の可能性を考え,免疫グロブリン(20g/日)5日間の全身投与を行った。投与終了後にはびらん面の早期の上皮化が見られ,約1ヵ月でびらん面はほぼ上皮化した。経過中に突然呼吸停止等の重篤な状態となったが,呼吸管理及び熱傷に準じた治療を行い救命できた。本邦では過去10年に5例の免疫グロブリン投与を行った報告があり,その有効性が示唆されている。TEN型薬疹における治療について若干の文献的考察を加え報告した。
講座
治療
  • 石井 文人, 橋本 隆
    2005 年 67 巻 6 号 p. 624-628
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/14
    ジャーナル 認証あり
    ステロイド治療に抵抗性を示す尋常性天疱瘡患者3例に対してミゾリビンをプレドニゾロンと併用して投与し,その効果について検討を行った。その結果,全例においてミゾリビン併用を行うことによって,プレドニゾロンの減量と良好な治療経過をたどった。またミゾリビンの内服法として,150mg/日内服する場合,50mgずつの均等内服法より朝100mg,夜50mgの1日2回投与する不均等内服法の方がミゾリビン血中濃度の上昇を認め,有効であると考えた。
  • 五味 博子, 松尾 聿朗
    2005 年 67 巻 6 号 p. 629-633
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/14
    ジャーナル 認証あり
    アトピコオイルローションは,精製ツバキ油を配合した無香料,無着色の乳液タイプの全身用保湿製剤である。乾燥性皮膚疾患患者26例を対象とした4週間にわたる臨床試験を行い,その安全性と有用性の検討を行った。最終観察日に観察した乾燥,鱗屑,潮紅,毛孔性角化,そう痒の皮膚症状は,使用前と比較して有意な改善が認められた(p<0.01)。有用性は,極めて有用が38.5%,有用以上が100.0%であった。全ての症例に副作用は無く安全に使用できた。また,使用感については,しっとり感があり,のびがよく,使い心地のよい製剤であることが確認された。96.2%が継続使用を希望した。以上のことより,アトピコオイルローションは,乾燥性皮膚疾患患者の日常のスキンケア剤として,安全かつ有用に使用できる保湿剤であると考えられた。
  • 島内 隆寿, 日野 亮介, 戸倉 新樹
    2005 年 67 巻 6 号 p. 634-637
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/14
    ジャーナル 認証あり
    7例の尋常性乾癬患者の左右同程度の病変に,活性型ビタミンD3軟膏(カルシポトリオール軟膏)と,ストロングクラスである吉草酸酢酸プレドニゾロン軟膏を塗り分け,両方にnarrowband UVB照射を最短4週間併用した。スコア評価により皮疹の改善度を評価し,どちらの併用がより治療効果に優るかを検討した。この結果,カルシポトリオール群,ステロイド軟膏群の2群間で4週後の皮疹改善度に統計学的な有意差は認められなかった。しかし,個々の症例における評価では,躯幹・上肢・下肢の3部位で観察しえた6症例中,カルシポトリオール軟膏が優れていたものが2例あり,同等であったのものは4例であった。同様に下肢のみでの評価が可能であった全7症例での検討でも,カルシポトリオールが優れていたものは3例であり,同等であったものは4例で,ステロイドが優れていたものはなかった。また,観察期間中に血清Ca値の上昇は全例認められなかった。以上より,narrowband UVBとの併用において,カルシポトリオール軟膏はストロングクラスのステロイド軟膏と同程度またはそれ以上の効果が期待でき,かつ安全に使用できると考えられた。
  • 久保田 由美子, 中山 樹一郎
    2005 年 67 巻 6 号 p. 638-643
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/14
    ジャーナル 認証あり
    2003年7月より2004年11月に福岡市近郊の医療機関で治療を行った15歳以上の慢性蕁麻疹患者88名を対象として,抗アレルギー剤塩酸オロパタジンの臨床効果とQOL(quality of life)に及ぼす影響を検討した。そう痒の程度,皮膚症状の程度はともに3日目より有意に改善し,投与2週後における改善度はそう痒が80%,皮膚症状が86%であった。また,薬剤投与量を半量にして行った維持療法移行後2週後における改善度はそう痒が87%,皮膚症状が91%であり,維持療法移行後も高いレベルで症状改善効果を維持することができた。治療前後の日常生活上ストレスの変化に対するアンケート調査では,治療前に比べて治療後は経時的にQOLの改善が認められ,慢性蕁麻疹患者におけるQOL改善に塩酸オロパタジンは有用であった。
  • 滝脇 弘嗣, 宮岡 由規
    2005 年 67 巻 6 号 p. 644-647
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/14
    ジャーナル 認証あり
    ASA-M2は,低・高周波印加時の皮膚のアドミッタンスを計測し,角層水分評価に加え,角層のバリア機能や厚さを表示する新機器である。水分量は従来の機種の測定原理と共通するが,それ以外は独自の電導度理論により誘導したパラメーターである。このため,アトピー性皮膚炎などの皮膚病変とその対照正常部60部位,ストリッピング皮膚24部位を対象として,SKICON®(角層水分),DERMALAB®(経皮水分蒸泄:TEWL)と同時計測を行い,その信頼性を評価した。その結果,角層水分量についてはSKICON®と全データで相関係数r=0.76(p<0.001)の良好な相関が得られた。バリア機能についてはTEWLと弱いながら有意な相関(r=0.28,p<0.01)を示し,病変とストリッピング皮膚だけを対象とすればr=0.55(p<0.001)を示した。対照正常部では有意な相関はなく,正常皮膚の機能を評価しうる感度はないものの,病変部のバリア機能の低下は捕捉しうると思えた。角層厚は大きな傾向は捉えるものの,予想値とはギャップがあり,その値は相対値と捉えるべきであろう。本機器は,皮膚病変の角層水分量だけでなく,TEWLも大まかに評価したいが,2機種を購入する余裕がないという場合に適した機種であると思えた。
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