西日本皮膚科
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69 巻, 3 号
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図説
綜説
症例
  • 富村 沙織, 小川 文秀, 佐藤 伸一
    2007 年 69 巻 3 号 p. 244-247
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/06
    ジャーナル 認証あり
    44歳,男性。感冒様症状の後,上・下肢,下腹部に紫斑,浮腫が出現した。検尿にて尿蛋白3+,尿潜血+であった。病理組織学的にleukocytoclastic vasculitisの像を,蛍光抗体直接法では血管壁にIgA,C3の沈着を認め,アナフィラクトイド紫斑と診断した。安静,プレドニゾロン30mg投与によっても皮疹は軽快せず,慢性扁桃炎(左扁桃潰瘍)における病巣感染が難治化の原因と考えた。扁桃摘出後,皮疹はすみやかに軽快した。
  • 清水 愛, 小林 桂子, 新谷 洋一, 森田 明理, 坂野 章吾
    2007 年 69 巻 3 号 p. 248-254
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/06
    ジャーナル 認証あり
    23歳,男性。2005年5月より顔面に水疱・紅斑が多発してきた。精査の結果全身性エリテマトーデスと診断された。皮膚病理組織では表皮下水疱・真皮乳頭部に好中球主体の細胞浸潤を認めた。蛍光抗体直接法ではIgG・IgA・IgM・C3で基底層および毛包周囲に線状の沈着を認めた。1MのNaCl分離皮膚を用いた蛍光抗体間接法では表皮側・真皮側のいずれにも明らかな沈着を認めなかった。入院中は水疱の拡大を認めなかったが,外泊後に前胸部まで水疱が拡大し,紫外線曝露が水疱形成の増悪因子であることが示唆された。本例はVII型コラーゲンに対する自己抗体を証明できなかったものの,臨床像および皮膚病理組織像より水疱性エリテマトーデス(3型)と考えられた。
  • 高橋 博之, 加賀谷 真起子, 後藤田 裕子, 村岡 俊二, 松本 啓
    2007 年 69 巻 3 号 p. 255-258
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/06
    ジャーナル 認証あり
    73歳,女性。糖尿病と皮膚筋炎の治療を終了し内科退院4日後,体幹より紅斑,大小の水疱が出現した。当科受診時に皮膚生検,抗BP180抗体を含む免疫学的検査ならびに水疱内容液の細菌培養を施行した。過去6ヵ月以内に服用薬剤の変更はなく,1)粘膜疹を欠き皮疹が水疱形成を伴い広範囲にわたる剥脱性病変であること,2)Nikolsky反応陽性であること,3)血液培養では陰性であったが水疱内容液の培養から黄色ブドウ球菌が陽性であったこと,4)自己抗体が陰性であること,5)組織学的に表皮の壊死を中心とするびらんが主体であること,6)ペニシリン系抗生剤の点滴により皮疹と疼痛はすみやかに軽快したことなどより,皮膚筋炎患者に発症した水疱性膿痂疹(bullous impetigo)から成人型staphylococcal scalded skin syndromeへ移行した症例と考えた。成人発症例は免疫学的異常を基礎とする例が多く,自験例も皮膚筋炎の病態の変動やステロイド治療による免疫抑制状態ならびに糖尿病が複合的に関与した結果と考えた。
  • 御塚 加奈子, 尾形 美穂, 井上 卓也, 中房 淳司, 三砂 範幸, 成澤 寛
    2007 年 69 巻 3 号 p. 259-262
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/06
    ジャーナル 認証あり
    70歳,男性。初診の4ヵ月前より背部にそう痒を伴う紅斑が出現した。膝関節,手背にも紅斑が拡大し,下肢の筋力低下も伴うようになった。臨床所見及び病理組織学的所見より皮膚筋炎と診断した。初診時血液検査にて汎血球減少と異型リンパ球を認めたため,造血器悪性腫瘍を疑い骨髄穿刺を施行し,急性骨髄性白血病と診断した。皮膚筋炎に悪性腫瘍を合併することが多いことは知られているが,急性骨髄性白血病を合併する症例は非常に稀であり,国内外併せて自験例を含め3例のみであった。悪性腫瘍を合併した皮膚筋炎について若干の考察を加えた。
  • 田上 俊英, 中村 猛彦, 福田 精二, 増口 信一, 小野 友道
    2007 年 69 巻 3 号 p. 263-265
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/06
    ジャーナル 認証あり
    55歳,男性。13年前,右肩甲骨上部の外傷性骨化性筋炎を摘出した。10年後,同部位に皮下腫瘤が再発し,摘出したが1年7ヵ月後,再度同部位に皮下腫瘤が出現した。間葉系良性腫瘍を想定して一部筋膜を含めて摘出術を施行した。組織学的に成熟脂肪細胞と線維性結合組織の混在からなる腫瘍で線維性結合組織には異型を呈する細胞を混じ,一部にlipoblast様細胞を認めた。これらの所見および臨床経過よりatypical lipomatous tumorと診断した。術後6ヵ月経過したが局所再発を認めない。
  • 木梨 直美, 市橋 かおり, 竹中 秀也, 加藤 則人, 岸本 三郎, 加賀美 潔
    2007 年 69 巻 3 号 p. 266-268
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/06
    ジャーナル 認証あり
    13歳,女性。約半年前に,特に誘因はなく,左大腿内側に赤色丘疹を自覚した。3ヵ月後に掻破したところ,その後より黒色を呈するようになった。来院時は,左大腿内側に4×3mm の黒色小結節を認めた。ダーモスコピー所見で密生したぶどう粒状の球状構造を認め,均一な黒色を呈していた。生検組織像で角層は増生し,延長した表皮突起に囲まれるように開大・拡張した血管腔が真皮乳頭から真皮浅層に存在し,角層内に血腫を認めた。以上より単発性被角血管腫と診断した。単発性被角血管腫は時に急激に増大し,出血等により黒色調を呈して,悪性黒色腫や色素性母斑,基底細胞癌との鑑別が問題になることがあるが,ダーモスコピーの所見が診断の手助けとなると考えられた。
  • —選択的動注化学療法で足趾を温存できた1例—
    藤村 卓, 奥山 隆平, 橋本 彰, 長谷川 聡, 高山 昌理子, 渡辺 洋, 相場 節也
    2007 年 69 巻 3 号 p. 269-272
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/06
    ジャーナル 認証あり
    Verrucous carcinomaは,病理組織学的に良性の疣贅などとの鑑別にしばしば苦慮する疾患である。我々は,右第4趾間に生じたverrucous carcinomaの1例を経験した。画像上,腫瘍は皮下組織まで深達しており悪性所見を示していたが,数回にわたる皮膚生検でも悪性腫瘍の確定診断が得られなかった。そこで,選択的動注化学療法とTS-1®の内服を行い腫瘍を縮小させた後に,全摘術を施行した。切除片は深部,側方ともに腫瘍は陰性であり,術後1年半経った現在も腫瘍の再燃は認めない。
  • 熊澤 智子, 段 虹, 増田 禎一, 占部 和敬, 古江 増隆
    2007 年 69 巻 3 号 p. 273-276
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/06
    ジャーナル 認証あり
    症例は58歳の女性。初診の5年前より,肛囲に痒みを伴う紅斑が出現し,徐々に拡大。組織学的に,乳房外Paget病の診断であった。患者には,初診の10年前に右側乳癌,4年前に左側乳癌の既往があった。近年,乳房外Paget病の腫瘍細胞の進展に,アンドロゲンレセプターや,癌遺伝子産物であるerbB-2の過剰発現が関与している可能性が示唆されている。一方,乳癌では,エストロゲンとそのレセプター,およびerbB-2の過剰発現が,発癌と進展に深く関与しているといわれる。本患者が罹患した,両側乳癌と乳房外Paget病について免疫染色を行い,組織学的に検討したところ,3者ともエストロゲンレセプターとerbB-2に陽性所見を示した。
  • 宇宿 一成
    2007 年 69 巻 3 号 p. 277-279
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/06
    ジャーナル 認証あり
    61歳,男性。アルコール依存症に対してシアナミドを投与された後,体幹にそう痒を伴う紅斑が出現。薬疹と考え,シアナミド内服を中止したが,1週間後の再診時には悪化し,発熱とともに紅斑丘疹が全身に拡大していた。Drug-induced hypersensitivity syndrome(DIHS)を疑い,プレドニゾロン30mg内服よりステロイド全身投与を開始し,症状は軽快した。5週間後,ステロイドから離脱せしめたが皮疹の再燃はなかった。経過中HHV-6抗体価の有意な上昇はみられなかった。病理組織学的には真皮の浮腫と血管周囲性のリンパ球を主体とする炎症細胞浸潤がみられた。貼布試験ではシアナミドに陽性所見を認めた。以上より,シアナミドによる紅斑丘疹型薬疹と診断した。
  • 熊澤 智子, 増田 禎一, 占部 和敬, 古江 増隆
    2007 年 69 巻 3 号 p. 280-283
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/06
    ジャーナル 認証あり
    56歳の男性。初診の10ヵ月前より,顔面に紅色結節が出現し,次第に増大,増数してきた。滲出液を伴い,顔面に多発する結節は,抗生物質の投与に反応せず,頚部,前胸部には浸潤を触れる紅斑局面を生じた。臨床経過及び病理組織学的に,増殖性膿皮症と診断した。蛍光抗体直接法は陰性であった。プレドニン®1日30mgの投与を開始したところ,皮疹は縮小傾向を示した。
講座
治療
  • 今福 信一, 田代 あかり, 森田 圭祐, 友枝 裕人, 師井 洋一, 古江 増隆
    2007 年 69 巻 3 号 p. 290-294
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/06
    ジャーナル 認証あり
    閉鎖陰圧療法は,創面を密封し持続的に陰圧をかけることにより,創傷の治癒を早める新しい潰瘍の治療法である。我々はこの方法を植皮術の際の植皮片の圧迫固定に用いることで良好な成績を得たので,その経験をここに報告する。植皮を行ったのは5症例9件の潰瘍で,いずれにおいても良好な生着が得られた。本方法は,吸引することによりポケット形成を抑制し,複雑な形の植皮床にも固定が可能で,持続的にドレナージすることで感染しにくく,簡単な手技で一定の効果が得られ,創の管理が容易であった。皮膚科領域の植皮の固定方法として適した方法と考えられた。
  • 中島 喜美子, 石黒 麻友子, 高田 智也, 濱田 理恵, 岩垣 正人, 石黒 洋明, 池田 光徳, 小玉 肇, 山下 幸一
    2007 年 69 巻 3 号 p. 295-299
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/06
    ジャーナル 認証あり
    7例の落葉状天疱瘡,1例の尋常性天疱瘡に対して血漿交換療法とステロイドパルス療法の併用療法を施行した。有用であった7例では臨床症状の改善,抗体価の減少,ステロイド投与量の減量が可能であった。併用療法を早期より積極的に施行することで臨床症状を速やかに改善させ,ステロイド剤投与量の減量が容易となり寛解維持にも好影響が得られた。併用療法は,血漿交換療法による直接的な病因抗体の除去に加え,ステロイドパルス療法によりさらに臨床症状を効果的に改善したと考えた。この併用療法は天疱瘡に対する優れた導入初期治療であり長期的予後にも好結果を与えると結論した。
  • —液剤のクリーム剤に対する非劣性試験—
    種田 明生, M-732 研究班
    2007 年 69 巻 3 号 p. 300-308
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/06
    ジャーナル 認証あり
    M-732(一般名: リラナフタート)は,抗白癬作用を有する国産新規チオカルバミン酸系化合物であり,M-732を2%含有するクリーム製剤は,足白癬,体部白癬および股部白癬の適応を取得し,鳥居薬品(株)より「ゼフナート®クリーム2%」の製品名で販売されている。今回,足白癬(趾間型または小水疱型)に対するM-732液の有効性が,M-732クリームのそれよりも非劣性であることを検証し,併せて安全性に問題ないことを無作為化割付,非盲検による多施設共同群間比較試験により確認した。主要評価項目のうち,4週目の真菌学的効果(菌陰性化率)は,M-732液74.8%(101/135例),M-732クリーム70.1%(96/137例)であり,差の95%信頼区間下限値は-5.9%であった。また,4週目の皮膚症状の改善効果(皮膚改善率)は,それぞれ97.0%(131/135例),94.9%(130/137例)であり,差の95%信頼区間下限値は-2.5%であった。以上より,M-732液の有効性は,予め設定した差の95%信頼区間下限値の-10%を下回らなかったことから,M-732クリームのそれよりも非劣性であることが検証された。一方,副作用は,局所刺激などがM-732液で3例(発現率2.1%),M-732クリームで4例(同2.8%)観察された(p=0.722)。また,臨床検査値の異常変動が,それぞれ1例(AST上昇),1例(尿糖上昇)観察された。以上より,M-732液は,M-732クリームと同様の安全性が確認された。
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