西日本皮膚科
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72 巻, 1 号
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図説
症例
  • 指宿 敦子, 内宮 礼嗣, 松下 茂人, 河井 一浩, 金蔵 拓郎
    2010 年 72 巻 1 号 p. 3-5
    発行日: 2010/02/01
    公開日: 2010/05/14
    ジャーナル 認証あり
    48歳,女性。8年前から両前腕を中心に環状の浮腫性紅斑が多発していた。毎年6月下旬に赤くなり,11月頃に改善することを繰り返していた。半袖になる時期に皮疹の悪化が両前腕に著しかったこと,事務職でデスクマットを使用していることより,デスクマットによる接触皮膚炎を疑い,デスクマットのパッチテストを施行したところ,強陽性反応を認めた。デスクマットの成分は塩化ビニル樹脂,フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP,可塑剤),エポキシ化亜麻仁油(安定剤),金属石けん系安定剤,N,N'-メチレンビスステアロアミド(転写防止剤)の5種類で,このうち製造中止のため入手できなかった金属石けん系安定剤を除く4種類について,パッチテストを施行したが結果は全て陰性であった。以上の結果より,デスクマットの成分のうち,金属石けん系安定剤による接触皮膚炎が推測され,デスクマット製造会社より同じ金属塩を含むが構造式の異なる金属石けん系安定剤を入手し,パッチテストを行ったところ陽性であった。近年デスクマットに含まれる抗菌剤による接触皮膚炎が多数報告されているが,自験例が使用していたデスクマットは抗菌剤は含有されていなかった。抗菌剤を含まないデスクマットによる接触皮膚炎はこれまでに報告されていない。おいて発表した。
  •  
    柴田 章貴, 早川 彰紀, 満間 照之
    2010 年 72 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 2010/02/01
    公開日: 2010/05/14
    ジャーナル 認証あり
    55歳,女性。1992年より息切れ,2000年よりレイノー症状および手指の硬化を認め,全身性強皮症および間質性肺炎として当科にて通院治療していた。2007年5月頃より貧血・腎障害が出現し徐々に進行していった。自覚症状も増悪し8月下旬になって貧血・腎障害がさらに進行したため精査目的にて9月1日入院となった。MPO-ANCA>500EUおよび腎生検の結果では半月体の形成を認めたためANCA関連血管炎性腎障害と診断した。ステロイドパルス療法にてMPO-ANCA値の減少と腎機能の改善を認めた。以降プレドニゾロンを漸減しているが症状の増悪は認めていない。罹病期間が長い全身性強皮症の経過中に正常血圧の腎機能低下,血痰,呼吸困難,紫斑などの症状がみられた場合にはANCAを測定することが推奨される。また間質性肺炎が数ヵ月から数年間持続している症例においてもANCA関連腎障害をきたす場合がある。間質性肺炎症例で,発熱,紫斑など血管炎を示す所見や腎炎を示す尿異常出現の際はANCA関連血管炎を念頭に置いて検査することが推奨されている。
  • 末次 香織, 田嶋 磨美, 山崎 正視, 三橋 善比古, 坪井 良治
    2010 年 72 巻 1 号 p. 11-14
    発行日: 2010/02/01
    公開日: 2010/05/14
    ジャーナル 認証あり
    37歳,男性。HIV感染症に対して7年前から多剤併用療法(HAART)を開始。一時中断し,1年4ヵ月前から再開した。再開して3ヵ月後,今回と同様の皮疹と発熱がみられたが無治療で軽快した。初診1週間前から左側頚部に有痛性紅斑が出現し,40℃台の発熱と,右膝・足関節の疼痛と腫脹を認めた。初診時,左側頚部にやや隆起する拇指頭大とクルミ大の環状の紅斑局面を2ヵ所認めた。血液検査では,白血球数10800/μl,好中球79.8%,CRP13.4mg/dlと上昇。病理組織では,真皮浅層から中層にかけて,核の破砕を伴う好中球とリンパ球主体の密な炎症細胞浸潤を認めた。プレドニゾロン20mg/日より内服開始したところ,紅斑と関節痛は消退,その後再発は認めなかった。自検例は,HIV感染に対するHAART中に2回Sweet病を生じたものと考えられた。HAARTによりCD4+リンパ球数が増加して免疫能が回復することがSweet病の発症と関係するものと推測した。これまで,Sweet病とHIV感染症との合併の本邦報告例はなく,自験例が本邦第1例である。
  • 石井 千寸, 堀川 永子, 瀬戸山 充, 三池 忠, 黒川 基樹
    2010 年 72 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2010/02/01
    公開日: 2010/05/14
    ジャーナル 認証あり
    66歳,女性。初診の2ヵ月前から下腿に紫斑が出没し,約1ヵ月前から大型の環状ないし孤状の紫斑を認めるようになった。今回,紫斑とともに関節痛,下痢が出現し,皮膚生検にてleukocytoclastic vasculitisの所見を認めたが,蛍光抗体直接法では血管壁へのIgAなど免疫グロブリンの沈着は認められなかった。一方,下部消化管内視鏡検査と大腸粘膜生検にて潰瘍性大腸炎と診断し,プレドニゾロンとサラゾスルファピリジンの内服治療を開始した。消化器症状の改善を認め,皮疹,関節痛も消失した。広範な紫斑を伴うleukocytoclastic vasculitisに潰瘍性大腸炎を合併した報告は自験例を含め9例のみであり希有症例と考えた。
  • 嘉陽 宗亨, 山本 雄一, 半仁田 優子, 仲松 あや乃, 照屋 操, 平良 清人, 具志 真希子, 上里 博
    2010 年 72 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2010/02/01
    公開日: 2010/05/14
    ジャーナル 認証あり
    症例は80歳,女性。右踵部から足外側縁にかけて,外方に突出するカリフラワー状ないし有茎性の黒色腫瘤(大きさ : 95×55×38mm)がみられた。腫瘤部の生検を行い悪性黒色腫(malignantmelanoma)と診断した。全身麻酔下で腫瘍茎部および黒色斑から30mm離し,脂肪織の深さまで腫瘍の切除を行い,そして二期的に全層植皮術,右鼠径リンパ節郭清術,interferon-β(IFN-β)局注療法を施行した。術前の腫瘍の全身検索を行ったが,所属リンパ節を含む遠隔転移は認められず,病期分類はstage-III A(旧UICC分類,AJCCではstage-II C,T4bN0M0)であった。その後の定期的なCT検査では再発・転移の所見を認めなかったが,手術から3年10ヵ月後に原発性肺癌(adenocarcinoma)のため永眠した。現在まで本邦で報告された有茎性悪性黒色腫(pedunculated malignant melanoma)の統計についても報告した。
  • 工藤 恭子, 安川 史子, 占部 和敬, 桃崎 征也, 河崎 玲子, 今山 修平, 古江 増隆
    2010 年 72 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2010/02/01
    公開日: 2010/05/14
    ジャーナル 認証あり
    40歳,男性。約15年前から上口唇に丘疹が出現し,徐々に増大した。手術目的で当科を紹介受診した。上口唇右側に径15mmの前方に突出した常色結節があり,一部白色調を呈していた。毛包上皮腫などの付属器腫瘍を疑って切除した。切除標本では表皮は肥厚,過角化を示し,一部乳頭状の増殖を伴っていた。真皮内には比較的境界明瞭な大小の結節状病変があり,管腔形成を伴う上皮成分の領域と粘液腫様あるいは線維化を伴う間質の領域がみられた。管腔上皮には断頭分泌があった。免疫組織学的検討もあわせて行い,皮膚混合腫瘍のアポクリン型と判断した。毛包への分化もみられた。一部表皮の乳頭腫様変化を伴っており,比較的珍しい症例と考えた。当科および九州大学皮膚科で皮膚混合腫瘍と診断した10例について検討した。
  • 山木 麻祐子, 榊原 章浩, 富田 靖
    2010 年 72 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2010/02/01
    公開日: 2010/05/14
    ジャーナル 認証あり
    先行する病変や誘因を認めず基底細胞癌(BCC)を多発した3例を報告した。症例1 : 76歳,女性。左耳前部に3~15mmの黒褐色丘疹が4個,同様の黒色丘疹が左前頭部から左顎部に4個,計8個のBCCを認めた。症例2 : 55歳,女性。右頬部に10×10mmの広基性の黒色角化丘疹。顔面,頚部,右胸部,左足背に計11個の黒色斑,黒色丘疹のBCC。症例3 : 41歳,女性。体幹,四肢の小紅斑9ヵ所,いずれも表在型のBCCであった。さらに基礎疾患,先行病変を認めない多発性基底細胞癌について過去10年間の本邦における計9例の報告例および当院の5症例を集計し,検討した。
  • 久保 秀通, 江川 清文
    2010 年 72 巻 1 号 p. 36-39
    発行日: 2010/02/01
    公開日: 2010/05/14
    ジャーナル 認証あり
    82歳,女性,インドメタシン外用が奏効した日光角化症の1例を,文献的考察を加えて報告した。インドメタシンを初めとするNSAIDsの持つシクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase ; COX)阻害作用が上皮系腫瘍細胞の増殖を抑制することが分かっている。症例では約2ヵ月間のインドメタシン外用により,臨床的にも病理組織学的にも,明らかな日光角化症の所見を認めなくなったばかりでなく,8ヵ月を経過した現在も再発を認めていない。また,免疫組織学的に,p53陽性細胞数は治療前後で有意な変化は認めなかったが,Ki-67陽性細胞数に関しては治療前に比し治療後の減少を認めた。経過中,5-FU軟膏外用時にみられるような,皮膚びらんや潰瘍形成などの副作用もなかった。インドメタシン外用は,日光角化症に対する,新規の有用な外用治療法と考えられた。
  • 多田 浩一, 東 裕子, 金蔵 拓郎
    2010 年 72 巻 1 号 p. 40-42
    発行日: 2010/02/01
    公開日: 2010/05/14
    ジャーナル 認証あり
    28歳,女性。初診の1ヵ月前より下口唇に潰瘍を伴った硬結が出現した。皮膚生検にて,真皮全層に形質細胞を中心とした密な細胞浸潤を認めた。その後,体幹,四肢にそう痒を伴わない淡紅色斑が出現し,血清学的所見と合わせて梅毒の二期疹と診断した。経過中に膣トリコモナス症を発症しており,詳細な問診で,性産業に従事していることが判明した。
  • 芦田 美輪, 藏岡 愛, 西村 香織, 芦塚 文美, 牛島 信雄, 本間 喜蔵, 西本 勝太郎, 岩田 貴子, 竹中 基, 佐藤 伸一
    2010 年 72 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2010/02/01
    公開日: 2010/05/14
    ジャーナル 認証あり
    15歳(中学生),地元相撲クラブの男子。体幹,四肢の鱗屑を伴う紅斑と左側頭部のBlackdot ringwormにて2007年3月に当科を受診した。Trichophyton tonsurans(T. tonsurans)を分離し,塩酸テルビナフィンの3ヵ月間内服にて治癒した。高校の相撲部に入部後も再発を繰り返し,その都度治療により治癒した。再発のたびに頭髪のhair brush法にてコロニー数を確認した。部内における皮膚の症状を認める部員は,試合や遠征合宿の後に増加する傾向にあった。アンケートによる調査で,顧問教官の指導がなく,T. tonsurans感染症の認識に乏しいことが分かり,再発を繰り返す原因として無症候性キャリアーの存在が考えられた。小・中学生の相撲クラブとの交流もあり,さらなる感染の拡大を防止するためにも,継続的な集団検診,指導者への啓発,治療の徹底が重要と考えた。
研究
  • 酒井 貴史, 甲斐 宜貴, 佐藤 精一, 後藤 瑞生, 清水 史明, 加藤 愛子, 佐藤 治明, 波多野 豊, 澁谷 博美, 岡本 修, 寺 ...
    2010 年 72 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2010/02/01
    公開日: 2010/05/14
    ジャーナル 認証あり
    大分大学医学部附属病院皮膚科・形成外科における1984年から2008年までの24年間の脂腺癌症例18例を,眼瞼脂腺癌11例と眼瞼外脂腺癌7例に分けて集計し,臨床的および病理組織学的特徴,治療,予後について検討した。初診時年齢は,36~96歳にわたり,平均71.8歳であった。性別は男性7例,女性11例であった。発生部位は眼瞼が11例(61.1%),眼瞼以外の頭頚部発生が6例(33.3%),四肢1例(5.6%)であった。眼瞼脂腺癌は11例中4例で霰粒腫と誤診されていた。一方,眼瞼外脂腺癌は生検前には脂腺癌と診断しえなかった。眼瞼,眼瞼外脂腺癌とを問わず,病理組織所見でbasaloid typeで腫瘍内壊死変化を伴う5症例全例に転移を認め,予後を予測する有意な組織所見と考えられた。治療は基本的に非転移症例には原発巣切除を,リンパ節転移を来した症例には併せて所属リンパ節郭清術を行い,必要に応じて化学療法,放射線療法を併用した。重複癌症例や,初診時に遠隔転移を認めた症例には積極的治療は行わなかった。原発巣の全切除を行った非転移症例では,眼瞼脂腺癌7例,眼瞼外脂腺癌3例全ての症例で観察期間中の再発は認めなかった。
講座
  • 佐野 栄紀
    2010 年 72 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2010/02/01
    公開日: 2010/05/14
    ジャーナル 認証あり
    表皮角化細胞は表皮を構成する全細胞の約95%を占める。表皮角化細胞は生涯にわたり分裂増殖しつつ,基底細胞から有棘細胞,顆粒細胞,角質細胞へと分化する。表皮は紫外線など様々な物理的化学的刺激,微生物の影響を常に受けている。このために,角化細胞には表皮のホメオスタシスを保つためのダイナミックな生物活性が賦与されている。我々は,細胞内シグナル伝達・転写活性因子であるsignal transducerand activator of transcription 3(Stat3)の表皮角化細胞における働きを研究してきた。その結果,角化細胞Stat3シグナルが創傷治癒や紫外線からの抗アポトーシスに必要であり,マウスにおいては毛包成長にも関わることが解明された。一方,その過剰あるいは遷延性シグナルが乾癬や皮膚癌の発症に関与することを明らかにした。この講座では,現在まで明らかになったStat3の働きと皮膚疾患,治療を含む将来の展望について,我々の研究をもとにして3編にわたり論説する。
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