1990年から2009年までに当診療所を受診した顔面白癬272例について検討を加えた。年間平均13.6例。最年少は生後26日男児,最高は89歳女性であり,男女比は129:143であった。原因菌種別では
Trichophyton rubrum (以下
T. rubrum)156例(男72,女84),
Microsporum canis (以下
M. canis)43例(男8,女35),
Trichophyton tonsurans (以下
T. tonsurans)39例(男37,女2)など3菌種で88%を占めていた。年齢層と菌種の関係をみると,小中学生,高校生グループでは
T. tonsurans と
M. canis が,成人グループ(20~80歳代)では
T. rubrum が主要原因菌種であった。臨床像では定型疹(環状紅斑,頑癬)が182例,非定型疹90例であり,非定型疹としては円板状紅斑,落屑性紅斑,ステロイド修飾白癬がみられた。ステロイド修飾白癬は成人女性に多く,原因菌種として
T. rubrum が多かった。定型疹の主要原因菌種は
T. rubrum と
M. canis であり,
T. tonsurans による臨床像は環状紅斑(17例)と円板状紅斑(16例)が同頻度でみられた。2個以上の病巣をもつ顔面白癬は頭部白癬の合併が22%と,単発例の4%より高く,うち9例が
Trichophyton violaceum(glabrum),
T. tonsurans などの好人性菌によるblack dot ringwormを合併していた。また耳介白癬の合併が42例(15%)みられた。当院受診前の診断として湿疹・皮膚炎が100例,膿痂疹3例などがあり,膿痂疹と誤診されていた3例からは
M. canis が分離された。顔面白癬の原因菌種や臨床像は多彩であり,誤診を招くことが多いため,「顔面白癬」を病型として独立させ臨床医の関心と注意を喚起させることが必要である。
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