西日本皮膚科
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75 巻, 5 号
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図説
綜説
症例
  • 山村 和彦, 小薗 可奈, 古江 増隆, 澤部 琢哉, 増野 年彦
    2013 年 75 巻 5 号 p. 406-408
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/30
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    85 歳,女性。発熱,多関節痛が出現し関節リウマチと診断された。同時期より左手背部皮下腫瘤も出現した。プレドニゾロン,サラゾスルファピリジン内服にて発熱,関節痛は軽快したが,手背の腫瘤を主訴に当科を紹介され受診した。腫瘤部を切開したところ,指伸筋腱鞘内に多数の米粒体形成を認め,内容物を可及的に除去し皮膚縫合した。術後一過性に同部の腫脹を認めたが明らかな再発は認められなかった。病理組織学的に,米粒体は中心部にフィブリン様の構造物と線維芽細胞様細胞の浸潤を認め,周囲に比較的密に組織球様細胞の浸潤を伴っていた。
  • 澤城 晴名, 白田 阿美子, 金岡 美和, 中村 和子, 橋本 隆, 高橋 一夫, 相原 道子
    2013 年 75 巻 5 号 p. 409-414
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/30
    ジャーナル 認証あり
    49 歳,女性。2008 年4 月より口腔粘膜に水疱,びらんが多発し,徐々に顔面,頚部にも小指頭大までの緊満性水疱が出現した。組織学的に表皮下水疱を認め,蛍光抗体直接法では表皮基底部に IgG,C3c が線状に陽性であった。1 M 食塩水.離皮膚を用いた蛍光抗体間接法では真皮側に IgG が線状に陽性,真皮抽出液を用いた免疫ブロットでは患者血清は 290 kDa 抗原と反応し,後天性表皮水疱症と診断した。プレドニゾロン (PSL)30 mg/day では皮疹の増加を抑制できず,50 mg/day への増量,エンドキサンパルス療法,二重濾過血漿交換療法を開始したところ皮疹は速やかに軽快した。しかしPSL 漸減,エンドキサンパルスの終了に伴い再燃し PSL を 10 から 15 mg/day へ増量し,2 回目エンドキサンパルスを施行したが十分な効果は得られなかった。そこでコルヒチンと DDS の併用を開始したところ皮疹は速やかに消退した。自験例において,抗VII型コラーゲン ELISA キットを使用し,3 年にわたる経過の抗体価を測定した。治療経過を通して皮疹重症度の推移と抗体価の相関を認めた。本症例の如く,比較的治療抵抗性の後天性表皮水疱症の重症度の客観評価,治療法の選択,また,その実施タイミングを評価判断する上で,同抗体価の測定が極めて有効と考えた。
  • 市川 美樹, 田中 摩弥, 占部 和敬, 古江 増隆
    2013 年 75 巻 5 号 p. 415-418
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/30
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    抗デスモグレイン (Dsg) 1 抗体と抗 BP180NC16a(BP180) 抗体を同時期に検出した 2 例を経験した。症例 1:78 歳,男性。初診の 2 年前より水疱性類天疱瘡の診断のもとプレドニゾロンが投与されていたが,顔面,体幹に鱗屑を伴う紅斑が出現した。蛍光抗体直接法にて表皮細胞間に IgG が陽性,ELISA 法で抗 Dsg1 抗体および抗 BP180 抗体が陽性であった。症例 2:91 歳,女性。大腿,腋窩,顔面,背部に鱗屑を伴う紅斑が出現し,ステロイド外用に抵抗性であった。その 2 カ月後に下肢に緊満性水疱を伴う紅斑が出現した。蛍光抗体直接法で表皮基底膜に IgG,C3 の沈着を認め,ELISA 法で抗 Dsg1 抗体に加え,抗 BP180 抗体も陽性であった。
  • 伊地知 亜矢子, 齊藤 知子, 工藤 恭子, 蜂須賀 淳一, 中原 剛士, 内 博史, 竹内 聡, 高原) 正和, 師井 洋一, 辻田 淳, ...
    2013 年 75 巻 5 号 p. 419-424
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/30
    ジャーナル 認証あり
    比較的稀な部位に生じた spindle cell lipoma(SCL)の 3 例を報告する。症例 1 : 57 歳の女性。右臀裂部の触診で直径約 2 × 3 cm の皮下腫瘍。MRI で T1 高信号と低信号領域が混在し,T1 高信号領域が T2 脂肪抑制され,T1 低信号領域は T2 造影にて増強された。粘液の付着した黄白色の腫瘍が摘出された。症例 2 : 67 歳の男性。左下腿の 9 × 8 × 5 cm の大型の有茎性皮下腫瘤。MRI で腫瘍内に T1 高信号と低信号領域が混在し,T1 高信号領域が T2 脂肪抑制され,T1 低信号領域はT2 造影にて増強された。摘出された腫瘤の半割面は黄色で光沢のあるゼリー状の外観を呈した。症例3 : 81 歳の男性。前額部に直径約 2.5 cm のドーム状に隆起した皮下腫瘍。超音波検査にて周囲脂肪組織と比して比較的境界明瞭な等エコー領域を認めた。粘液の付着した黄色腫瘍が摘出された。病理組織検査では,いずれも成熟脂肪細胞の増生部分と紡錘形細胞と膠原線維の増生部分が混在し腫瘍内の紡錘形細胞は全例で CD34 陽性であった。Alcian blue 染色で腫瘍の間質全体に豊富なムチンが認められ,SCL の myxoid variant と診断した。臨床所見からは脂肪腫が疑われるような皮下腫瘍で,非典型的な画像所見が得られた場合は,好発部位ではなくても SCL を鑑別にあげる必要があると思われた。病理組織学的には,成熟脂肪細胞と膠原線維に加え紡錘形細胞の増殖を認めるが,紡錘形細胞の確認には CD34 染色が有用であった。さらに,Alcian blue 染色による腫瘍の間質全体へのムチン沈着を確認することで myxoid variant の確定診断が可能となった。
  • 宮崎 玲子, 内 博史, 師井 洋一, 古江 増隆
    2013 年 75 巻 5 号 p. 425-428
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/30
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    44 歳,女性。前医で頭頂部の黒色結節を切除され,悪性黒色腫と診断されたため当科を受診した (pT4aN0M0, stage IIB)。その 2 年後に出現した背部の黒色結節を切除生検したところ悪性黒色腫であったため,拡大切除とセンチネルリンパ節生検を行った (pT3bN1aM0, stage IIIB)。背部の病変は epidermotropic metastatic malignant melanoma の組織学的診断基準を満たさず,原発性の悪性黒色腫と考えられた。多発性悪性黒色腫の本邦報告例は少なく,慎重な経過観察が必要と考えられた。
  • 篠田 英和, 西本 勝太郎
    2013 年 75 巻 5 号 p. 429-431
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/30
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    63 歳,男性。糖尿病治療中。7 月上旬長崎県対馬沖での魚釣り中,鯵の背鰭を右第1 指に刺し,有痛性の血疱が出現したため受診した。全身状態は良好であった。血疱からの漿液を血液寒天培地にて培養 (37℃) し遊走 (スウォーミング) する灰白色のコロニーが得られた。グラム染色では陰性桿菌であった。ペルオキシダーゼ試験は陽性,食塩耐容性試験では濃度3%,7%,10%で発育を認め,TCBS 培地で黄色のコロニーを形成した。Viteck システム 2 (細菌自動分析装置)により 99%の確率で Vibrio alginolyticus と同定されたため,自験例を Vibrio alginolyticus による創感染症と診断した。塩酸ミノサイクリン (200mg/日) を 5 日間投与し軽快した。外傷に続発するVibrio alginolyticus 感染症は本邦の皮膚科領域では報告がないが,海外では Vibrio alginolyticus による創感染症から壊死性筋膜炎へ進展した例が報告されており,易感染状態での創感染症に対しては可能な限りの起炎菌の確認と重症化への配慮が必要である。
  • 今 泰子, 木村 有太子, 竹内 かおり, 木下 綾子, 比留間 翠, 高森 建二, 佐野 文子, 比留間 政太郎, 須賀 康
    2013 年 75 巻 5 号 p. 432-437
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/30
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    68 歳,女性。農業従事者。初診の約 5 カ月前より左頬部に痂皮の付着した浸潤性紅斑局面を認めた。皮膚生検の組織像は真皮上層の肉芽腫性反応であり,PAS 染色で陽性の酵母様真菌要素を認めた。スポロトリキン反応は陽性。真菌培養にて灰白色で中央に皺のある湿潤性のコロニーを形成した。スライド培養では,分生子はほぼ無色,円形ないし楕円形であり,菌糸側面から直接生じるものと,菌糸の分生子柄先端に着生し花弁状を呈するものの2 種類が認められた。また,分子生物学的には既知のリボゾーム RNA 遺伝子と相同性を有する塩基配列を ITS 領域に認めたため,本菌を Sporothrix schenkii と同定した。治療は化学カイロによる局所温熱療法のみで約 3 カ月で瘢痕を残して治癒した。今回,自験例を含む過去 9 年間の本邦報告例を合わせて検討し,若干の考察を行ったので報告する。集計の結果,スポロトリコーシスは近年では報告数が減少しており,まれな疾患となりつつあるが,難治性の皮疹を診察した時の重要な鑑別疾患として引き続き注意が必要であると考え報告する。
  • 上尾 大輔, 酒井 貴史, 波多野 豊, 藤原 作平
    2013 年 75 巻 5 号 p. 438-443
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/30
    ジャーナル 認証あり
    プレミネント® による光線過敏型薬疹の症例を 3 例経験した。いずれも高齢者であり,プレミネント® の内服を開始してから露光部に皮疹を生じた。症例 1 と症例 2 は 72 歳の男性,症例 3 は 86 歳の女性であった。症例 1 と 2 は光パッチテストが陽性。症例 3 は光線照射試験にて UVA と UVB のいずれにも光線過敏を認めた。症例 2 は腎機能低下を認め,そのことがヒドロクロロチアジドの血中濃度を上昇させ,光線過敏をより誘発しやすくした危険因子と考えた。
  • 平野 亜由子, 福本 隆也, 藤井 秀孝, 藤澤 章弘, 浅田 秀夫
    2013 年 75 巻 5 号 p. 444-447
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/30
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    15 歳,女性。2008 年 10 月下旬に 39℃の発熱と感冒症状が出現したため,翌日より数種類の薬剤を内服した。その約 72 時間後,顔面,体幹四肢に浸潤を触れる紫紅色斑が出現した。生検組織は,leukocytoclastic vasculitis の像を認めた。その後も同様の皮疹を繰り返すため当科へ紹介された。問診より,2009 年 1 月の発熱,感冒時に前回と同じアセトアミノフェンを内服し,内服 72 時間後に同様の皮疹が出現していたことが分かった。共通していたアセトアミノフェンによる薬疹の可能性を考え,カロナール® の内服テストを行ったところ,1 回常用量の 1/3 量の内服 48 時間後,顔面,体幹四肢に同様の皮疹が誘発された。アセトアミノフェンの紫斑型薬疹と診断した。薬剤添加リンパ球刺激試験 (drug-induced lymphocyte stimulation test : DLST) は陰性だった。発症機序として,薬剤に対する III 型アレルギーの関与を考えた。
講座
治療
  • 望月 隆, 阿部 真也, 田邊 洋, 牛上 敢, 小島 清登, 南部 昌之, 坂元 とも子, 川西 絢子, 八田 順子, 安澤 数史, 中村 ...
    2013 年 75 巻 5 号 p. 454-459
    発行日: 2013/10/01
    公開日: 2013/11/30
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    角質増殖性病変をともなう足白癬は外用療法に抵抗するとされ,従来外用抗真菌薬の臨床試験の対象にされることは少なかった。今回,この角質増殖性病変をともなう足白癬に対する 1.0%テルビナフィン塩酸塩と組織修復成分であるアラントイン,パンテノールを配合する IKD-382 クリームの有効性と安全性を評価した。本試験では試験期間を 8 週間に設定し,臨床症状 (皮膚症状ならびに自覚症状),菌陰性化,安全性を評価した。登録症例は 36 例で,そのうち経過が追えた有効性解析対象症例 29 例について,臨床症状の全般改善度を著明改善から悪化までの 5 段階で,また臨床症状の各要素を高度から症状なしまでの 4 段階で評価した。その結果,全般改善度は著明改善が 44.8%,中等度改善以上が 89.6%,菌陰性化率は 79.3%,総合効果判定は有効以上 が79.3%であった。臨床症状の要素別にみると,鱗屑および角質増殖に対する改善効果が顕著であり,いずれも 29 例中 18 例において 2 段階以上の改善が認められた。また安全性については 36 例全例で評価したが,副作用は認めなかった。以上より IKD-382 クリームは角質増殖性病変をともなう足白癬の治療に有用な薬剤であることが示された。
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