63 歳,男性。糖尿病治療中。7 月上旬長崎県対馬沖での魚釣り中,鯵の背鰭を右第1 指に刺し,有痛性の血疱が出現したため受診した。全身状態は良好であった。血疱からの漿液を血液寒天培地にて培養 (37℃) し遊走 (スウォーミング) する灰白色のコロニーが得られた。グラム染色では陰性桿菌であった。ペルオキシダーゼ試験は陽性,食塩耐容性試験では濃度3%,7%,10%で発育を認め,TCBS 培地で黄色のコロニーを形成した。Viteck システム 2 (細菌自動分析装置)により 99%の確率で
Vibrio alginolyticus と同定されたため,自験例を
Vibrio alginolyticus による創感染症と診断した。塩酸ミノサイクリン (200mg/日) を 5 日間投与し軽快した。外傷に続発する
Vibrio alginolyticus 感染症は本邦の皮膚科領域では報告がないが,海外では
Vibrio alginolyticus による創感染症から壊死性筋膜炎へ進展した例が報告されており,易感染状態での創感染症に対しては可能な限りの起炎菌の確認と重症化への配慮が必要である。
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