2010 年 11 月から 2011 年 5 月の間に藤田保健衛生大学病院,りかこ皮フ科クリニックおよび神戸大学医学部附属病院を受診したアトピー性皮膚炎,小児乾燥性皮膚炎,光線過敏症などの患者の中で口唇の乾燥を有する 50 例に対し,口唇の保湿と遮光を目的として「ノブ
® リップケアクリーム UV」を 4 週間使用した。試験開始および終了時に口唇の皮膚所見を得るとともに角層水分量と経表皮水分蒸散量を測定し,さらに新しい皮膚生理機能の評価としてテープストリッピングにより採取した角層細胞の有核細胞数と TNF-α および TSLP を測定した。50 例中,3 例が被験者の嗜好などの自己都合にて使用を中止したため 47 例を評価対象とした。有害事象としては,1 例において口唇の軽度の鱗屑と皮膚表面の硬化感(ごわごわした感じ)を被験者自身が自覚したものの使用を継続した。皮膚所見においては,乾燥,鱗屑,亀裂,紅斑および縦皺において有意な改善を認めた。また従来の機器測定による角層水分量と経表皮水分蒸散量では有意な変化は認めなかったが,テープストリッピングにより得た角層細胞において,有核細胞数と TNF-α および TSLP の有意な減少を認めた。これらの結果から,試験に供した「ノブ
® リップケアクリーム UV」は,口唇の乾燥した皮膚症状を改善することが明らかとなった。また口唇は口腔粘膜との移行部位であり凹凸や弾力性および呼吸などにより水分量や蒸散量の正確な計測の難しさがあった。テープストリッピングによる角層解析は採取が簡単で安定した結果を得ることができ,臨床症状の改善に合致した皮膚生理機能の客観的評価として有用と考えた。
抄録全体を表示