アトピー性皮膚炎において搔破は皮膚症状の悪化因子であるため,搔破行動を抑制することは,アトピー性皮膚炎の治療に有用であると考えられる。本研究では,創傷治癒に使われるハイドロゲル保護剤を夜間に搔破の目立つ病変部に貼付し,搔破行動から貼付部位を保護することによりアトピー性皮膚炎の良好なコントロールが可能かどうかを検討した。16 例のアトピー性皮膚炎患者に,はじめの 2 週間,両肘窩あるいは膝窩にプレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル (リドメックス
®) ローションを単純塗布し,被検側にのみハイドロゲルを夜間に貼付した (試験①)。その後,プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステルローションを単純塗布して十分に皮膚炎を落ち着かせた状態ののちに,被検側のみにハイドロゲルを貼付し,対照側には比較対象としてヘパリン類似物質 (ヒルドイド
®) 軟膏あるいはローションを単純塗布し,両者のいずれが皮膚炎治療あるいは悪化防止に有用かを検討した (試験②)。プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル単独群とプレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル+ハイドロゲル併用群はともに有意な皮疹改善効果を示し,併用群において皮疹スコアの低下が有意に大きかった (試験①)。また,プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル外用による治療後,ヘパリン類似物質外用では皮疹スコアが有意に増悪したものの,ハイドロゲル貼付では皮疹スコアは著変なく,皮疹スコアの増加はヘパリン類似物質群においてハイドロゲル貼付群より大きい傾向であった (試験②)。以上より,ハイドロゲル貼付はステロイド外用による治療効果を増強させること,ステロイド外用による治療後の悪化防止に有用であることが示された。
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