西日本皮膚科
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77 巻, 3 号
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図説
綜説
症例
  • 和田 麻衣子, 伊東 孝通, 中原 真希子, 橋口 公章, 古江 増隆
    2015 年 77 巻 3 号 p. 210-213
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/10/01
    ジャーナル 認証あり
    生後 15 日,女児。生下時より左臀部の索状腫瘤を認めた。腫瘤の近傍には貧血母斑を伴っていた。生後 1 カ月時に局所麻酔下に切除し,病理組織学的に pseudo-human tail と診断した。下肢の神経症状や膀胱直腸障害はなかった。その後臀裂の偏位が強くなり,術創部の皮下に軟らかい隆起が目立ってきたため,二分脊椎を疑い生後 2 カ月時に脳神経外科へ紹介した。CT・MRI にて L5以下のレベルで脊柱管内に脊髄と連続した脂肪腫を認めた。脳神経外科で全身麻酔下に係留解除術を施行された。術後一過性に膀胱直腸障害をきたしたが,保存治療で軽快した。現在まで再発やその他の神経学的症状は認めていない。 Human tail は,尾骨の有無で true human tail と pseudo-human tail に分けられる。Pseudo-human tail には二分脊椎などの合併症を伴うことが多い。二分脊椎では仙尾部に様々な皮膚症状を高率に合併する。深部で脊髄腔と連続していることもあり,術前に CT や MRI などの画像評価を十分に行う必要がある。
  • 三苫 千景, 日高 らん, 古江 増隆
    2015 年 77 巻 3 号 p. 214-216
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/10/01
    ジャーナル 認証あり
    日齢 20 の男児。日齢 2,10 に右鼠径部と右下腿屈側にそれぞれ 1 つずつ水疱が出現した。日齢 18 ごろ,右鼠径部から右大腿前面にかけて複数の小水疱と紅斑が出現した。組織学的には,表皮に好酸球の浸潤を伴う海綿状態があり,真皮上層には好酸球を主体とする炎症細胞の浸潤を認め,メラノファージが散在していた。家族内同症はなく,体表奇形および,眼,歯,中枢神経系の合併症もなく,片側性,軽症型の色素失調症男児例と診断した。男児の色素失調症の臨床的特徴について文献的考察を行ったので合わせて報告する。
  • 大賀 保範, 伊藤 宏太郎, 今福 信 一
    2015 年 77 巻 3 号 p. 217-219
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/10/01
    ジャーナル 認証あり
    症例は 61 歳の男性。初診の 20 年前に高尿酸血症を指摘されたが定期的な治療は受けていなかった。15 年前より両足に皮下結節が出現し,徐々に増大したが放置していた。その後両手指,左肘,左膝にも同様の皮下結節が出現したため当科を受診した。右足背からの皮膚生検の際に白色ペースト状の物質が排出され,HE 染色では好酸性に染色される無構造物質とその周囲の肉芽腫形成を認め,痛風結節と診断した。 手指の単純 X 線検査では皮下結節に一致した部位に骨破壊像を認めた。痛風結節は増大すると骨・関節破壊を引き起こすこともあり,早期診断・治療に加え,長期化や巨大化した病変では骨・関節病変の有無の評価が重要である。
  • 牧野 麻貴, 多田 光太郎
    2015 年 77 巻 3 号 p. 220-224
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/10/01
    ジャーナル 認証あり
    62 歳,男性。生下時より左前腕に色素斑を認めていた。30 年前より隆起し始め,その後も増大し続けたため切除を希望し当科を受診した。初診時,左前腕に 8 × 6 mm の有茎性の暗紫紅色調を呈する小結節を認めた。圧痛など自覚症状に乏しく,外傷歴はなかった。ダーモスコピーで red blue lacunae が散見され,血管腫を疑い局所麻酔下に切除した。病理組織像では真皮浅層~皮下脂肪織にかけて大小の管腔に富んだ腫瘍胞巣が散見され,一層の扁平な内皮細胞に裏打ちされた管腔内には多数の赤血球が充満していた。数層あるいはそれ以上の腫瘍細胞が管腔を取り囲むように敷石状に配列している像がみられ,腫瘍細胞には明らかな異型性や分裂像は認めなかった。以上の所見より,グロムス腫瘍と診断した。前腕に単発したグロムス腫瘍は 1965~2014 年の 49 年間で 24 例が本邦で報告されており,自験例を合わせて 25 例を解析した。40~60 代と比較的高齢者に好発し,平均年齢は 52.1 歳であった。男女比は 23:2 と圧倒的に男性優位であった。組織型は glomangioma が多く,臨床型としては皮膚結節が最多で,有茎性の症例と疼痛のない症例の報告はそれぞれ 1 例ずつのみであった。男性優位であったため,腫瘍の増生に男性ホルモンの関与を想定しアンドロゲンレセプターの免疫染色を施行したところ,腫瘍細胞の核内に陽性所見を認めた。
  • 水柿 典子, 高橋 宏征, 加賀谷 真起子, 高橋 博之
    2015 年 77 巻 3 号 p. 225-229
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/10/01
    ジャーナル 認証あり
    69 歳,男性。背部の巨大腫瘤を主訴に 2011 年 5 月当科を受診した。術前皮膚生検の結果,腫瘍の辺縁部では Bowen 病を示唆する所見を,腫瘍中央部では多数の偏在する核と好酸性の胞体を有する大型の腫瘍細胞を認め,免疫組織染色の結果から rhabdoid 型有棘細胞癌と診断した。血液学的検査では貧血,白血球および血小板増多を認めたが電解質と血中 SCC 値は正常であり全身検索にて肺転移を認めたため Stage Ⅳと診断した。切除を予定したが腫瘍が巨大で,多量の浸出液と二次感染による悪臭も強く,肺転移も有するため,Mohs paste による前処置と術前化学療法を行い,固定された組織を除去し原発巣が平坦化したため,一部筋肉を含め腫瘍切除と分層植皮術を行った。手術検体の病理所見も術前検査と同様の病理所見であった。経過は順調であったが,化学療法 3 クール施行後に皮下および多臓器転移が急速に出現し,また,再度著明な白血球と血小板増加および高カルシウム血症,副甲状腺ホルモン関連蛋白と GCSF 高値を伴う paraneoplastic syndrome を併発し,初診より 5 カ月後に永眠した。Paraneoplastic syndrome を伴う rhabdoid 型有棘細胞癌の発生は稀であるため,本疾患につき検討し報告した。
  • 粟澤 剛, 粟澤 遼子, 林 健太郎, 眞鳥 繁隆, 山本 雄一, 高橋 健造, 上里 博
    2015 年 77 巻 3 号 p. 230-234
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/10/01
    ジャーナル 認証あり
    症例は 50 歳,女性。他院で生検され肛門部の扁平上皮癌の診断で当科を紹介された。再度生検を施行して肛門部有棘細胞癌と確定診断し,さらに PET/CT,CT,MRI などの画像精査により病期を T3N2M1,Stage Ⅳと診断した。また腫瘍病変からは HPV-16 が検出された。腫瘍が肛門管内に進展していたことから,National Comprehen sive Cancer Network(NCCN) のガイドラインを参考に肛門管扁平上皮癌の標準治療に準じて,5-fluorouracil(5-FU)/mitomyein C(MMC) 療法を併用する同時化学放射線療法を実施した。同治療は奏効し,画像精査や原発巣の再生検にて完全寛解を得られた。治療開始より 1 年 6 カ月経過した現在,患者は無再発生存中であり,また肛門機能も良好に温存され QOL の低下も認めていない。有棘細胞癌は早期に治療介入できれば比較的予後もよく治療方針に迷うことも少ないが,進行期になると他の癌腫と同様に治療に難渋することが多い。原発巣の部位にもよるが手術可能症例であっても,根治的切除をすれば手術侵襲による機能的障害や審美的損失は無視できず,癌の根治と患者の QOL・ADL とのギャップにジレンマを感じることが多い。我々は本症例での治療経験から,肛門部有棘細胞癌,特に肛門歯状線に近接するような有棘細胞癌の場合には,肛門管癌に準じた同時化学放射線療法も根治的治療として有力な選択肢になりうると考えたので報告する。
  • 新森 大佑, 伊方 敏勝, 加口 敦士
    2015 年 77 巻 3 号 p. 235-238
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/10/01
    ジャーナル 認証あり
    58歳,男性。2007 年 10 月,海釣り中にアイゴの鰭棘が右膝に刺さったため,毒抜き目的で患部を自分の口で吸った。2 日後より右膝の発赤腫脹,疼痛が出現し,近医を受診した。当初,前医では蜂窩織炎の診断のもと,抗菌薬内服により治療が開始された。しかし症状は増悪傾向にあり受傷後 9 日目に当院へ紹介された。臨床所見と画像所見からガス壊疽と診断し,同日緊急手術を施行した。膿汁の細菌培養検査にて,Gemella morbillorum (G.morbillorum) を検出し,貪食像も認めた。デブリードマンと抗菌薬投与により,局所所見,炎症反応は急速に改善し,入院35 日目に退院となった。G.morbillorum はヒトの口腔および腸管内常在菌であり,ヒトへの感染は稀である。感染性心内膜炎や呼吸器感染症の起因菌となることもあるが,本菌による軟部組織感染症の報告は極めて少ない。今回,我々はアイゴ刺傷を契機に発症した G.morbillorum によるガス壊疽を経験したので報告する。なお,本症例は G.morbillorum による軟部組織感染症としては日本で初めての報告である。
  • 山口 さやか, 大久保 優子, 高橋 健造, 上里 博, 佐野 文子
    2015 年 77 巻 3 号 p. 239-243
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/10/01
    ジャーナル 認証あり
    家族 6 名に Trichophyton violaceum (T. violaceum) による 5 例の頭部白癬,1 例の体部白癬が集団発症した。最初に 3 歳の男児が頭部の瘙痒と鱗屑を主訴に来院した。鱗屑の KOH 直接鏡検で多数の胞子が観察され,真菌培養では T. violaceum が検出された。患児の次兄にも頭部の瘙痒と鱗屑があった。長兄はこの時点では自覚症状はなかったが,幼少時に頭部白癬の既往があった。同時期に患児等の母親は左大腿に T. violaceum による体部白癬を,伯母はケルズス禿瘡を発症していた。伯母と同居している祖母も 3 年前に T. violaceum による頭部白癬と診断されていた。家族内の保菌状況を調べるため,これら患児兄弟を含め頭部をブラシ検体による真菌培養検査をしたところ,T. violaceum が共通して検出された。T. violaceum による頭部白癬は炎症症状に乏しく,自覚症状を欠く保菌者となることがあるため,この T. violaceum 感染症は同居家族内での集団発生の報告が多い。感染の拡大や再発を予防するためには,同居家族全体での真菌検査や治療が必要である。
研究
  • 伊賀 和宏, 横田 紗綾, 中井 大助, 中山 秀夫, 陳 科榮
    2015 年 77 巻 3 号 p. 244-249
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/10/01
    ジャーナル 認証あり
    我々は 35 年以上の長きにわたり,コウジ酸の,肝斑,日光黒子,太田母斑,雀卵斑,色素沈着型化粧品皮膚炎およびその他の色素沈着症に対する臨床試験を行ってきた。興味深いことに,多くの患者に共通して,コウジ酸によって,色素沈着が改善するだけでなく,顔面の黄ぐすみ (皮膚の黄色化および透明度低下) にも改善効果を示すことを経験している。近年,黄ぐすみの一因として,皮膚タンパク質の糖化による糖化最終産物 (advanced glycation end products:AGEs) およびカルボニル化による脂質過酸化最終産物 (advanced lipoxidation end products:ALEs) の産生が提唱されており,我々は,コウジ酸の皮膚の黄色化および透明度低下に対する改善効果が,AGEs および ALEs の産生を抑えることによるものと推定し検討した。その結果,コウジ酸は AGEs および ALEs 産生抑制作用を示すことが明らかとなった。従って,コウジ酸の外用は色素沈着症の改善だけでなく,黄ぐすみに対しても有用であると考える。
講座
治療
  • 渡辺 晋一, 五十嵐 敦之, 加藤 卓朗, 松田 哲男, 山田 和宏, 西本 勝太郎
    2015 年 77 巻 3 号 p. 256-264
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/10/01
    ジャーナル 認証あり
    爪真菌症に対する新規トリアゾール系外用抗真菌薬エフィナコナゾールの有効性と安全性を検討した国際共同第Ⅲ相試験における日本人部分集団解析の結果を報告する。エフィナコナゾール群は 52 週目の完全治癒率において基剤群に比べて有意に高く(28.8% vs. 11.9%,P=0.009),その他の副次的評価項目でも有意な治療効果が認められた。全被験者に重篤な副作用は認められず,ほとんどは局所の皮膚炎であった。全身的な副作用発生リスクを低減するエフィナコナゾールは爪白癬治療に貢献できると考えられる。
  • ―― 短期間高用量投与について ――
    野本 真由美
    2015 年 77 巻 3 号 p. 265-269
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/10/01
    ジャーナル 認証あり
    従来の痤瘡治療は毛包漏斗部の角化異常および皮脂分泌の亢進に対する薬剤やアクネ菌に対する抗菌薬が中心に用いられている。しかし,再発を繰り返す難治性の患者は,治療に十分満足しているとは言い難い。また痤瘡は顔面に好発することから患者の心理負担も大きく,短期での治療効果がより一層求められる疾患と考える。十味敗毒湯に配合される桜皮には皮膚線維芽細胞からのエストロゲン産生誘導作用が報告されており,従来治療とは異なるアプローチが期待される漢方薬である。そこで従来治療では難治な尋常性痤瘡患者 122 例を対象に,短期治療を目的として,桜皮配合の十味敗毒湯を治療開始時から通常量の 1.5 倍量 (9.0 g/日)で 3 週間投与し,有用性を検討した。評価方法は患者の満足度を重視して,3 つの項目「①皮疹数の減少,②再発率の低下,③再発しても治癒までの期間が短い」のいずれかが確認された場合を「改善」とし,「改善」「不変」「悪化」の3 段階で判定した。その結果,79.5%の改善率が認められた。また他の漢方薬から変方した患者の改善率は 78.4%であった。なお本剤に起因すると思われる副作用は認められなかった。以上のことから,難治な尋常性痤瘡に対し短期間での治療効果を期待するには,薬剤の適正量を考慮することが重要であり,桜皮配合の十味敗毒湯を治療開始時に高用量で投与し,症状の改善に応じて適宜減量することが有用であると考えられた。
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