家族 6 名に T
richophyton violaceum (
T. violaceum) による 5 例の頭部白癬,1 例の体部白癬が集団発症した。最初に 3 歳の男児が頭部の瘙痒と鱗屑を主訴に来院した。鱗屑の KOH 直接鏡検で多数の胞子が観察され,真菌培養では
T. violaceum が検出された。患児の次兄にも頭部の瘙痒と鱗屑があった。長兄はこの時点では自覚症状はなかったが,幼少時に頭部白癬の既往があった。同時期に患児等の母親は左大腿に
T. violaceum による体部白癬を,伯母はケルズス禿瘡を発症していた。伯母と同居している祖母も 3 年前に
T. violaceum による頭部白癬と診断されていた。家族内の保菌状況を調べるため,これら患児兄弟を含め頭部をブラシ検体による真菌培養検査をしたところ,
T. violaceum が共通して検出された。
T. violaceum による頭部白癬は炎症症状に乏しく,自覚症状を欠く保菌者となることがあるため,この
T. violaceum 感染症は同居家族内での集団発生の報告が多い。感染の拡大や再発を予防するためには,同居家族全体での真菌検査や治療が必要である。
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