83 歳の女性。初診の 2 カ月前より瘙痒により搔破を繰り返していた左下腿前面に潰瘍形成がみられ,近医皮膚科にて治療されるも増悪したため,当科を受診した。初診時,左下腿前面内側に径 20 mm の壊死を伴う潰瘍があり,辺縁より皮膚生検を行った。真皮深層から皮下にかけて好中球がびまん性に浸潤し,多棘性の好塩基性物質が多数みられた。抗酸菌培養は陰性で,細菌培養にて
Streptococcus intermedius (
S. intermedius) のみが検出された。潰瘍の原因検索のため造影 CT を施行したところ,足趾末端まで血流は良好であったが,病変部の周囲の左前脛骨動脈の一部の描出が不良であった。レボフロキサシン内服を開始後,一時的に潰瘍の拡大がみられたが,内服薬の変更は行わず経過をみたところ,潰瘍は徐々に縮小し,約 5 カ月後に上皮化した。
S. intermedius は,内臓など深部組織に膿瘍を形成した報告はあるが,皮膚科領域における報告は稀である。自験例は解剖学的血管奇形による局在性血流障害がある特殊な条件下であったが,
S. intermedius は深い皮膚潰瘍を形成しうると考え,検出された際には慎重に対応すべきであると考えた
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