西日本皮膚科
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84 巻, 1 号
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目次
図説
  • 挽地 史織, 森澤 紘美, 高松 紘子, 原田 佳代, 占部 和敬
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル 認証あり

    患者:21 歳,男性

    主訴:全身の痂皮と水疱

    既往歴:水痘,アトピー性皮膚炎,伝染性膿痂疹

    現病歴:生来健康。当科初診の 1 週間前より左下腿の既存の褐色斑に瘙痒が生じ搔破により一部びらんを呈した。前医でのステロイド内服および外用療法で軽快なく,初診 3 日前には口唇の腫脹,頭皮から顔面にかけて水疱形成および黄色滲出液の漏出・固着がみられた。間もなく同様の所見が上半身に拡大し,伝染性膿痂疹または水痘が疑われ前医でセフジニル 100 mg 3 錠/分 3,バラシクロビル塩酸塩 500 mg 6 錠/分 3 の内服が開始された。投薬開始後も改善なく全身に拡大し,発熱・嘔気が併発したため当院救急外来を受診の後,当科入院とした。

    現症:顔面や体幹に約 1 cm の黄色痂皮が付着し,口唇が腫脹していた(図 1 )。両側手指には最大径 3 cm までの緊満性水疱が多発していた(図 2 )。

    皮膚ぬぐい細菌培養:〈手掌の水疱内容物〉陰性

    血液検査所見(異常値に下線):WBC 11900/μlNeut 78.0%,Lym 8.0%,Eos 14.8%,Baso 0.3%,CRP 1.32 mg/dl,CMV IgG<2.0,CMV IgM 0.11,EBV 抗 EAIgG 0.0,HIV Ag/Ab 0.13,ASO 92 IU/ml,ASK 2560 倍

    病理組織診断:毛包に連続した表皮内水疱があり,好中球と好酸球を内包した(図 3 a)。毛包周囲および毛包内に好酸球の浸潤が目立ち,周囲の表皮および真皮には好中球主体の炎症細胞浸潤がある(図 3 b)。蛍光抗体法は陰性。

    診断:巨大水疱を呈した好酸球性膿疱性毛包炎(Eosinophilic pustular folliculitis : EPF)

    治療および経過:バラシクロビル開始後の軽快はなく,抗体価の陰性をもって水痘は否定した。膿痂疹の可能性において抗生剤の点滴および外用に対する反応は乏しく,病理結果と併せて上記と診断し,インドメタシンの内服を開始した。開始後,経時的に上昇していた好酸球は減少傾向に転じ,翌日より水疱の新生がなくなった。

  • 久保 秀通, 久保 秀徳, 江川 清文, 松下 茂人
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 1 号 p. 3-4
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル 認証あり

    患者:83 歳,男性

    主訴:左大腿部に多発するしこり

    既往歴:胃 gastrointestinal stromal tumor(GIST),高血圧,白内障

    家族歴:特記事項なし

    現病歴:約 40 年前より左大腿部に複数のしこりを自覚していた。自覚症状なく変化に乏しいため放置していたが,家族が心配され,当院を受診した。

    初診時現症:左大腿部内側に限局して,紅褐色調,弾性軟な,米粒大から小指頭大の大小不同の隆起性腫瘤が集簇していた(図 1 )。カフェオレ斑はみられなかった。

    病理組織学的所見:真皮内に短紡錘形の核を有する腫瘍細胞の錯綜性増殖からなる境界不明瞭な結節性腫瘍を呈し,腫瘍細胞間には膠原線維や細血管の増生を認める(図 2 )。

    診断:臨床所見,病理組織学的所見より Segmental neurofibromatosis type (1 以下 SNF-1 と略記)と診断した。

  • 佐々木 夏季, 冬野 洋子, 古江 増隆
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 1 号 p. 5-6
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル 認証あり

    患者:74 歳,男性

    主訴:後頭部の皮下腫瘤

    既往歴:Triple extramammary Paget's 病,菌状息肉症

    家族歴:特記事項なし

    現病歴:初診の 10 年前に後頭部に皮下腫瘤を認め,近医で切開された。最近,同部位に皮下腫瘤を認め,当科を受診した。

    初診時現症:後頭部に境界不明瞭な約 2 cm の弾性硬で可動性良好な皮下腫瘤を触知した(図 1 )。

    超音波検査所見:皮下に低エコー領域を認め,後方エコーの減弱を認めた(図 2 )。

    病理組織学的所見:真皮から皮下にかけて境界不明瞭に錯綜する不規則な膠原線維と,それに取り囲まれた島状の脂肪組織と神経線維を認め,線維芽細胞は目立たなかった(図 3 )。膠原線維間の紡錘形細胞,および星芒状細胞は CD34 陽性で,異型は認めなかった(図 4 )。

    診断:Nuchal-type fibroma(NTF)

  • 隈 有希, 一木 稔生, 伊東 孝通, 吉田 舞子, 桐生 美麿, 古江 増隆
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 1 号 p. 7-8
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル 認証あり

    患者:89 歳,女性

    主訴:下腿後面の黒色局面

    現病歴:幼少時から黒色斑があり徐々に増大した。

    現症:左下腿後面に 30×20 mm の黒色局面と 8 mm の小結節を認めた。局面右上方にさざなみ状に分布する褐色斑も認めた(図 1 ab)。

    ダーモスコピー所見:黒色局面は青灰色~黒褐色の大型胞巣(large blue-gray ovoid nests)からなり,葉状領域を認めた(図 2 a)。中央の小結節は白色調でかすかに血管も透見された(図 2 a 黄色線内部)。局面辺縁は一部色素線条の突出を認め,褐色斑部は色素小点の集簇がみられた(図 2 b)。

    治療:腫瘍辺縁より 3 mm 離して全切除した。

    病理組織学的所見図 1 b 矢印部の小結節を含む最大割面を提示する。軽度隆起性の病変で,多結節性腫瘍と(図 3 a-①)充実性腫瘍(図 3 a-②)がみられた。①は細胞質の乏しい毛芽様細胞が一部表皮と連続して増殖し,胞巣辺縁に柵状配列がみられた。胞巣周囲の間質は繊細な膠原線維と多数の線維芽細胞からなり,腫瘍に密接して増殖する fibroepithelial unit の形成がみられ,trichoblastoma を考えた。②は小型な基底細胞様細胞の poroid cell が一部表皮と連続して密に増殖し,好酸性の豊富な細胞質をもつ cuticular cell による管腔形成もみられ,eccrine poroma を考えた。いずれの腫瘍も胞巣内や周囲にメラニンの沈着があり,胞巣周囲にメラノファージの集簇を認めた。腫瘍細胞の微小浸潤や青色母斑の消退をみている可能性も考え,CK7,Melan-A,HMB45 染色を施行したが陰性であった。別切片では trichoblastoma と poroma が同一胞巣内に存在する箇所を認めた(図 3 b)。また,両腫瘍周囲の表皮は基底層のメラニン沈着が目立ち,一部表皮突起の延長がみられ(図 3 c),真皮浅層に solar elastosis もみられた。日光黒子から脂漏性角化症に移行しつつある所見と考えた。

    診断:日光黒子内に発生した trichoblastoma と eccrine poroma の合併例。

綜説
症例
  • ―― 本邦報告 46 例の臨床的検討も含めて――
    山村 里恵, 中瀧 恵実子, 福田 喬太郎, 杉本 光司, 敷地 孝法
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル 認証あり

    敗血症ショックに伴って生じた急性感染性電撃性紫斑の 2 例を経験した。2 例とも播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation,以下 DIC)を伴っており,死亡した。感染源は,1 例目が Citrobacter freundii による気腫性膀胱炎で,2 例目が Klebsiella pneumonia による腸炎,bacterial translocation であった。治療は抗菌薬,昇圧薬投与を中心に行った。2001 年から 2020 年までに本邦で報告された電撃性紫斑と自験例 2 例を含めた 46 例を検討し,リコンビナントトロンボモジュリンや新鮮凍結血漿,アンチトロンビンⅢなどの DIC の治療の有無が急性感染性電撃性紫斑の死亡率と関与している可能性があると考えた。

  • 島田 佳奈子, 本多 教稔, 島田 秀一, 柏田 香代, 梶原 一亨, 牧野 貴充, 福島 聡
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル 認証あり

    20 代女性。第 1 子妊娠中より稽留性肢端性皮膚炎として加療されていた。皮疹が拡大し,皮膚生検の所見から角層下膿疱症として外用加療を継続されたが,通院を自己中断した。第 2 子妊娠 19 週時点で膿海を伴う多発性の紅斑を主訴に再度受診し,妊娠 28 週より副腎皮質ステロイド内服を追加された。その後も改善せず,妊娠 30 週時点で 38 度台の発熱を認め,周産期管理を含めた全身加療目的に当院へ転院となった。妊娠を契機に増悪した汎発性膿疱性乾癬と診断し,顆粒球単球吸着除去療法やシクロスポリン内服を追加し,副腎皮質ステロイド内服を増量した。皮疹は改善傾向となったが寛解せず,追加治療として生物学的製剤の使用を検討したが患者が同意されず,使用しなかった。皮膚症状 3 点,全身症状・検査所見 2 点の計 5 点の状態で自然分娩に至った(妊娠 37 週 0 日)。児は低出生体重児で NICU 入室となった。出産から約 1 カ月後,抜歯後に皮疹が再度増悪したため抗 IL-17A モノクローナル抗体製剤のセクキヌマブを投与した。皮疹は速やかに改善し,現在も再燃はない。汎発性膿疱性乾癬の妊婦の治療は,安全性が確立した薬剤が限られるため,医師が治療の有益性が上回ると判断しても同意が得られず,治療選択に難渋することがある。

  • 井上 慶一, 小田 真理, 竹内 聡, 古江 増隆
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル 認証あり

    43 歳,男性。前医で初診 1 年前より生じた乾癬の外用治療を受けていた。初診 1 カ月前から腹部に紅斑,膿疱,鱗屑が生じ全身に拡大してきた。全身倦怠感,体動困難,四肢の関節痛で日常生活が困難となり,入院加療目的に当科に紹介され受診した。症状,血液検査,病理所見から膿疱性乾癬と診断した。シクロスポリン 200 mg/day とセレコックス 200 mg/day にて治療開始したが症状改善なく,抗 IL-17A 抗体であるセクキヌマブ 300 mg 皮下注の併用を開始した。投与 3 回目で症状は改善し始め,同薬導入期の 5 週連続投与を終了後に退院した。退院後は日常生活レベルの活動で 38 度の発熱,関節痛,全身倦怠感が再燃し,4 週間隔投与となるセクキヌマブの維持療法では症状コントロールが困難となったため,抗 IL-17 受容体 A(IL-17RA)抗体であるブロダルマブ 210 mg 皮下注に変更した。症状は速やかに改善したが,配送業の仕事を再開し症状が再燃したため,シクロスポリンを中止しエトレチナート 40 mg/day を追加した。エトレチナートを導入後,症状は軽快したが,仕事が忙しくなると全身倦怠感,関節痛が再燃するため,さらにアプレミラスト 60 mg/day を追加したところ症状は寛解した。現在は服薬漸減しブロダルマブ 210 mg 皮下注,アプレミラスト 30 mg/day,セレコックス 200 mg/day 内服で皮疹,全身倦怠感の再燃なく,関節痛も自制内で経過している。

  • 水野 亜美, 見明 彰, 菊池 智子, 橋本 明子, 古江 増隆
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル 認証あり

    亜鉛は人体における必須微量元素の中で 2 番目に多く,多数の蛋白構造や機能維持に関与し,酵素の活性・調整因子である。亜鉛は主に小腸で吸収され,生体内の様々な臓器に分布するが,皮膚は生体内で 3 番目に亜鉛を多く含有する臓器であり,皮膚の恒常性維持に亜鉛は必須である。亜鉛が欠乏すると様々な症状を引き起こし,その中でも皮膚において多岐にわたる症状を引き起こす。生体には亜鉛の恒常性維持のために調節機構が備わっているが,その主軸となるものが亜鉛トランスポーターである。Transient neonatal zinc deficiency(TNZD)は母親の SLC30A2 遺伝子変異によって,乳腺細胞の亜鉛トランスポーター ZnT(Zn transporter)2 に機能障害が生じ,乳汁中への亜鉛分泌量が低下し,低亜鉛母乳になる。乳児は通常,母乳から必要量の亜鉛を得ているため,母乳中の亜鉛量が減少した低亜鉛母乳を授乳していると,直ちに亜鉛欠乏に陥る。症例は完全母乳で育児中の生後 4 カ月の男児で生後 2 カ月より後頭部に紅斑が出現した。徐々に口周囲や肛門周囲に鱗屑を伴う紅斑が拡大したため,当科を受診した。母親は潜在性亜鉛欠乏症を認めたが,亜鉛欠乏症状は全くみられなかった。患児の血清亜鉛濃度低値と母乳中亜鉛濃度低値より臨床的に TNZD と診断した。TNZD は通常母乳栄養で発症し,人工乳では発症しない。離乳までの亜鉛補充または人工乳授乳が治療となる。

  • 塩道 泰子, 栗原 雄一, 金城 満, 古江 増隆
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル 認証あり

    78 歳,男性。数年前に生じた左こめかみの病変を主訴に受診した。前医で冷凍凝固療法を繰り返されていた。左こめかみに,中央が白色で黄色の痂皮を付着した 15×10 mm の紅色隆起性病変を認め,下床との可動性は不良であった。部分生検で悪性所見はなかったが,全切除したところ病理組織学的に真皮下層に異型性のある紡錘形細胞が浸潤していた。表皮との連続性は明らかでなかった。免疫組織化学的に腫瘍細胞は AE1/AE3,vimentin に陽性で,p63 が腫瘍細胞の核に陽性であった。また S-100 は陰性であった。以上より,紡錘形細胞型有棘細胞癌(spindle cell squamous cell carcinoma,以下 SCSCC)と診断した。拡大切除を追加し,術後 1 年 6 カ月時点で局所再発や転移を認めていない。SCSCC は組織学的に間葉系腫瘍との鑑別を要する SCC の比較的稀な病型であるが,自験例では冷凍凝固療法によって上皮間葉転換(epithelial-mesenchymal transition,以下 EMT)が誘発され,病変の形成に関与した可能性がある。

  • 瀧川 充希子, 眞部 恵子, 浅越 健治
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル 認証あり

    82 歳,女性。約 1 年前に臍部の腫瘤を自覚した。前医での皮膚生検にて基底細胞癌(basal cell carcinoma:BCC)と診断され,当科を紹介され受診した。臍窩を中心に皮下硬結を伴う紅色から灰黒色の結節を認め,下床との境界は不明瞭であった。画像所見でも深部への浸潤が疑われたため,腫瘍と白線部および白線直下の腹膜組織を含めて切除した。切除標本の組織では白線および腹膜への浸潤は認めなかった。病理組織学的に腫瘍細胞は一部表皮と連続して増殖し,一部は真皮浅層において結節性に増殖していた。真皮深層以深では,上層と同様の腫瘍細胞が臍部線維性組織に沿って囊腫構造を形成し,内部に角質塊を伴っていた。さらに深部から白線近傍にかけては正常角化する異型のない上皮性囊腫が存在し,その壁の一部に連続する腫瘍胞巣も認めた。局在が深くなるにつれて囊腫様構築が明瞭となって上皮性囊腫へ移行していくような全体構築であった。臍部の BCC は非常に稀である。また,臍部は解剖学的構造が特殊で,手術に際しては深部をどの層まで切除するか慎重に判断する必要がある。加えて,BCC の囊腫様構築やその近傍に存在した上皮性囊腫の存在も特徴的であったため,その関連性について文献的考察を加えて検討した。

  • ―― 特にその病理組織像について ――
    三原 基之
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル 認証あり

    94 歳,女性。病変は左側前頭部の著明な乳頭状変化を示す角化性丘疹であった。腫瘍病変は外方増殖性で,真皮上層までに限局し,部位によって病理組織像は異なっていた。病変中央部は分葉構造を示し,各小葉は最外層の外縁細胞,その内層に基底細胞様細胞,さらなる内層に澄明細胞があった。外縁細胞は部位によっては柵状配列を示した。この部位の腫瘍細胞は全体として異型性の強いものはなく,腫瘍胞巣は毛包下部の外毛根鞘の組織像に類似するものであり,外毛根鞘腫様変化とみなされた。病変辺縁部は外毛根鞘腫とボーエン病の病理組織像を併せもつものであり,悪性外毛根鞘腫とみなされた。正常表皮との境界部では腫瘍細胞の表皮内転移,すなわち Jadassohn 現象がみられた。腫瘍胞巣内に稀に渦巻き構造がみられ,これは外毛根鞘性角化類似変化を示した。また腫瘍胞巣内に毛幹をもつ毛包がみられ,これは毛包中心性の所見であった。腫瘍胞巣の最内層あるいは各腫瘍小葉の接触部位は澄明細胞が好酸性壊死物質となっていた。また稀に各腫瘍小葉の接触部位に囊腫が形成されていた。これらの病理組織学的所見は本例が新しい疾患概念として表皮内外毛根鞘癌 trichilemmal carcinoma in situ の名称で表すことができると思われる。

  • 岡﨑 布佐子, 池田 雅彦
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 1 号 p. 53-55
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル 認証あり

    70 歳,女性。初診の 8 年 2 カ月前に右乳癌根治術を施行された。浸潤性小葉癌であった。術後,化学療法とホルモン療法を施行していたが,胸膜および軟部組織に再発し,水腎症,閉塞性黄疸を併発した。初診の 1 カ月前に左眼瞼下垂が出現し,左眼瞼の紅斑を主訴に紹介された。左上眼瞼に浸潤を触れる暗紅色斑を認めた。眼瞼からの生検にて E カドヘリン陰性,34βE12 陽性の腫瘍細胞を認め,原発巣と一致したため浸潤性小葉癌の転移と診断した。放射線療法を開始し,眼瞼の腫脹は消退したが,初診の 4 カ月後に死亡した。悪性腫瘍の眼科領域への転移はまれである。原発巣は乳癌が最も多く,乳癌の中では浸潤性小葉癌が多い。癌治療の進歩とともに癌患者の生存期間は延長しており,眼科領域転移も今後増加すると思われる。

  • 大野 文嵩, 大野 麻衣子, 伊東 孝通, 中原 剛士
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 1 号 p. 56-59
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル 認証あり

    56 歳,男性。左母指紅色結節を切除し,digital papillary adenocarcinoma と診断され,経過観察中であった。手術から 35 カ月後,左腋窩リンパ節転移を認め,左腋窩リンパ節郭清術を施行した。郭清術施行後,左上肢全体のリンパ浮腫をきたした。その後,徐々に左上肢は硬性浮腫となり,腋窩郭清から 28 カ月後,上肢の一部に紫斑,色素沈着が出現した。また,左小指外側に骨様硬の皮下硬結を認めた。前腕部より皮膚生検を行ったところ,異型を伴う腫瘍細胞が管腔構造を形成していた。PET-CT では,左手掌・左小指外側,左手掌~上腕遠位の皮下,左腋窩部に集積を認めた。その他の部位に集積は認めなかった。以上から digital papillary adenocarcinoma の多発皮膚転移と診断した。Digital papillary adenocarcinoma は緩徐進行性の汗腺系悪性腫瘍であり,自験例は初診時の臨床像や病理組織像は典型的であったが,後に特殊な転移様式を呈した。

世界の皮膚科学者
  • Hywel Williams
    原稿種別: letter
    2022 年 84 巻 1 号 p. 63-64
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル 認証あり

    Prof. Hywel Williams (MSc, PhD, DSc, FRCP, FMedSci) is Professor and Co-Director of the Centre of Evidence-Based Dermatology at the University of Nottingham. He trained in dermatology at King's College Hospital with Dr. Anthony du Vivier. He then went to St. Johns Dermatology Centre, London where he studied epidemiology and clinical trials with Professor Rod Hay. Hywel joined the University of Nottingham in 1994 as an Associate Professor and became full Professor and chair in 1998. There, he founded the Cochrane Skin Group and the UK Dermatology Clinical Trials Network that now form part of the Centre of Evidence-Based Dermatology. Hywel also serves as a consultant paediatric dermatologist at Nottingham University Hospitals NHS Trust, specialising in childhood eczema. Outside of dermatology, Hywel has worked on funding committees for the National Institute for Health Research (NIHR) for 15 years, culminating in him directing the largest Government funded clinical trials programme for medicine and surgery in the UK (NIHR HTA) . He now also advised the UK Government on COVID-19 research oversight.

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