西日本皮膚科
Online ISSN : 1880-4047
Print ISSN : 0386-9784
ISSN-L : 0386-9784
84 巻, 5 号
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目次
図説
  • 村上 絵美, 田中 麻衣子
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 5 号 p. 389-390
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル 認証あり

    患者:13 歳,男性

    主訴:眼瞼周囲の皮疹

    現病歴:半年前から眼瞼周囲に皮疹が出現し,徐々に増数,増大した。黄色腫,黄色肉芽腫を疑い前医にてコレステロール値を測定したが正常値だった。当科に紹介され受診した。

    既往歴:アトピー性皮膚炎

    家族歴:特記事項なし

    初診時現症図 1 ):左上眼瞼内側に中央が陥凹した約 3 mm の紅色結節と約 1×2 mm の白色結節,左下眼瞼内側に約 1 mm の白色隆起病変があり,上眼瞼の紅色結節と白色結節それぞれから皮膚生検を行った。 また,写真はないが,右上眼瞼内側に中央が陥凹した約 3 mm の紅色結節,約 1 mm の白色隆起病変,右下眼瞼内側に約 2 mm の白色扁平隆起があった。

    病理学的所見図 2 ):左上眼瞼の紅色結節の病理組織像を示す。表皮はびらんと錯角化を伴う過角化があり,transepidermal elimination に伴う再生性変化と考えた。真皮浅層を主体に好塩基性に染まる無構造物質の沈着を多数認め(石灰沈着),周囲組織との境界は明瞭であった。石灰沈着部の周囲は炎症細胞の浸潤は目立たないが,多核巨細胞は多数みられた。肉芽腫の形成はみられなかった。左上眼瞼の白色結節も同様の所見であった。

    診断:Subepidermal calcified nodule

    治療および経過:黄色腫,伝染性軟属腫などを鑑別に考え,初診時に切除生検を行った。病理学的所見から上記診断となった。石灰沈着を引き起こす原疾患の有無について精査希望はなく,周囲の皮膚病変について追加切除を行った。再発はみられていない。

  • 仲本 すみれ, 辻 学, 中原 真希子, 中原 剛士
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 5 号 p. 391-392
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル 認証あり

    患者:49 歳,男性

    主訴:体幹,四肢の紅斑,紅色丘疹

    既往歴:糖尿病,糖尿病性網膜症,網膜剥離,糖尿病性腎症,糖尿病性神経障害

    現病歴:全身に瘙痒を伴う紅斑が多発しており,長年未治療であった。糖尿病性網膜症に伴う網膜剥離に対して当院眼科入院中に全身の皮疹に対して精査目的に当科紹介となった。

    現症:頭皮,体幹,四肢に痂皮や鱗屑を伴う小紅斑,紅色丘疹が散在していた。痂皮が付着する中央が軽度陥凹した小結節もみられ,同部位より皮膚生検を施行した(図 1 )。

    血液検査:BUN 19 mg/dL,Cr 1.14 mg/dL,HbA1c 10.8%

    病理組織学的所見:表皮のカップ状の表皮陥凹(図 2 )の中に膠原線維の経表皮排泄像を認めた(図 3 )。陥凹部直上の角層は角栓形成がみられた。真皮は浮腫状であり,真皮上層の血管周囲にリンパ球と少数の好酸球の浸潤を認め,毛細血管の増加と赤血球の血管外漏出を認めた。

    診断:後天性反応性穿孔性膠原線維症

    治療および経過:当院糖尿病内科でインスリンによる治療が開始され HbA1c は改善傾向となった。当科でヘパリン類似物質クリームによる保湿とベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏の外用を行い,瘙痒と皮膚症状は改善した。

  • 松立 吉弘
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 5 号 p. 393-394
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル 認証あり

    患者:71 歳,男性

    主訴:舌の紅色結節

    現病歴:進行胃癌に対し,6 カ月前からラムシルマブ,nab-パクリタキセル併用療法が施行され,血小板減少のため 5 週間前からラムシルマブ単剤に変更された。1 週間前から舌に結節が生じたため受診した。

    現症:舌背に約 10 mm の膿苔が付着した有茎性紅色結節を認めた(図 1 )。

    病理組織学的所見(HE 染色):分葉状構造を呈し,表面に厚い痂皮が付着していた(図 2 a)。粘膜固有層に結節状に増加した血管内皮細胞と拡張した血管を認め,間質には膠原線維の増生がみられた(図 2 b)。

    診断:毛細血管拡張性肉芽腫(pyogenic granuloma,PG)

    治療および経過:原疾患の進行のため,ラムシルマブは中止され,ニボルマブへ変更となった。PG の新生はなく経過している。

  • 川口 晃三, 栗原 雄一, 宮原 正晴, 明石 道昭
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 5 号 p. 395-396
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル 認証あり

    患者:75 歳,男性

    主訴:頚部,腋窩の潰瘍,皮下結節

    既往歴:関節リウマチ

    現病歴:関節リウマチにて5 年前よりプレドニゾロン,メトトレキサートを内服していた。当科初診 6カ月前より頚部と両腋窩に皮下結節が出現し徐々に潰瘍化した。

    現症:頚部と両腋窩に排膿を伴う無痛性の皮下結節と潰瘍を多数認めた(図 1 )。

    検査:血液検査で QFT(+),喀痰塗抹(Ziehl-Neelsen 染色):陰性,液体培養(喀痰):陰性,液体培養(右腋窩):Mycobacterium tuberculosis,PCR(培養検体):結核菌群(+)

    単純 CT:頚部,腋窩,縦隔にリンパ節腫大を認めた。肺野を含むその他の部位には異常所見は観察されなかった。

    病理組織学的所見:真皮内に乾酪壊死を伴う類上皮細胞肉芽腫を認め(図 2 a),内部には好中球浸潤を伴っていた(図 2 b)。散在性に多核巨細胞浸潤が観察され(図 2 b),Ziehl-Neelsen 染色陽性の桿菌を認めた(図3 )。

    診断:皮膚腺病

    経過:関節リウマチに処方されていたプレドニゾロン 5 mg/day およびメトトレキサート 6 mg/week は継続のままイソニアジド,リファンピシン,エタンブトールの 3 剤で 2 カ月間治療を行い,その後イソニアジド,リファンピシンの 2 剤で 7 カ月間治療を行った。抗結核薬投与後有害事象なく,開始後 2 カ月で結節は平坦化し,潰瘍は上皮化した(図 4 )。

綜説
  • 伊藤 泰介
    原稿種別: 総説
    2022 年 84 巻 5 号 p. 397-401
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル 認証あり

    抜毛症は皮膚疾患でもあり皮膚科医師のみで解決しないことも多い疾患である。皮膚科領域のみならず精神科領域でも病態解明のための基礎研究は進んでいない。診断は慎重を要し,視診,問診に加えてダーモスコピー観察や抜毛試験,牽引試験,皮膚生検などが有用である。しかし診断には経過観察も重要であり,1~2 回の診察で抜毛症と判断することは避け,常に診断の再確認を行うべきである。 時間をかけて患者との信頼関係の構築を行い,徐々に良い方向につなげていくという心持ちで診療を行うことが良い。

症例
  • 渡辺 華子, 小池 雄太, 森嵜 仁美, 鍬塚 さやか, 小川 文秀, 室田 浩之
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 5 号 p. 402-406
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル 認証あり

    50 歳,女性。初診の 1 カ月前に外痔核を発症し,近医外科にて複数の外用薬,内服薬による治療を開始した。その後肛門周囲に瘙痒を伴う発赤が出現し拡大し,さらに全身に皮疹が出現した。当科を受診し,痔疾患用外用剤による接触皮膚炎症候群を疑い,プレドニゾロン 25 mg/ 日,ビラスチン,フェキソフェナジン内服,ステロイド外用(肛門周囲:ベタメタゾン吉相酸エステル軟膏,四肢体幹:ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏)を行い皮疹は軽快した。使用していた痔疾患用外用剤においてパッチテストを施行したところ,トリベノシド・リドカイン軟膏(ボラザG®軟膏)が陽性となり,接触皮膚炎症候群の原因薬として同定した。さらに成分パッチテストにて,トリベノシド,リドカインいずれも陽性であった。なおトリベノシドは 0.1% pet. で陽性となり,一方トリベノシド・リドカイン軟膏には約 11%のトリベノシドが含有されていることから,最低惹起濃度を大きく超える濃度のトリベノシドを粘膜面に連日外用したことが,接触皮膚炎症候群を惹起した原因であると推察した。痔疾患用外用剤は使用頻度の高い薬剤であり,遅延型アレルギーを生じた場合には接触皮膚炎症候群に進展する可能性が高いことを念頭に置き,十分な注意を払う必要がある。

  • 上野 彩夏, 千貫 祐子, 森田 栄伸
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 5 号 p. 407-409
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル 認証あり

    【背景】α-Gal syndrome は,マダニ咬傷によってマダニ唾液腺中の galactose-α-1,3-galactose(α-Gal)に感作された患者が,獣肉の α-Gal に対してアレルギーを発症する疾患である。α-Gal syndrome 患者は哺乳類肉の他,抗悪性腫瘍薬のセツキシマブやカレイ魚卵にもアレルギーを生じる。対処法として,感作原因であるマダニ咬傷回避の指導が重要である。【目的】マダニ咬傷回避の指導による α-Gal syndrome 患者の予後を解析する。【方法】α-Gal syndrome 患者 13 例(初診時年齢 38~81 歳,平均 66.8 歳,男性 8 例,女性 5 例)について,診断と同時にマダニ咬傷回避の指導を行い,その後定期的に牛肉特異的 IgE 値を測定し,臨床的予後を検討した。【結果】13 例中 9 例が,定期的な経過観察中に牛肉特異的 IgE 値が陰性化した(マダニ咬傷回避の指導開始から牛肉特異的 IgE 陰性化までの期間 11~78 カ月,平均 41.1 カ月)。このうち 5 例が獣肉全般の摂取が可能となり,2 例が豚肉のみ摂取可能となり,2 例が恐怖心から獣肉摂取を回避している。【結論】α-Gal syndrome はマダニ咬傷回避の指導によって多くが治り得る。ほとんどの患者がマダニ咬傷には気付いていないため,日常生活上の徹底的な回避の指導が重要と考える。

  • 板村 美沙, 吉岡 はるな, 青木 健一, 妙中 隆大郎
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 5 号 p. 410-414
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル 認証あり

    56 歳,男性。初診の 8 カ月前に骨髄異形成症候群を発症し,その後急性骨髄性白血病へ移行しアザシチジン(ビダーザ®,5-azacitidine,以下 AZA)を開始された。AZA 治療 3 コース終了後,発熱と AZA 皮下注射部位の紅斑が出現し,生検で Sweet 症候群の診断となった。プレドニゾロン(プレドニン®)0.5 mg/kg/day の投与で軽快した。AZA は高リスク群の骨髄異形成症候群の第一選択薬として 2011 年に本邦で承認後,2021 年 3 月には急性骨髄性白血病にも適応拡大となり近年使用例が増加している。AZA に関連した Sweet 症候群の報告は少なく,さらに皮下注射部位に発症した症例は稀である。近年 Sweet 症候群の発症に関して新たな知見が明らかになってきており,AZA による薬剤性 Sweet 症候群についてもさらなる症例の蓄積と解析が望まれる。皮膚科医も AZA による Sweet 症候群を念頭におき,協力して診療を行う必要がある。

  • 村上 めぐみ, 明石 憲佳, 磯部 里香子, 下村 麻衣子, 花井 有里子, 満間 照之
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 5 号 p. 415-417
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル 認証あり

    乳児血管腫(いちご状血管腫)は新生児期に発生する血管内皮細胞由来の良性腫瘍である。出生直後から数週間までに発症し急速に増大していくが,自然退縮傾向があり徐々に退縮していくことが多い。高度な症状を示す一部の症例以外は治療をせずに経過観察することが多かったが,20 年程前からレーザー治療が行われるようになってきた。しかしレーザー治療では隆起型や皮下型の血管腫には十分な効果が得られず,最近ではプロプラノロール塩酸塩シロップ(ヘマンジオルシロップ®)内服が主流で行われている。本症例は右上腕に重度の隆起型乳児血管腫を認めており,胎生25 週0 日,755 g での低出生体重児であり修正週数6 週になるまで内服を開始せず経過をみようとしていたが,修正週数5 週で腫瘍が自壊したため,即日内服を開始した。内服開始後特に副作用なく腫瘍は順調に縮小し,内服終了後も再燃を認めていない。低出生体重児の隆起型乳児血管腫に対するプロプラノロール塩酸塩シロップ内服の適応について考察する。

  • 松本 香奈枝, 金子 栄, 竹内 想, 武市 拓也, 秋山 真志
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 5 号 p. 418-421
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル 認証あり

    39 歳,女性。生下時から続く手掌と足底部の過角化を主訴に受診した。受診時,両側手掌と足底部のみに限局したびまん性の黄色過角化と,周囲に軽度の潮紅を認めた。手指や足趾の絞扼輪はなかった。同様の症状が患者の子供 2 人と母親,母方の祖父・親族にもあり,常染色体優性遺伝と考えられる家族歴があった。患者と患者の子供 2 人の遺伝子検査を行い,ケラチン 9(KRT9)遺伝子において c.487C>T(p.R163W)という既報告の variant をヘテロ接合体で同定し,Vörner 型掌蹠角化症と診断した。エトレチナートの少量内服を開始したが,肝機能障害が増悪したため中止し,過去の症例報告で有効と記載のあった外用や内服薬などで加療を試みている。自験例は遺伝子検査にて既報告の KRT9 遺伝子変異を認めたことで確定診断に至り,患者の疾患に対する十分な理解を得られた。遺伝子変異に関しては遺伝カウンセリングにて理解を得ているが,治療には難渋している。

  • 仲本 すみれ, 辻 学, 中原 真希子, 中原 剛士
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 5 号 p. 422-424
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル 認証あり

    53 歳,女性。当科初診の20 年前に右拇指球部に自覚症状の伴わない陥凹性紅色局面が出現し,その後拡大した。皮疹部に外傷歴や刺激行為はなかった。ダーモスコピーでは紅色無構造であった。皮膚生検では健常部から病変部にかけて角層が階段状に菲薄化し,それに伴い顆粒層も菲薄化していた。Circumscribed palmar hypokeratosis の診断となった。活性型ビタミン D3 製剤を外用し,治療開始後 2 カ月の時点で辺縁の陥凹がわずかに平坦化した。本疾患は表皮の角化異常,ヒトパピローマウイルス感染,外傷などが原因として考えられているが,確立した見解はない。治療法は活性型ビタミン D3 製剤の外用,液体窒素凍結療法,外科的切除などの報告があるが,保存的治療では奏効しないことも多く確立した見解はない。本疾患は認知度が低く,誤診されることも多いため,中高年女性の掌蹠に生じた陥凹性紅斑を認めた場合,本疾患に留意する必要がある。本疾患の病態の解明や治療の確立のために,今後さらなる症例の蓄積が望まれる。

  • 久本 岳史, 浅野 伸幸, 下村 裕
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 5 号 p. 425-428
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル 認証あり

    症例は 39 歳,男性。初診 2 年前に黒色皮疹を前頭部左側に 1 個,6 カ月前に下腹部に 5 個認め,近医皮膚科より精査加療目的に当科を紹介され受診した。境界明瞭な黒色隆起性局面を認め,病理組織学的に基底細胞癌と診断された。皮膚に多発する基底細胞癌に加えて,頭部単純CT 検査では軽度の大脳鎌石灰化,左下顎骨内囊胞性病変を認め,また母親に同症の既往があり,Kimonis らによる診断基準から基底細胞母斑症候群と診断された。患者の末梢血 DNA を用いて本疾患の原因遺伝子の 1 つである PTCH1 を解析した結果,エクソン 13 に既知のナンセンス変異 c.1804C>T(p.Arg602*)がヘテロ接合型で同定された。 基底細胞癌に対しては,全身麻酔下で切除術が施行された。本疾患の患者では生涯に渡り非露光部も含めて全身に基底細胞癌が多発することが予想されるため,定期的に全身の皮膚を診察し,早期発見・早期治療介入に努める必要がある。

  • 村上 めぐみ, 満間 照之, 磯部 里香子, 明石 憲佳, 下村 麻衣子, 天野 友里恵, 花井 有里子
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 5 号 p. 429-433
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル 認証あり

    全身性強皮症(以後,強皮症と記載する)は皮膚真皮,消化管壁,肺間質のコラーゲンの線維化が特徴の膠原病である。種々の自己抗体が陽性となることがありそれぞれ特徴的な臨床像を呈する。抗 RNA ポリメラーゼⅢ抗体は欧米では強皮症患者の約 25%,日本では約 5%で陽性となり,疾患特異性が高い。現在まで抗 RNA ポリメラーゼⅢ抗体と悪性腫瘍の関連について多数指摘されてきている。今回当院において抗 RNA ポリメラーゼⅢ抗体陽性の強皮症患者で悪性腫瘍を併発した 4 例について検討する。

  • 中川 浩一, 東田 理恵, 松尾 彩子, 岡林 綾
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 5 号 p. 434-437
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    60 歳,女性。初診の 1~2 年前から左下腿に小結節を認めていたが放置していた。最近になって時々痛みを感じるようになったため受診した。左前脛骨部に 5×7 mm の弾性硬の皮下結節を認めた。超音波検査では皮下組織内に卵円形の低エコーの腫瘤が観察され,その中央には小さな血管構造があり拍動が認められた。病理組織学的検査では真皮から皮下組織にかけて境界明瞭な結節性腫瘍がみられ,中央に小血管が観察された。腫瘍細胞は好酸性の胞体を持ち,紡錐形ないしは短紡錘形で細かい血管の周りを同心円状に配列されている。α-smooth muscle actin:陽性,desmin:陰性で myopericytoma と診断した。過去の本邦報告例を集計したが,超音波検査を行った症例は少なく,血管の拍動の記載はなかった。海外では動脈と myopericytoma の関連性を示唆する報告が 2 報みられ,myopericytoma の中には動脈の筋周皮細胞由来のものもある可能性が示唆された。

  • 南川 文香, 山本 剛伸, 青山 裕美
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 5 号 p. 438-442
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル 認証あり

    皮膚,皮膚以外の悪性腫瘍が表皮内に浸潤増殖する Epidermotropic metastasis の報告は稀であり,メカニズムは解明されていない。 症例 1,83 歳男性,前額部左側にドーム状結節を形成し,生検により真皮に腫瘍細胞を認め,食道扁平上皮癌皮膚転移と診断した。症例 2,70 歳男性,前額部右側に潰瘍を伴う結節を認め,生検で肺扁平上皮癌皮膚転移と診断した。組織学的診断後,全摘出を施行し,2 例とも真皮全層の腫瘍細胞と生検により形成された潰瘍辺縁に腫瘍細胞が表皮内に浸潤する Epidermotropic metastasis の所見を呈した。摘出標本を用いた生検部周囲と生検から離れた部位の炎症細胞の種類・数,血管数,vascular endothelial growth factor(VEGF)陽性細胞を計測した結果,生検部周囲のリンパ球様単核球,血管,VEGF 陽性好中球や線維芽細胞は離れた部位より有意差をもって多く認めた。 創傷治癒の過程では,周囲の様々な細胞から VEGF を含むサイトカインを放出し,炎症細胞浸潤と血管増生をきたす。転移性皮膚腫瘍の場合,Epidermotropic metastasis をきたす機序として,生検後の創傷治癒過程で,生検部局所の VEGF 産生促進などを介して血管増生を誘導し,腫瘍細胞の増殖亢進をきたすと同時に,破綻した表皮辺縁より腫瘍細胞が表皮内に入りこみ表皮向性を示したと考えた。血管増生,腫瘍の増生によるさらなる転移病巣の拡大をきたすことが想定されるため,転移性皮膚腫瘍に対する皮膚生検は必要最低限に留めるべきである。

  • 浦上 仁志, 加持 達弥, 山﨑 修, 山田 潔, 黒住 和彦, 国定 俊之, 田端 雅弘, 森実 真
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 5 号 p. 443-446
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル 認証あり

    59 歳,女性。初診の 9 年前より前頭部右側に徐々に増大する硬化性局面を認めた。限局性強皮症と考えられ経過観察されていたが,同部位に潰瘍を生じ皮膚生検にて基底細胞癌と診断された。下床の頭蓋骨を含めて広範囲切除し,前外側大腿遊離皮弁による再建術を施行した。病理組織学的所見では斑状強皮症型/破壊型であり,頭蓋骨内部への浸潤が認められた。切除断端陰性であったが,約半年後に第 5 胸椎左横突起転移を生じ切除術を施行した。その約1 年後右大腿骨内側顆に転移が出現し,切除・人工関節置換術後にシスプラチン・ドキソルビシン療法を施行した。その約 2 年後,右肺門部転移が出現しカルボプラチン・パクリタキセル療法を施行した。その後,特発性器質化肺炎を生じたため化学療法を中止し,プレドニゾロン投与にて加療した。その後は化学療法の再開を希望されなかったため,緩和的放射線療法を施行した。

  • 塚本 遥子, 佐藤 絵美, 中村 加奈恵, 清水 裕毅, 今福 信一
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 84 巻 5 号 p. 447-451
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル 認証あり

    74 歳,男性。初診 9 年前に好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)と喘息と診断され,近医神経内科でステロイド内服治療を長期間行っていた。半年前からステロイド内服を自己中断して,その後全身療法はベンラリズマブ(ヒト化抗 IL-5 受容体 α モノクローナル抗体製剤)単剤投与へと変更された。喘息の症状はコントロールされていたが,下肢の神経障害が増悪し感覚鈍麻を生じていた。初診 1 週間前より 38℃台の発熱と両下腿に紫斑が出現し EGPA の増悪が疑われ,当院内科を紹介され当科も受診した。初診時,左足底に壊死組織を伴う潰瘍があり可及的にデブリードマンを行った。EGPA に対しプレドニゾロン 55 mg/day の内服が開始された。翌日に左足底の潰瘍周囲に握雪感を伴う発赤・腫脹と血疱が出現し,単純 CT でガス像を認め,ガス壊疽と診断した。同日緊急デブリードマン手術および抗菌薬治療を開始し,潰瘍は上皮化した。同入院中に EGPA による高度神経障害に対し γ グロブリン大量静注療法およびステロイドパルス療法を施行されたが,神経障害は残存した。高度な下肢神経障害を合併している患者は,足の傷に気づかず治療が遅れることが多々ある。神経障害を伴う EGPA では免疫抑制状態の患者も多いため,糖尿病患者と同様に重症感染症を予防するためにフットケア指導を行うべきと思われる。

世界の皮膚科学者
  • Brian Kim
    原稿種別: letter
    2022 年 84 巻 5 号 p. 455-456
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル 認証あり

    Brian S. Kim, M.D., M.T.R. is the Sol and Clara Kest Professor, Vice Chair of Research, and Site Chair of Mount Sinai West and Morningside in the Kimberly and Eric J. Waldman Department of Dermatology at Icahn School of Medicine at Mount Sinai. He is also Director of the Mark Lebwohl Center for Neuroinflammation and Sensation. Dr. Kim received his B.S. in chemistry with honors from Haverford College and his M.D. from the University of Washington. He was a Howard Hughes Medical Institute-National Institutes of Health Research Scholar under Dr. Stephen I. Katz, and completed his residency in dermatology at the Perelman School of Medicine at the University of Pennsylvania. He completed a postdoctoral fellowship under Dr. David Artis, leading to a Master of Translational Research (MTR)

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