西日本皮膚科
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目次
図説
  • 竹内 聡, 和田 遥, 米田 玲子, 中原 剛士
    原稿種別: 症例報告
    2026 年88 巻3 号 p. 205-206
    発行日: 2026/06/01
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル 認証あり

    患者:55 歳,女性

    主訴:両下腿の難治性紅斑,むくみ

    既往歴:甲状腺機能亢進症でチアマゾール治療中だった。盲腸で手術歴がある(16 歳時)

    現病歴:初診の 3 年 8 カ月前より他院で甲状腺機能亢進症の診断下にチアマゾールの内服治療中で,経過良好にて同薬を 2.5 mg/日にまで漸減された。初診の 7 カ月前から眼球突出などの関連症状が悪化したため,1~2 カ月毎に同薬を 5 mg,7.5mg,10 mg,15 mg/ 日と漸増されてた。初診の 6 カ月前より両下腿に難治性の淡い紅斑を生じ,同 3 カ月前より左下腿,次いで右下腿にもむくみが出現し,最近 2 カ月で体重が 2 kg ほど増加してきた。

    現症:眼球突出(図 1 a)および両側下腿に軽度の瘙痒を伴う淡紅色の non-pitting edema(図 1 b)がみられた。

    病理組織学的所見:HE 染色では真皮全層の膠原線維間にムチン沈着が疑われ(図 1 c),Alcian blue(pH 2.5)で明瞭に染色された(図 1 d)。

    採血検査(下線は異常値):TSH 0.017μIU/ml(0.27~4.20),Free-T4 1.37 ng/dl,抗サイログロブリン抗体<10.0 IU/ml,抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体 4.7 IU/ml(<3.3),甲状腺刺激抗体(TSAb)8450%(<110),TSH レセプター抗体(第 3 世代)25.9 IU/l(0~1.9)で甲状腺機能亢進症に合致する採血検査結果であった。

    診断:甲状腺機能亢進症に伴う脛骨前粘液水腫

    治療および経過:クロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏の連日外用により,紅斑と浮腫は 5 週後には著明に改善し,同 10 週後にはさらに改善したが,外用局所の皮膚の菲薄化のため一旦外用を中止した。中止後は一時的に症状が再燃し再度同薬を外用することもあったものの,その後 7 カ月間症状は落ち着いている。

  • 王 黎亜, 呉竹 景介, 梁井 公輔, 西山 憲一, 竹下 弘道, 中原 剛士
    原稿種別: 症例報告
    2026 年88 巻3 号 p. 207-208
    発行日: 2026/06/01
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル 認証あり

    患者:86 歳,女性

    主訴:臍部の紅色結節

    現病歴:直腸癌に対し当院の外科で手術予定であった。左大腿骨頚部骨折で当院の整形外科に入院時に,臍部に淡黄色の滲出液を伴う紅色結節を指摘され,当科へ紹介され受診した。

    現症:臍部に淡黄色の滲出液を伴う可動性不良な弾性硬の紅色結節を認めた(図 1 a,b)。

    ダーモスコピー所見:出血を伴う毛細血管拡張像がみられた(図 2 )。

    血液検査所見(下線は異常値を示す)CEA が 7.6 ng/ml(≦5.0),CA125 が 55.3 U/ml(≦35.0)と上昇していた。

    画像検査所見:CT 検査では臍部の病変は腹腔内より連続しており尿膜管遺残は否定的であった。また,右卵巣に 7 カ月前と比較して増大傾向にある腫瘤を認めた。MRI 検査の拡散強調画像と Apparent Diffusion Coefficient では右卵巣の腫瘤に拡散抑制があり,悪性腫瘍に矛盾しない所見であった。

    病理組織学的所見:臍部の結節の皮膚生検では異型細胞が真皮内に胞巣状に増殖していた(図 3 a,b)。免疫組織化学染色では AE1/AE3 陽性,WT1 陽性,エストロゲンレセプター陽性であった。一方,下部消化管内視鏡検査にて採取した直腸の組織は腺管形成を示す高~中分化腺癌の所見であった。

    診断および経過:臍部の結節の組織像は胞巣を伴う腺癌であり,腺管形成を示す直腸癌の組織像と異なっていた。免疫組織化学染色の結果を踏まえ卵巣癌(高異型度漿液性腺癌)が強く疑われ,Sister Mary Joseph’s Nodule(以下 SMJN)と診断した。高齢かつ認知機能の低下もあり,根治的な治療は行わず姑息的な人工肛門増設術と臍部の結節の切除のみを行った。

  • 大塚 美玖, 佐藤 絵美, 筒井 啓太, 髙野 彩加, 今福 信一
    原稿種別: 症例報告
    2026 年88 巻3 号 p. 209-210
    発行日: 2026/06/01
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル 認証あり

    患者:生後 7 カ月,女児

    主訴:左腋窩の腫脹と熱感

    合併症・家族歴:特記事項なし

    現病歴:生後 5 カ月で左上腕に Bacillus Calmette-Guérin(BCG)ワクチンを接種した。5 週後に 38.5 度まで発熱し,7 週後に左腋窩に 1 cm 程度の皮下結節が生じた。その後皮下結節は増大し 8 週後に熱感を伴うようになり近医を受診した。セファゾリンナトリウムを投与されるも軽快なく紹介された。

    初診時現症:左腋窩に 4×1.5 cm の皮下腫瘤を認め(図 1 ),圧痛を伴った。

    臨床検査所見:月齢からすると好中球優位の軽度炎症反応上昇をみとめた。IgG,IgA,IgM は正常値だった。

    細菌学的所見:皮膚組織の迅速 TRC 法・マイコバクテリウム抗原キット陽性,同組織からの特殊 PCR 法でMycobacterium bovisM. bovis)を同定した。

    診断:BCG 関連リンパ節炎

  • 佐藤 俊之, 中條 聡美, 延山 嘉眞, 田邊 行敏, 神尾 卓哉, 朝比奈 昭彦
    原稿種別: 症例報告
    2026 年88 巻3 号 p. 211-212
    発行日: 2026/06/01
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル 認証あり

    患者:日齢 2 日,男児

    主訴:臍部左方の皮膚結節

    現病歴:出生時より臍部左方に皮膚結節を認め,精査目的に当科を紹介され受診した。

    既往歴:なし

    家族歴:なし

    初診時現症:臍部左方に孤立性の,直径 10 mm,円形でドーム状に隆起し,中央に黄色から褐色調の痂皮を伴う弾性軟,紅色調の皮膚結節を認めた(図 1 )。

    ダーモスコピー所見:結節の中央の黄色から褐色調の領域に血管構造と思われる不規則な線状構造を認めた。また,辺縁の紅色領域には拡張した毛細血管を認めた(図 2 )。

    臨床検査所見:血液・生化学検査所見に特記すべき事項を認めなかった。腹部超音波検査,胸部および頭部 X 線,頭部 MRI で肝脾腫,骨病変,肺病変,下垂体腫大を認めなかった。

    病理組織学的所見:辺縁の紅色領域と中央の痂皮をかけて 5 mm パンチで皮膚生検を行った。真皮浅層から深層にかけて,淡い好酸性の細胞質を有し,核がくびれており胞体の豊富な組織球様細胞の浸潤を認めた。また,好酸球およびリンパ球の浸潤も認めた(図 3 ,4 )。免疫組織化学染色では,組織球様細胞は CD1a,S-100 蛋白および CD207 が陽性であった。

    治療および経過:臨床所見,病理所見からランゲルハンス細胞組織球症と診断した。出生時から存在する単発性の結節であること,腹部超音波検査,胸部および頭部 X 線,頭部 MRI の結果から多臓器病変は否定的であり,先天性自然治癒性組織球症と考え経過観察を行った。生後 84 日の診察時に結節は退縮傾向を示し,生後 304 日には結節が完全に消失した(図 5 )。以上より,先天性自然治癒性組織球症と確定診断した。2 年間の経過観察を行い,病変の再発を認めなかった。

綜説
症例
  • 王 黎亜, 成富 真由香, 濱崎 友佳, 幸田 太, 中原 剛士
    原稿種別: 症例報告
    2026 年88 巻3 号 p. 218-220
    発行日: 2026/06/01
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル 認証あり

    70 歳,女性。掌蹠膿疱症と難治性の慢性蕁麻疹にて当院の皮膚科に通院中であった。約 1 年前から起床時に頰部や口唇の浮腫が出現するようになり,4 カ月前から舌の著明な浮腫も伴った。浮腫は月 1 回程度の頻度で起こり,24 時間前後持続した。家族歴や血液検査から遺伝性の血管性浮腫は否定的であった。舌の浮腫の程度は高度で発語障害を伴うほどであったため,気道閉塞が危惧された。難治性慢性蕁麻疹に対する治療も兼ねてオマリズマブを導入したところ,浮腫の発作は消失し,蕁麻疹の皮疹も併せて軽快した。また,患者が定期内服している薬剤の中に DPP-4 阻害薬配合のビルダグリプチン・メトホルミン塩酸塩配合剤,カルシウム拮抗薬であるシルニジピン,アンジオテンシン受容体Ⅱ拮抗薬配合のカンデサルタンレキセチル・ヒドロクロロチアジド配合剤があり,順次中止した。オマリズマブの開始後 2 年 1 カ月の時点で患者の希望があり,投与を終了した。オマリズマブの投与終了後,蕁麻疹の軽度再燃はあるも,現在まで浮腫の発作の再燃はなく経過している。

  • 徳田 一三, 中川 浩一, 加藤 麻衣子, 中嶋 千紗, 中山 智裕, 大塚 篤司
    原稿種別: 症例報告
    2026 年88 巻3 号 p. 221-225
    発行日: 2026/06/01
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル 認証あり

    50 歳台,男性。当科初診の 16 年前に胸腺腫を指摘された。手術と化学療法を実施したが腫瘍残存があり積極的な治療を行わない方針となっていた。初診の 1 週間前より肺炎があり近医にて内服薬が追加された。内服開始と同時期から全身の皮疹が出現し当科を紹介され受診した。薬疹として治療を開始したがステロイド製剤の内服および外用は無効であった。その後,病理組織学的所見と腸炎症状の合併から Thymoma-associated multiorgan auto-immunity(TAMA)の診断に至った。診断後はステロイド外用にて症状の軽減をみたが,皮疹出現から 2 カ月で胸腺腫にて永眠された。TAMA は胸腺腫の腫瘍随伴症候群の 1 つであり,病理組織学的に graft-versus-host disease(GVHD)に似た皮疹,腸炎,肝障害を合併する病態を指す。特徴的な皮疹を呈することもなく,合併症や病理組織検査を含めて診断するため,初診時での診断は困難である。制御性 T 細胞の減少が発症に関連していると推察されているが,確立された治療法はない。TAMA の皮膚症状出現からの生命予後は短く,予後不良な病態である。

  • 杉 悠太, 村田 真帆, 酒井 雛子, 占部 和敬, 今山 修平, 中原 剛士
    原稿種別: 症例報告
    2026 年88 巻3 号 p. 226-229
    発行日: 2026/06/01
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル 認証あり

    20 歳,女性。再生不良性貧血に対して同種骨髄移植を施行された。移植後 3 カ月より顔面体幹に瘙痒を伴う紅色丘疹,膿疱が出現した。初診時,細菌性毛包炎を考え抗菌薬の内服と外用を行うも改善なく皮膚生検を施行した。毛包および皮脂腺周囲に多数の好酸球浸潤を認め,好酸球性膿疱性毛包炎(eosinophilic pustular folliculitis:EPF)と診断した。インドメタシンの内服を開始し,皮疹は改善した。EPF はヒト免疫不全ウイルス感染や悪性腫瘍,造血幹細胞移植後などの免疫抑制状態での発症が報告されている。骨髄移植後において好酸球増多や瘙痒を伴う難治性の皮疹をみた場合,EPF を鑑別に考え治療にあたる必要があると考えた。

  • 王 黎亜, 黒岩 大海, 木附 智子, 井手 豪俊, 中原 剛士
    原稿種別: 症例報告
    2026 年88 巻3 号 p. 230-233
    発行日: 2026/06/01
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル 認証あり

    54 歳,女性。数年前から,起床時より口唇の腫脹が半日程度持続するようになった。その後腫脹が増悪し,顔面のほかの部分も腫脹してきたため当科を紹介され受診した。初診時,口唇と頰部の腫脹と下顎の発赤と硬結があり,病理組織学的に乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫とリンパ球と形質細胞主体の炎症細胞浸潤を認めた。Melkersson-Rosenthal 症候群に特徴的な皺襞舌や顔面神経麻痺はなく,血液検査および画像検査ではサルコイドーシスや IgG4 関連疾患は否定的であり,肉芽腫性口唇炎の診断に至った。軟部組織評価目的に単純 MRI 検査を撮像したところ,両上顎洞,咽頭,喉頭の粘膜肥厚を認めた。また,喉頭ファイバーで咽頭と喉頭の高度浮腫による気道狭窄の所見がみられた。また,肉芽腫性口唇炎は口腔内病巣感染との関連が指摘されているが,本症例でも口腔衛生は極めて不良であった。病勢進行による窒息の危険性を考え,ステロイドとトラニラストの内服と歯科治療を並行して開始した。口唇と下顎の発赤と硬化は軽減し,喉頭ファイバーでも気道狭窄の改善が認められた。肉芽腫性口唇炎の治療においては各症状に応じて歯科や耳鼻咽喉科との連携が重要である。

  • 井上 雄二, 荒木 良子
    原稿種別: 症例報告
    2026 年88 巻3 号 p. 234-237
    発行日: 2026/06/01
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル 認証あり

    9 歳,男児。初診の 1 カ月前より顔面を中心に痒みを伴う紅斑および丘疹が出現した。接触皮膚炎の可能性を疑い,デゴシチニブ軟膏の外用を行ったが効果なく,皮疹は頚部まで拡大した。ヒドロコルチゾン酪酸エステル軟膏,ジファミラスト軟膏の外用でも効果がなかったため,皮膚生検を行った。皮膚病理所見は肉芽腫反応を伴う炎症細胞浸潤が著明であり,Lupus miliaris disseminatus faciei(LMDF)と診断した。治療は,ミノサイクリン塩酸塩の内服およびデゴシチニブ軟膏の外用を行ったところ,3 カ月間で寛解した。小児の LMDF は稀であるが,難治性の肉芽腫性疾患を疑った場合には考慮すべき疾患である。

  • 湯原 瑞希, 吉田 貴弘, 小池 貴之, 松本 香奈枝, 三原 昌子, 松木 慎吾, 山﨑 修
    原稿種別: 症例報告
    2026 年88 巻3 号 p. 238-241
    発行日: 2026/06/01
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル 認証あり

    症例 1:91 歳,男性。右側鼻背側壁部,右下眼瞼,両鼻翼部に黒色局面を認め,基底細胞癌(BCC)と診断した。4 病変を切除し,右側鼻背側壁部は V-Y advancement flap,左鼻翼部は shark island pedicle flap(SIPF)で再建した。術後 20 日で鼻唇溝の立体構造は保たれていた。症例 2:68 歳,女性。左鼻翼部に灰褐色結節を認め,BCC と診断した。切除し,SIPF で再建した。術後 1 年で左鼻翼の形状は維持されていた。症例 3:67 歳,男性。右鼻翼部に灰黒色の結節を認め,BCC と診断した。切除し,SIPF で再建した。術後 1 年で右鼻翼・鼻唇溝の大きな変形は認めなかった。SIPF は鼻翼と周囲の 2 cm 程度までの皮膚欠損に対し,回転皮弁と V-Y advancement flap を組み合わせた皮弁である。デザインや手技が比較的容易で,鼻翼,鼻唇溝ラインを立体的に再現でき,整容的にも優れている。

  • 山田 きよ子, 中澤 潤一, 中村 俊昭, 末吉 和宜, 井料 香代子, 東 裕子
    原稿種別: 症例報告
    2026 年88 巻3 号 p. 242-244
    発行日: 2026/06/01
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル 認証あり

    73 歳,女性。既往歴に両側の乳癌があった。初診の 6 カ月前から臍部に出血を伴う結節を認めていた。初診時,臍部に血性の浸出液を伴う結節があり周囲に皮下硬結を触れた。皮膚病理組織像では,真皮内に胞巣状に異型細胞が浸潤しており,胞巣内にスリット形成や囊胞様構造がみられた。造影 CT と PET-CT で,卵巣病変は認められず,腹膜,大網,腹部大動脈周囲リンパ節などに病変があったことから原発性腹膜癌と診断した。臍の転移性皮膚腫瘍は,原発に先行して発見され予後不良の兆候として知られている。腹膜癌は早期発見が難しく,腹痛,腹水による腹部膨満感などの症状で広範囲に進行した状態で発見されることが多い。 Sister Mary Joseph’s Nodule を契機に診断された腹膜癌が稀であったため報告する。

  • 三浦 真理子, 山本 祐実, 西依 諒, 中園 裕一, 甲斐 宜貴
    原稿種別: 症例報告
    2026 年88 巻3 号 p. 245-251
    発行日: 2026/06/01
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル 認証あり

    90 歳,男性。40 歳台の頃に下腹部左側の色素斑に気づいた。初診 7 カ月前より同部の皮疹が増大し初診の 7 日前に前医を受診し,悪性黒色腫が疑われ当科を紹介され受診した。初診時,下腹部左側に 30×23 mm,境界明瞭な不規則な形の褐色斑があり,内部には潰瘍化した隆起部を認めた。その周囲には一部淡褐色で境界はやや不明瞭な色素斑が広がっていた。ダーモスコピーでは,blue-whitish veil,polymorphous vessels,atypical pigmented network の所見を認めた。悪性黒色腫と考え,初診 9 日目に全身麻酔下にて腫瘍辺縁より 2cm 離して皮膚悪性腫瘍切除術およびセンチネルリンパ生検を行った。病理組織学的所見では,異型角化細胞が増殖しメラニン色素を含有した長い樹状突起を持つ樹状メラノサイトが多く混在した。免疫組織化学染色では,腫瘤部の異型細胞は S-100 蛋白,HMB-45,Melan A,SOX-10 すべて陰性であった。以上より色素性有棘細胞癌と診断した。自験例においては病理組織学的にメラノサイトの分布に不均一性が認められた。また,表皮の肥厚部と菲薄部が交互に存在し,肥厚部にメラノサイトが多く分布していることがダーモスコピー上で network 構造をとった理由と考えられた。さらにメラニン色素を含有した樹状メラノサイトが多数存在すること,メラニン色素を持つ角化細胞が極端に少ないことは色素性有棘細胞癌におけるメラノサイトから角化細胞へのメラニン色素の輸送の障害を示唆した。色素性有棘細胞癌における黒色の濃い色調はメラノサイトの増数とメラニン色素の輸送の障害がともに関与している可能性が考えられる。

  • 原 茉実, 冬野 洋子, 中原 真希子, 隈 有希, 大野 麻衣子, 山村 和彦, 辻 学, 中原 剛士, 江里口 芳裕
    原稿種別: 症例報告
    2026 年88 巻3 号 p. 252-256
    発行日: 2026/06/01
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル 認証あり

    56 歳,男性。慢性骨髄性白血病に対する末梢血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病(Graft versus host disease:GVHD)に対してプレドニゾロン 10 mg/日,タクロリムス 0.4 mg/日を内服していた。また,慢性腎臓病も合併していた。自宅で左第 1 趾を打撲後,徐々に発赤や疼痛,足背の腫脹を認めた。Cefazolin,levofloxacin,cefepime など多数の抗菌薬を投与されるも改善に乏しく,発症 2 週間後に当科を紹介された。初診時,左第 1 趾から足背にかけて腫脹,浮腫,発赤を認め,左第 1 趾先端と爪周囲に黄色壊死が付着した潰瘍を認めた。Minocycline 100 mg/日に変更するも改善に乏しく,MRI にて骨髄炎の合併も認めた。創部培養にて Mycobacterium chelonae(M. chelonae)が検出されたため,M. chelonae による皮膚潰瘍と診断した。当院の感染症内科にコンサルトし,azithromycin(AZM)250 mg/日,doxycycline 100 mg/日に変更し,その後薬剤感受性結果に従って AZM 250 mg/日,sitafloxacin 50 mg/日(隔日内服)に変更したところ感染兆候は消失し,潰瘍も縮小した。M. chelonae の皮膚感染について,文献的考察を加えて考察する。

世界の皮膚科学者
  • Gordon H. Bae
    原稿種別: letter
    2026 年88 巻3 号 p. 263-264
    発行日: 2026/06/01
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル 認証あり

    Dr. Gordon Bae is a Clinical Assistant Professor as well as the Assistant Chief of Quality, Experience, and Digital Health of Department of Dermatology in Stanford University School of Medicine. He graduated from Harvard College with Summa Cum Laude in 2012 and Harvard Medical School in 2016 while being awarded the American Academy of Dermatology Transplant Skin Cancer Fellowship. He finished an intership in internal medicine at the Brigham Women’s Hospital and residency in dermatology at Stanford University while acting as the chief resident in 2020. After residency, he has been working as a clinical faculty in Stanford University School of Medicine.

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