整形外科と災害外科
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55 巻, 4 号
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  • 田代 泰隆, 三浦 裕正, 松田 秀一, 岡崎 賢, 馬渡 太郎, 坂本 昭夫, 首藤 敏秀, 岩本 幸英
    2006 年 55 巻 4 号 p. 403-407
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    リウマトイド結節は前腕や肘伸側の緊張のかかる部位に多く,関節内に生じることは比較的少ないとされている.今回,我々は膝関節内にリウマトイド結節を生じ,弾発症状を呈した関節リウマチ2例4関節を経験したので文献的考察を行い,これまで報告されていない関節内リウマトイド結節のMRI所見に関する検討を加え,報告する.症例は男性1例,女性1例で,ともにRFは陽性であった.両膝関節の前外側に屈伸時に出没する弾発性の腫瘤を主訴とし,MRI上両膝蓋大腿関節の前外側にT1でlow,T2で不均一にhigh,Gdにてenhanceされる小指頭大~母指頭大の結節を認めた.関節鏡視下の切除術により,弾発症状は消失した.関節内リウマトイド結節の成因としては,免疫学的な要因に加え,反復する機械的な刺激が推察された.
  • 長嶺 智徳, 川畑 英之, 小宮 節郎, 貴島 稔, 山口 正男
    2006 年 55 巻 4 号 p. 408-409
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    大腿骨内顆冠状骨折は比較的まれな骨折で,同部位の骨折後の変形治癒を経験したので報告する.症例は22歳男性.交通事故にて受傷.頭部外傷などの多発外傷があり近医脳外科に入院.受傷8週後の初診時,膝の運動時痛が著明で,伸展-15°屈曲80°と可動域は著明に制限されていた.X線所見では大腿骨内顆は後方に転位した状態で変形治癒し,膝蓋骨骨折は骨癒合不良であった.この症例に対してPCLを切離し,内顆を骨切りをして整復固定,膝蓋骨の骨接合を施行した.術後2年の現在,膝の疼痛はほとんどなく,可動域も改善しており,正確な骨切り,強固な固定,早期可動域訓練が術後成績の改善に大事であると思われる.
  • 成田 健, 野口 蒸冶, 下山 議七郎, 今井 達也, 大原 稔盛, 大川 孝浩, 永田 見生
    2006 年 55 巻 4 号 p. 410-415
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    2003年12月以降,大腿骨頚部骨折の加療としてHansson pinによる骨接合術を施行している.対象は観察期間12週以上行えた19例とした.年齢は51歳~93歳までの平均72歳,男性4例,女性15例で術後追跡期間は平均48週であった.骨折型はGarden分類にてstage I:2例,stage II:4例,stage III:7例,stage IV:6例で,転位型が68%を占めていた.骨癒合率は術後3週で転倒し,再手術を施行した1例を除く18例中16例,84%に見られた.術後合併症は偽関節と大腿骨頭壊死が2例ずつ出現した.術直後のGAI(Garden alignment index)と術後合併症については,12例,64%が良好な整復状態にあり,偽関節,骨頭壊死症例もその範疇に属していた.骨折型とTelescoping量については偽関節の2例は20mm以上であった.時間的推移においても2例の偽関節症例は術後早期から大きな転位が見られており,このような症例に対しては免荷期間を長めにとるなどの慎重に後療法を行う必要があると思われた.
  • 釘本 康孝, 浅見 昭彦, 森本 忠嗣
    2006 年 55 巻 4 号 p. 416-418
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    【目的】90歳以上の超高齢者における大腿骨頚部内側骨折術後の生命予後と機能予後を術式別に比較検討した.【方法】1995年から2005年に手術を行った15例を対象とした.Garden分類でStage I,IIに対し骨接合を行った群をA群としStage III,IVに対し人工骨頭置換術を行った群をB群とした.各群間における生命予後を術後3か月後と術後1年時に,機能予後は術後3か月後と最終調査時に比較した.【結果】手術時年齢は平均93.9歳,術後経過観察期間は平均1年8か月間であった.術後3か月以内の死亡例は両群各1例,術後1年時にはA群2例,B群3例であった.機能予後の悪化は術後3か月時には両群各2例,最終調査時にはA群3例,B群2例,計5例33.3%に見られた.【結論】一般に人工骨頭置換術は侵襲が大きいとされるが,超高齢者における大腿骨頚部内側骨折術後の生命予後と機能予後に術式の違いによる大きな差はなかった.
  • 瀬戸 信一朗, 城戸 研二, 桑田 憲幸, 富永 俊克, 籐 真太郎, 國司 善彦, 山本 久司, 黒川 陽子, 松島 年宏
    2006 年 55 巻 4 号 p. 419-421
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    大腿骨頚部骨折に対するHansson™ pin sistem(以下ハンソンピン)を用いた骨接合術の再手術について検討した.対象は,当院で2000年4月から2005年3月までに,ハンソンピンを用いて手術を行った大腿骨頚部骨折例のうち41例(男8例,女33例,平均年齢74.5歳)である.再手術例は6例であった.再手術の原因は,術後転倒・整復不良・早期癒合不全・ピン刺入位置不良であった.成績不良因子としては,転位症例・RA合併例・整復不良例・ピン刺入位置不良例が挙げられた.成績不良因子を持つ症例に対し適応を十分に検討し,適正なピン刺入位置及び整復技術を高めて,確実な手技のもとにおこなうことが成績向上のためには最も重要なことである.
  • 林 哲生, 志田原 哲, 仙波 英之, 北村 貴弘, 竹内 直英, 林 隆元
    2006 年 55 巻 4 号 p. 422-424
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    【症例】79歳女性.歩行中に車と接触し転倒し右大腿骨転子部骨折受傷.7日後,麻酔管理下にCHS施行した.術後4日目,大腿部の腫脹増大し,Hb 4.5と著しく低下した.輸血施行後,造影CTにて右大腿骨内側に出血と思われる造影効果を認め,大腿深動脈損傷が考えられたため,血管塞栓術施行し止血した.【考察】牽引手術台を用いての下肢の牽引によって大腿深動脈の緊張が強くなり,横止めスクリュー刺入のドリリングの際に損傷が起こったものと思われた.またTAEによる塞栓術は侵襲が少なく選択的に止血が行えるため,有効な治療法であった.大腿骨転子部骨折に対する骨接合術はありふれた手術ではあるが,大腿深動脈損傷について認識し,注意深く手術を行う必要がある.
  • 竹内 直英, 志田原 哲, 仙波 英之, 北村 貴弘, 林 哲生, 久賀 宣幸
    2006 年 55 巻 4 号 p. 425-431
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    AS hip screwを用いて骨接合術を行った139例の大腿骨転子部骨折患者のうち,転位もしくはcut outした11例の転位の原因と術後1週目のtelescoping量を調査した.7例で過度のtelescopingを認め,免荷期間を延長した.4例(2.9%)でcut outをきたし,2例で人工骨頭置換術を,2例でCondylar plateによる再手術を行った.経過不良の原因は整復不良1例,ラグスクリュー刺入部骨折5例,不明5例だった.術後1週目の平均telescoping量は不良群14.7mm,良好群3.2mmと有意差を認め(p<0.0001),10mm以上telescopingしたものは78%の高率で転位した.適切に整復・刺入しても予想外に転位することがあり,原因として骨の脆弱性が考えられた.術後1週目に10mm以上のtelescopingしたものは成績不良となる確率が高い.
  • 村上 勝彦, 相谷 哲朗, 那須 正義
    2006 年 55 巻 4 号 p. 432-435
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    【目的】治療に抵抗する仙骨嚢腫にshuntを行ったので報告する.【症例】40歳女性.腰下肢痛のため5分間の坐位が不可.MRIで嚢腫と診断し,保存療法を1ヶ月行うも効果なく,早期復職目的で手術施行.嚢腫とくも膜下腔の間にshunt tube挿入,髄液漏出予防でフィブリン糊を滴下した.1週臥床の後,2週で退院,1ヶ月で復職した.短期だが髄液漏出なく経過良好である.【考察】保存療法が原則であるが,激しい疼痛,知覚障害・筋力低下・排尿障害を伴ったり,治療に抵抗する場合は手術を考慮するべきである.手術には壁の縫縮や焼灼,弁機構開放,周囲神経との癒着剥離,shuntなどがある.症状発現は坐位で腹圧と髄液圧が上がり,チェックバルブにより嚢腫内に髄液が流入し,馬尾や神経根が圧排され,発症したものと思われた.そのため,減圧にて症状改善可能と考えshuntを行った.【まとめ】治療に抵抗する仙骨嚢腫にshuntを行った.短期だが髄液漏出なく経過良好である.
  • 平井 奉博, 井手 淳二, 前田 智, 水田 博志, 竹屋 元裕
    2006 年 55 巻 4 号 p. 436-439
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    肩関節では稀な滑膜骨軟骨腫症に対して,鏡視下手術が有用であった症例を経験したので報告する.症例は,48歳,男性.主訴は,右肩痛であった.単純X線像,MRIでは,肩関節内及び関節窩前方に多数の大小円形石灰化陰影を認めた.関節鏡所見は,滑膜の絨毛状増殖と,滑膜内に軟骨片を認めた.関節内には,表面が白色の光沢を帯びた遊離体が多数存在していた.鏡視下に滑膜切除,及び遊離体の摘出を行った.術後経過は,術後5日目には退院し,2週後には職場復帰し,3週後にスポーツ復帰し,2ヵ月後にはバレーボールの試合も可能となった.術後6ヵ月時には,運動時痛もなく,可動域は屈曲170°,外転170°,外旋45°,内旋Th9と改善を認めた.JOA scoreは95点であった.
  • 田邊 龍樹, 小牧 亘, 小牧 一麿
    2006 年 55 巻 4 号 p. 440-443
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折は,大腿骨頚部骨折とともに高齢者に発生しADL障害をひきおこす日常の臨床の場でよく遭遇する疾患である.大腿骨頚部骨折の治療成績に認知症が及ぼす影響に関する文献は多々あるものの,脊椎圧迫骨折に認知症が及ぼす影響に関する文献は非常に少ない.今回自験例40症例に対して,改訂版長谷川式簡易痴呆スケールにて認知症の有無で2群に分け,両群間における入院時FIM(functional independence measure),退院時FIM,FIMの入院時における推移および在院日数に関して統計学的比較検討を行った.退院時FIMは認知症(+)群で有意に低下していた.入院時FIM,FIMの推移および在院日数に関しては,認知症の有る無しで差は存在しなかった.
  • 金澤 和貴, 吉村 一朗, 竹山 昭徳, 内藤 正俊, 井上 敏生
    2006 年 55 巻 4 号 p. 444-447
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    〈目的〉下肢切断術を施行した症例を調査し,生命予後に関する因子を検討すること.〈対象および方法〉1996年12月から2004年4月に当院にて下肢切断術を施行した19例20肢(男性12例,女性7例)を対象とした.手術時年齢は48~82歳.術前合併症,切断部位,機能的予後,生命予後等について検討した.〈結果〉主な術前合併症としては高血圧11肢,糖尿病10肢,慢性腎不全9肢,脳血管障害5肢,心疾患5肢であった.最終切断部位は大腿7肢,下腿7肢,足部5肢,趾1肢であった.最終調査時歩行可能例は趾切断群は100%,足部切断群は80%,下腿切断群は33%,大腿切断群は0%であった.最終調査時趾切断群には死亡例なく,足部切断群は20%,下腿・大腿切断群には各々58%に死亡例を認めた.〈考察〉虚血性壊死に対し下肢切断を行う場合,ほとんどが高齢者で重篤な合併症をもっていることが多く周術期に注意を要す.
  • 近藤 秀臣, 井原 成男, 鈴木 聖裕, 廣重 欣也, 酒井 昭典, 中井 健一郎
    2006 年 55 巻 4 号 p. 448-450
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    平成4年6月から平成17年5月までの13年間に当院で施行した下肢切断のうち,血液透析を行っていた24例33肢をretrospectiveに検討した.初回手術時の創閉鎖の有無で2群に分け,糖尿病・虚血性心疾患の合併,心機能,CRP,アルブミンを検討項目とし2群を比較した.自験例では下腿切断・大腿切断に比して足趾切断での創閉鎖率が悪く,再切断となる割合が高かった.透析患者にはcompromised hostが多く,また様々な合併症を有している為,頻回の手術は避けるべきであり,透析患者においては高位での切断を考慮した方が良いと考えられた.また創閉鎖を得られなかった症例では,心機能評価に用いられるEF(Ejection fraction:心駆出率)が有意に低かった.EFは直接的には心機能をあらわしており,末梢循環そのものを評価しているわけではないが,1つの簡便な指標になるのではないかと我々は考えた.
  • 生田 拓也, 久賀 太, 余 みんたく, 當銘 保則
    2006 年 55 巻 4 号 p. 451-454
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    MIPO法を用いて大腿骨骨折および大腿骨の骨延長術後に対して手術治療を行ったので報告した.
    症例は4例で,全例女性,手術時年齢は平均64.5歳であった.症例の内訳は転子下~骨幹部骨折1例,遠位部骨折2例(1例はTKA後),骨延長術後1例であった.
    転子下~骨幹部骨折の症例に対してはDynamic condylar screw(DCS)を,その他の症例に対してはLCPを用いて固定を行った.
    遠位部骨折の1例において骨癒合の遷延を認めていたが,術後6ケ月で転倒により再骨折を生じた.骨折部の再転位およびscrewの折損を認め,再手術を行った.その他の症例では順調に骨癒合が得られた.感染例はなかった.
    大腿骨(骨折)に対するMIPO法を用いての治療は,髄内釘の適応となりにくい,もしくは適応が絶対的ではない症例に有用な方法であると考えられた.
  • 光武 聖史, 原田 真一, 馬場 洋, 宮路 剛史, 石井 英樹, 前田 和政, 本川 哲
    2006 年 55 巻 4 号 p. 455-458
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    四肢に発生する骨端離開のうちでも脛骨近位端に発生するものは少ない.今回2例の脛骨近位骨端離開の症例の治療を経験したので報告する.症例1は15歳,男性でバスケットボールの試合中に受傷.X線およびMRI,CTにて左脛骨近位にSalter-Harris III型の骨端離開を認めた.徒手整復が困難だったため観血的整復およびCCSで内固定をおこなった.術後1年2カ月時点では脚長差や変形,可動域制限などはない.症例2は10歳,男性で自転車運転中タクシーに衝突され受傷.X線にて左脛骨近位にSalter-Harris II型の骨端離開を認めた.徒手整復をおこなったが骨片が不安定だったためK-wireで経皮的に内固定を追加した.術後4年10カ月経過し,脚長差や変形はなく,可動域が健側に比べ5度悪いが,日常生活に問題はない.2例とも術後3-4カ月でスポーツに復帰している.
  • 生田 拓也, 久賀 太, 余 みんたく, 當銘 保則
    2006 年 55 巻 4 号 p. 459-462
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    足関節外果骨折に対し,症例により先端を加工した1/3円plateを用いて手術治療を行い,良好な結果を得ているので報告した.2002年以降に本法にて治療を行った足関節外果骨折の症例は17例で,性別は男性10例,女性7例,受傷時年齢は平均37.4歳であった.骨折型はLauge-Hansen分類に従うとSER stage II 9例,SER stage IV 4例,SA stage II 1例,PA stage II 1例,脛骨遠位端骨折に伴う骨折2例であった.手術方法は1/3円plateの先端をカットし曲げてhook plate状に加工して骨片を固定した.術後は術翌日より可動域訓練を開始し,術後2週より荷重を開始した.全例において解剖学的整復が得られており骨癒合が得られた.本法は遠位骨片が中途半端に小さい足関節外果骨折に対して有用な方法であると考えられた.
  • 谷島 伸二, 吉川 尚秀, 村田 雅明, 大塚 哲也, 河野 龍之助
    2006 年 55 巻 4 号 p. 463-466
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    観血的整復術を要した母趾IP関節脱臼を経験したので報告する.症例は29歳男性である.バスケットの試合中に右足つま先から着地し受傷した.右母趾末節部は背側に転位し,IP関節の自動運動は不能であった.単純X線像ではIP関節は過伸展位で末節骨は背側に転位し,種子骨が関節内に嵌入し基節骨骨頭上に騎乗していた.骨折は認めなかった.徒手整復を試みたが,整復不能であったため,腰椎麻酔下に観血的整復術を行った.背側から進入し,内側側副靭帯を切離し,末節骨を長軸方向に牽引し,脱臼を整復した.術後1ケ月の時点で,再脱臼はなく,歩行障害は認めない.本症例はMiki分類のType 2であった.その発生機序は母趾長軸方向の負荷に加えIP関節の過伸展が強制され,plantar plateが断裂し,末節骨が背側脱臼を生じるのに伴い,種子骨も基節骨頭側に転位し,末節骨足底側と基節骨,側副靭帯からなる出口が形成され,種子骨が嵌頓したと考えられた.
  • 楊 昌樹, 大賀 正義, 有馬 準一, 生田 光, 中野 荘一郎, 田中 孝幸, 佐々木 宏介, 合志 公平, 深川 真吾
    2006 年 55 巻 4 号 p. 467-470
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】腰部脊椎管狭窄症に対する後方除圧術を施行には傍脊柱筋の広範な剥離が必要であるが,METRx-MD system(以下MD)を使用すると後方軟部組織の侵襲が少なく行える.今回,我々はMDを使用した後方除圧術の術後短期成績を報告する.【対象】腰部脊柱管狭窄症に対し,2002年4月から2004年2月までの期間に当科でMDを使用した後方除圧術を施行された18症例中3ヶ月以上経過観察が可能であった17症例である.【方法】術前術後のJOA score,手術時間,出血量,合併症,レントゲン上の変化などについて調査した.【結果】術前平均JOA scoreは16.4点から23.0点に改善していた.平均術中出血は38.5gと少量であった.一椎間平均手術時間は124.5分であった.【結語】METRx-MD systemを使用した後方除圧術は少量の出血で,痛みも少ない低侵襲な手術法である.
  • 戸澤 興治, 徳永 真巳, 徳永 純一, 吉本 隆昌
    2006 年 55 巻 4 号 p. 471-474
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    OneShot Guide(以下OSG)を使用することで,至適位置にラグスクリューを挿入することが容易になった.しかし,ガイドワイヤー刺入時に外側骨皮質を貫通するのに時間がかかったり,ガイドワイヤーがしなるなどして,至適位置に至らなかった症例もある.その解決策として金粕らが2000年プレドリル法を報告した.それはガイドワイヤー刺入前に5.5mm径でドリリングし,外側骨皮質を貫く方法である.我々はOSGを使用したガンマネイル手術にプレドリル法を併用し,その成績について検討した.【対象】2003年4月からプレドリルを行った15例である.対照群はOSGを使用した104例とした.ラグスクリュー挿入位置は骨頭を前後像で上・中・下,側面像で前・中・後に分画した.【結果】中・中,下・中に挿入されたのはプレドリル使用群で15例中14例(93.3%),対照群で104例中96例(92.3%)であった.
  • 亀井 誠治, 泊 一秀, 内田 研
    2006 年 55 巻 4 号 p. 475-481
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    人工膝関節置換術(以下TKA)後の感染に対して,多くは一期的または二期的再置換術が行われる.二期的再置換術では再置換までの間,抗生物質を含有したセメントスペーサーが挿入されることが多い.従来セメントビーズやブロックタイプが用いられてきたが,伸展拘縮となる点などから,屈曲を可能にするスぺーサーを用いる報告も見られる.しかし市販されたものは,サイズが少なくしかも高価で,使用しにくい.任意の人工関節のトライアルとシリコンを用いて鋳型を作り,患者の体型に応じたスペーサーを作製する方法があり,今回我々もこのモールドタイプのスペーサーを使用する機会を得た.このスペーサーの利点として,早期の屈曲訓練や荷重歩行が可能なこと,個人に応じたサイズが作製できること,軟部組織の拘縮などを予防でき再置換時の大きな手術侵襲を回避できることなどがある.この方法について報告する.
  • 藤原 稔史, 佛坂 俊輔, 井上 三四郎, 前 隆男, 力丸 俊一, 野口 康男
    2006 年 55 巻 4 号 p. 482-484
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】大腿骨転子部骨折は歩行状態,合併症の有無などによるバリアンスが生じやすく,画一的なパスでは逸脱,脱落をするケースが多い.今回,術後2週間は同一のパスを用い,2週目で評価を行い,3パターンのパスを用いることとした.【対象・方法】平成16年3月1日~9月30日の間にパスを使用した21例(男性5例,女性16例)で,手術時平均年齢82歳(69~94歳),Dynamic Hip Screw(4例),Proximal Femoral Nail(17例)を行った.【結果及び考察】運用実績は90.5%で,パス導入前後での車椅子・部分荷重開始時期は有意に短縮し,全荷重開始時期は有意差を認めないものの短縮傾向を示し,逸脱例は0例であった.当院のパスは,大半の患者に適応でき,早期荷重可能なバリアンスが少ないバランスが取れたものである.今後,症例を重ねて在院日数の短縮など改善していく必要がある.
  • 白石 公太郎, 宮原 健次, 牧野 佳朗, 鳥越 雄史, 日高 信道, 別府 綾子
    2006 年 55 巻 4 号 p. 485-491
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    今回我々は,長期間放置されていた大腿骨の慢性化膿性骨髄炎の3例に対し,Papineau法による治療を行い良好な治療成果が得られたので報告する.症例は男性2例,女性1例で,年齢は60歳~70歳(平均64.7歳).骨髄炎罹患期間は23年~52年(平均38.0年)であった.第1相~第2相までの日数は平均47.3日,第2相~第3相までは平均28.0日で,入院期間は平均110.0日であった.病巣掻爬の範囲が約20cmに及ぶものが1例あったが,両側前後の腸骨からの骨移植でなんとか骨充填可能であった.第3相は3例とも創の縫縮のみで閉創可能で,再燃は認めていない.〈考察〉慢性化膿性骨髄炎に対してはPapineau法以外にもさまざまな治療法が施行されている.当院ではイリザロフによる仮骨延長法等も症例によっては施行しているが,患者の性格,年齢,罹患部位等を考慮すると,今回のようにPapineau法の有用性が改めて確認できた.
  • 前山 彰, 佐伯 和彦, 張 敬範, 金宮 毅, 内藤 正俊
    2006 年 55 巻 4 号 p. 492-495
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    比較的稀な健常人における両側膝蓋腱断裂の一例を経験したので報告する.症例は60歳男性.既往歴は特になし.平成8年7月歩行中に足を滑らせ転倒した際に左膝痛を自覚し歩行不能となった.膝蓋腱部に陥凹を認めた.自動伸展不能であり単純X線では膝蓋骨の近位への偏位を認め左膝膝蓋腱断裂の診断にて2日後に縫合術を施行した.その後,左膝の経過は良好であったが平成16年6月階段を下りている際に足を滑らせ転倒し右膝痛を自覚.左膝と同様の所見を認め膝蓋腱断裂の診断にて縫合術を施行した.現在,両膝ともに可動域制限等認めず経過良好である.両側膝蓋腱断裂は稀であり膠原病・慢性腎不全・糖尿病などにおける報告は散見されるが健常人における報告は数少ない.今回の症例は我々の検索し得る限りでは明らかな基礎疾患を認めず稀な症例と考えられたので文献的考察を加え報告する.
  • ―単椎間固定群と多椎間固定群の比較―
    幸 博和, 犀川 勲, 入江 努, 田中 哲也, 川口 謙一, 齊藤 太一
    2006 年 55 巻 4 号 p. 496-499
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    腰椎除圧固定術後に隣接椎間の変性が起こることはよく知られており,その結果として,隣接椎間での脊柱管狭窄や椎間板ヘルニアなどの障害が発生するという報告が散見される.そこで我々は,平成11年の1年間に腰椎除圧固定術を行った症例のうち,2年間以上経過観察可能であった66症例について,術後の隣接椎間への影響を単椎間のみ固定を行った症例と多椎間にわたり固定を行った症例(2椎間以上)の2群に分け,臨床症状,骨癒合,上位隣接椎間へ及ぼす影響に関して,この2群間で有意差があるか比較・検討を行った.今回の検討においては,多椎間固定群の方がより隣接椎間の不安定性をきたしやすいのではないかという結果であった.
  • ―X線上の胸椎後弯角と脊柱管内の骨化部分の占拠率から―
    宮口 文宏, 山元 拓哉, 林 協司, 松永 俊二, 米 和徳, 小宮 節郎
    2006 年 55 巻 4 号 p. 500-502
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    我々は,頚椎・胸椎の後縦靱帯骨化症(以下OPLL)に対して椎弓形成術または椎弓切除術を施行した症例13例(男性5例,女性8例)を調査した.平均手術時年齢は56歳であった.手術成績をJOA scoreで評価し,Cobb法による胸椎後弯角とCTを用いたOPLLの脊柱管内占拠率との相関性を調べた.平林法によるJOA score改善率は42.1%であった.手術成績と胸椎後弯角・OPLLの脊柱管内占拠率との相関性はなかった.
  • 北原 博之, 矢部 嘉浩, 山口 幸二, 安達 信二, 瀬良 敬祐, 寺本 司
    2006 年 55 巻 4 号 p. 503-507
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    脛骨顆外反骨切術(以下TCVO)の適応は,内顆と外顆が同時に接触しない不安定性を有する中高度の変形性膝関節症である.これまでに良い成績が諸家により報告されている.我々の施設でもこれまでに本方を行っており,過去6年間に38例に対して手術を行った.多く症例において満足する結果が得られていたが2例の成績不良例も経験された.成績不良の原因は不完全な骨切や,骨切線拡大時の誤った手技が原因と考えられた.TCVOはHTOが適応とならない不安定性を有する変形性膝関節に対する優れた手術であるが,良い成績を得るためには関節面の適合性に注意をはらう必要があると思われる.
  • 井手 衆哉, 伊藤 純, 佛淵 孝夫
    2006 年 55 巻 4 号 p. 508-511
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    人工膝関節置換術(TKA)において大腿四頭筋approachにはいくつかの方法がある.今回,MIS TKAに行ったVMO snip(mini-mid vastus)approach 22例とquad sparing approach 23例において,周術期成績を比較検討した.手術時間ではquad sparingの方がより時間を費やしていた.術後出血では有意差はなかった.SLRはどちらも術当日か翌日と早期に可能であったが,両群間に有意差を認めなかった.術後可動域では,VMO snipで伸展-2から屈曲120.5度,quad sparingで伸展-3.3から屈曲116度と,有意差はなかった.大腿四頭筋の侵襲を考慮すると,quad sparingの方がより低侵襲であると思われる.しかし,手技的により困難であり,術後成績に差がなければ,術中合併症をおこさないためにも,より簡便な方法を選択するのも一つの方法と思われた.
  • 田中 順子, 山田 圭, 吉田 健治, 山下 寿, 西田 俊晴, 高山 純一, 仲摩 憲次郎, 後藤 琢也, 永田 見生
    2006 年 55 巻 4 号 p. 512-515
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/01
    ジャーナル フリー
    脊髄硬膜外膿瘍に対する早期診断と早期治療は重要であると言われている.なぜなら治療開始の遅れは神経障害(麻痺)や敗血症を引き起こすことがあるためである.最近,コンプロマイズドホストの増加により,頻繁に硬膜外膿瘍を伴う脊椎炎に遭遇するようになった.コンプロマイズドホストに対しての全身麻酔下の手術には多くの重症なリスクが伴う.そこで,経皮的病巣ドレナージが,硬膜外膿瘍を伴った腰部の化膿性脊椎炎4例(男性3例,女性1例)に著効したので報告する.重症な肝硬変,糖尿病,大腸癌を基礎疾患に持った症例が,それぞれ1例ずつあった.全ての症例において腰部のMRI上化膿性脊椎炎に伴った硬膜外膿瘍が認められ,全例とも,麻痺を伴わないものであった.4例に経皮的病巣ドレナージを施行したが,全例で硬膜外膿瘍は減少した.そのうち,MRSAによる化膿性脊椎炎を伴った1症例は4カ月後に治癒した.抗生物質と消炎鎮痛剤にて保存的治療を併用した.この治療法は原発巣となる椎間板をドレナージするもので,硬膜外膿瘍を減量させ炎症反応の沈静化にも効果的であった.
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