整形外科と災害外科
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59 巻, 1 号
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  • 濱中 秀昭, 久保 紳一郎, 黒木 浩史, 花堂 祥治, 猪俣 尚規, 黒木 修司, 比嘉 聖, 河野 雅充, 帖佐 悦男
    2010 年 59 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    平成12年1月~21年2月までに1307例の脊椎手術を行い,11例(0.8%)で手術部位感染症を生じた.起炎菌は,MSSA 4例,MRSA 4例,MRSE 1例,セラチア1例,ブドウ球菌種1例であった.instrumentを使用した症例は11例中5例であった.頚椎手術が5例,胸椎1例,腰椎5例であった.また,既往症は,11例中9例に認めた.内訳は,糖尿病2例,RAや,喘息によるステロイドを内服している症例が2例,急性腹膜炎や,急性膵炎にて長期絶食期間を有していたものが2例,透析症例が1例,脳性まひ1例,ダウン症例が1例であった.血液透析,手術時間の延長,術中出血量の増加,Instrument手術は統計学的に有意なSSI危険因子であった.術後のWBC,CRPに関して術後4日から2週間まで感染群が有意に高値を示した.
  • 石堂 康弘, 神囿 純一, 有島 善也, 栫 博則, 廣津 匡隆, 小宮 節郎
    2010 年 59 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    THAにおいて臼蓋カップを適切なアライメントに設置することの重要性は言うまでもない.カップを設置する際は,手術開始時の骨盤傾斜,さらに術中のアライメント変化の影響を受け,術前予定どおり正確に設置するのは困難である.我々は,手術開始前に体位をとったところで骨盤正面X―Pを撮像し,骨盤の側方傾斜角を計測している.また,術前CTを撮像し,予定カップ設置位置における骨性臼蓋縁とカップの位置の関係,すなわちカップと臼蓋外側縁,臼蓋涙痕,臼蓋前縁もしくは骨棘,臼蓋後縁との位置関係を評価し,術中確認の指標としている.術前画像からの情報を詳細に把握することによってカップ設置角度のばらつきをある程度減らすことができる.しかし,術中,人間の感覚でアライメント評価を行うには限界があり,より正確な設置には,局所解剖情報に基づいた計測ツールあるいはナビゲーションシステムが有用であろう.
  • 久保 紳一郎, 黒木 浩史, 花堂 祥治, 濱中 秀昭, 猪俣 尚規, 黒木 修司, 帖佐 悦男
    2010 年 59 巻 1 号 p. 14-17
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    【目的】環椎外側塊スクリュー法施行例のスクリュー位置について評価を行い安全性について検討する。【対象】環椎外側塊スクリュー法(片側7例・両側11例)にて頸椎後方固定を行った18例・29本である。刺入方法は1)Goel法:4本,2)Tan法:20本,3)Notch法:5本であった。【方法】スクリューの刺入方法,刺入角度・位置についてCTにて評価した。【結果】危惧された環椎横突孔・椎骨動脈溝への逸脱例は認めなかった。環椎上関節窩へのスクリューの露出を3本に認めたが,いずれも後頭環椎関節の可動性は保たれていた。これらの3本はいずれもTan法で刺入されており,内2本は内側向きに刺入されていた。【結論】椎骨動脈走行部や脊柱管内へのスクリューの露出は認めず神経・血管に対し危険な手技とは言えなかった。しかし,スクリューの刺入角度が内側・頭側方向へ向きすぎると後頭環椎関節を障害する可能性があり,特にTan法での刺入時には注意を要する。
  • 高橋 祐介, 阿久根 広宣, 高妻 雅和, 菊池 直士, 井上 三四郎, 齊田 義和, 伴 光正, 矢野 英寿, 森 達哉, 播广谷 勝三, ...
    2010 年 59 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    非常に稀な後頭骨環椎脱臼の症例を経験したので報告する.53歳男性.仕事中ブロックが後頭部を直撃し受傷.他に第6,第7頚椎,下顎骨折を認めた.既往として僧房弁置換術後であり,ワーファリン内服中である.全身状態の回復を待ち,受傷3日目にハローベストを装着.受傷4日目に外傷性くも膜下出血によると思われる呼吸停止,不全四肢麻痺があり,人工呼吸器管理となった.受傷12日後,後頭骨頚椎後方固定術を施行した.術後3日目に抜管し,不全四肢麻痺も徐々に改善を認め,術後1週目で歩行訓練可能となり,経過良好であった.本症例は後頭骨環椎脱臼,頚椎骨折を合併しており,damage control orthopedicsに基づき早期内固定を施行し有効であった.本症例に対し文献的考察も含め報告する.
  • 勢理客 久, 屋良 哲也, 金谷 文則
    2010 年 59 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    脊髄症を生じた石灰化を伴う胸椎椎間板ヘルニアの2例を報告する.症例1 42歳,男性.重量物を挙上した際に腰痛および歩行障害が出現した.画像上脊柱管内およびT11/12椎間板腔に石灰化病変を認めた.前方徐圧固定術後に脊髄症は改善した.症例2 54歳,女性.バスより降りた際に右下肢痛および起立困難が生じた.画像上,T11/12椎間板レベルに硬膜管を圧迫する脊柱管内石灰化病変を認めた.T11椎弓切除術および左側T11/12椎間関節切除を行うと砂状の石灰化椎間板ヘルニアを認めた.インストゥルメントを使用した後方徐圧固定術後に症状は改善し,6週後独歩にて退院した.
  • 田中 寿人, 小峯 光徳
    2010 年 59 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    【症例】80才,女性,腰下肢痛.1ヶ月前より近医で薬物及びブロックを受けていたが効果なく,排尿障害が出現したため当院紹介.症状:腰痛及び両下肢しびれ.MMT3,障害自立度C2,Barthel Index 10点.画像:Th11は圧潰し,突出した後壁により脊髄は変形していた.脊柱管占拠率は49.5%.治療:1週後よりクロスバンドコルセットを装着し,起立リハビリ開始した.入院時の1日残尿は約1500mlあったが,治療後9週で改善した.X-Pで椎体前面に架橋性骨増殖変化が治療後4ヶ月にみられた.治療後1年にて臀部痛と両足部のしびれが残存し,MMT4,障害自立度A2,Barthel Index 85点であった.【考察】脊椎椎体圧迫骨折は,体幹装具で固定することで骨癒合が期待できるため膀胱障害が発症している症例でも動的因子を制御することで,画像上は脊髄が圧迫変形していても臨床症状としては改善が期待できた.
  • 吉松 弘喜, 吉田 健治, 神保 幸太郎, 田中 憲治, 坂井 健介, 田中 順子, 中村 秀裕, 瓜生 拓也, 川崎 優二, 井手 洋平, ...
    2010 年 59 巻 1 号 p. 33-35
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    救急外来での頚椎外傷患者の診察には,見逃しやすい頚椎・頚髄損傷への深い認識が必要とされる.今回,当院救急外来を受診した頚椎外傷6923例について受傷原因別に調査した.頚椎外傷の受傷原因は交通外傷5325例,転落490例,転落318例であった.交通外傷の内訳は四輪車対四輪車が3401例,二輪車対四輪車が472例,四輪車単独が454名であった.頚椎・頚髄損傷を136例(2.0%)に認めた.頚椎・頚髄損傷の受傷原因として転倒,転落,四輪車対四輪車事故の頻度が高く,自転車単独事故,転倒,墜落,転落では頚椎・頚髄損傷の割合が高かった.特に,自転車単独事故群では頚椎・頚髄損傷の割合が高く,危険察知対応能力の低下などの関与が考えられた.
  • 山下 芳隆, 川内 義久, 鮫島 浩司, 富村 奈津子, 寺田 歩, 小宮 節郎
    2010 年 59 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    脊椎instrumentation手術後に固定隣接椎体に骨折が発生することは以前より知られているが,仙骨骨折の報告はまれである.今回我々は腰椎instrumentation手術後に仙骨骨折が発生した症例を経験したので報告する.症例は75歳,女性.腰部脊柱管狭窄症に対し平成18年4月にL2-5の脊椎後方固定術を行った.平成19年6月より急に臀部痛が出現,体動困難となり当院受診した.仙骨レベルに圧痛がみられたが,神経学的異常は認めなかった.X線上,骨癒合も得られており,instrumentation troubleも認めなかった.MRIにて腰椎の除圧も十分だったが,仙骨にT1,T2強調画像で低輝度の異常陰影を認めた.CT上,仙骨に骨折線を認め,安静目的にて入院した.保存的治療にて症状軽快,1ヵ月後歩行可能となり退院した.腰椎固定術後の仙骨骨折はX線での診断が難しく,見逃されている症例も多い.術後症状増強時には仙骨骨折の発生も念頭に置き,MRI,CTによる精査が必要である.
  • 佐藤 広生, 薬師寺 俊剛, 依光 茂太, 岡 潔, 水田 博志
    2010 年 59 巻 1 号 p. 42-45
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    【目的】悪性骨・軟部腫瘍に対する広範囲切除術では術後感染のリスクが高い.過去5年間に当科で行った悪性骨・軟部腫瘍手術における術後感染の発生率と危険因子について検討した.【対象および方法】2003年1月~2007年12月までに手術を行った悪性骨・軟部腫瘍症例を対象とした.男94例,女78例,平均年齢58歳,悪性骨腫瘍63例,悪性軟部腫瘍109例であった.術後感染の発生頻度,起因菌,手術時間,出血量,人工物使用の有無などについてretrospectiveに調査し多変量解析を行った.【結果】発生頻度は14例/172例(8.1%)で,起炎菌はMRSA 3例,MSSA 2例,MRSE 1例,Ent.faecium 1例,Ent.faecalis 1例,Pse.aeruginosa 1例,Gemella morbillarum 1例,Sta.epidermidis 1例,Sta.lugdunensis 1例,不明2例であった.手術時間のみが有意差を認めた.【考察】術後感染の発生頻度は8.1%であり諸家の報告と同程度であった.手術時間が有意な危険因子であった.
  • 谷島 伸二, 矢倉 知加子, 濱本 佑樹, 谷田 玲, 近藤 康光
    2010 年 59 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    【症例】72歳男性,発熱と腰痛にて前医を受診し,化膿性脊椎炎の診断で前医に入院となった.抗生剤を投与されたが,高熱が持続し,脱水が顕著となり入院から3日後,当院へ転院となった.転院時,左下肢麻痺を認め,意識は混濁していた.前医で行われた椎間板穿刺から黄色ブドウ球菌が検出された.MRIで第3/4腰椎椎間板炎,硬膜外膿瘍を認めた.髄膜炎の合併も疑い,髄液穿刺を行ったが髄液を吸引できず,確定できなかった.転院翌日に硬膜外膿瘍に対して洗浄,ドレナージを行ったが,術後,意識混濁が続いた.頭部MRIを撮像したところ,髄膜炎,硬膜下膿瘍を認めた.脳神経外科で開頭ドレナージを施行され,徐々に意識は改善し,転院後30日目で炎症反応は陰性化した.発症後7か月の現在,脊椎炎の再燃はない.
  • 八尋 雄平, 宮口 文宏, 恒吉 康弘, 砂原 伸彦, 武冨 栄二, 石堂 康弘, 小宮 節郎
    2010 年 59 巻 1 号 p. 50-53
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    腰痛を主訴として発症したまれなL2/3化膿性椎間関節炎に対し,外科的治療により良好な成績を得たので報告する.(症例)51歳女性.RA罹患歴5年.RA治療として生物学的製剤使用中.平成20年12月4日より左腰殿部痛出現.高熱出現し近医受診.炎症所見認めた為,抗菌薬投与開始.翌1月3日当科紹介入院.左優位の大腿部以下の筋力低下,左大腿内側より足先まで知覚鈍麻認めた.MRIで左L2/3椎間関節付近に造影効果を有するT1低信号,T2高信号の膿腫を認めた.診断確定の為,L2/3椎間関節より穿刺,培養結果でMSSA検出.抗菌薬投与としたが,症状改善認められず.そのため内視鏡下膿腫摘出術実施.術後症状消失,MRIで膿腫の消失が確認.外科的治療により症状改善を得た.
  • 瓜生 拓也, 吉田 健治, 山下 寿, 田中 憲治, 坂井 健介, 吉松 弘喜, 神保 幸太郎, 田中 順子, 中村 秀裕, 本多 弘一, ...
    2010 年 59 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    大腿骨頚基部近傍骨折を合併した大腿骨転子部骨折に対し,dynamic hip screw(DHS),trochanteric stabilizing plate(TSP)を併用した治療成績を検討した.2001年4月から2008年12月まで頚基部近傍骨折を合併した転子部骨折に対し,DHSおよびTSPにて骨接合術を施行し,術後3か月以上経過観察し得た65歳以上の59例(男性8例,女性51例)を対象とした.年齢は平均82.8歳,経過観察期間は平均14.8か月であった.手術時間は平均84分,術中出血量は平均129g,telescopingは平均6.9mmで,骨癒合は59例中57例に認められた.術後合併症は59例中5例で,うち2例が再手術を要した.比較的良好な成績であったが,合併症を生じた症例の術前画像を再評価すると,3例が本法の適応外であり,術前の正確な診断が必要であると思われた.
  • 森脇 伸二郎, 木戸 健司, 國司 善彦, 越智 康博, 舩場 真裕
    2010 年 59 巻 1 号 p. 60-63
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    2005年6月から2009年2月までの間にProximal Femoral Nail-Antirotation(PFNA)を用いて骨接合術を行った大腿骨転子部骨折38例の治療成績を報告した.対象は男性7例,女性31例で平均年齢は84.2歳であった.骨折型はAO分類A1が16例,A2が19例であった.手術待機日数は平均6.5日で手術時間は平均40.6分,術中出血量はいずれも少量であった.TAD(Tip-Apex Distance)は平均22.9(13~33)であった.UCLA activity scoreは23例が受傷前のレベルまで改善し,15例で歩行能力の低下を認めた.術後合併症は脳梗塞2例,心筋梗塞1例,創感染1例,肺炎2例,尿路感染症1例であり,インプラントの折損,カットアウト,内反変形は認めなかった.術後短期成績例も含めて,比較的良好な結果を得ることができた.
  • 生田 拓也, 久賀 太, 清田 光一, 金崎 彰三
    2010 年 59 巻 1 号 p. 64-66
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    大腿骨単顆骨折に対してplateを併用して手術治療を行い,良好な結果を得ているので報告した.症例は5例で,性別は男性2例,女性3例,年齢は平均68.2歳であった.骨折型はAO分類に従うとB1:2例,B2:2例,B3:1例であった.手術方法は全例CCSにて骨片の固定を行い,plateの固定を追加した.3例においてはlocking plateを用い,MIPO法を併用した.術後は術翌日より可動域訓練を開始し,また長下肢装具を用いて免荷歩行訓練を行い,基本的に術後4週より荷重を開始した.全例において解剖学的整復が得られており骨癒合が得られた.内固定材の折損やlooseningは認められなかった.本法はMIPO法を併用すれば侵襲も小さくて済み,安定した骨片の固定を可能とし,早期からのリハビリテーションを可能とする有用な方法であると考えられた.
  • 崎村 幸一郎, 福島 達也
    2010 年 59 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    高エネルギー外傷による関節周辺骨折では粉砕骨折となりやすく,高度の軟部組織損傷を伴うことが多いため治療に難渋する.我々は,軟部組織損傷を伴う症例に対して一期的に創外固定を行った後,二期的に最終固定,あるいは段階的に固定を行い良好な結果を得ているので報告する.対象は下肢関節周辺の粉砕骨折10例で,大腿遠位部が2例,下腿近位部が4例,下腿遠位部が4例であった.まずは初回の緊急手術で創外固定を用いて骨折部を安定化させた.軟部組織の状態が回復した後,二期的にMIPO法を用いた最終固定を行った.また,皮膚欠損や骨欠損を伴い,二期的にMIPO法を行うには限界があると判断した症例にはイリザロフ創外固定器を使用した.感染やコンパートメント症候群などの重大な合併症を生じることなく,全例で骨癒合が得られた.創外固定を行った後に内固定に変更する方法は,軟部組織損傷を伴う関節周辺骨折に対し安全な治療法と思われる.
  • 石橋 勝彦, 田島 貴文, 花石 源太郎, 中井 健一郎, 福原 志東, 永島 雅人, 田中 宏明
    2010 年 59 巻 1 号 p. 72-76
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    大腿四頭筋腱皮下断裂は膝伸展機構損傷の中でも比較的稀である.未治療の糖尿病を基礎疾患にもつ,軽微な外力による大腿四頭筋腱皮下断裂の1例を経験したので報告した.51歳男性で階段を昇ろうと右足をあげた際に左膝前面にブチィと音がして転倒し,左大腿部痛出現した.臨床所見,単純X線写真,MRIにて大腿四頭筋腱皮下断裂の診断で,受傷から6日目に手術を行い,腱断裂部を5号エチボンド糸にてベースボール縫合し,膝蓋骨に4か所骨孔を開けて骨に逢着した.術翌日から早期可動域訓練及び荷重訓練を行った.術後3か月,屈曲130度,伸展不全なく良好な治療結果が得られた.
  • 村田 雅和, 古市 格, 宮田 倫明, 森口 昇, 依田 周, 塚本 正紹, 江頭 秀一
    2010 年 59 巻 1 号 p. 77-81
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    コンパートメント症候群は治療のタイミングを誤ると不可逆的な組織の壊死をおこし,切断を余儀なくされることがある.2年間に経験した下肢コンパートメント症候群の診断および治療に関し検討した.症例は9例で,脛骨近位部骨折合併が3例,軟部損傷が3例,急性動脈閉塞に対する血行再建術後が3例であった.全例で緊急に筋内圧測定を行い,8例に減張切開術を行った.2期的な皮膚移植が必要な症例もあったが,全例患肢を温存し得た.術前の筋内圧は30~120mmHgと症例および測定部位でさまざまであったが,疼痛腫脹が著明であり減張切開の適応とした.A-lineによる筋内圧測定は非常に有用で,術中も頻回に測定可能で,筋内圧0~20mmHgを目標に切開を追加,延長している.
  • 尾上 英俊, 木村 一雄, 村上 陽司, 前田 純治, 山口 史彦, 馬場 尚樹
    2010 年 59 巻 1 号 p. 82-85
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    肩関節脱臼骨折の中でも稀である上腕骨2 part外科頚骨折を伴った脱臼骨折に対し,K-wireを使って骨頭を経皮的に整復した後に,Fox tail nailを使って骨折部を展開することなく骨接合を行った症例を報告する.【症例】68歳 女性,2007年10月,自宅廊下で足を滑らせて転倒し受傷した.救急搬入後に静脈麻酔下での徒手整復を試みるも整復できなかったため,手術場で全身麻酔下にK-wireを経皮的に刺入して骨頭を整復した.受傷後5日目に外科頚骨折に対しFox tail nailを使った骨接合術を行った.術後1年,骨癒合,関節適合性は良好で特に障害なく日常生活を行っている.肩関節脱臼骨折において脱臼した骨頭が経皮的に整復できれば,その後の骨折に対する治療法の選択肢が広がり,より低侵襲で適切な治療を行うことができる.経皮的整復は脱臼骨折の型に構わず試みてよいのではないかと考えている.
  • 進 訓央, 大江 健次郎, 朝倉 透, 松浦 恒明
    2010 年 59 巻 1 号 p. 86-92
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    目的;Kirschner-wire(以下K-wire)は一般的に用いる骨接合材料である.しかし,その先端による腱損傷や神経刺激症状,疼痛などの合併症も経験される.今回,我々はエンダー釘の先端に穴を開けてこれを利用してK-wire先端を曲げるデバイスを使用することにより上記合併症を回避してきたため報告する.方法;デバイスはエンダー釘の先端に径2mmの穴をもう一つ作製し,手元は三角形に折り曲げたものである.先端の穴に曲げたいK-wireを入れて,この三角形の手元を回旋することで3.0mm Steinman pinも曲げることが可能である.橈骨遠位端骨折,鎖骨骨幹部骨折,踵骨骨折,中足骨骨折等においてK-wire先端を適当な長さでカットして曲げることで周囲の腱,神経等の刺激を避け,皮膚からの突出による疼痛,穿孔を回避している.結語;エンダー釘を利用したK-wire先端を曲げるデバイスは,上記合併症の回避に有用であると思われた.
  • 瀬尾 健一, 泊 真二, 伊藤 康正, 菊池 克彦, 高比良 知也, 宮岡 健, 今村 純忠, 松本 光司
    2010 年 59 巻 1 号 p. 93-96
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    【目的】Acu-Loc Distal Radius Plate Systemを用いて手術を行った60歳以上の高齢者橈骨遠位端骨折の治療成績について検討を行った.【対象・方法】対象は13例13手,男性2例,女性11例.手術時年齢は平均70.5歳,経過観察期間は平均5.8ヶ月,骨折型はAO分類A2:2手,A3:6手,B3:1手,C2:2手,C3:2手であった.これらの症例に対してX線評価および臨床評価を行った.【結果】X線評価では,矯正損失は平均で,radial inclination 0.8°,volar tilt 0.4°,ulnar variance 0.4mmと良好に整復位が維持されていた.臨床成績においてもCooneyの評価基準で,Excellent 7例,Goodが5例,Fairが1例と概ね良好な結果が得られた.
  • 安部 幸雄, 富永 康弘, 藤本 英明, 山岡 康浩, 津江 和成
    2010 年 59 巻 1 号 p. 97-101
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    【目的】橈骨遠位端骨折はアライメントを整復すれば一般に予後は良好とされる.また合併する三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷の治療の必要性にはいまだ議論も多い.今回,橈骨遠位端骨折は保存的治療にて良好に治癒しながらTFCC損傷の手術を必要とした症例の検討を行った.【対象】症例は3例,男性1例,女性2例,年齢は56才~71才,橈骨遠位端骨折治癒後に遷延する尺側部痛を訴え,受傷後5ヶ月~10ヶ月に手術を施行した.【結果】鏡視所見は3例ともにTFCCの裂状断裂を認め1例に尺骨茎状突起剥離断裂を伴っていた.その他滑膜炎を全例に,隔壁形成,月状三角骨靭帯損傷を各1例ずつに認めた.2例に尺骨茎状突起先端の偽関節を伴っていたがいずれも軟部組織の処置のみで症状は軽快した.【考察】TFCC損傷は橈骨遠位端骨折に高率に合併するもののその治療についてはいまだ指針がない.今回の3例の教訓より,橈骨遠位端骨折の鏡視下手術においてTFCC裂状断裂を認めた場合は掻爬を考慮する必要がある.
  • 岡村 武志, 多田 弘史, 松崎 尚志, 吉村 洋一, 増田 陽平
    2010 年 59 巻 1 号 p. 102-106
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    近年,橈骨遠位端骨折に対してロッキングプレートによる骨折治療の報告が散見され,当科でも2007年8月より,Stellar Plateを使用し治療を行っている.調査対象は2007年8月から2009年3月まで関節内骨折を伴う橈骨遠位端骨折に対しStellar Plateを使用した22例のうち,遠位骨片が背側転位のもので6週間以上経過観察可能であった13例とした.平均年齢69歳.男性1例,女性12例.右手4例,左手9例.AO分類C1 7例 C2 6例.平均追跡期間175.3日であった.術前Radial inclination(以下RI)平均10.4°が術直後RI 21.5°,最終経過観察時でもRI 22.9°と維持されていた.術前Volar tilt(以下VT)平均-11.2°,術直後VT 8.2°と改善し,VT 10.5°と維持されていたが,術後から最終調査時までに遠位骨片が背側転位を来した症例を一例認めた.多くの症例で術直後から最終調査時にかけて整復位は保持されていた.遠位骨片の整復を十分行えば,関節内骨折を伴う橈骨遠位端骨折に対しStellar Plateは有用と考えられた.
  • 吉野 啓四郎, 重盛 廉, 高口 太平, 松本 伸也, 川畑 亜矢人, 馬渡 玲子, 吉野 興一郎
    2010 年 59 巻 1 号 p. 107-114
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    当院ではこれまで,若年者の大腿骨頚部骨折に対しても,高齢者と同様の整復目標で手術を行ってきた.2007年までの6年間13例中Non-Union7.7%Late Segmental Collapse38.5%と約半数に重大な合併症を認めた.さらなる治療成績の向上を得るために,2008年から65歳以下の症例では解剖学的整復位を目指した試みを始めた.2008年の1年間に65歳以下の大腿骨頚部骨折を4例骨接合手術施行した.平均追跡期間9.8カ月.症例1:59歳女性.過外反型の骨折を徒手整復し一旦は解剖学的整復を得たが術中に骨片再転位した.症例2:22歳女性.外反後屈の骨折を徒手整復し,症例1の反省をもとに再転位しないよう工夫して骨接合を終えた.症例3:61歳女性.内反後屈の骨折に対し,解剖学的整復を得て骨接合を終えたが,術後14カ月で骨壊死を認めた.今回の結果では解剖学的整復であってもわずか4例中に1例の骨壊死症例があり,今後の課題が残った.
  • 穂積 晃, 村田 雅和, 宮田 倫明, 久芳 昭一, 前田 和政, 松村 陽介, 古市 格
    2010 年 59 巻 1 号 p. 115-119
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    セメントレス人工骨頭置換術の初期固定性についてbroachingの際に気圧式broaching system(woodpecker)使用群と非使用群について比較検討した.2008年12月以降にセメントレス人工骨頭置換術を使用した40例40関節を対象とし,うちWoodpecker使用群は19関節であった.後療法は全例術後2日目より全加重を許可し,術直後Xpにてステムの髄腔占拠率および経時的X-p正面像においてステムの沈下を計測した.woodpecker非使用群の3例に3mm以上のステムの沈下を認めた.小転子下端レベルでのステムの髄腔占拠率では両群間に有意差はなかった.ただしwoodpecker使用群ではステムの髄腔占拠率のばらつきが少ない傾向を認めた.骨粗鬆症を基盤とする高齢者大腿骨頸部骨折では無理なbroachingによる術中のカルカー部の骨折や,アンダーサイズのステム使用による初期固定性不良が懸念される.woodpecker使用は術者や髄腔形状に関わらない良好な髄腔占拠性の獲得と,術中骨折のリスクが減少する可能性が示唆された.
  • 生田 拓也, 坂口 満
    2010 年 59 巻 1 号 p. 120-125
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    大腿骨頚部骨折に対するエクセターを用いた人工骨頭置換術について術後5年以上経過した症例を調査した.術後5年以上経過観察できた症例は37例であった.手術時年齢平均75.1歳,性別は男性2例,女性35例であった.経過観察期間は5~10年,平均6.9年であった.loosening例を1例に認めた.この症例はセメント骨折例であった.また,関節リウマチの既往例1例にouter headのcentral migrationを認め,臼蓋の再々置換術時にcement in cementにてstemの再置換を行った.Stem looseningをend pointとした生存率は97.3%,stem looseningおよびrevisionをend pointとした生存率は94.6%であった.大腿骨頚部骨折に対する人工骨頭置換術においてもエクセターstemを用いてセメントテクニックを適切に行い得れば良好な術後成績が期待できるものと考えられた.
  • 本家 秀文, 馬渡 正明, 河野 俊介, 重松 正森, 園畑 素樹, 佛淵 孝夫
    2010 年 59 巻 1 号 p. 126-130
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    【はじめに】若年者にTHAを行う際はそれ以外に方法がないかを十分に検討すべきだが,THA以外の方法でQOLを改善することが難しい症例も多い.当院での40歳未満のTHA症例について原因と術後成績を調査した.【対象と方法】対象は1998年9月から2008年11月に40歳未満で初回THAを行った50例64股である.男性29例36股,女性21例28股で,手術時平均年齢は33.6歳,平均経過観察期間は35か月であった.これらを臨床的,X線学的に評価し検討した.【結果】原因疾患の内訳はOAが25股,IONが19股,骨切り術後が18股,RAが2股であった.JOAスコアは術前44.5点,術後は88.6点であった.術後脱臼を5股,遅発性深部感染を1股に認めたがlooseningを呈する症例はなかった.【考察】若年者に対するTHAでは再置換などの問題を避けることはできないが,短期成績は概ね良好で,選択肢の1つとして考慮すべき方法である.
  • 村上 勝彦, 角南 勝利
    2010 年 59 巻 1 号 p. 131-134
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    脱臼性股関節症に対するTHAは手技が困難で,リハビリにも長期を要する.著明な脚短縮や筋力低下,手術手技が主因である.我々は大腿骨転子下斜め短縮骨切り術を併用してTHAを行った症例を経験したので報告する.症例は71歳女性.股関節脱臼の既往があるも治療を受けることなく,また脚長差があるも痛みがないため放置していた.誘因なく股関節痛が出現し,対症療法を行うも効果がないためTHAを施行した.後方アプローチでS-ROM-Aを用いた.cupを原臼位まで55mm引き下げ,大腿骨を転子下で15mm切除した結果40mmの脚延長となったが,神経麻痺は認めていない.術後6ヶ月で骨癒合は良好,疼痛なく,歩容および股関節周囲の筋力も改善した.脱臼性股関節症に対するTHAでは延長過多による神経障害や大転子切離によるトラブルも多い.転子下斜め短縮骨切り術は回旋安定性および接触面積が広くなり骨癒合にも有利で早期リハビリが可能と思われる.
  • 橋本 哲, 河野 俊介, 重松 正森, 園畑 素樹, 馬渡 正明, 佛淵 孝夫
    2010 年 59 巻 1 号 p. 135-140
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    大腿骨に著しい骨欠損を有する症例に対して人工股関節再置換術を行う場合,その再建は容易ではない.当院では,cementless stemと同種骨移植で対応している.今回,1998年以降当院で大腿骨側の人工股関節再置換術を行い3年以上経過した66股を対象とし,術前骨欠損,再建方法,stem stability,stress sheilding,合併症を調査した.Endo-Klinik分類Grade 1,2,3,4は各7,29,23,5股で,分類不能が2股であった.Hydroxyapatite(以下HA)full-coated cementless long stemを骨欠損が強い20股に用いた.Grade 3の4股を除きstem stabilityが得られ,重篤なstress shieldingは認めなかった.stem stabilityの得られなかった1股に再々置換を要したが,その他重篤な合併症は認めなかった.Endo-Klinik分類Grade 1,2はprimary THAに準じ,Grade 3,4でstandard stemで初期固定が得られなければHA full-coated long stemとchip状の同種骨移植を併用することで良好な成績が得られた.
  • 本松 伸一, 島内 卓, 綾 宣恵, 中河原 修, 畑中 俊幸, 小川 雄司, 石井 武彰, 江口 正雄
    2010 年 59 巻 1 号 p. 141-145
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    今回我々は,AMLプラスステム(DePuy)が頚部で折損し再置換術を要した1例を経験したので,若干の考察を加え報告する.[症例]78歳女性.身長142cm,体重49kg.右変形性股関節症に対し,2000年4月人工股関節置換術(THA)を施行した.手術後約6年経過した2006年2月,しゃがんで草取りをしている時に,急に右股部に音がして歩行困難になる.X線にてステムの頚部折損を認めた.折損後4日目に再置換術施行.extended trochanteric osteotomyを行い,折損したステムを抜去し,再置換を行った.再置換術後の経過は良好である.[考察]THA後のステム折損に関しては,Per Fixステムで多数の報告があり,デザイン上の問題点が指摘されている.これに対し本症例では,抜去したステムの調査を行うも,折損の原因を特定することはできなかった.しかし,本症例折損の後,国内で更に2例のAMLプラスステム折損が生じており,今後注意を要すると思われる.
  • 加茂 健太, 原口 和史, 山岡 和弘, 入江 学, 佐々木 聡明, 川本 泰作, 田山 尚久
    2010 年 59 巻 1 号 p. 146-148
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    強直性脊椎炎により両股関節に高度な関節症を生じた症例に対し両人工股関節全置換術を施行し歩容の改善を経験したので報告した.症例は51歳,男性で29歳時,強直性脊椎炎と診断され,NSAIDsのみにて加療されていた.術前X線写真では全脊椎にわたり椎間関節は癒合し,両股関節の関節裂隙は消失し,臼底はひ薄化し,内側への突出をきたしていた.2008年11月,左THA施行.術後よりMTX投与開始.2009年1月,右THA施行.麻酔は両側とも気道ブロックを併用し,全身麻酔で行った.術中,関節内には著名な滑膜の増殖を認め,臼底にも滑膜の浸入を認めた.臼底をリーミング後,滑膜浸入部を掻爬し,臼底に骨頭をチップ状にし自家骨移植した.歩行能力は術前伝い歩きレベルであったが,術後は一本杖で階段昇降も可能となった.
  • 金澤 武利, 境野 昌範, 井上 明生
    2010 年 59 巻 1 号 p. 149-152
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    【目的】進行期・末期変形性股関節症の関節包内に骨化片が存在する症例に対するキアリ手術の有用性を検討した.【対象と方法】2年以上経過を追跡した22例23股を対象とした.手術時年齢は34~59歳(平均50歳),術前病期は進行期2股,末期21股であった.成績の判定は,除痛に成功したかどうかという点に焦点を絞って検討を行った.【結果】除痛に成功したのは,23股中20股(成功率87%)であった.【考察】関節包内に骨化片が存在する症例は50歳代でも,キアリ手術の成功率が高いと考える.
  • 比嘉 勝一郎, 安里 英樹, 東 千夏, 新垣 和伸, 金谷 文則
    2010 年 59 巻 1 号 p. 153-159
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    肩腱板断裂における腱板修復術は,術後の疼痛が比較的強く,持続することが多い.持続する疼痛は,術後リハビリテーションでの可動域訓練を妨げ,肩関節拘縮を引き起こすだけでなく,複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome:以下CRPS)などの合併症を引き起こす.私たちは鏡視下腱板修復術の疼痛コントロールに,持続斜角筋ブロック(continuous scalene block:以下SB)を16例,関節内注射(joint injection:以下JI)を16例に行い,術後除痛効果について比較・検討した.術後疼痛(visual analog scale:以下VAS)は,SB群が,JI群に比べて術後3,4,5日で有意に低値であった.術後挙上角度はSB群が,JI群に比べて術後2週で有意に高値であった.また,術後ジクロフェナク坐薬を使用した症例数はSB群が,JI群に比べて有意に少なかった.両群とも合併症は認めなかった.持続斜角筋ブロックは関節内注射に比べて疼痛が軽減され,鎮痛剤の使用が減り,術後早期の可動域が良好であった.鏡視下腱板修復術において,持続斜角筋ブロックは有用な除痛法と思われた.
  • 寺原 幹雄, 大嶋 直人
    2010 年 59 巻 1 号 p. 160-164
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    外傷性肩関節後方脱臼は全肩関節脱臼の3%以下と稀である.今回我々は上腕骨近位端骨折を伴った外傷性肩関節脱臼の1例を経験したので報告する.症例は78歳男性.ベッドより転落し右肩を受傷し,右上腕骨近位端骨折を伴う右肩関節後方脱臼を認めた.全身麻酔下,Deltopectoral approachにて脱臼整復・骨接合術を施行した.現在術後10ヵ月で,骨頭壊死所見は認めずJOA scoreは80点と経過良好である.
  • 菊川 憲志, 井手 淳二, 廣瀬 隼, 入江 弘基, 水田 博志
    2010 年 59 巻 1 号 p. 165-167
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    陳旧性肩関節前方脱臼に対し人工骨頭置換術にLatarjet法を併用し関節再建した1症例について報告した.症例は65歳,男性,受傷から1年6カ月後陳旧性肩関節前方脱臼の診断にて当科紹介となった.初診時運動時痛と著明な可動域制限を認めた.術前可動域は,屈曲55°・外転25°・外旋-40°・内旋L2であり,JOAスコアは40点であった.手術時,骨頭軟骨の欠損・変性・軟化を認めたため,骨頭を切除して人工骨頭置換術を施行した.同時にBankart修復を行ったが十分な前方制動効果が得られなかったため烏口突起を共同腱とともに関節窩前下方へ移行するLatarjet法を追加した.術後1年6カ月経過時,安静時痛・運動時痛は認めず,屈曲80°・外転80°・外旋0°・内旋Th12,JOAスコア82点であった.
  • 増田 陽平, 西島 毅志, 岡村 武志, 松崎 尚志, 多田 弘史
    2010 年 59 巻 1 号 p. 168-173
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    我々はひまわり法による2例の治療を経験し良好な結果を得たので報告する.手術方法は多方向からpin sleeveにて固定しcableを通しsleeveをロックする.2例とも仮骨を認め骨癒合している.術後7ヶ月で膝関節可動域が1例は140度でもう1例が150度と良好であった.手術手技が容易で,3次元的にピンを打てるためsleeve状の骨折線にも対応が可能であり,粉砕骨折部適応の制限が無い.早期社会復帰が可能であると考えた.
  • 田代 泰隆, 岡崎 賢, 三浦 裕正, 松田 秀一, 井澤 敏明, 深川 真吾, 富川 盛雅, 田上 和夫, 安永 武史, 西村 須磨子, ...
    2010 年 59 巻 1 号 p. 174-177
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    【目的】解剖学的設置を目指したACL再建術が近年注目されているが,骨付き膝蓋腱(BTB)でのACL再建術について回旋不安定性を含めた報告は少ない.我々はOpen MRIを用いた方法で,回旋安定性を定量的に評価しており,BTB-ACL再建術後の臨床成績,前方および回旋安定性について検討した.【対象と方法】術後1年以上のBTB-ACL再建18膝を対象とした.平均年齢は25(17~47)歳,全例男性で,脛骨孔はACL stamp中央,大腿骨孔はResident's ridgeの後方,右膝で10時~10時半の位置に設置した.臨床評価,KT-2000に加え,Open MRIを用いて回旋ストレス負荷下に脛骨外顆の前方移動量(ALRI)を計測し,安定性を評価した.【結果】再受傷1膝を除くとLysholm score平均96点,Tegner scoreは術前平均へ改善し,KT-2000患健差1.8mm,ALRI患健差0.1mmと良好な安定性を示した.【結論】BTBによるACL再建術では,良好な前方・回旋安定性の獲得が期待できると考えられた.
  • 深尾 悠, 山本 惠太郎, 矢野 浩明, 河原 勝博, 石田 康行, 田島 卓也, 山口 奈美, 崎濱 智美, 山口 志保子, 帖佐 悦男
    2010 年 59 巻 1 号 p. 178-182
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    膝複合靱帯損傷は交通外傷,転落事故やハイエナジースポーツによって生じ,損傷靱帯の組み合わせや各々の再建方法など治療方針の決定にしばしば難渋することがある.PCL単独損傷例ではしばしば保存的に経過を観察されるが,PCLを含む膝複合靱帯損傷例では近年他の靱帯と同様に手術的に加療される傾向にある.平成17年6月より平成20年7月の間にPCLを含む膝複合靱帯再建術を施行した5例5膝に対し,文献的考察を加え報告する.受傷原因は柔道2例,スキー,交通事故,転落が各1例で,すべて男性であった.平均年齢は29.0歳(17~42歳)であった.損傷靱帯の内訳はACL+PCL+MCLが2例,ACL+PCL,MCL+PCL,LCL+PCLが各1例であった.これらの症例に対し,損傷靱帯を同時再建もしくは修復術を行った.PCLの再建材料は全例自家ハムストリング腱を用いた.適応・再建法および術後成績について検討する.
  • 高山 剛, 王寺 享弘, 徳永 真巳, 吉本 栄治, 松田 秀策, 碇 博哉
    2010 年 59 巻 1 号 p. 183-186
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    人工膝関節全置換術後に残存する屈曲拘縮の発生因子について報告する.対象と方法:症例は2009年1月から2月までに変形性膝関節症に対しPS型TKA(NexGen LPS)を行った37名37膝(男3名,女37名)である.術後伸展角度に影響する可能性のある因子として患者背景より年齢,性別,罹病期間,BMI,術前JOA scoreを,理学所見より術前膝最大伸展および屈曲角度を,単純X線所見から北大分類stage,立位膝外側角および脛骨後傾の術前後変化量を,術中計測値としてバランサーで計測した伸展ギャップからインプラント厚を減じた値,インプラント挿入後(術直後)の麻酔下最大伸展角度を設定し,検討した.結果および考察:術前,術直後の伸展角度および脛骨コンポーネントの後傾が術後4週時の伸展角度に影響していたが,他の因子には有意な関係がみられなかった.症例は少ないが,男性は女性に比し,術前より屈曲拘縮が存在し,術後も残存しやすい傾向にあった.
  • 瀬形 建喜, 山下 武士, 岩本 克也, 米村 憲輔, 石井 一誠
    2010 年 59 巻 1 号 p. 187-190
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    人工膝関節置換術における出血対策として様々な方法がある.我々は2006年5月よりドレーンクランプ法(DC法)を行ってきた.2008年7月よりトラネキサム酸(TA)2gの局所使用をDC法と併用し行ってきた.それらの術後出血量について検討し報告する.対象は2008年4月1日~2009年2月28日の間に施行したTKA症例全66膝のうち同日施行両側TKA症例6膝とDC法単独セメントレスTKA症例3膝を除外した57膝.これらをDC法単独セメント使用群(A群),TA併用・セメント使用群(B群),TA併用・セメントレス群(C群)にわけ検討した.患者背景としてA群で有意に手術時間,駆血時間が長かった.A群に対しB群では術後3日目Hb値,Hb変化量および全出血量で有意差を認め,A群に対しC群では術後出血量,全出血量およびHb変化量で有意差を認めた.トラネキサム酸の局所併用療法は有効な止血法である.
  • 本岡 勉, 田中 博史, 佛淵 孝夫
    2010 年 59 巻 1 号 p. 191-194
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    長期間の力学的ストレス異常は関節の変形を引き起こす原因となる.今回我々は,大きな脚長差のため長期間尖足歩行してきた症例の足関節について調査を行った.対象は,股関節疾患に由来する,見かけ上5cm以上の脚長差を有したまま20年以上が経過している30例(男性3例,女性27例)である.平均年齢63歳(43~84歳).これらに対し,(1)X線上で変形性足関節症(足関節OA)がある症例の率,(2)日本足の外科学会足部・足関節治療成績判定基準のankle/hindfoot scaleによる採点(股関節痛が影響する項目を除外した77点満点)を調べた.患側に足関節OAが11例(37%)認められた.患側のankle/hindfoot scaleは71.4±6.7点であった.足関節に対する愁訴は少なかったものの,明らかに平均を超える率の足関節OAが生じていた.OAは初期のものが多く,捻挫を繰り返すなどのアクシデントが加わった症例が進行したと考えられた.
  • 金澤 和貴, 吉村 一朗, 萩尾 友宣, 竹山 昭徳, 内藤 正俊, 井上 敏生
    2010 年 59 巻 1 号 p. 195-201
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    糖尿病性シャルコー足に対し手術を施行したので報告する.症例1 37歳男性 I型糖尿病 Brodsky分類:type 1 Sammarco分類:pattern 2 左内側足底の繰り返す潰瘍に対し第1趾足根中足関節固定術と足底の骨性隆起部を切除.症例2 52歳女性 II型糖尿病 Brodsky分類:type 1 Sammarco分類:pattern 1 左中足部の変形に対し第1~5趾足根中足関節固定術施行.両者ともに足底潰瘍なく独歩可能で経過良好である.
  • 本田 祐造, 弦本 敏行, 岡崎 成弘, 宮路 剛史, 小関 弘展, 進藤 裕幸
    2010 年 59 巻 1 号 p. 202-207
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    症例1:70歳女性,約3年前より右外反母趾変形が進行.歩行中に段差を踏み外して右第2MTP関節の背側脱臼をきたした.Mitchell変法+第2趾MTP関節徒手整復経皮的鋼線固定を実施した.症例2:74歳女性,約20年前より両母趾変形が進行.約10年前より社交ダンスを続けていた.約2年前より歩行時の両前足部痛が増強したため当科受診.初診時単純X線像で右第2,3MTP関節背側脱臼を合併した両外反母趾変形を認めた.両側Mitchell変法+右第2,3中足骨頭切除術を施行した.症例3:57歳女性.両前足部変形に対する治療を希望して当科受診.左変形性膝関節症の治療歴あり.単純X線像で右第2MTP関節背側脱臼を合併した両外反母趾変形を認めた.両側Mitchell変法+右第2中足骨頭切除術を施行.以上3例にRAの既往はない.第2或いは3MTP関節脱臼を合併した外反母趾症例の治療の問題点に関して考察する.
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