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―下肢静脈超音波検査の有用性―
田中 基貴, 山口 幸二, 石西 貴
2010 年 59 巻 3 号 p.
631-634
発行日: 2010/09/25
公開日: 2010/12/08
ジャーナル
フリー
大腿骨近位部骨折受傷例に対して入院時に全例,下肢静脈超音波検査を実施し,患者背景における下肢静脈血栓症(以下DVT)の有無について比較,検討を行った.2008年5月~2009年8月の期間に大腿骨近位部骨折にて入院した60例(男性12名 女性48名)を対象とし,年齢,性別,既往歴,抗凝固薬内服歴について,DVT発生の危険性を比較,検討した.DVT陽性例においてD-dimer測定の有用性についても検討を行った.入院時平均年齢は82.2歳,60例中DVT陽性所見は19例(男性5例 女性14例)31.6%,基礎疾患を有する症例は63.2%,抗凝固薬内服症例は21.0%であった.DVT陽性例においてD-dimer高値(>10μg/ml)を示したものは70.0%であった.入院時の下肢静脈超音波検査は大腿骨近位部骨折のDVTスクリーニングとして非侵襲的な診断法であり,肺塞栓症の早期予防に有用であると考えた.
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中添 悠介, 木寺 健一, 安達 耕一, 白石 公佑, 高須賀 良一, 千葉 恒, 進藤 裕幸
2010 年 59 巻 3 号 p.
635-638
発行日: 2010/09/25
公開日: 2010/12/08
ジャーナル
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95歳以上の大腿骨近位部骨折20例の機能予後と生命予後,及びそれらに関与する因子について検討した.歩行能力再獲得率は33%であり,術後1年生存率は90%であった.機能予後に関与する因子としては術前待機日数と在院日数が,生命予後に関与する因子として受傷前歩行能力が認められた.ADL維持及び介護の面からも手術適応はあると考えられ,多方面からの総合的なアプローチによる全身状態のコントロールが非常に重要であると考えられた.
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弓削 英彦, 久我 尚之, 萩原 博嗣, 寺本 全男, 花田 麻須大, 水城 安尋, 志田 義輝
2010 年 59 巻 3 号 p.
639-643
発行日: 2010/09/25
公開日: 2010/12/08
ジャーナル
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【目的】大腿骨転子部及び転子下骨折に対する内固定法の発展によりその成績は飛躍的に向上したが,まれにカットアウト等の合併症が出現する.その原因は主に整復不良,ラグスクリュー挿入位置不良である.我々は閉鎖的整復不良な症例に対しては積極的に観血的整復を行っている.整復位を鋼線締結で保持しCHSあるいはγネイルで内固定することで術後内反変形やカットアウトを防ぐことができた症例を報告し,その適応について考察する.【対象と方法】鋼線締結を併用しCHSあるいはγネイルを行った大腿骨転子部及び転子下骨折の10例である.平均年齢は76.7歳だった.骨折型をAO分類で分類した.【結果】全例でカットアウト等の合併症なく骨癒合した.荷重までの期間は平均23.5日だった.【結語】閉鎖的整復不良な症例に対しては内固定材の固定力を過信することなく観血的整復を行い,正確な整復位での内固定を目指すことで良好な成績が期待できる.
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福田 泰子, 菅 尚義, 宮崎 昌利, 吉田 省二, 三原 茂
2010 年 59 巻 3 号 p.
644-648
発行日: 2010/09/25
公開日: 2010/12/08
ジャーナル
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高齢者の圧迫骨折による遅発性脊髄麻痺に対して,固定術を行わない低侵襲手術を行った症例に関して検討した.円筒形レトラクター(TR)を用いた顕微鏡下手術による除圧(以下TRLP)と,圧迫骨折に対してセラミックアパタイト顆粒による経皮的,経椎弓根的椎体形成術(以下TPVP)の併用手術を行った.症例は9例(男3例,女6例),年齢は65歳の男1例を除いて平均年齢80歳(75~87歳)であった.骨折レベルはT11,L1,4,5が各1例,L2が2例,T12が3例であった.手術時間と出血量はそれぞれTRLPが137分,23 g,TPVPが61分,6 gであった.臨床症状は術前全例立位不能,歩行困難であったが,術後独歩ないし杖歩行可能となった.高齢者の圧迫骨折に伴う遅発麻痺に対して,除圧と椎体形成術の併用により,固定することなく良好な結果を得た.
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冨田 伸次郎, 浦川 伸弘, 菅 政和
2010 年 59 巻 3 号 p.
649-652
発行日: 2010/09/25
公開日: 2010/12/08
ジャーナル
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はじめに:経皮的椎体形成術(以下PVP)においては,少数ながらも再骨折,隣接椎体骨折等の有害事象の報告がある.我々は,PVP施行後の再手術を必要とした症例を経験したので報告する.症例:71歳,女性.第1腰椎圧迫骨折.2007年4月自宅で転倒して受傷.臥床安静下でも疼痛強度であり5月L1PVP施行.術後硬性コルセット装着下にてリハビリを行う.2008年に入り徐々に歩行困難感が出現したため,PVP後の脊髄障害にて2008年12月T12-L1ASF+PF施行.現在Picker歩行可能なレベルで自宅復帰している.考察:本症例のごとくPVP施行後椎体圧潰が進行し,脊髄障害に至った理由には,肥満,コルセットの管理,術前の後壁損傷が考えられる.PVPの術後成績を向上させるためには早期に骨折部の安定化維持を獲得できるマテリアルや手術療法および後療法の変更を検討することが必要である.
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―再発例の検討―
寺原 幹雄, 井尻 幸成, 善明 美千久, 山王 朋佳, 永吉 隆作, 山元 拓哉, 米 和徳, 小宮 節郎
2010 年 59 巻 3 号 p.
653-655
発行日: 2010/09/25
公開日: 2010/12/08
ジャーナル
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今回当科における脊髄髄膜腫の手術症例をretrospectiveに調査し,再発症例について検討したので報告する.1988年から2008年までの21年間で,当科にて手術を施行した脊髄腫瘍203例中,病理学的に髄膜腫と診断されたのは38例(18.7%)であり,今回追跡調査可能であった34例(調査率89.5%)を対象とした.女性27例,男性7例で,手術時平均年齢は58歳(23-82歳)であり,術後経過観察期間は12~249ヵ月(平均99.8ヵ月)であった.再発は4例(11%)に認めたが,腫瘍の発生高位,腫瘍の局在,病理組織型,硬膜処置法と腫瘍の再発に有意な関連は認めなかった.再発例は全て硬膜残存例であった.硬膜の切除が困難な腫瘍前方局在例への対処が課題と考えられた.
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河村 一郎, 井尻 幸成, 山元 拓哉, 善明 美千久, 永吉 隆作, 寺原 幹雄, 坂本 光, 山王 朋佳, 米 和徳, 小宮 節郎
2010 年 59 巻 3 号 p.
656-658
発行日: 2010/09/25
公開日: 2010/12/08
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上位頚椎は砂時計腫の好発部位であり,脊髄腫瘍は上位頚椎レベルに比較的多く発生が認められる.当院で行った上位頚椎発生脊髄腫瘍の治療成績をretrospectiveに検討した.1988年から2009年までに当科で手術した脊髄腫瘍203例中,C1/2レベルでの発生例14例を対象とした.臨床成績は良好であったが,術後小脳出血を1例認めた.またC2椎弓温存した群に対し,C2椎弓切除群で術後後彎変形を呈する傾向にあった.C2の棘突起温存は術後後彎変形を防止するために考慮すべきである.また周術期合併症も頻度は低いものの重篤なものがあり,特に脳出血に関しては多量の脳脊髄液損失が原因の可能性も示唆されているため,術後頭部CT撮影等周術期には厳重な管理が必要と考えられる.
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中條 正英, 井尻 幸成, 山元 拓哉, 善明 美千久, 永吉 隆作, 米 和徳, 小宮 節郎
2010 年 59 巻 3 号 p.
659-661
発行日: 2010/09/25
公開日: 2010/12/08
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軟膜下脊髄腫瘍はまれな疾患であるが,比較的神経症状が進行してから診断され,治療に難渋することが多い.今回,神経症状が進行し,観血的治療を行った頸髄発生の3例を経験した.症例は軟膜下神経鞘腫2例と軟膜下発生下上衣腫1例である.3症例とも全摘した.神経鞘腫の一例は腫瘍が巨大であったため,二期的手術を行った.下上衣腫の1例は術後一過性に脊髄麻痺が出現したが,徐々に改善した.術前の画像診断は,困難なことがあり,術中病理診断が重要であると考えられた.
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八尋 雄平, 井尻 幸成, 山元 拓哉, 善明 美千久, 坂本 光, 河村 一郎, 米 和徳, 小宮 節郎
2010 年 59 巻 3 号 p.
662-664
発行日: 2010/09/25
公開日: 2010/12/08
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転移性髄内腫瘍は予後の悪い稀な疾患である.今回,対麻痺にて発症し,観血的治療を行った転移性髄内肺癌の一例を経験したので報告する.62歳女性.平成20年9月左大腿部痺れ感・腰痛出現.10月下旬急速に両下肢脱力出現,起立不能となり当科入院となった.神経学的にはT10レベル以下の脊髄障害による対麻痺を呈し,MRIでT11レベルの髄内中央部に境界明瞭,T1 iso T2 iso均一に造影効果を有する腫瘍を認めた.入院後麻痺進行し両下肢完全麻痺,尿閉,に至ったため緊急手術として髄内腫瘍摘出術実施した.病理学的診断は上腺癌であった.引き続いて施行したCT検査にて右上肺野と脳内に病巣を認め,肺癌の転移と診断した.腫瘍細胞はEGFR遺伝子変異を有しておりGefitinib投与開始としたところ奏功.術後12ヶ月の時点で脊髄再発なく,外来にて経過観察中である.
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中原 潤之輔, 赤崎 幸二, 相良 孝昭, 福本 巧, 時吉 聡介, 渡邉 弘之, 上原 悠輔, 木村 真
2010 年 59 巻 3 号 p.
665-669
発行日: 2010/09/25
公開日: 2010/12/08
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当科にて2007年以降に手術的治療を行った腰椎脊柱管内嚢腫性病変5例を検討した.症例は男性4例,女性1例,手術時平均年齢62.2歳(37から80歳).全例に強い下肢痛と筋力低下があり手術治療を施行した.発生高位はL3/4が1例,L4/5が4例,発症から手術までの期間は平均2ヶ月(1週間~5ヶ月)であった.最終診断は椎間関節嚢腫4例,椎間板嚢腫1例であった.椎間関節嚢腫の4例は椎弓開窓術及び嚢腫摘出術,椎間板嚢腫の1例は椎間板ヘルニア及び嚢腫摘出術を施行した.術後は全例症状改善が認められたが,1例は3ヶ月後に症状再発したため,再手術(固定術)を施行した.椎間関節の変性変化が強く,関節水腫のある症例では内側椎間関節切除に加え,必要なら固定術を併用すべきと考えられた.
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藤井 幸治, 成瀬 章, 武田 芳嗣, 後藤 知宏, 岩目 敏幸, 高砂 智哉, 近藤 研司
2010 年 59 巻 3 号 p.
670-673
発行日: 2010/09/25
公開日: 2010/12/08
ジャーナル
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腰部脊柱管狭窄症に対するspinous process splitting laminectomyは傍脊柱筋に対して低侵襲で,良好な視野・working spaceを確保できることが報告されている.しかし棘突起切離はその後方荷重・伸展制限機能を障害する可能性があるため,われわれは2008年4月より切離棘突起を還納する手技を開発し棘突起縦割還納式後方除圧術を開始した.手術方法:原法と同様に棘突起を正中で左右に縦割後基部で切離し展開.頭側,外側のトランペット状椎弓切除後,縦割した左右棘突起及び切離棘突起と基部をultra high molecular weight polyethylene糸で縫合する.術後6ヵ月でCTを撮影できた19例,31棘突起を調査した.JOA scoreは術前11.6点が術後6ヵ月で23.0点に有意に改善した.縦割した左右棘突起は87%で癒合し,仮骨形成を含めると100%であった.切除棘突起と基部は19%で癒合し,仮骨形成を含めると71%であった.画像上の除圧は良好であり,合併症はなかった.長期経過観察が必要であるが,腰部脊柱管狭窄症に対する新しい手術方法になると思われた.
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