整形外科と災害外科
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59 巻, 4 号
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  • 牛島 貴宏, 田代 泰隆, 三浦 裕正, 松田 秀一, 岡崎 賢, 山本 卓明, 橋爪 誠, 岩本 幸英
    2010 年 59 巻 4 号 p. 675-680
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    【目的】特発性膝骨壊死(SPONK)に対する高位脛骨骨切り術(HTO)後の関節軟骨変化を検討した.【対象と方法】SPONKに対しHTOを行った18膝を対象とした.男性3膝,女性15膝,平均年齢は67.3歳,平均観察期間は2.9年であった.JOA scoreと可動域,X線にて術前後と最終時のアライメントを評価し,骨壊死とOAの進行度を評価した.【結果】JOA scoreは術前50点から術後90点に有意に改善した.可動域は伸展が-3°から0°へ,屈曲が129°から136°へ有意に改善した.FTAは術前180°から170°に矯正され,最終時169°と保持されていた.18膝中9膝でX線上病巣は縮小し,矯正不足の1例を除きOAの進行は認められなかった.術前は関節軟骨のsofteningや剥脱を認めたが,再鏡視した6膝では病変部が硬化し,4膝で線維軟骨様組織での被覆を認めた.【結論】HTOはSPONKに対して有用な治療手段であると考えられた.
  • 生田 拓也, 坂口 満
    2010 年 59 巻 4 号 p. 681-683
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    脛骨の変形治癒骨折に対して一期的に矯正骨切り術を施行後,locking plateを用いて内固定を行い良好な結果を得たので報告した.症例は58歳,男性.18歳時に交通事故で右脛腓骨骨折を受傷し,保存的治療を受けた.X線所見にて右膝の内側型変形性関節症を認め,脛骨上中1/3の部位にて約21°の内反変形を認めた.手術はまず腓骨を切骨し脛骨変形中心部にて骨切り,open wedgeにて矯正を行いlocking plateにて内固定を行った.術後6ケ月の現在,骨癒合良好で右膝痛も軽快しておりADLに支障はなく,正座も可能である.変形治癒骨折の矯正骨切術の方法としては従来のプレートによる方法では矯正位の獲得は容易であるがプレートのbendingを細かく行わないとスクリューで骨皮質をプレートに引き寄せる際に矯正位を失う可能性がある.locking plateにて内固定は矯正位の保持が容易であり有用であった.
  • 渡邉 航之助, 宮本 俊之, 千葉 恒, 宮本 力, 米倉 暁彦, 進藤 裕幸
    2010 年 59 巻 4 号 p. 684-687
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    【はじめに】アルコール性肝硬変患者に生じた下腿血腫がコンパートメント症候群に発展し,死亡した1例を経験したので報告する.【症例】65歳男性,40歳代からアルコール依存症となるも放置.ある日,5分程散歩後,徐々に右下肢痛出現.3日後に歩行困難となり救急車で近医受診した.下腿血腫の診断で保存的治療を受けたが,症状改善無く治療目的で当院転院となった.来院時,右下腿に腫脹と疼痛が強く,下腿内圧は50mmHg以上で下腿コンパートメント症候群と診断した.血管造影では出血源は明らかでなかった.肝不全に伴う凝固異常があり減張切開施行せず,経過観察としたが,4週間後,肝不全およびその合併症で死亡した.【考察】肝不全に伴う凝固能異常のため,血腫形成しコンパートメント症候群をきたした症例には,死亡に至った報告が散見される,本症例のような場合には,積極的な外科治療は慎重に検討する必要がある.
  • 生田 拓也
    2010 年 59 巻 4 号 p. 688-691
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    有痛性二分膝蓋骨に対してcannulated screwを用いたtension band wiringによる骨接合術を行い良好な結果を得ているので報告した.症例は6例である.X線学的分類では全例Saupe分類III型であった.性別は男性5例,女性1例で年齢は12~44歳,平均22.7歳であった.全例,分裂部を掻爬新鮮化した上で内固定を行った.術後はknee braceにて固定し,免荷することなくできるだけ手術翌日より可動域訓練を行った.術後4週頃よりスポーツを許可した.全例,術後経過は良好で疼痛は順調に軽快した.本疾患に対する骨接合術の報告においては良好な結果を得ている報告もあるが,内固定材のゆるみを生じ再手術を要したとの報告もある.本法は固定力が強く早期よりのリハビリテーションを許可しても良好な結果が得られており有用な方法であると考えられた.
  • 乗松 崇裕, 北原 博之, 矢部 嘉浩, 安達 信二, 瀬良 敬祐
    2010 年 59 巻 4 号 p. 692-694
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    スポーツの普及に伴い若年者の半月板損傷が増加しているが,変形性関節症の原因となるため,若年者に対する広範囲の半月板切除は注意を要する.若年者の半月板断裂に対しては近年,縫合術が行われており良好な成績が散見される.当院でも症例を選び,若年者を中心に可能な限り縫合術を行っている.今回我々が行った手術の方法,成績について検討したので報告する.対象:平成15年より当院にて鏡視下半月板縫合術を施行した11例11膝である.円盤状半月板切除などに伴う異常可動性に対する縫合術は今回の調査対象から除外した.手術法:outside-in法またはall-inside法にて行った.後療法:術後2週目より可動域訓練,3週目より荷重を開始した.荷重下での深屈曲は3カ月より許可しその後スポーツ復帰を許可した.結果:評価にはJOA scoreを用いた.結果はおおむね良好であったが,再断裂が2例あり,1例は部分切除を行い1例は再縫合術を行った.
  • 佐々木 誠人, 清水 正嗣, 永芳 郁文, 本山 達男, 古江 幸博, 川嶌 眞之, 村岡 静香, 小柳津 卓也, 田村 裕昭, 川嶌 眞人
    2010 年 59 巻 4 号 p. 695-699
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    【はじめに】我々は関節運動面を評価する方法として関節音を用いての研究を行っている.今回,健常者と腱板断裂患者の肩関節音に差があるかについて電子聴診器を用いて調べた.【対象と方法】平均年齢24.4歳の健常者の14肩と平均年齢73.4歳の肩腱板全層断裂患者の14肩にLittmann社製電子聴診器ES4000モデルのチェストピースを肩峰上に当て,他動的屈伸と他動的回旋運動に伴う関節音をそれぞれ電子的に記録し比較検討した.【結果】屈伸時及び回旋運動時とも最大周波数値及び250~500 Hzの発生数において腱板断裂群が有意に大であった.また健常者群では屈伸時と回旋時においての変化が無かったが,腱板断裂群では回旋運動時のほうが屈伸運動時よりも有意に高い周波数音の発生を認められた.【考察】電子聴診器で収録した腱板断裂肩の音は健常者とは異なると思われた.関節機能評価法として関節聴診法は有用なのかもしれない.
  • 水城 安尋, 玉井 幹人, 榎本 光宏
    2010 年 59 巻 4 号 p. 700-703
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    【はじめに】肩腱板断裂及びインピンジメント症候群に対する鏡視下肩峰下除圧術(以下ASD)は必須の手技であるが,除圧の際の骨切除量や,範囲については術者によって方法が異なり一定の見解が得られているとは言い難い.今回我々は術前に3DCTを撮影し,骨棘の形態についての検討を行ったので報告する.【方法】対象は2008年10月~2009年7月までに腱板断裂にて手術を行った症例のうち,術前にCTを撮影した27症例である.骨棘の形態を大きさ別に4つに分類して調査した.【結果】骨棘は烏口突起へ伸びており,内側にはDouble floor様の形態を認めた.また骨棘が大きくなると罹病期間が長くなり,外傷例を除いた場合,腱板断裂サイズが大きくなる傾向にあった.【考察】3 DCTは骨棘の形態的特徴をとらえることができ,肩峰下除圧において有用な情報になる.
  • 倉 明彦, 柴田 陽三, 伊崎 輝昌, 藤沢 基之, 篠田 毅, 熊野 貴史, 寺谷 威, 小島 安弘, 内藤 正俊
    2010 年 59 巻 4 号 p. 704-707
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    広範囲腱板断裂の2症例に広背筋移行術を施行し長期経過を知ることができたので報告する.症例1 60歳男性 建築業 重量物を持ち上げようとして右肩に軋音.疼痛と挙上困難出現.挙上50°,外旋-20°,内旋Th 8,JOA score 40点.広背筋移行術施行.7週間の外転固定.術後9年の現在,挙上140°,外旋20°,内旋Th 9,JOA scoreは72点である.症例2 50歳男性 左官 6年前に右肩広範囲腱板断裂に対して腱移植,棘上筋前進法施行.術後6年で疼痛挙上困難が再発.再断裂を生じる.挙上55°,外旋30°,内旋L1,JOA score 55点.広背筋移行術施行し5週間の外転固定.術後9年,関節症性変化の進行を認めるも挙上140°,外旋50°,内旋L1,JOA scoreは81.5点である.本術式は侵襲が大きいが,一次修復不可能な広範囲腱板断裂で肩挙上能力の回復を希望する者に対しては試みてしかるべき手術と考える.
  • 池田 倫太郎, 古川 敬三, 梶山 史郎, 崎村 俊之, 衛藤 正雄, 進藤 裕幸
    2010 年 59 巻 4 号 p. 708-712
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    【はじめに】後期高齢者(75歳以上)の鏡視下腱板修復術の治療成績について検討した.【対象および方法】2004年12月から2008年7月までに腱板修復術を行い12カ月以上追跡調査が可能で術後6カ月以降にMRIを撮像し得た症例を対象とした.この期間の後期高齢者が9例で75歳未満の61例を対照群とした.検討項目は周術期の合併症の有無,日本整形外科学会肩関節治療成績判定基準(JOA score),術後6カ月以降のMRIを用いての再断裂の評価である.【結果】術中の合併症としてアンカーの脱転や固定性不良の点で両群に有意差を認めた.JOA scoreでは両群に有意差を認めなかった.MRI菅谷分類による再断裂の評価では両群に有意差を認めなかった.【考察】当科における後期高齢者に対するARCRは75歳未満と比し遜色ない治療成績が得られた.後期高齢者では吸収性アンカーの脱転,固定性不良の危険性が有意に高く慎重な手術手技やアンカーの選択が必要と考えられた.
  • 北原 博之, 矢部 嘉浩, 乗松 崇宏, 安達 信二, 瀬良 敬祐
    2010 年 59 巻 4 号 p. 713-716
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    鏡視下腱板修復術72症例を術後6ケ月時にMRIを用いて腱板の修復状態を調査したところ16.2%に再断裂を認めた.広範囲断裂では再断裂率は50%であった.我々は腱板再断裂に影響を与える因子をMRI所見と関節鏡所見を用いて調査した.術前のMRI所見では断裂のサイズが大きいほど,棘下筋の脂肪変性が強いほど再断裂率が高かった.関節鏡所見では腱板断端の質が悪く動きが悪いと再断裂率が高かった.LHBに部分断裂や扁平化がある症例も再断裂率が高かった.腱板や筋肉の変性が進行すると再断裂が多いことから好成績を得るためには診断後は速やかに手術を行うことが必要と思われた.LHB損傷例は再断裂の原因となる肩峰下インピンジメントを生じやすいためリハビリの工夫が必要と思われた.
  • 宮井 保尚, 林 和生, 吉村 鉄朗
    2010 年 59 巻 4 号 p. 717-720
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    今回我々は両側罹患例に対して一期的両側TKAを施行し,その術後成績,その他問題点について片側TKAと比較検討した.当院においてH18年4月よりH21年5月の期間,手術をおこなった142症例(両側51例102膝,片側91例91膝)を対象とした.一期的両側TKAは片側TKAと術後成績に差がなく致死的合併症も認められなかったので有用であると考えられた.ただ,対象に高齢者が多いので術前に患者側とのインファームド・コンセントを十分におこない,手術スタッフや他科との綿密な打ち合わせ,特に循環器科や脳神経外科とのtie upが必要である.
  • 密川 守, 吉田 龍弘, 脇岡 徹, 山田 圭, 佐藤 公昭, 永田 見生
    2010 年 59 巻 4 号 p. 721-726
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    頚胸椎移行部に巨大なOPLLがあり,Kラインが(-)である症例に対して,後方からの除圧・矯正固定術を施行し,良好な結果を得た.症例は50歳,男性.統合失調症の既往あり.OPLLに対して近医で経過観察中,2ケ月前に自転車で転倒,その直後より両下肢不全麻痺出現.頚胸移行部の前方からの手術を薦められたが,手術合併症が心配で拒否,当科に紹介受診された.初診時,両下肢不全麻痺でベッド上安静,立位不可,自力排尿不可でバルーン長期挿入中.画像所見で,C2-Th1に連続型のOPLL認め,頚椎の矢状断アライメントは後彎,C5-6高位で脊柱管占拠率は約70%,Kラインはかなりの(-)であった.手術は後方からアプローチし,椎弓形成術後に外側塊スクリューとネスプロンテープでやや後彎を矯正するように固定した.術後早期から神経症状が著明に改善し,術後1年でまったく支障なく日常生活をすごしている.
  • 井上 哲二, 山内 達朗, 中島 三郎, 福田 和昭, 宮崎 信, 沼田 亨祐, 上園 圭司
    2010 年 59 巻 4 号 p. 727-731
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    圧迫性頚髄症に対する椎弓形成術は,術後の軸性疼痛,頚椎可動域の減少,頚椎アライメントの後弯化が問題とされる.従来法(伊藤法変法)に白石法に準じた展開を用いることで術後成績に変化があるかを検討した.2006年3月から2008年10月までに棘突起縦割展開にて椎弓形成術施行し1年以上経過観察し得た22例とそれ以前に棘突起を切除する椎弓形成術を施行し1年以上経過観察し得た12例を比較した.手術時間・術中出血量・手術時年齢・JOAスコア改善率に両群間に有意差はなかった.術後頚椎可動域は縦割群73%,切除群77%に減少したが有意差はなかった.頚椎アライメントは両群とも術前と有意差なく保たれていた.軸性疼痛の発生頻度に両群間に有意差を認めなかった.従来法に深層伸筋群を温存する展開を用いても頚椎可動域減少度・前弯角度・軸性疼痛は従来法と術後成績に差を認めなかった.
  • 坂本 光, 山元 拓哉, 井尻 幸成, 善明 美千久, 永吉 隆作, 八尋 雄平, 本木下 亮, 香川 陽一, 米 和徳, 小宮 節郎
    2010 年 59 巻 4 号 p. 732-735
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    [はじめに]神経線維腫症1型(NF1)によるdystrophic typeの脊柱変形を有す症例で,軽微な外傷により胸椎脱臼,下肢麻痺を生じた症例を経験したので報告する.[症例]12歳男児.脊柱変形を主訴に平成21年1月初診.T4-L1のdystrophic changeを有し,Cobb角は側弯40°(T7-10),および76°後弯(T7-12),T6-9傍椎体神経線維腫を認め手術予定としていた.2月25日つまずき膝を打撲,翌日より下肢麻痺となり3月3日入院.T7の回旋性脱臼を認め下肢MMTは0-1,排尿困難も呈し,3月4日にT2-L3の後方矯正固定術施行.術後1週で筋力は正常化,排尿可能となった.前方固定術を追加した.[考察・まとめ]NF-1によるdystrophic typeの脊柱変形では急激な変形の悪化により神経症状を惹起することがあり,早期の脊椎固定術が重要である.
  • 樫原 稔
    2010 年 59 巻 4 号 p. 736-738
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    網膜色素変性症に合併した胸椎後縦靭帯骨化症(胸椎OPLL)を経験したので報告する.症例は25歳女性で1カ月前に歩行障害を自覚し,急に歩行不能になり当科受診した.下肢MMTは2~3程度で排尿障害があった.胸椎CTでT1/2,4/5,5/6,6/7,7/8,9/10椎間で嘴状OPLLを認め,骨化巣の脊柱管内占拠率は最大80%であった.手術はまず脊髄後方移動を目的として,C3からT2まで棘突起縦割法を行い,2週間後にT1からT10まで胸椎後方固定とT3からT10まで椎弓切除を行った.術直後から両下肢自動運動が不能になり,術後1年2カ月の現在も下肢麻痺は改善していない.胸椎OPLLは後方法,前方法とも種々の術式があるが,いずれも成績不良例が散見される.特に本症例のように嘴状骨化の場合,術後神経症状悪化例が多く,後方法だけでなく前方除圧術も検討する必要がある.
  • 樽角 清志, 森 英治, 植田 尊善, 前田 健, 弓削 至, 河野 修, 高尾 恒彰, 坂井 宏旭, 益田 宗彰, 宿利 知之, 久保 勝 ...
    2010 年 59 巻 4 号 p. 739-741
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    圧迫骨折後に続発する脊髄硬膜外血腫の報告は極めてまれである.今回,T11圧迫骨折に続発した脊髄硬膜外血腫により重篤な両下肢麻痺を呈し緊急手術となった1例を経験したので報告する.症例は83歳男性.平成21年5月,脚立から転落し午前11時頃前医に搬送された.前医入院時には両下肢麻痺はなく,T11圧迫骨折を認めたため安静・臥床を保っていたが,次第に下肢しびれや脱力感が出現し21時30分頃には両下肢完全麻痺状態になっていることが判明したため当センター緊急搬送となった.搬送時は両下肢完全麻痺状態であり,X線,CTではT11破裂骨折ではなく圧迫骨折を認めた.MRIではT11からL1までの硬膜外背側にT1 iso,T2 highとlowが混在する腫瘤を認めた.圧迫骨折に伴う硬膜外血腫を疑いT10-L1までの血腫除去,後方固定術を施行したが,麻痺の回復は得られなかった.椎体圧潰に伴う遅発性麻痺と異なり硬膜外血腫によるものはまれであるが念頭に置く必要がある.
  • 日浦 健, 馬場 秀夫, 田上 敦士
    2010 年 59 巻 4 号 p. 742-747
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    血液透析に伴う透析性脊椎症に軸椎歯突起病変がある.今回20年以上の透析患者の環軸椎における骨嚢腫の有無をCT画像を用いて評価したので報告する.対象:透析歴20年以上の32頚椎.方法:頚椎CTを施行し環軸椎の骨嚢腫を観察した.結果:環椎外側塊に骨嚢腫を認めたものは21例(66%),軸椎Magerl Screw挿入経路(以下,軸椎Magerl経路)に骨嚢腫を認めたものは9例(28%)であった.軸椎歯突起に骨嚢腫を認めたのは8例(25%)であった.考察:軸椎歯突起病変では環軸関節亜脱臼を起こし,脊髄症状を合併した症例には観血的治療が必要となる.環軸関節亜脱臼に対する手術法としてMagerl法やGoel,Tan法があるが,今回の調査で20年以上の長期透析患者では軸椎歯突起よりも環椎外側塊に骨嚢腫が多く,内固定困難な症例が存在していた.軸椎歯突起に病変が無くてもCTによる術前の環軸椎の骨嚢腫の評価が重要と考えた.
  • 坂上 秀和, 馬場 秀夫, 田上 敦士, 日浦 健, 進藤 裕幸
    2010 年 59 巻 4 号 p. 748-753
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    はじめに:透析性脊椎症には破壊性脊椎症(DSA)や脊椎アミロイド沈着,軸椎歯突起病変があるが,当科での軸椎歯突起病変の手術例について検討した.方法:対象は当科で手術を行った軸椎歯突起病変の8例(男性5例,女性3例).手術時年齢は47~59歳(平均54.1歳)で,そのうち環軸椎亜脱臼を認めたのが6例,歯突起偽腫瘍を認めたのが2例であった.環軸椎亜脱臼例には後頭頚椎固定術を,歯突起偽腫瘍例には後弓切除術のみを施行した.結果:透析歴は25~30年(平均27.9年)と全例が極めて長期の透析症例であったが,手術前後でJOA scoreは良好に改善し,周術期の合併症も認めなかった.考察:透析患者の軸椎歯突起病変では,手術時に全例25年以上と極めて長期の透析歴を有していたが,周術期合併症もなく良好な術後経過を得られている.
  • 明石 浩介, 寒竹 司, 田口 敏彦, 加藤 圭彦, 今城 靖明, 鈴木 秀典
    2010 年 59 巻 4 号 p. 754-756
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    頚椎症性脊髄症(以下CSM)の責任高位については,主には神経学的所見とMRI等の画像検査で評価され,脊髄の機能そのものでは評価はされていない.脊髄機能評価は電気生理学的検査に負うところが大きく,今回脊髄形態と脊髄機能との関連について検討した.術中脊髄誘発電位で単一椎間障害と診断したCSM 24例(男14,女12例,平均年齢69歳,術前JOAスコア平均8.9点)について,責任高位でのMRI画像を検討した.脊髄誘発電位刺激は正中神経刺激,経頭蓋電気刺激,脊髄硬膜外刺激で行った.すべて異常をA群(n=18),脊髄刺激は正常であったものをB群(n=6)とした.形態計測はMRI T1WI横断像で,中心部と外側1/4の扁平率,脊髄面積を計測した.A群はB群に比して扁平率,外側1/4扁平率共に有意に低値で,CSMにおけるMRIの脊髄形態は機能的診断の指標となっていた.
  • 黒木 修司, 久保 紳一郎, 黒木 浩史, 花堂 祥治, 濱中 秀昭, 猪俣 尚規, 福嶋 秀一郎, 比嘉 聖, 長澤 誠, 帖佐 悦男
    2010 年 59 巻 4 号 p. 757-760
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    近年,高齢者手術は増加傾向にあり,当院においても同様の傾向を認める.今回われわれは当科における超高齢者(85歳以上)の頚椎手術症例の術後成績を検討したので報告する.対象は2004年1月より2009年9月まで当科にて施行した85歳以上の頚椎椎弓形成手術9例,男性5名女性4名,平均年齢は87.4歳である.術前診断は頚椎症性脊髄症8例,後縦靱帯骨化症1例であった.日本整形外科学会頸髄症治療成績判定基準(以下JOA score)の平均値は術前8.8から最終観察時12.9と改善を認め,全ての症例で麻痺の悪化や予後不良となる重大な術後合併症を認めなかった.超高齢者であっても術前の評価と適応を十分検討すれば,観血的治療は有用な治療法と考える.
  • ―単椎間罹患例において―
    田邊 史, 武冨 栄二, 井尻 幸成, 山元 拓哉, 永吉 隆作, 宮口 文宏, 冨永 博之, 前田 淑美, 石堂 康弘, 米 和徳, 小宮 ...
    2010 年 59 巻 4 号 p. 761-763
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    単椎間罹患の頚部神経根症に対する術式の的確な選択を検討する目的で,前方除圧固定術(A群)と鏡視下後方椎間孔拡大術(P群)の術後成績を比較した.手術施行の単椎間罹患の頚部神経根症患者30例を対象とし,前方除圧固定を17例,後方からの椎間孔拡大術を13例(内視鏡下11例,顕微鏡下2例)に行った.両群とも重篤な合併症を認めず,最終追跡時の成績は良好であった.手術時間,出血量,上肢項目のみのJOAスコアの改善率,復職率,患者満足度,C2-7角は,両群間で有意差を認めなかったが,退院・就労までの期間,罹患隣接椎の骨棘変化では,P群の方が有意に成績良好であった.鏡視下後方手術は,前方法と同等の良好な臨床成績が得られ,特に早期退院,就労復帰が可能で,罹患隣接椎の骨棘変化も少ないという点で有用な術式のひとつであると考えられた.しかし,その長期成績については慎重に経過をみて,今後さらな検討が必要である.
  • 中島 隆之, 冨永 博之, 有島 善也, 宮口 文宏, 砂原 伸彦, 武富 榮二, 小宮 節郎
    2010 年 59 巻 4 号 p. 764-765
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    今回,我々は極めて稀な軸椎骨折を伴った環軸関節回旋脱臼骨折の一例を経験したので,報告する.症例は38歳男性で,平成21年3月,飲酒後誤って階段より転落し頭部を強打して受傷.以後,頚部痛,斜頚を認め翌日近医整形外科受診.神経症状みられず,頚椎牽引行うも症状改善しなかったため,受傷後1週で当院紹介となる.画像上,右側環軸椎関節が回旋位に脱臼しており軸椎上関節突起が一部骨折していた.頸椎牽引の量を増やし加療していたが整復位を得ることができず,全身麻酔下で透視下に徒手整復術を施行し,整復位を得ることができた.整復後画像診断にて,椎骨動脈の異常を認めなかった.整復後カラーにて外固定を継続し,術後2カ月で骨癒合を得ることができ,また不安定性もみられなかった.骨折を伴った環軸関節回旋脱臼は,ほとんど報告がなく極めて稀な症例といえる.今回,我々は観血的治療を行わず,良好な骨癒合を得ることができた.
  • 瀬戸山 傑, 冨永 博之, 武富 栄二, 小宮 節郎
    2010 年 59 巻 4 号 p. 766-768
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    正常圧水頭症は歩行障害,尿失禁,認知障害を3徴候としており,脊髄疾患との鑑別が困難な場合がある.我々は正常圧水頭症を伴った外傷性頚髄損傷の一例を経験したので報告する.症例は81歳女性.平成19年11月風呂場で転倒し,両上肢のしびれ,両下肢筋力低下,歩行障害を認め当院受診.MRI上C3/4,4/5,5/6レベルで脊髄の圧迫があるも髄内輝度変化はみられなかった.頭部画像では脳室の拡大を認めたため脳神経外科紹介し水頭症の診断にて経過観察.骨傷のない脊髄損傷としてステロイドを投与した.以後両上肢のしびれは軽減し自立歩行可能となるも歩行時ふらつき症状は残存していた.受傷後5ケ月で脳神経外科にて正常圧水頭症と診断され,LPシャント術施行しふらつき症状が改善した.正常圧水頭症と脊髄疾患は症状が類似している場合があり,脊髄疾患を治療する上でこれらを念頭にいれて治療することが重要である.
  • 谷島 伸二, 矢倉 知加子, 林原 雅子, 谷田 玲, 近藤 康光
    2010 年 59 巻 4 号 p. 769-772
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    【はじめに】Crowned dens syndromeは1985年にBouvetらが初めて報告した疾患で頚部痛と歯突起周囲の石灰化をきたす.今回,われわれはcrowned dens syndromeの4例を経験したので,報告する.【症例】男性2例,女性2例,平均年齢は80歳であった.全例,急激に発症した頚部痛と発熱を訴えていた.頚椎の回旋が著しく制限されており,炎症反応は高値であった.頚椎の単純X線像では明らかな所見は認められなかったが,CTにて歯突起後方に石灰化を認めた.Crowned dens syndromeとし,NSAIDsと頚椎カラー固定を行い,全例1週間程度で疼痛は消失し,炎症反応も陰性化している.【結語】高齢者において,急性の強い頚部痛,回旋制限を中心とした可動域制限,発熱および炎症反応の上昇を認めた場合はCrowned dens syndromeを生じている可能性が高いと考えられる.
  • 牛島 貴宏, 中島 康晴, 藤井 政徳, 山本 卓明, 馬渡 太郎, 本村 悟朗, 佐藤 太志, 岩本 幸英
    2010 年 59 巻 4 号 p. 773-777
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    【目的】人工股関節全置換術(THA)症例において側臥位による骨盤傾斜角(PIA)の変化を調査し,さらにその変化が術後の臼蓋コンポーネントの設置角に与える影響を検討した.【対象】初回THAを行った変形性股関節症(OA)84例84関節(男性12関節,女性72関節,平均年齢63.7歳)を対象とした.術前後(仰臥位)および術中(側臥位)の両股正面像を用いて矢状面と前額面のPIAを測定し,臼蓋コンポーネントではその前捻角および外転角を測定した.【結果】術前仰臥位より5°以上後傾した例は26.2%,5°以上前傾した例は9.5%であった.それらを後傾群,不変群,前傾群と分けた場合,臼蓋コンポーネントの前捻角は各群でそれぞれ6.3°減少,3.9°減少,1.7°減少した.同様に外転角は0.9°減少,2.0°増加,5.5°増加した.前額面で患側が頭側に5°以上傾斜した例は17.9%,5°以上尾側に傾斜した例は4.7%認めた.PIAの変化に影響を与える因子として,矢状面の変化には術前仰臥位から立位でのPIAの変化が,前額面のPIAの変化には術前内転拘縮の程度が有意に影響した.【まとめ】側臥位にすることによって骨盤傾斜が5°以上変化した症例は矢状面で35.7%,前額面で22.6%であった.これらの変化はインプラントの設置角へ大きく影響するため,術中の骨盤傾斜の把握が重要である.
  • 野村 賢太郎, 尾崎 誠, 穂積 晃, 福島 達也, 進藤 裕幸
    2010 年 59 巻 4 号 p. 778-783
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    目的)特発性大腿骨頭壊死症(ION)に対する人工股関節置換術(THA)とBipolar型人工骨頭置換術(BHA)の術後成績について比較検討すること.対象と方法)BHA群40例47関節,THA群23例26関節で平均年齢はBHA群45.5歳(19歳~75歳),THA群50.4歳(19歳~73歳),平均経過観察期間はBHA群9.0年(3~13.5年),THA群5.1年(3~13.5年)であった.それぞれの群の股関節症機能判定基準(JOAスコア),X線学的評価,合併症の有無について調査した.結果)BHA群とTHA群のJOAスコアに有意差はみられなかった.THA群で術後脱臼例を3関節(12%)認め,その内2関節(8%)に再置換を要した.BHA群では脱臼は認めなかったが手術後の疼痛,X線変化が多い傾向にあった.結論)IONに対するBHA,THAの治療成績はともに良好であった.今後さらなる長期の追跡が必要と思われる.
  • 村上 智俊, 田中 浩, 徳重 厚典, 田口 敏彦, 今釜 崇
    2010 年 59 巻 4 号 p. 784-787
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    今回,反復性に股関節脱臼を来した臼蓋形成不全を有するDown症候群の1例を経験したので報告する.12歳,女性.生下時よりDown症候群を指摘され,鎖肛で1歳6カ月までに計3回の手術を受けた.その間,開排制限は指摘されず,先股脱があったかは不明であった.2歳で座位可能となるも歩行できなかったが,保存的に経過観察をされていた.6歳時に処女歩行.H21年4月に初回左股関節脱臼を起こしたが,無麻酔下に徒手整復可能であった.その後,頻回な脱臼を認めるようになったため外転装具着用したが,脱臼を繰り返したため,同年6月当科紹介受診,左寛骨臼回転骨切り術と関節包の縫縮術を行った.
    Down症候群に伴う股関節脱臼については諸家の報告がある.臼蓋形成不全に加え関節弛緩性と関与している.今回,左股関節の手術を行ったが,今後も健側を含め厳重に経過を見ていく必要があると考えられる.
  • 長澤 誠, 帖佐 悦男, 坂本 武郎, 渡邊 信二, 関本 朝久, 濱田 浩朗, 野崎 正太郎, 池尻 洋史, 中村 嘉宏, 福田 一, 日 ...
    2010 年 59 巻 4 号 p. 788-791
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    今回,大腿筋膜張筋―腸脛靭帯拘縮に対し内視鏡を用いた腸脛靭帯切離術を施行した症例を経験したので報告する.症例は20歳女性,股関節外転拘縮,屈曲制限が出現したため当院受診となった.幼少期に明らかな筋肉注射既往は確認できなかった.その後保存療法行うも症状改善無く手術に至った.手術は内視鏡を用いた腸脛靭帯切離術を行い術後可動域,跛行は改善した.内視鏡は一般的に関節内など空間での処置に有用であるが,今回皮下組織下での処置に利用できた.鏡視下の腸脛靭帯切離術は術中股関節の動態による拘縮の確認が可能で,小皮切で行える有用な手段であると思われた.
  • ―手術施行例を含めて―
    赤嶺 卓哉, 田口 信教, 高田 大, 牧 信哉
    2010 年 59 巻 4 号 p. 792-794
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    変形性股関節症(股OA;手術例4名を含む)に対する水中運動療法の効果を,検討し報告する.対象は,股OA症例13名(女性12名,男性1名,平均年齢56.5歳,平均日本整形外科学会股関節機能判定70.2点)である.水中運動教室は毎週2回,約6.0カ月間実施した.教室内容は,股OA基礎教育と約90分間の水中運動(水中歩行,基礎的水中運動,泳法指導,自由泳など)である.効果判定のため,各種の測定・検査を,水中運動実施直前・中間・直後に3回施行し比較した.水中運動実施後の身体・体力測定では,肥満の軽減,心肺機能の向上,体幹・下肢の柔軟性の増強がそれぞれ統計学的に有意に認められた(以下p<0.05).また日整会判定においても,実施後では疼痛・日常生活動作・総点に,有意な改善が認められた.水の浮力・抵抗などを利用した股OAに対する水中運動は,術前・術後に関わらず,症例の健康増進に対する動機づけを高め,有益であると考えられた.
  • 田島 貴文, 弓指 恵一, 石橋 勝彦, 中井 健一郎, 福原 志東, 田中 宏明
    2010 年 59 巻 4 号 p. 795-798
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    当院において07年4月以降2年間で大腿骨頚部骨折に対して股人工骨頭置換術を53例施行,うち術後早期感染を5例(9.4%)に発症した.他の報告である0.7~3.8%と比較し感染率が高い結果であり,感染発生因子につき検討した.感染群5例と同時期に施行した非感染群44例の比較を行った.待機日数,合併症などの危険因子,術前血液検査,抗凝固療法,手術時間・出血量,周術期抗生剤について後ろ向き調査を行った.結果は,各項目において感染群と非感染群に有意差を認めなかった.感染群と非感染群の比較における検討では感染発生因子を明らかにできなかったが,手術時間や強力な抗凝固療法の関与を考えた.
  • 今村 祐子, 冨田 伸次郎, 浦川 伸弘, 菅 政和
    2010 年 59 巻 4 号 p. 799-801
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    胸骨骨髄炎は比較的稀な疾患である.今回我々は,手術的に本疾患を治療し良好な成績を得られたので報告する.症例:40歳,体格の良い男性.既往歴,職歴:既往に特記所見なし,重い荷物を持つ仕事に従事している.現病歴:平成21年4月左胸鎖関節部痛にて発症する.4月胸鎖関節注射を施行するも無効であり,5月病巣掻爬術を施行した.培養検査では,peptococcusが検出された.術後特に大きなトラブルなく現在日常生活上仕事も支障なく行えている.考察と結語:患者が元来健常人である場合,診断,治療が遅れることもあり日常的に本疾患を念頭に置いた診療が必要と考える.
  • 築谷 康人, 亀山 康弘, 梅木 俊伸, 河野 龍之助
    2010 年 59 巻 4 号 p. 802-805
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    10歳男児.38度台の発熱,右股関節痛にて当院救急外来を受診.初診時,右股関節の疼痛および可動域制限は著明であった.MRIでは右股関節内の関節液の軽度増加を認めたが,寛骨には異常所見を認めなかった.関節液は穿刺吸引できなかったが,化膿性股関節炎を疑い抗生剤の経静脈投与を行った結果,炎症反応は改善した.しかし,第26病日,MRIにて右腸骨から恥骨にかけて輝度変化を認め,再度抗生剤投与を開始した.第39病日のMRIで右股関節内の関節液の増加,関節穿刺で排膿を認めたため,第40病日に急性化膿性股関節炎と判断し,洗浄ドレナージを行った.持続潅流および抗生剤投与にて炎症反応は改善し,MRI上での輝度変化も消失した.抗生剤投与および観血的治療にて良好な結果を得ることができた.今回,本症例の感染経路について,病歴とMRI所見から考察を行った.
  • 浦川 伸弘, 菅 政和, 冨田 伸次郎
    2010 年 59 巻 4 号 p. 806-808
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    当院では白血球除去療法(以下LCAPと略)を導入し,関節リウマチ(以下RAと略)の治療を行っている.今回,経験症例においてのLCAPの有効性,安全性を検討したのでここに報告する.LCAPを施行した39症例において,治療効果を検討した.DAS28-CRP値は,施行前と比べ4週後,8週後ともに有意差を持って値が低下した.39例中,5例に副作用を認めたが重篤例はなかった.LCAPは,RA疾患活動性が高い症例,薬物治療の効果減弱例,副作用のために薬物治療が使用できない症例に安全で有用な治療法と考えられた.
  • 園田 和彦, 志田 純一, 濱田 貴弘, 山口 徹, 林田 光正, 中村 幸之, 石原 康平, 時任 毅, 有薗 剛
    2010 年 59 巻 4 号 p. 809-812
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチ(RA)患者の治療薬として,生物学的製剤の使用が始まってから10年余りが経過した.エタネルセプトのRAに対する優れた臨床効果については多くの報告がある.国内で承認されている用法,用量は25mgを1日1回,週2回,皮下注射で投与となっているが,最近では25mg週1回投与でも有効であるとの報告が散見されるようになってきた.今回当院でエタネルセプト25mg週2回投与を行った患者のうち寛解状態が継続していた例に対し,徐々に投与間隔を延長していき2週に1度の隔週投与においてもその有効性が維持できるかどうかについて検討した.対象と方法:当院でエタネルセプト25mg週2回投与を行った患者のうち,寛解状態が継続していた6例に対しエタネルセプトの投与間隔を徐々に延長していった.2週に1回投与となった時点から12週後のCRP,ESR,MMP-3,HAQスコア,VASスコア,DAS28CRPを漸減前と比較した.結果:6例中5例で炎症反応,関節症状の再燃は認めなかった.結論:エタネルセプト週2回投与にて寛解導入された例において,25mg 2週に1回投与でも有効性が維持できる可能性が考えられた.
  • 田島 智徳, 中村 隆弘
    2010 年 59 巻 4 号 p. 813-816
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    肘部管症候群を呈した血管平滑筋腫の1例を経験したので報告する.症例は61歳男性.5年前より右第4,5指のしびれが出現.1年前より右手の筋力低下を自覚.初診時には骨間筋萎縮とclaw fingerを認めた.肘部管に弾性硬の腫瘤を触れ,腫瘤は単純X線で石灰化像を呈していた.MRIでは皮下に3.0×2.0×1.5 cmの境界明瞭な腫瘍を認めた.良性腫瘍による肘部管症候群の診断で切除生検術を行った.病理組織所見では血管壁平滑筋から腫瘍性平滑筋への移行を認め血管平滑筋腫と診断した.術後は腫瘍の再発はなく神経症状も改善傾向である.血管平滑筋腫は血管壁の平滑筋細胞に由来する良性腫瘍で下肢に好発することが多い.特徴的な所見がないため術前に診断することは困難である.本症例のように石灰化を伴うことや神経症状を呈することは非常に稀である.
  • 山田 周太, 米倉 暁彦, 浅原 智彦, 宮本 俊之, 進藤 裕幸
    2010 年 59 巻 4 号 p. 817-821
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    目的:膝関節内に発生し,可動域制限を生じた脂肪腫の1例を報告する.症例:37歳,女性.主訴:左膝可動域制限.現病歴:H20年5月頃より誘因なく左膝痛が生じ徐々に膝関節可動域制限も出現した.同年7月当科初診.X線,造影MRIにて異常所見を認めなかった.その後可動域制限が徐々に進行したため精査加療目的で入院した.経過:H21年4月,膝関節鏡施行した.前・後十字靱帯の前後に存在し膝伸展時に大腿骨顆間部とインピンジしていた腫瘤を切除した.病理学的には成熟脂肪細胞と繊維性結合組織を中心とした脂肪腫であった.理学療法を行い疼痛消失し可動域は改善した.考察:関節内脂肪腫は稀な疾患といわれている.過去の文献では,膝関節内腫瘍で可動域制限やロッキングを生じたもののうち約半数が色素性絨毛結節性滑膜炎で,脂肪種は数件の報告があるのみであった.本症例は可動域制限の原因を画像検査では診断困難で関節鏡検査を必要とした1例であった.
  • 中村 孝幸, 薬師寺 俊剛, 佐藤 広生, 岡 潔, 徳永 琢也, 水田 博志
    2010 年 59 巻 4 号 p. 822-825
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    【症例】54歳,女性.誘因なく右膝部の腫瘤が出現し,増大傾向を認めたため当科受診した.初診時は右膝蓋骨遠位外側に径7×5 cm,弾性軟の腫瘤を触知した.圧痛および局所熱感はなく,右膝の可動域制限も認めなかった.MRIにおいて病変は,T1WI,T2WIともに均一な高信号を呈し,脂肪抑制にて抑制され,またT1WIで低信号,T2WIで等信号を呈する領域も有しており,右膝関節内脂肪腫を疑い,関節包を開放し腫瘍辺縁切除術を施行した.病変は膝蓋下脂肪体よりfeederを得ており,周囲との癒着は認めず一塊として摘出可能であった.腫瘍は被膜に覆われ,組織学的に成熟脂肪細胞と線維軟骨から構成されており,線維軟骨化生を伴う膝関節内脂肪腫と診断した.【まとめ】脂肪腫の関節内発生は稀であるが,特に自験例のように軟骨化生を伴った報告は過去に数例のみであり,稀な症例といえる.
  • 杉山 健太郎, 熊谷 謙治, 富田 雅人, 野崎 義宏, 坂上 秀和, 上谷 雅孝, 安倍 邦子, 林 徳眞吉, 進藤 裕幸
    2010 年 59 巻 4 号 p. 826-829
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    【はじめに】高分化型脂肪肉腫瘍の1亜型である炎症型脂肪肉腫は主に後腹膜に発生するとされている.今回大腿部に発生し,特異なMRI所見を呈した症例を経験したので報告する.【症例】75歳女性.右大腿腫瘤を自覚し来院.当科初診時,右大腿内側に約15×10cm大の弾性硬の腫瘤を触れた.局所の発赤・熱感及び圧痛はみとめなかった.MRIでは右大内転筋内に比較的境界明瞭,辺縁整な腫瘤をみとめた.腫瘤はT1WI,T2WIともに高信号を呈し,脂肪抑制にて信号の抑制をみとめ,内部はT1WI等信号,T2WI等~高信号の非脂肪性結節性病変が多発していた.切除術を行い病理の結果,高分化脂肪肉腫・炎症型亜型と診断した.術後局所制圧のため放射線照射(50Gy/25fr)を行った.術後7カ月経過した現在,局所再発,転移みとめず経過良好である.
  • 野崎 義宏, 富田 雅人, 池田 倫太郎, 林 秀行, 上谷 雅孝, 進藤 裕幸
    2010 年 59 巻 4 号 p. 830-835
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    (はじめに)臨床上,悪性軟部腫瘍との鑑別を要した大腿部仮性動脈瘤の一例を経験したので報告する.(症例)49歳女性.(既往歴)先天性股関節脱臼に対して16歳時に骨切術を受けた.現病歴:平成20年6月より左下肢に違和感を,同年末頃から大腿部の硬結,腫脹を自覚していた.平成21年初めから腫脹が徐々に増大し,同年5月より膝関節の伸展障害も出現したため当科受診となった.左鼠径部内側より後面にかけて26×15×19 cmの弾性硬の腫瘤で血管雑音を聴取した.圧痛,熱感は伴っていなかった.造影CTにて動静脈奇形(AVM)とAVM周囲に仮性動脈瘤をみとめ,持続的な出血をみとめた.その後,出血源の塞栓術を2回に分けて施行した.貧血の進行が無いことを確認後,外来での経過観察とし現在も観察中である.(考察)急速に増大する腫瘤と腫瘤内に著明な血管雑音をみとめた場合,本疾患も鑑別として考慮すべきである.
  • 白石 大偉輔, 薬師寺 俊剛, 佐藤 広生, 岡 潔, 永田 武大, 水田 博志
    2010 年 59 巻 4 号 p. 836-839
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    【症例】63歳男性.1年前に左肩甲部腫瘤が出現し,徐々に病変が増大したため当科を紹介され受診した.左肩甲背部に径10cmの弾性硬,可動性不良な腫瘤を触知し,発赤,局所熱感,圧痛は認めなかった.MRIにてT1WI,T2WIともに高信号と低信号の混在を認め,Gd造影で軽度増強効果を認めた.針生検を行いChronic Expanding Hematoma(以下CEH)と診断されたため経過観察するも,その後のCTにて右肺の結節性病変が出現し,両病変とも増大傾向を認めたため,左肩甲部の病変に対して腫瘍切除術を施行し,肺病変に対してCTガイド下針生検を行い,病理組織学的検査で各々CEHおよび肺扁平上皮癌と診断された.【考察】通常のMRIではCEHは悪性軟部腫瘍との鑑別が困難な症例が存在する.本症例ではさらに原発性肺癌を合併しており転移性肺腫瘍との鑑別が必要であった.
  • 土居 満, 熊谷 謙治, 富田 雅人, 野崎 義宏, 田中 克己, 田川 努, 土谷 智史, 林 徳眞吉, 進藤 裕幸
    2010 年 59 巻 4 号 p. 840-843
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    悪性線維性組織球腫(Malignant Fibrous Hitiocytoma:MFH)は軟部悪性腫瘍の中では最も多く中年に好発し四肢部,体幹に発生することが知られている.今回我々は比較的珍しい胸壁発生のMFHの1例を経験したので報告する.症例は61歳女性.右胸壁の腫瘤,疼痛にて当科初診.画像上悪性腫瘍が疑われ広範腫瘍切除,胸壁再建,遊離筋弁術を行った.術後の経過は良好で現在術後7ケ月経過しているが,腫瘍の局所再発・転移を認めず,日常生活に復帰可能であった.
  • 山下 英樹, 遠藤 宏治, 濱本 佑樹, 豊島 良太
    2010 年 59 巻 4 号 p. 844-846
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    類骨骨腫にCTガイド下ラジオ波焼灼術(RFA)およびアルコール焼灼術(AA)を施行した2例を経験したので報告する.【症例1】17歳,男性.発生部位は大腿骨骨幹部で,疼痛出現後9カ月でRFAおよびAAを行った.術前のvisual analogue scale(VAS)は80点であったが術翌日には10点となり,1カ月後には疼痛は消失した.入院期間は8日で周術期合併症は認めなかった.術後7カ月時点で再燃はない.【症例2】16歳,女性.発生部位は大腿骨近位骨幹部で,疼痛出現後1カ月で切除術を行ったが,疼痛が再燃した.初回手術後6カ月でRFAを行った.術前VASは6,RFA翌日には1となり,1カ月後に疼痛は消失した.入院期間は7日で,周術期合併症はなかった.術後1年時点で再燃はない.RFAおよびAAは低侵襲治療として有用であると考えられた.
  • 中原 信一, 田中 尚洋, 内田 雄, 朝長 匡, 松本 亜由美, 森崎 佐知子, 福田 雅史, 佐藤 二葉, 小寺 宏平
    2010 年 59 巻 4 号 p. 847-851
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    妊婦に発症した化膿性仙腸関節炎の1例を経験したので報告する.22歳,女性.妊娠26週に誘引なく左臀部痛,左大腿部痛が出現し,炎症反応を認めた.腰椎MRIにて椎間板ヘルニアはなく,水腎症があり,腎盂腎炎を疑った.血液培養で黄色ブドウ球菌を検出した.抗生剤の投与にて症状軽減し退院したが,すぐに疼痛の再燃があり再入院となった.MRIで化膿性仙腸関節炎と診断した.抗生剤を3週間投与し,炎症反応は消失し疼痛も軽減した.一般的に化膿性仙腸関節炎の診断には苦慮することが多く,妊婦での発症も特に考慮する必要がある.
  • 小柳津 卓哉, 田村 裕昭, 川嶌 眞之, 川嶌 眞人
    2010 年 59 巻 4 号 p. 852-854
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    慢性化膿性骨髄炎の難治性瘻孔に扁平上皮癌を発症することは知られているが稀である.瘻孔部の悪性化を疑わせる所見として易出血性,肉芽の増殖,滲出液の増大,悪臭,疼痛が挙げられるが,最も注意すべきは経時的な瘻孔部の性状変化である.疑われた場合は,生検等の積極的な検査が必要であると考える.脛骨慢性化膿性骨髄炎に扁平上皮癌を生じた1症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 重留 広輔, 山田 圭, 永田 見生, 佐藤 公昭, 密川 守, 下山 十喜子, 横須賀 公章, 吉田 龍弘
    2010 年 59 巻 4 号 p. 855-859
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    稀なBacteroidesによる化膿性脊椎炎を経験したので報告する.症例は77歳で腰痛,左骨盤部皮膚瘻を主訴に受診した.22歳時に肺結核,52歳で結核性脊椎炎の既往があった.初診時腰椎単純X線写真でL4とL5が癒合していた.MRIではL4下部からL5椎体にかけてT1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号,ガドリニウム造影でrim enhancementを認めた.画像所見から結核性脊椎炎が疑われたが,初診時の炎症データが著明に高値であった.L5椎体の経皮的生検を行い,polymerase chain reaction法と抗酸菌培養で結核菌が陰性で,細菌培養でBacterodes caccae,Peptostreptococcus microsが検出された.開腹し前方固定術施行し,術後抗菌薬を投与して炎症データは改善した.黄色ブドウ球菌による化膿性脊椎炎と同様の手術および化学療法で治療が可能であった.
  • ―経時的画像変化―
    山口 亮介, 齊藤 太一, 犀川 勲, 入江 努, 田中 哲也, 中村 幸之
    2010 年 59 巻 4 号 p. 860-864
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    Crowned Dens Syndrome(CDS)は,急性の高度な頚部痛,回旋運動を中心とした頚椎可動域制限,CTでの軸椎歯突起周囲の石灰化,炎症反応の上昇によって特徴づけられる症候群である.我々は,遷延化し,ステロイド投与が有効であったCDSの一例を経験した.今回,その症例においてCT,MRI所見の経時的な変化を確認したので,臨床経過とともに報告する.治癒後の画像所見では,治療前CTにて認めていた歯突起周囲の石灰化が縮小し,MRIでの環軸関節を中心とした広い軟部組織の炎症性変化が消失していた.
  • 岡野 徹, 林原 雅子, 川口 馨, 大槻 亮二, 豊島 良太
    2010 年 59 巻 4 号 p. 865-868
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    前側方進入を用いた人工股関節置換術(THA)の術中,術後に生じた大転子骨折について調査し,その問題点を検討した.2000年1月から2008年12月までの間に行った258例の前側方進入を用いた初回THAを対象とした.大転子骨折は6例(2.3%)に生じていた.大転子骨折は,術中3例,術後しばらくして判明が3例であった.6例の手術時平均年齢は62歳(52~76歳)であった.術中に生じた骨折はすべて斜骨折で,骨接合を行ったが,wiringのみを行った症例で再転位を生じ,後方脱臼を起こした.術後に判明した3例はすべて横骨折で,経過観察を行ったのみであるが,問題を生じなかった.皮切を小さくした前側方進入では,大腿骨操作時に大転子骨折を生じないように注意深い操作が必要である.大転子先端部の横骨折は,問題を生じないが,外旋筋群を含む斜骨折の場合には,後方不安定を生じやすく,確実な骨接合術が必要である.
  • 前田 和政, 古市 格, 村田 雅和, 宮田 倫明, 穂積 晃, 久芳 昭一, 松村 陽介
    2010 年 59 巻 4 号 p. 869-871
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    Crowned dens syndrome(CDS)は急性に発症する重度の頚部痛と頚椎可動域制限を呈し,CT上歯突起周囲の石灰化が認められる症候群である.その病因は,歯突起周囲の結晶沈着といわれている.高齢女性に多いといわれているが,比較的若年者にも発症していた.CDSの2症例を経験したので,報告する.症例1.68歳女性.特に誘因なく,頚部の違和感が出現.後頭部部痛と頚部硬直が出現するも自宅で安静にしていた.数日後近医受診し,くも膜下出血疑いで当院脳神経外科に紹介されるも診断がつかず,当科紹介.CTで歯突起周囲の石灰化を認め,CDSと診断した.症例2.38歳女性.2,3日前からの頚部違和感あり.後頭部痛と頚椎可動域制限出現し当科受診.CT上歯突起周囲に石灰化を認め,CDSと診断した.両症例に対して内服治療を行い,1週間以内に疼痛は軽快した.
  • 桑島 海人, 土屋 邦喜, 弓削 英彦, 富重 治, 坂本 央, 川村 秀哉
    2010 年 59 巻 4 号 p. 872-874
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    頚部脊髄症に対する片側進入による除圧術の短期成績,問題点を検討した.対象は頚部脊髄症に対し片側椎弓切除で除圧術を行った6例で平均年齢は72歳(61歳―82歳),男性3名女性3名であった.片側椎弓切除の切除椎弓数は1椎弓3例,2椎弓3例であった.平均手術時間は103分(80分―170分),平均術中出血量は63 ml(少量(10 gとして換算)―210g)であった.全例術前の脊髄症状は改善し,術直後の神経合併症は認めなかった.1例に術後1日目より血腫に伴う神経障害の増悪を認め,血腫除去術を施行した.頚部脊髄症に対する片側椎弓切除による除圧は術後の疼痛も軽度で症例を選択すれば小侵襲で脊髄除圧が行える有用な術式と考える.死腔が少ないことによる血腫の危険性を含め,必要十分な除圧及び脊髄に対する安全性を確保するには手技に十分な習熟が必要と考えられた.
  • 宮岡 健, 泊 真二, 伊藤 康正, 瀬尾 健一, 菊池 克彦, 高比良 知也, 今村 純忠
    2010 年 59 巻 4 号 p. 875-879
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    当科において保存的加療を行った頚・胸椎硬膜外血腫症例に対するMRIの経時的変化を検討したので報告する.症例1,16歳男性.筋力トレーニング中に背部痛が出現し,30分後に両下肢筋力低下を来し,救急搬送.受診時,両側腸腰筋以下が完全麻痺の状態であり,MRIにて胸椎硬膜外血腫の診断.症例2,41歳男性.入浴中に誘因なく後頚部痛が出現後,右片麻痺を来し当院へ搬送.MRIにて頚椎硬膜外血腫の診断.症例3,80歳女性.陳旧性心筋梗塞後,ワーファリン内服中.炊事中に右肩から上肢にかけての疼痛および右上肢筋力の低下を来し,MRIにて頚胸椎硬膜外血腫の診断.受診後2~3時間の経過で麻痺に改善を認めた,上記3例を保存的加療の方針とし,ステロイドパルス療法を施行した.3例ともに4~12日の安静にて麻痺は完全に改善し,MRI上も良好に血腫の縮小を認めた.
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