整形外科と災害外科
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61 巻, 4 号
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  • 富田 雅人, 宮田 倫明, 野崎 義宏, 尾﨑 誠
    2012 年 61 巻 4 号 p. 605-607
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    症例:37歳,男性.下腿三頭筋内軟部腫瘤を自覚し近医を受診,当科紹介受診した.切開生検で滑膜肉腫と診断した.術前化学療法後手術を行った.手術は,アキレス腱を踵骨付着部近傍で切断し下腿三頭筋で腫瘍を包む様にして切除した.腫瘍切除後に,バードメッシュ®を筒状にしてアキレス腱断端と近位下腿三頭筋断端の間に足関節軽度背屈位で縫着した.術後ギプスシーネ固定を行い,1週間後からアキレス腱断裂用短下肢装具を装着し歩行開始した.足関節を徐々に背屈し,術後6カ月で装具を除去した.術後1年6カ月の現在,独歩可能で歩容も良好である.考察:軟部組織悪性腫瘍切除後の再建には様々な方法がある.しかしながら,悪性腫瘍切除後の再発の危険性を考えると,出来るだけ腫瘍に汚染されていない自家組織を用いずに再建を行う事が望ましい.安価で入手も容易であるバードメッシュ®は,骨・軟部腫瘍切除後の再建に於いて非常に有用な人工材料である.
  • 村上 剛史, 横山 良平, 畑野 崇, 西山 憲一
    2012 年 61 巻 4 号 p. 608-611
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    関節内に発生する脂肪腫はその独特な外観からlipoma arborescensと呼ばれ,膝関節に発生することが多い.今回我々は肩関節に発生した稀な1例を経験したので報告する.患者は60歳女性.誘因なく左肩痛と腫脹が出現し,近医でのMRIで左肩に腫瘍を認めたため当科に紹介となった.左肩前方に軽度の圧痛と弾性硬の5×5cm程度の腫瘤があり,MRIでは三角筋下滑液包内にT1およびT2強調画像で境界明瞭な内部がやや不均一な高信号領域を認めた.手術時,滑液包を開くと表面が乳頭状を呈する柔らかい脂肪組織様の腫瘍があり,一塊として摘出した.術後の病理検査でも,乳頭状に発育する成熟脂肪組織から成り,内部に比較的多くの血管と線維組織を混じていた.また,一部に慢性炎症細胞の浸潤も認められた.以上の所見からsynovial lipoma(lipoma arborescens)と診断された.
  • 久永 哲, 佐藤 広生, 岡 潔, 薬師寺 俊剛, 水田 博志
    2012 年 61 巻 4 号 p. 612-617
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    Superficial acral fibromyxoma(以下,SAFM)は成人の指趾末端に発生する稀な良性軟部腫瘍である.末節骨の骨びらんを伴ったSAFMの1例を経験したので報告する.【症例】58歳,男性.10年前に右示指の陥入爪に対して近医にて加療され,その後より腫脹および疼痛が持続するため近医を受診しMRIにて腫瘍性病変を指摘され当科紹介となった.爪はスプーン状に変形し爪郭部の皮膚は角化し膨隆していた.単純X線では末節骨に骨びらんが見られ,MRIでは皮膚から骨に至る腫瘤性病変がありT1WIで等信号,T2WIで低信号と高信号の混在を呈し,Gdにて増強効果を認めた.診断確定のため摘出生検術を行った.手術所見では爪下部病変は爪床を温存して摘出し骨内病変は可及的に掻爬した.爪郭部は閉創のために角化した皮膚を一部残した.術後病理診断はSAFMであった.現在術後3年で爪郭部に一部病変が残存しているが増大傾向はない.
  • 藤枝 浩司, 鬼木 泰成, 中村 英一, 西岡 宏晃, 田中 あづさ, 水田 博志
    2012 年 61 巻 4 号 p. 618-622
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    【目的】Lateral Parameniscal Cystに続発したPericruciate Meniscal Cystの1例を経験したので報告する.【症例】24歳,女性.1年前に左膝のひっかかり感を自覚し近医を受診した.MRI上,外側半月板損傷と診断されたが,疼痛は軽度であったため経過観察されていた.1ケ月前より左膝の完全伸展が困難となり当科を受診した.左膝関節に30°の伸展制限,外側関節裂隙に圧痛を認めた.MRI像では外側半月板の水平断裂と,それに連続する嚢腫形成,前十字靱帯に接した多房性嚢胞性病変が確認された.関節鏡下に腫瘤を摘出し,外側半月板を切除した.【考察】水平断裂に伴うLateral Parameniscal cystに続発する形でPericruciate meniscal cystが発生しており,その発生には半月板損傷が関与していると考えられた.
  • 福徳 款章, 田代 泰隆, 坂本 昭夫, 松田 秀一, 岡崎 賢, 岩本 幸英
    2012 年 61 巻 4 号 p. 623-626
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    滑膜ひだ障害は若年者の膝前面痛の原因としてしばしば見られるが,今回完全型の隔壁を有する膝蓋上滑膜ひだ障害の3例を経験したので,文献的考察を加え報告する.【症例1】13歳女性.右膝蓋上部に圧痛を伴う約8cmの弾性硬腫瘤を生じ,屈曲90度以上困難.MRI上,膝関節腔との間に線維性隔壁をなす多房性嚢胞性腫瘤を認めた.【症例2】55歳女性.左膝痛,腫脹,熱感と穿刺にて血性関節液を認め,造影MRIで膝蓋骨近位に辺縁が強調される嚢胞性腫瘤あり.【症例3】37歳女性.SLE経過中,右ひざの歩行時痛が出現.腫脹と屈曲制限を認め,MRIにてびまん性に肥厚した滑膜と線維性隔壁を有する腫瘤を認めた.本疾患は通常の関節水腫や滑膜炎,タナ障害と比べ,膝蓋近位部に限局して緊満を伴う腫脹を認め,MRIで膝関節腔との間に隔壁を有するのが特徴である.今回3症例とも鏡視にて隔壁の存在を確認し,滑膜切除術による症状根治と可動域改善が得られた.
  • 富永 冬樹, 王寺 享弘, 吉本 栄治
    2012 年 61 巻 4 号 p. 627-630
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    人工膝単顆置換術(UKA)後のスポーツ活動の実状を調査した.2000年2月から2010年8月までにM/G UniあるいはZimmer Uniを使用しUKAを施行した325膝のうち,追跡調査可能であった145例167膝(男性25例29膝,女性120例138膝)を対象とした.原疾患は変形性関節症123膝,顆部骨壊死44膝であった.手術時年齢は平均75.8歳(50~92歳),経過観察期間は平均43.4カ月(12~117カ月)であった.145例中35例(24.1%)が術後にスポーツを行い,ウォーキングやグラウンドゴルフ,水泳など,いずれもlow impactなスポーツであった.スポーツ活動に影響する因子について調べたところ,JOA score(運動群平均87.6点,非運動群平均76.9点)と性別(男性48.3%,女性17.4%)に有意差を認めた.つまり,男性であり,かつ臨床成績が良好な例ほど術後のスポーツ活動を行っていた.
  • 井上 拓馬, 古市 格, 村田 雅和, 小河 賢司, 森口 昇, 田中 尚洋, 坂井 達弥
    2012 年 61 巻 4 号 p. 631-634
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    人工膝関節再置換術の際,特に関節リウマチや感染,人工関節のゆるみなどによる高度の骨欠損を伴う症例に対しては,術後関節バランス獲得が難しく通常型の人工膝関節では対応困難となる場合がある.このような症例に対し,安定性を獲得するため半拘束型を選択することがある.当院で行った人工膝関節再置換術の際に,半拘束型人工膝関節を使用した症例の短期成績を報告する.症例は2005年5月から2011年2月まで,8例9膝で,手術時平均年齢は70.3歳(52~84歳),基礎疾患は関節リウマチ6例,変形性膝関節症2例であった.再置換の原因は感染4例4膝,人工関節のゆるみ3例4膝,大腿骨顆部骨折1例1膝.全例NexGen LCCKを使用している.関節リウマチ6例7膝の術前JOAスコアは平均35.3点(10~56),術後JOAスコアは平均62.6点(56~75)であった.変形性膝関節症2例2膝の術前JOAスコアは平均32.5点(25~40),術後JOAスコアは平均52.5点(45~60)とどちらも術後改善を認めた.
  • 森口 昇, 古市 格, 村田 雅和, 小河 賢司, 井上 拓馬, 田中 尚洋, 坂井 達弥
    2012 年 61 巻 4 号 p. 635-639
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    【目的】本機種を使用したTKA術後3年以上経過症例の成績を検討すること.【対象と方法】2006年から2008年までにGenesis II(smith & nephew)で人工膝関節置換術(TKA)を施行し,3年以上経過観察可能な67関節を対象とした.疾患は変形性膝関節症(OA)46関節,関節リウマチ(RA)21関節で,手術時平均年齢は73.5歳.OAはPS 42関節,CR 4関節,RAは全例PS,膝蓋骨は4例を除き全例置換した.評価項目は日本整形外科学会膝治療成績判定基準(JOA score),Barthel Index,膝関節可動域,X線評価,合併症とした.【結果・考察】平均JOA scoreは術前53から79点,平均Barthel Indexは術前70から97点.可動域は術前14~112度から0~122度に改善した.インプラント設置角はα97度,β90度,γ3度,δ86度,平均FTAは術前181度,最終観察時174度,術後合併症はOAで創治癒遅延3関節,RAで外反進行2関節,感染2関節,創治癒遅延1関節を認めた.本機種術後成績は概ね良好だったが,短期成績結果であることから,長期経過が必要である.
  • 江頭 秀一, 高橋 知幹, 田口 学, 林田 洋一, 高井 浩和, 中根 惟武
    2012 年 61 巻 4 号 p. 640-643
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    今回我々は,posterior-stabilizer(以下,PS)型人工膝関節全置換術(以下,TKA)後にpatellar clunk syndrome(以下,PCS)を発症した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は70歳,男性.左変形性膝関節症に対するPS型TKA術後3カ月頃より,膝蓋骨異常運動・異常音・膝蓋骨内側部痛を自覚する様になった.診察上,膝蓋骨内側に結節を触知し,膝関節屈曲位から伸展していくと30度で膝蓋骨の異常運動および轢音を認め,その際に膝蓋骨周囲に疼痛を認めた.PCSと診断し,鏡視下手術を施行した.術中所見は,膝蓋骨コンポーネント上内側に線維性結節を認め,膝関節伸展に伴い結節が大腿骨コンポーネント顆間窩に嵌入し,その際に膝蓋骨の異常運動を認めた.同結節の切除を行い異常運動は消失した.術後症状は消失し,術後6カ月時点で症状の再発は認めていない.
  • 内山 迪子, 鳥越 雄史, 前田 和成, 岡野 邦彦, 山口 貴之, 泉 政寛, 横田 和明, 本川 哲, 山口 美知子
    2012 年 61 巻 4 号 p. 644-647
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    人工膝関節置換術(TKA)における疼痛管理は早期離床,術後関節可動域改善に影響を与えると考えられる.今回TKA後に持続大腿神経ブロックを行った症例について検討を加えたので報告する.(対象と方法)対象は2010年11月から2011年8月までに当院で施行したTKA 40例.全例術後に持続大腿神経ブロックを施行し同数の対照群と術後疼痛,可動域改善を比較した.除痛効果は鎮痛剤使用回数を指標とした.(結果)鎮痛剤使用はブロック群1.03回,対照群1.93回と有意差を認めた.術後7日目の屈曲角度はブロック群87.8度,対照群81.4度で有意差を認めなかったがやや良い傾向であった.(考察)TKA後の疼痛管理は硬膜外ブロックや持続フェンタニル等が使用されることが多いが深部静脈血栓症(DVT)予防目的の抗凝固剤使用時のリスクや,嘔気,嘔吐等の合併症を考えると使用しにくい.持続大腿神経ブロックは大きな合併症を認めず,TKA後の疼痛管理として有用と考えられた.
  • 亀川 史武, 尾上 英俊, 白地 仁, 櫻井 真, 岩本 良太, 田中 潤, 轟木 将也
    2012 年 61 巻 4 号 p. 648-650
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    【はじめに】軟部組織の薄い高齢者の脛骨プラトー骨折に対して,従来のplateを用いた治療では広範囲な展開が必要なため合併症のリスクが高くなる.今回我々は,高齢者の脛骨プラトー骨折に対してIlizarov創外固定器を用いて治療した2例を経験したので報告する.【症例】症例1:73歳男性.右脛骨プラトー開放骨折(schatzker type V).同日,洗浄・デブリードマンを行い,受傷後13日目にIlizarov創外固定を行った.術後6週目で部分荷重歩行を開始し,術後14週目に創外固定を抜去した.症例2:84歳男性.右脛骨プラトー骨折(schatzker type V).受傷後6日目にIlizarov創外固定を行った.術後4週目より部分荷重歩行を開始し,術後12週目に創外固定を抜去した.【結果】2例ともに大きな合併症を起こすことなく骨癒合し,独歩で退院となった.
  • 田中 寿人, 笠原 貴紀, 児玉 香奈子
    2012 年 61 巻 4 号 p. 651-654
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    【目的】汎用性を高めた分割式クロスバンドコルセットの使用成績を報告する.【対象・方法】平成22年1月から平成23年6月までの18ケ月間に当院において分割式クロスバンドコルセットで治療した脊椎圧迫骨折36例.男性9例,女性27例.平均年齢81.6歳,平均観察期間は5.8ケ月であった.分割式クロスバンドコルセットとは上肢帯を支持するクロスバンド部および後方支柱と後側方支柱の腰仙椎軟性コルセット部に分割されており,クロスバンド部の後方支柱は腰仙椎軟性コルセットの後方傍正中に通した.従来の機能は維持しながら腰仙椎軟性コルセットとしても使用可能である.
    【結果】楔状率は初診時平均76.8%が最終観察時平均65.4%であり減少率は14.8%,後彎角悪化は平均4.36°.疼痛消失は77%に認め,cleft形成は1例であった.メッシュの使用範囲が広いため適合性がよく,後彎変形や側彎が強い症例でも固定性良好であった.
  • 豊田 耕一郎, 椎木 栄一, 栗山 龍太郎, 藤澤 武慶, 瀬戸 隆之, 岡崎 朋也, 田中 浩
    2012 年 61 巻 4 号 p. 655-657
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    腰痛治療において,非ステロイド性消炎鎮痛剤の長期投与による胃腸障害が注目され,本邦でもアセトアミノフェンの投与量が4000mgまで投与可能となった.今回私達はその効果,副作用についてretrospectiveに検討した.H23.1よりアセトアミノフェン2000mg/日以上を投与した24例(男性11例,女性13例),平均年齢67歳を対象とした.投与期間は平均2.5カ月であった.NRSは投与前平均8.3が投与後2.6と改善した.有効性については有効12例,やや有効3例,無効8例であり,35%にブロックの併用や他の薬剤への変更を要した.肝機能検査の上昇は5例21%に認めたが著明上昇は1例のみで,投薬中止後速やかに改善した.アセトアミノフェンは腰痛治療における第一選択薬として有用であると考える.
  • ―危険因子としての高血圧を中心に―
    時岡 孝光, 土井 英之
    2012 年 61 巻 4 号 p. 658-662
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    当院で経験した術後脊椎硬膜外血腫は8症例で発生頻度は0.53%であった.血圧管理開始以前は6例で,術前の併存症は4例(66.7%)が高血圧,2例が肝障害の既往があり,術中出血量は平均217gであった.術後の血圧は1例を除いて160mmHgを超え,5例(83.3%)は術後高血圧状態だった.麻痺はFrankel Aが2例,Cが2例,Eが2例であった.5例が病棟で創を開放して麻痺は回復し,後日創閉鎖術を行った.塩酸ニカルジピン点滴静注による血圧管理を開始した2010年5月以後は血腫が2例に発生し,出血傾向があり,平均の術中出血量は825gであった.麻痺は2例ともFrankel Cで,保存的に治療した.ニカルジピン持続静注によって血圧管理することで術後血腫の発生を抑制できた.しかし,出血傾向,DICなどがある例の手術には課題を残す.
  • ―筋膜再建とポリグリコール酸フェルト併用―
    棈松 昌彦, 井尻 幸成, 川畑 直也, 永田 政仁, 中川路 愛弓, 田邊 史, 山元 拓哉, 石堂 康弘, 米 和徳, 小宮 節郎
    2012 年 61 巻 4 号 p. 663-664
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    【目的】硬膜内腫瘍手術などに対する硬膜縫合時には,ポリグリコール酸フェルトを用いた修復が一般的であるが,術中生じた硬膜損傷に対しては閉鎖性髄液漏を形成することもある.皮下にまで至る大きな閉鎖性髄液漏の場合や,小さくても頭痛などの原因になる場合は,再手術が必要となる.2009年以降,筋膜パッチによる硬膜再建に加えてポリグリコール酸フェルトを用いて髄液漏閉鎖術を行った自検例につき報告する.【対象と方法】術中硬膜損傷もしくは,広範囲の腫瘍摘出のため硬膜温存ができずに術後閉鎖性髄液漏を生じた5例に対し,本再建術を施行した.スパイナルドレナージは全例に併用した.【結果と考察】全例,術後髄液漏は消失した.頚髄髄内腫瘍の1例に癒着性クモ膜炎が残存した.髄液漏は,術中明らかでない場合もあり見逃すこともあるが,稀に重篤な合併症を併発することもあり,看過できない合併症である.文献的考察を加えて報告する.
  • 中沢 不二雄
    2012 年 61 巻 4 号 p. 665-668
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    小児の化膿性椎体椎間板炎はまれで,炎症反応も低値にとどまり,他の疾患と混同されることがある.今回我々は,当初腰椎椎間板ヘルニアと診断され,その後化膿性椎体椎間板炎が判明した1例を経験したので報告した.MRI検査フォローアップが診断,治療効果判定に有用であった.
  • 宮崎 幸政, 菊池 直士, 井上 三四郎, 高野 祐護, 横田 和也, 宇都宮 健, 阿久根 広宣
    2012 年 61 巻 4 号 p. 669-673
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    非常に珍しいとされる非定型抗酸菌による感染性脊椎炎を2例経験したので報告する.(症例1)49歳男性,もともと部分的IFN―γレセプター欠損症の診断をうけていた.30歳時,全身の多発骨髄炎,肋骨病的骨折の既往がありM.aviumが検出され抗結核薬での治療歴があった.今回MRIにてTh11/12レベルの椎間板炎あり,生検行うも起因菌同定できなかったが,既往から前回と同様に非定型抗酸菌による脊椎炎が疑われたため抗結核薬による治療を開始した.治療開始後3年経過し炎症は完全に鎮静化した.(症例2)90歳女性,CT,MRIで第2腰椎椎体内偽関節,大腰筋内に膿瘍があり当科紹介となる.CTガイド下生検でM.intracellulareがPCRで検出された.多剤併用療法開始し半年経過するも,MRIにて病巣範囲は拡大し症状は悪化している.(まとめ)原因不明の脊椎炎の鑑別として非定型抗酸菌を考慮する必要がある.
  • 佐田 潔, 朝長 匡, 飯岡 隆, 諸岡 聡
    2012 年 61 巻 4 号 p. 674-678
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    【目的】化膿性脊椎炎は保存療法に抵抗性の症例も少なくない.このような症例に対し当院では経皮的病巣掻爬ドレナージを行ってきたので報告する.【対象】2002年6月から2010年6月まで化膿性脊椎炎のため入院加療を行った17例中経皮的病巣掻爬ドレナージを行った10例とした.男性5名,女性5名,平均年齢は72.2歳であった.【手術法】患者を側臥位とし局所麻酔下に小皮切を加え後側方より進入し,経皮的髄核摘出器具を用いて椎間腔内の組織を掻爬し生食洗浄後ドレーンと持続洗浄用または抗菌薬局所投与用の硬膜外チューブを挿入した.【結果】平均入院期間60.9日,すべての症例で腰痛等の症状は軽快し炎症反応の陰性化を認め,良好な治療成績を得た.【考察】病巣掻爬ドレナージは低侵襲で,起炎菌の同定が可能となり,除圧による疼痛軽減など,化膿性脊椎炎に対して有効な治療法であると考えられた.
  • 生田 拓也, 坂口 満
    2012 年 61 巻 4 号 p. 679-682
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    Polished taper colorless typeのセメントステムであるエクセターを用いた人工股関節置換術の症例を調査し報告した.エクセターを用いた人工股関節置換術後1年以上経過観察できた症例212例を対象とした.術後経過観察期間は平均4年7ケ月であり,JOA scoreは術前平均49.2点から最終観察時平均81.0点に改善していた.術中セメンティングに関しての合併症は全例において認められなかった.術後合併症として前方脱臼1例,後方脱臼が2例あり,このうち前方脱臼例にソケットの再置換術を行なった.Stem loosening例を2例に認めた.Stem looseningをend pointとした生存率は99%,stem looseningおよびrevisionを end pointとした生存率は98.6%であった.エクセターstemを用いてセメントテクニックを適切に行い得れば良好な術後成績が期待できるものと考えられた.
  • 神囿 純一, 石堂 康弘, 田中 源幸, 吉井 理一郎, 栫 博則, 永野 聡, 横内 雅博, 瀬戸口 啓夫, 恒吉 康弘, 冨永 博之, ...
    2012 年 61 巻 4 号 p. 683-687
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    大腿骨高度骨欠損をともなう人工股関節ゆるみに対して,Impaction bone grafting(IBG)法で遠位髄腔を再建,腫瘍用人工股関節で再置換術を施行した症例を報告する.症例は76歳,女性.25年前に大腿骨頚部骨折に対して人工骨頭挿入術施行.術後2年でステム周囲骨折を生じ,ロングステムへの入れ換え+メネンプレートによる骨接合を施行されたが,骨折部は偽関節となり,ステムの沈下が進行,ステム先端が大腿骨外顆関節面を穿破しかけた状態で当科紹介となった.近位大腿骨は全周性高度骨欠損を生じており,腫瘍用人工股関節による再建を選択した.ステム挿入部にあたる遠位髄腔をIBG法で再建し,ステムをセメント固定した.術後2週で初回脱臼をきたし,頻回脱臼となったが,ステム補綴長を延長し,脱臼抵抗性の獲得が可能であった.本法は本症例のような大腿骨近位全周性骨欠損に対する有用な再建方法であると考えた.
  • 徳重 厚典, 今釜 崇, 目 昭仁, 関 寿大, 田口 敏彦
    2012 年 61 巻 4 号 p. 688-691
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    【目的】ゆるみのない大腿骨ステムの抜去方法と問題点について検討した.【対象】2008年4月―2011年8月まで,当院及び関連施設で大腿骨ステム抜去を要した6例6関節を対象とした.【検討項目】抜去原因,ステム固定様式,抜去方法,合併症,再置換可能症例について調査した.【結果】抜去原因はステム破損2例,感染4例,ステム固定様式は近位固定型4股,遠位固定型2股(Zweymuller型)であった.抜去方法はETO 2股,ETO非施行4股であった.ETO非施行の1股で転子部骨折を来たした.ステム破損の2例と感染の1股で再置換可能,感染の1股は再置換待機中,2股は再置換不可であった.再置換はETOの2例は遠位横止めステム,1例はS-ROMステムであった.【考察】近位固定型で,カラーのあるステムはbone ongrowth部の処置が困難なため,ETOを併用すべきである.Zweymuller型stemでは全周性にノミの挿入が可能でありETOを併用しなくても抜去できる可能性がある.
  • 城戸 聡, 中野 壯一郎, 有馬 準一, 田中 孝幸, 野村 裕, 栁澤 義和, 堀田 謙介, 幸山 敦子, 大賀 正義
    2012 年 61 巻 4 号 p. 692-696
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    人工股関節再置換術において,大腿骨に骨欠損を有する症例では再建は容易ではない.当科では,主にcementless stemと同種骨移植を用いた人工股関節再置換術を施行している.今回,1999年以降当院で大腿骨側の人工股関節再置換術を行い1年以上経過観察した症例について治療成績を検討した.対象は14例15股(男性2股,女性13股)で,手術時年齢は52~78歳(平均68.3歳),平均観察期間は5年1カ月(1年1カ月~11年)であった.術前骨欠損はPaprosky分類でGrade I,II,IIIA,IIIB,IVは各2,11,2,0,0股であった.JOA scoreは術前平均57点から最終調査時78.7点と改善を認めた.3mm以上のSubsidenceは1例,Stress shieldingは6例にみられたが,Engh分類ではunstableはなく全例でstem stabilityが得られ,重篤な合併症は認めなかった.本法の短~中期的な成績は概ね良好であった.
  • 村上 勝彦, 角南 勝利
    2012 年 61 巻 4 号 p. 697-699
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    難治性骨関節感染症の治療において抗菌縫合糸を使用し,良好な結果を得た症例を経験したので報告する.抗菌縫合糸は,難治性感染の原因菌である黄色ブドウ球菌,表皮ブドウ球菌,MRSA,MRSEなどに対する静菌作用があることから,手術的治療で用いられる.我々の経験した難治性骨関節感染症の起炎菌は表皮ブドウ球菌とMRSAであり,いずれの起炎菌の増殖抑制効果が期待できた.感染部位の十分なデブリドマンの後,縫合時に抗菌縫合糸を用いることで局所での抗菌作用が期待できたものと推察された.抗菌縫合糸は,骨関節感染症での治療に用いることで静菌作用が期待できるものと考えられた.
  • 矢澤 克典, 宮崎 信, 福田 和明, 沼田 亨祐, 井上 哲二, 中島 三郎, 山内 達朗
    2012 年 61 巻 4 号 p. 700-703
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    【症例】62歳男性【主訴】左上肢の腫脹【現病歴】ある日誘因なく左上肢の腫脹を自覚した.外来で経過観察されていたが,腫脹が増強してきたため精査目的で再度当科受診となった.【理学所見】左上肢全体に腫脹を認めた.【検査所見】D-dimerが1.7と高値を示した.静脈エコー検査で左鎖骨下静脈および内頚静脈に血栓を認めた.【治療】入院時よりヘパリンの持続点滴を開始した.入院後12日目よりワーファリン内服を開始した.【経過】ヘパリンからワーファリンの内服加療へ切り替え抗凝固療法を継続したところ,治療開始から3週間後の静脈エコー検査で血栓の縮小傾向が認められたため退院となった.その後外来で内服加療を継続し,治療開始より3ケ月で血栓の消失が確認されたため内服終了とした.【考察】鎖骨下静脈血栓症は片側上肢の腫脹を来たす疾患の鑑別として重要であり,重大な合併症を防ぐためにも早期の治療が必要である.
  • 大森 康宏, 神宮司 誠也, 河野 勤, 宮西 圭太, 平本 貴義, 糸満 盛憲
    2012 年 61 巻 4 号 p. 704-706
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    【目的】初回人工股関節全置換術(THA)後症例に対する,低分子量ヘパリン(エノキサパリン)投与の効果と副作用について後ろ向きに調査した.【対象・方法】初回THA後エノキサパリン使用した238例を対象とした.手術時平均年齢67(39~89)歳.手術翌日または2日目よりエノキサパリン2000IU,1日2回,7-10日間皮下注射.術後1週血清D-dimer値10μg/ml以上あれば,原則として造影CT検査にて精査.また,投与中止例を調査し,その原因についても調べた.【結果】症候性PE例無し.術後1週D-dimer高値にて造影CT検査施行した症例54例(22.7%).DVTが6例に認められ,内3例PE合併.PEのみ1例.計7例(全症例中2.9%)にDVTもしくはPEがあった.投与中止例40例(16%).中止理由は,出血によるもの34例(14.3%),肝機能障害によるもの5例(2.1%)であった.
  • 古江 幸博, 田村 裕昭, 永芳 郁文, 本山 達男, 川嶌 眞之, 尾川 貴洋, 樋高 由久, 川嶌 眞人
    2012 年 61 巻 4 号 p. 707-710
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    内上顆下端の骨片を有する中学生投手に対して,骨接合術を行い,骨癒合,投手復帰の良好な結果を得た.中学3年生と1年生の投手2例が,1球の投球後に肘内側痛が出現したため,投球不能となって受診した.ともにX線像で内上顆下端に骨片を認め,手術を行った.手術では両者とも,骨片間に介在組織はなく海面骨が露出しており,新鮮化など行わずに引き寄せ締結法とアンカーを用いての骨接合術を施行した.いずれも骨癒合が得られ,投手に復帰できた.
    骨端線閉鎖間近あるいは閉鎖後の中学生,特に1球の投球後に発症した例では,急性要素があり,内上顆下端の骨片の骨接合術は治療選択肢の1つと考えられた.
  • 坂井 達弥, 古市 格, 村田 雅和, 小河 賢司, 井上 拓馬, 森口 昇, 田中 尚洋
    2012 年 61 巻 4 号 p. 711-714
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    上腕骨遠位部骨折AO分類type Cに対し,手術治療を施行した9例について検討した.2007年1月から2011年4月までに観血的治療を行った9例.男性2例,女性7例,平均年齢71.0歳.骨折型はAO分類C1:1例,C2:2例,C3:6例.Tension band wiring+screw施行4例,LCP distal humerus plate施行3例,Total elbow arthroplasty(以下TEA)施行2例.X線での骨癒合期間と最終調査時臨床成績(肘関節可動域,Jupiter分類),術後合併症を検討した.平均骨癒合時期は5.0カ月(3~9カ月).最終診察時の平均肘関節可動域は屈曲122度(90~140度),伸展-30度(-40~-10度).Jupiter分類ではexcellent 1例,good 7例,fair 1例であった.合併症は,偽関節1例,MRSA感染1例,関節内展開時の尺骨骨切り部の離開・破綻が2例で,これら4例はいずれも再手術を施行し治癒した.本疾患では早期のリハビリテーションを可能とする強固な固定を得ることが重要で,そのため適切なインプラントを選択する必要がある.また年齢やADL,合併症を考慮し,TEAも適応となる場合がある.
  • 石橋 正二郎, 久我 尚之, 萩原 博嗣
    2012 年 61 巻 4 号 p. 715-718
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    高齢者の上腕骨遠位端骨折は難治性であるが,近年,専用implantの開発により治療成績は向上してきた.治療上の問題点を調べるために,当科での治療成績を後ろ向きに調べた.症例は21例,平均年齢80.4才.関節外骨折が13例,関節内単純骨折が3例,関節内粉砕骨折が5例だった.ONI plateを10例,LCPを9例に使用し,関節内粉砕骨折の1例が偽関節となった.術後humeral angle,関節面gap,肘関節可動域の平均はそれぞれ95°,1.6mm,伸展-27°屈曲115°だった.皮膚壊死,神経麻痺,異所性骨化などの術後合併症を9例に認め,関節内骨折に高率に発生した.関節外骨折,関節内単純骨折に対しては,ONI plate+CCSあるいは両側LCP固定は同等に良好な成績が得られるが,関節内粉砕骨折に対しては骨癒合は比較的良好だが,合併症が多くみられた.
  • 堤 康次郎, 安樂 喜久, 國武 克彦, 安中 正法, 束野 寛人, 田原 隼, 小山 雄二郎
    2012 年 61 巻 4 号 p. 719-723
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    【はじめに】上腕骨大結節骨折の治療では腱板の機能を改善することが重要な目的である.インピンジメント障害を合併したり,粗鬆骨で固定法に苦慮し腱板の牽引により上方転位が生じる場合がある.今回Synthes社製PHILOSプレートを用い,治療を行ったので報告する.【対象】症例は8例(男4例,女4例),受傷時年齢は平均53歳(26~74歳),受傷から手術までの期間は平均8.8日(3~20日),経過観察期間は平均7ケ月(3~18ケ月)であった.手術は肩関節前外側アプローチで行い,PHILOSプレートの近位部のみを使用した.【結果】全例骨癒合が得られ,JOA score平均96.4点,インピンジメント障害を認めた症例はなく,合併症はなかった.【考察】PHILOSプレートによる内固定は,粗鬆骨に対しても強固な初期固定性が得られる.また腱板とプレートを縫着することで整復位の保持が可能であり,大結節骨折に対して有用な方法である.
  • 崎村 幸一郎, 中原 信一, 中添 悠介, 衛藤 正雄
    2012 年 61 巻 4 号 p. 724-727
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    上腕近位端骨折に対してMIPOを行った症例の治療成績について検討した.対象は13例(男性3例,女性10例)で受傷時平均年齢は71.5歳.骨折型はAO分類A2:1例,A3:2例,B1:5例,B2:5例であった.手術は全身麻酔下にdeltoid-splitting approachで展開し,スキップさせた皮切からロッキングプレートを筋層下に滑り込ませて設置し,間接的にアライメントを整復したうえで固定した.術後の整復位は維持され,全例で良好な骨癒合が得られた.最終観察時の肩関節自動屈曲は平均135°,JOA scoreは平均85点とおおむね良好な機能回復が得られた.MIPO法はdelto-pectoral approachによるORIFに比べ骨・軟部組織への侵襲を軽減することができるが,良好な整復位の獲得と腋窩神経損傷に注意する必要がある.
  • 屋良 貴宏, 安部 幸雄, 山岡 康浩, 吉田 紘二, 中島 大介, 津江 和成
    2012 年 61 巻 4 号 p. 728-731
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    鎖骨骨折は日常多く遭遇する骨折である.骨折部位は骨幹部が最も多く,次いで遠位端,近位端骨折と報告されている.その中でも鎖骨近位端および遠位端の両端骨折は非常に稀であるが,今回我々はこの両端骨折の1例を経験したので報告する.症例は44歳男性,歩行中に転倒し左肩打撲,その後左肩痛,胸鎖関節部痛を認め当院紹介受診となった.Xp,CT画像にて左鎖骨の遠位端と近位端に骨折を認め,特に近位部は末梢骨片が前方に大きく転位していた.この症例に対し,近位端遠位端ともにSCORPION plate(アイメディック社)を用いて骨接合術をおこなった.特に近位端骨折部に対しては,鎖骨にplateをあて末梢骨片をscrewとhookで保持するようにし,良好な固定性を得ることができた.本症例のような鎖骨両端骨折に対しSCORPION plateによる観血的治療は有用な治療法の1つであると考えた.
  • 中添 悠介, 崎村 幸一郎, 川口 耕平, 中原 信一, 衛藤 正雄
    2012 年 61 巻 4 号 p. 732-736
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    今回我々は稀な鎖骨近位骨端線損傷を2例経験したので報告する.症例は15歳と16歳の男児で2例とも後方に転倒し相手に乗られ同時に鎖骨近位を前方から圧迫されて受傷,一人は初診時に他院で見逃されていた.当院初診時は胸鎖関節部の疼痛を認め,X線およびCTにて鎖骨近位の後方転位を認めた.全身麻酔下に徒手整復試みたが整復困難であり,吸収性スクリューおよび縫合法を用いての観血的整復固定術を行った.術中所見で骨端線損傷と診断した.術後は特に外固定は行わず,2例とも術後3ケ月からスポーツ復帰を許可し,再転位なく経過良好である.文献によると鎖骨近位骨端線損傷の後方転位例は胸鎖関節脱臼と鑑別を要するが,その多くは術中所見で診断が確定するとされる.胸鎖関節後方脱臼と同様に,気管や大血管などの縦隔内臓器損傷の可能性があるため,早期に確実な整復および固定が望ましいと考えられた.
  • 中原 信一, 衛藤 正雄, 中添 悠介, 﨑村 幸一郎
    2012 年 61 巻 4 号 p. 737-742
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    近年,鏡視下腱板修復術手術(以下ARCR)の普及にともない,術後肩峰下面に侵食像を生じる症例があることが明らかとなった.CTでの形態評価が一般的であるが,今回,我々は肩峰下面侵食像をMRIにて評価したので報告する.MRIでの評価はT2矢状断を用いて行った.Grade 0は侵食像なし,Grade 1は侵食部の深さが肩峰の厚さの2分の1未満のもの,Grade 2は侵食部の深さが肩峰の厚さの2分の1以上を示すものとした.対象は術後6カ月以降にMRI撮影を行ったARCR群95肩と直視下腱板修復手術群(以下ORCR群)の21肩で,術中断裂サイズ,術後腱板修復状態(菅谷分類)と侵食像との関係を調査した.ARCR群ではGrade 0が62肩,Grade 1が21肩,Grade 2が12肩で,ORCR群は全例Grade 0であった.不全断裂症例の55%に,術後腱板修状態が良好な症例の36%に肩峰下面侵食像を認めた.MRIは腱板修復状態と共に肩峰下面侵食像の評価も行うことができ,有効な方法と考えられた.
  • 喜友名 翼, 山口 浩, 新垣 寛, 知念 弘, 仲間 靖, 金城 聡, 堀切 健士, 金谷 文則
    2012 年 61 巻 4 号 p. 743-745
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    上腕骨頭置換術とLatarjet法を要した高齢者の陳旧性肩関節前方脱臼を報告する.84歳女性,主訴は右肩の運動時痛であった.11カ月前に転倒した際に右肩を強打して受傷し近医にて徒手整復・固定を受けたが通院を自己中断した.その後脱臼を繰り返し,整復位保持が困難になった.受傷後4カ月で陳旧性肩関節脱臼のために当科に紹介された.初診時,痛みのための著明な可動域制限を認め,JOAスコアは16点であった.術前X線像,CTでは大きなHill-Sachs損傷,骨性Bankart損傷,MRIでは腱板損傷を認めた.上腕骨頭骨欠損に対して人工骨頭置換術,骨性Bankart損傷に対してLatarjet法,腱板断裂に対して腱板修復術を施行した.術後7カ月経過時,疼痛は軽快し,自動可動域は屈曲80度,内旋L5,外旋30度,JOAスコアは術後63点に改善した.
  • 北原 博之, 矢部 嘉浩, 宮路 剛史, 津田 圭一, 山田 周太, 松尾 麻未
    2012 年 61 巻 4 号 p. 746-750
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    70歳男性の腱板修復術後に2回の再断裂を経験した.2回の腱板修復術を行ったが,腱板は骨と癒合しなかった.除痛と肩関節機能を改善する目的でCTA人工骨頭置換術を行った.術後は疼痛,可動域,上肢の保持力も改善し日常生活上の支障がない良い成績が得られた.高齢者では腱板の変性が原因で腱板の修復能力が低下していると考えられる.高齢者では腱板の変性が強い場合または再断裂時に人工骨頭置換術は有効な治療法の一つと考えられた.
  • 当真 孝, 山口 浩, 森山 朝裕, 池間 康成, 金谷 文則
    2012 年 61 巻 4 号 p. 751-753
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    【症例】80歳女性.4カ月前より誘因なく右肩関節痛が出現した.近医にて保存治療を受けるも,疼痛の改善を認めなかったため,当院を受診した.初診時所見において肩関節可動域は屈曲20度,外旋10度,内旋不可(健側は屈曲135度,外旋60度,内旋Th12),徒手筋力テストは疼痛のため不可能であった.単純X線像では上腕骨頭の圧潰を認めた.日本整形外科学会肩関節疾患治療判定基準(JOAスコア)は21点.感染,関節リウマチ,シャルコー関節,ステロイド使用歴,喫煙歴などがないことより,特発性上腕骨骨頭壊死と診断し,人工骨頭置換術を施行した.術後1年6カ月で肩関節可動域は屈曲120度,外旋45度,内旋L5,徒手筋力テストは[5],JOAスコアは83点に改善した.
  • 有村 仁志, 井手 淳二, 鬼木 泰成, 水田 博志
    2012 年 61 巻 4 号 p. 754-757
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    若年者に生じた肩腱板腱内断裂の1例を経験したので報告する.症例は,16歳,女子,高校2年生の柔道部員であった.主訴は,右肩痛と挙上困難であった.現病歴は,柔道の試合中に投げ技を受け外転を強制され受傷した.右肩痛が出現し挙上困難となったため,近医を受診後,当科へ紹介となった.初診時,インピンジメント徴候と上腕骨大結節部の圧痛を認め,棘上筋テストは陰性であった.MRIにて棘上筋腱内に水平な高信号域を認めたため,棘上筋腱内断裂と診断した.関節鏡視下での試験切開にて同病変の同定が可能であり,修復術を行った.術後経過は良好であり,術後4カ月の時点でMRIにて修復像を認め,柔道に復帰した.肩腱板腱内断裂の症例報告数は少なく,かつ16歳という若年者での報告はない.本症例は腱板に加齢性変化は無く,外傷性に生じたものと考えられた.
  • 小浜 博太, 山口 浩, 堀切 健士, 普天間 朝上, 金谷 文則
    2012 年 61 巻 4 号 p. 758-760
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    [症例]18歳,男性.4年前走り高飛びで着地に失敗し左肩を打撲した.近医を受診し単純X線像で異常を指摘されなかった.その後疼痛は軽減したものの,時々軽い痛みを自覚していた.3カ月前より重い物を持つ動作や寝返りなどで疼痛が出現し,徐々に増悪したため近医を再診した.単純X線像で左肩関節内に石灰化を認めたため,当科へ紹介された.初診時,左肩関節可動域は屈曲120度,内旋L5,外旋60度と制限されており,運動時の引っかかり感を伴っていた.単純X線像で左肩関節内に多数の円形石灰化像を認めた.日本整形外科学会肩関節疾患治療判定基準(JOAスコア)は62点であった.鏡視下に関節内遊離体摘出と滑膜切除術を施行.病理診断は滑膜性骨軟骨腫症であった.術後9カ月の時点で左肩関節の疼痛は消失し,関節可動域は屈曲165度,内旋Th12,外旋75度,単純X線像で遊離体の再発は認めずJOA scoreは98点に改善した.
  • 野田 大輔, 石西 貴
    2012 年 61 巻 4 号 p. 761-764
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    開放性前脛骨筋腱断裂は比較的稀な外傷と考えられる.開放性の場合は早期診断が得やすく治療は早期縫合が第一選択となる.診断が遅れ陳旧性となった場合は年齢や活動性等を考慮し保存的加療を選択する場合もあるが,足関節可動域制限や鉤爪変形,扁平足等の後遺症が生じる恐れがあるため歩行可能な場合は縫合や再建といった手術的加療を考慮する方が良いと考える.今回我々は開放性前脛骨筋腱断裂に対して手の屈筋腱縫合法であるSavege法とアキレス腱縫合に用いられるcross stitch法を応用して腱縫合術を行い,早期の関節可動域訓練,荷重歩行を許可し経過が良好であった症例を経験したので報告する.
  • 高井 浩和, 高橋 知幹, 江頭 秀一, 高井 聖子, 林田 洋一, 田口 学, 中根 惟武
    2012 年 61 巻 4 号 p. 765-768
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    高齢者の踵骨骨折に対して人工骨を移植し観血的治療を行った症例について検討した.2010年5月~2011年8月までに観血的加療を行った患者のうち70歳以上の高齢者を対象とした.手術は踵骨外側に小切開を加え骨折部を整復,骨欠損部に骨片を支えるようにブロック状人工骨を補填し鋼線で固定した.術後4週で鋼線抜去,部分荷重開始し術後8週で全荷重を許可.術前・術後・最終調査時のレントゲンにてBöhler角について評価した.症例は女性5例で平均年齢は78.2歳.骨折型はEssex-Lopresti分類で4例depression type,1例Tongue typeであった.Böhler角の平均は,術前6.2度,術直後28度,最終評価時27度.術後のBöhler角の経時的変化は少なかった(±0~-2度).人工骨を併用した踵骨の観血的治療は,骨質不良な高齢者に対し整復維持に有用であると考えた.
  • 寺原 幹雄, 菊野 竜一郎, 本木下 亮, 小宮 節郎
    2012 年 61 巻 4 号 p. 769-774
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    ポリ-L-乳酸とハイドロキシアパタイト微粒子の複合体:forged composites of unsintered hydroxyapatite/poly-L-lactide(F-u-HA/PLLA)は,生体内骨伝導性と吸収性を併せ持ち,以前の吸収性骨接合材に比べ強度に優れ,x線非透過性となり,整形外科領域で頻繁に使用されるようになった.なかでも吸収性プレート(Super-Fixsorb® MX40 mesh)は金属製骨接合材に匹敵する強度を有することが報告されている.今回中足骨骨折と足関節外果骨折に対し,吸収性プレートを用いた骨接合術を行ったので報告する.
  • 西野 雄一朗, 宮本 俊之, 福島 達也, 田口 憲士, 尾崎 誠
    2012 年 61 巻 4 号 p. 775-778
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    【はじめに】距骨周囲脱臼骨折は比較的稀な外傷であるが,その治療には難渋する.今回我々は,距骨周囲開放脱臼骨折3例を経験したので報告する.【対象・方法】対象は2009年10月から2011年8月までに当院にて治療した3例で,全例男性であった.受傷時平均年齢は40.5歳(23~62歳),平均観察期間は14.5ヵ月(6~24ヵ月)であった.受傷機転は交通外傷が2例,転落が1例であった.全例,受傷当日に観血的整復術と創外固定を行った.【結果】2例に変形性足関節症と感染を来たし,足関節の可動域制限・強直を認めたが,全例患肢温存し独歩可能で,無腐性壊死を来さずに社会復帰することができた.【まとめ】本症例の治療の際には,本人・家族に起こり得る後遺症について十分なインフォームド・コンセントを術前に行う必要があると考える.
  • 宇都宮 健, 井上 三四郎, 横田 和也, 高野 祐護, 宮崎 幸政, 菊池 直士, 阿久根 広宣
    2012 年 61 巻 4 号 p. 779-784
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    2006年9月~2011年8月に当科で治療したLisfranc関節損傷14例14足(男性10例,女性4例)について後ろ向き調査を行った.高エネルギー外傷は14例中10例,平均年齢54.1歳(11~88歳),X線分類はMyerson分類でA型4例,B2型4例,C2型1例,分類不能5例,経過観察期間は7.67か月(3~17か月)だった.術後治療評価を日本足の外科学会中足部判定基準にて行い,治療成績に影響を与える因子について統計学的に検討した.統計学的に有意差を認めたのは,高齢,治療後X線での良好な整復状況,同側下肢損傷を合併することであった.Lisfranc関節損傷の治療にあたっては合併損傷を適切に管理しつつ,できる限りの整復固定を行うことが重要と考えられた.
  • ―血中エストラジオール測定を含めて―
    赤嶺 卓哉, 吉田 剛一郎, 高田 大
    2012 年 61 巻 4 号 p. 785-787
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    体育大学女性スポーツ選手19名(平均年齢19.8±1.0歳)と一般女性10名(平均年齢22.5±2.1歳)の全員に対しDXAによる骨塩量測定を施行した.さらに骨代謝に関連する血液検査を,同意を得た上記選手19名中17名に行い,以下の結論を得た.(1)一般女性群と比較して,陸上長距離選手群では除脂肪体重が高く体脂肪率が低い傾向が,柔道群では体脂肪率が低く腰椎・脛骨骨密度が高い傾向が,それぞれ統計学的に有意に認められた.(2)水泳群では一般女性群に比し,脛骨骨密度が低い所見が有意に観察された.(3)17名の選手群の内65%が血中カルシトニンの低下を,47%がエストラジオール[E2]低下をそれぞれ示したが,選手E 2低下群に骨塩量が不足している所見は,今回の調査では認められなかった.
  • 辻 王成, 浦門 操, 小柳 英一, 篠原 道雄, 久重 雅由, 成尾 政一郎, 成尾 政圀
    2012 年 61 巻 4 号 p. 788-792
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    現在,酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ5b分画(TRACP-5b)の測定値は安定した結果が得られているが,当院で検査を開始した当初は測定値のばらつきや治療後の値に上昇がみられた.そこでTRACP-5bの信頼性を確認するため,同一の12凍結検体を当院の通常検査ルート及びメーカー直送の2ルートで測定した.結果,測定値の差は平均16.8%で1検体を除き当院検査ルートでの測定値が低かった.当院検査ルートでの測定過程を検証すると,検体は検査会社(A)で融解されTRACP-5b以外の項目を測定した後再凍結し,別の検査会社(B)でTRACP-5bが測定されていた.検査会社(A)を経由する過程を除いた結果を検証するため,同一の10凍結検体を検査会社(B)とメーカーで測定すると,測定値の施設間差は平均4.7%と有意に縮小した.この結果から検査会社(A)で室温放置や凍結融解の繰り返しで血清中のCO2の逸脱,NH3の産生によりアルカリ側へ推移し活性が低下したと考えた.TRACP-5bの検体はその特性を踏まえた取り扱いをする必要がある.
  • 見明 豪, 野口 康男, 佛坂 俊輔, 前 隆男, 佐々木 宏介, 竹内 直英, 松下 昌史, 口石 倫太朗
    2012 年 61 巻 4 号 p. 793-794
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    【背景】骨粗鬆症患者の転倒骨折が増加している.その中で,骨粗鬆症に伴う骨折(脆弱性骨折)はそれ自体で骨粗鬆症の薬物治療適応とされる.脆弱性骨折の代表である大腿骨近位部骨折患者について,骨粗鬆症の薬物治療の現状を調査した.【対象と方法】2007年4月から2011年7月まで当院にて大腿骨近位部骨折に対し,入院加療を行った560例について受傷前後での骨粗鬆症治療薬内服率を調べた.【結果】560例中,骨粗鬆症治療薬内服率は80例(14.3%)であり,反対側の近位部骨折既往の有無別では既往有り18/70例(25.7%),既往無し62/490例(12.7%)であった.また,受傷後に転院先より退院時情報の報告のあった158例中33例(20.9%)で骨粗鬆症治療薬が処方されていた.【結論】大腿骨近位部骨折における骨粗鬆症薬治療率はかなり低く,急性期病院からの骨粗鬆症対策の取り組みが重要である.
  • 瀬尾 健一, 泊 真二, 伊藤 康正, 由布 竜矢, 安原 隆寛, 桑島 海人, 貴島 賢
    2012 年 61 巻 4 号 p. 795-798
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    ビスフォスフォネート長期内服患者に発症した非定型大腿骨骨折の1例を経験したので報告する.症例は77歳,女性.アレンドロネート服用歴6年.立ち上がった際にふらつき転倒.左大腿骨骨幹部骨折を認めた.また,健側大腿骨のX線上,外側骨皮質の肥厚,膨隆を認めた.髄内釘を用いた骨接合術を施行し,術後の経過は良好だったが,術後1年10ケ月,再転倒.右大腿骨骨幹部骨折を認めた.このときまでアレンドロネート内服は継続されていた.近医で髄内釘による骨接合術を施行され,両側とも遷延癒合起こすことなく,骨癒合がえられた.近年,ビスフォスフォネート長期内服における非定型大腿骨骨折の報告が相次いでいる.ビスフォスフォネートの脆弱性骨折の予防の有用性には疑うところはないが,ビスフォスフォネート長期内服患者においては特に骨代謝に過剰な抑制をきたしてないかモニタリングを行い,非定型大腿骨骨折の発生に留意する必要がある.
  • ―ビスフォスフォネートの関与について―
    梅木 俊伸, 百田 靖
    2012 年 61 巻 4 号 p. 799-802
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    【はじめに】近年ビスフォスフォネートに関連した非定型大腿骨骨幹部骨折の症例報告が相次いでいる.しかし以前より同様の骨折は認めており,ビスフォスフォネートがどれだけこの骨折に影響を及ぼしているか不明である.今回大腿骨骨幹部骨折症例において骨折型・受傷前のビスフォスフォネートの使用について検討した.【方法】2006年1月から2011年5月までの小児を除く大腿骨骨幹部骨折20症例に対して,横・短斜骨折群とらせん・斜骨折群の2群に分け,年齢・受傷機転・受傷前のビスフォスフォネートの使用について後ろ向きに調査し比較した.【結果】骨折型は横・短斜骨折9例,らせん・斜骨折11例であった.ビスフォスフォネートの使用に関して,横・短斜骨折群では4例使用し,らせん・斜骨折群では認めず,2群間で有意差を認めた.【結論】大腿骨骨幹部における横・短斜骨折はビスフォスフォネートと関連があることが示唆された.しかし他の要因の関与も考えられる.
  • 久嶋 史枝, 池邉 顕嗣朗, 坂本 公宣
    2012 年 61 巻 4 号 p. 803-806
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    【背景】肢体不自由児の骨折は明らかな外傷がなく受傷機転が不明な場合には,その診断・治療の遅れからADL低下を来す障害を残しかねない.下肢の障害のため歩行不能な児に発生した受傷機転不明な大腿骨顆上骨折の経験から,そのリスクファクターについて検討した.【対象】2008年4月~2011年8月に当センターで経験した大腿骨顆上骨折のうち,歩行不能児に発生し受傷機転が不明な5例7肢(男児4肢,女児3肢)を対象とした.基礎疾患は脳性麻痺3肢,二分脊椎2肢,Duchenne型筋ジストロフィー2肢であった.受傷時年齢は6歳3カ月から18歳0カ月(平均10歳11カ月)であった.【結果・考察】受傷機転不明な大腿骨顆上骨折のリスクファクターは,半年以内の骨折・骨性手術歴,ADLレベルの低さ,摂食の問題と痩せ,限定的なコミュニケーション能力,膝関節の拘縮,抗痙攣剤使用などが考えられた.ハイリスクから層別化してチェックリストを作成し,今後の診療・療育に生かしたい.
  • 吉井 理一郎, 田中 源幸, 神囿 純一, 栫 博則, 永野 聡, 吉野 伸司, 石堂 康弘, 小宮 節郎
    2012 年 61 巻 4 号 p. 807-810
    発行日: 2012/09/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    AT III欠損症は常染色体優性の遺伝性疾患である.本症では血栓症を発症する危険率は健常人の10~20倍と高く,通常では血栓症に至らないような外傷,手術,妊娠など軽微な誘因によって引き起こされる.症例は,Kniest症候群にAT III欠損症を合併した7歳の女児で,尖足変形に対して矯正手術を施行した.周術期に血栓予防をすることとなった.術直前はAT III活性80%以上を目標とし,術中はヘパリンを投与した.術後はAT III製剤・ヘパリン投与を投与し,術後5週まで連日のAT III測定を行い,測定値に応じて補充量を調節した.5週後,D-dimer陰性・下肢エコーで血栓を認めなかった.今回の症例でAT III製剤の補充と1週間のヘパリンの持続による抗凝固療法によりAT III欠損症患児の術後5週に及ぶ下肢固定に対しても血栓を生じなかった.
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