整形外科と災害外科
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63 巻, 4 号
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  • 中島 大介, 村松 慶一, 橋本 貴弘, 富永 康弘, 小笠 博義, 田口 敏彦
    2014 年 63 巻 4 号 p. 673-675
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【目的】膝前面悪性軟部腫瘍に対する広範切除術後の膝伸展機構の再建法は幾つかの報告はあるが成績良好とは言えず,処理腱の組織学的評価も不明である.今回処理膝蓋骨―膝蓋靭帯を用いて再建術を行った症例を検討した.【症例】73歳,男性.右大腿から膝前面の巨大な粘液型MFHに対して広範切除術を施行し,膝蓋骨―膝蓋靭帯を液体窒素処理後膝伸展機構の再建に用い前面の組織欠損部に広背筋皮弁を行った.5年後に再発を認め広範切除術を行った際に膝蓋腱を生検し組織学的評価を行った.【結果】右膝関節は屈曲90度,伸展-5度,膝関節伸展MMT:Nである.膝蓋骨は骨萎縮なくalignmentは保たれていた.膝蓋腱は組織学的にviableで瘢痕は無かった.【考察】液体窒素処理を施行した膝蓋骨―膝蓋靭帯を用いた膝伸展機構再建は術前と同等の膝伸展力が温存され,皮弁を組み合わせれば有用な選択肢である.処理腱は周囲組織の環境がよければ力学的強度が維持できる.
  • 米満 龍史, 佐藤 広生, 末吉 貴直, 岡 潔, 水田 博志
    2014 年 63 巻 4 号 p. 676-681
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    膝周囲発生の稀なsoft tissue chondromaの1例を経験したので報告する.【症例】61歳男性.平成24年8月より右膝の腫瘤を自覚し増大傾向を認めたため,近医を受診した,平成25年1月にガングリオンの診断のもと摘出術を施行されたが,術中にガングリオンではないと判明し表層のみの生検に留め,当科紹介受診となった.右膝外側に径6×5cmの弾性硬,可動性不良な腫瘤を触知し,XpおよびCTでは石灰化があり,MRIでは右膝外側に腫瘤性病変を認め,T1WIで等信号,T2WIで高信号,Gdにて辺縁に増強効果,STIRで腫瘍内に著明な高信号を認めた.深部からの再生検を行い,悪性でないことを確認し,摘出術を施行した.腫瘍は膝関節外に存在し,術後病理はsoft tissue chondromaの診断であった.【考察】soft tissue chondromaは主に手や足に好発する比較的稀な良性軟部腫瘍で,膝周囲発生は稀である.再発率が比較的高く,被膜および癒着組織の合併切除が必要であると考えられた.
  • 富田 雅人, 宮田 倫明, 馬場 秀夫, 米倉 暁彦, 小関 弘展, 小林 恭介, 白石 和輝, 尾﨑 誠
    2014 年 63 巻 4 号 p. 682-684
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    社会の高齢化に伴いがん患者数が増加し,重複悪性腫瘍の患者にときに遭遇することがある.今回,当科において診断・治療を行った重複悪性腫瘍患者について検討を行った.2008年1月から2012年12月に当科にて生検または手術を行い病理学的に悪性と診断された症例数は253検体,191例(男性106例,女性85例,平均年齢59歳)であった.これらの症例のうち,重複悪性腫瘍は31例であった.その内訳は,男性15例,女性16例,平均年齢66歳であった.悪性腫瘍の種類別にみると,癌腫の重複(CC群)4例.肉腫と癌腫の重複(SC群)24例,肉腫の重複(SS群)3例であった.SS群は全例放射線治療後の患者であった.SC群では,肉腫は脂肪肉腫が13例と最も多く,いわゆるMFH 5例,平滑筋肉腫,軟骨肉腫2例,骨肉腫,悪性末梢神経鞘腫1例であった.癌は大腸癌4例,乳癌,肺癌,胃癌3例,子宮体癌,子宮頚癌,卵巣癌,咽頭癌,甲状腺癌2例,胆嚢癌,肝癌1例であった(癌の重複1例有り).SC群において脂肪肉腫が最も多く一般的な腫瘍発生頻度と合致していたが,癌は必ずしも一般的な発生頻度と合致していないと思われた.
  • 宮田 倫明, 富田 雅人, 松尾 洋昭, 近藤 超子, 小林 恭介, 白石 和輝, 馬場 秀夫, 林 徳真吉, 木下 直江, 尾﨑 誠
    2014 年 63 巻 4 号 p. 685-687
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【目的】SFTの予後を調査し,予後に影響を与える因子について検討すること.【対象と方法】1995~2011年までに当科で治療を行った8症例のうち経過観察し得た7例(男性2例,女性5例)を対象とした.原発巣は頭部1例,頸部2例,肘1例,臀部1例,大腿2例だった.これら7症例の初回手術の内容,転移・局所再発の有無,腫瘍学的転機を調べた.また組織学的にはEnglandの基準による悪性度評価および上皮系マーカーを含めた免疫染色を行った.【結果】7例中4例に転移を認め悪性転機をたどった.初回手術で完全切除できた症例に再発・転移をみとめなかった.腫瘍学的転機はAWD 2例,NED 1例,CDF 1例,DOD 1例,DOOD 2例だった.組織学的にEnglandの悪性基準を満たしていたのは4例だったが,臨床的な予後とは関連していなかった.【考察】SFTの多くは胸膜に発生し予後良好と言われているが,四肢発生のSFTは悪性症例も少なくない.予後を左右する因子としては初回手術が重要であると考えた.
  • 江﨑 佑平, 宮﨑 剛, 庄田 孝則, 志波 直人
    2014 年 63 巻 4 号 p. 688-691
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【症例1】54歳,男性.3年前から左第5趾の爪変形,腫脹,疼痛,排膿を自覚.近医皮膚科にて加療するも治癒遷延.当科受診し,単純X線にて末節骨骨透亮像を認め,骨髄炎と考え病巣掻爬術施行.病理診断にて有棘細胞癌と診断,皮膚科で全身精査の後,当科にて左第5趾切断術施行.【症例2】74歳,女性.4年前に右小指の爪の裂離を認め,自己にて創処置施行も治癒不良にて近医受診.近医にて局麻下に抜爪術施行.術後,爪の生着認めず,疼痛出現,当院形成外科受診.再度,抜爪術施行も爪下皮膚潰瘍は治癒遅延.同科にて潰瘍に対して切除縫縮術施行.病理診断にて有棘細胞癌と診断.皮膚科精査後,当科にて右小指切断術施行.【考察】爪下の有棘細胞癌は皮膚科領域でも稀とされており,診断が遅れることも多い.爪囲炎,骨髄炎の診断にて整形外科を受診する可能性もあり,難治性の病変に対しては有棘細胞癌を鑑別に挙げる必要があると考えられた.
  • 清田 克彦, 中根 惟武, 久保田 晃志, 高橋 知幹, 林田 洋一, 高井 聖子, 高井 浩和, 樋口 健吾
    2014 年 63 巻 4 号 p. 692-695
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    初回THA術後にセメントレスステムがステムの中央部で折損した症例を経験したので報告する.症例は45歳女性,職業は農業.24年前,左股関節臼蓋形成不全に対し転子間弯曲内反骨切り術が施行されていた.2007年12月Depuy社AML®を用いてTHAを施行した.以後,時々左大腿部痛を認めたが問題なく経過していた.2013年3月2mの高さより転落し歩行困難となり当院を受診した.X線上ステム中央部での折損を認め,再置換術を施行した.手術はExtended trochanteric osteotomyを使用しAML®ステムを抜去後Depuy社Solution®ステムに置換した.折損遠位には骨のingrowthを認めたが近位には認めなかった.走査電子顕微鏡では金属疲労の像がみられた.近位に骨がingrowthしなかったため慢性的なストレスが折損部位に集中し金属疲労を生じ最終的に強い力が加わり折損したと思われた.
  • 土井口 祐一, 石井 孝子, 中島 武馬, 宮路 剛史, 本田 祐造, 山田 周太, 竹内 潤, 北原 博之, 前田 和成, 小西 宏昭
    2014 年 63 巻 4 号 p. 696-699
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    チェンジャブルネックを用いたTHAでは術中にインピンジメントを回避できるため,脱臼を予防できる可能性がある.今回このシステムを用いたTHAの術後脱臼について調査したので報告する.2006年8月から2013年4月までの間にProfemurシリーズを用いてTHAを行い術後6ヵ月以上観察できた327関節を対象とした.手術アプローチは後方が312関節,側方が15関節,骨頭径は28mmが169関節,32mm以上が158関節であった.骨頭径別の脱臼率や,脱臼例の詳細などを調査した.脱臼が6関節(1.83%)に発生していた.28mm径での脱臼率は3.55%であった.28mm群と32mm以上群に分けて脱臼率を比較すると,32mm以上群で有意に脱臼が少なかった(P<0.05).脱臼例は全例後方アプローチで28mm骨頭径であり,その多くが脱臼のリスクファクターを持っていた.結果としては後方アプローチでのTHAにおいて,チェンジャブルネックの使用と28mm骨頭径では術後脱臼を減らすことはできなかったが,32mm以上の骨頭の使用やチェンジャブルネックに対する習熟でさらに脱臼を予防できると思われた.
  • 梅原 渓太郎, 今釜 崇, 徳重 厚典, 田口 敏彦
    2014 年 63 巻 4 号 p. 700-702
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    人工股関節全置換術(THA)後の脱臼は合併症として最も注意すべきものの1つである.今回当院で人工股関節後脱臼のため整復を行った患者についてretrospectiveに調査し,特に脱臼肢位に着目し検討を行った.2000年から2013年まで初回THA後の後方脱臼で整復を行った11例11股を対象とした.男性3股,女性8股で平均年齢は63歳であった.初回脱臼までの期間は半年未満が6股と最多であり,経過とともに減少傾向にあった.Lewinnek safe zoneによるインプラントのアライメント評価では5股で逸脱しており,そのすべてがカップのanteversionの過大であった.脱臼肢位は股関節の屈曲内転内旋が3股であったのに対し,体幹の前屈によるものが8股と多かった.高齢者や変形性股関節症の患者では優位に腰椎の可動域が低下しており,特に座位での体幹前屈時には骨盤が前傾することで股関節が過屈曲し後方脱臼を引き起こす可能性が示唆された.術後の脱臼予防において,体幹の前屈位に注意するよう強調する必要があると考える.
  • 樋口 貴之, 仲宗根 哲, 山内 貴敬, 堀苑 英寛, 新城 宏隆, 神谷 武志, 新垣 和伸, 親川 知, 大湾 一郎, 金谷 文則
    2014 年 63 巻 4 号 p. 703-707
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【目的】当院における人工股関節全置換術・人工骨頭置換術後に生じたステム周囲骨折の治療成績を検討した.【対象・方法】対象は,7例7股で男性2例,女性5例,平均年齢66歳,平均観察期間は60カ月であった.Vancouver分類Type Aは1例でケーブルグリップを使用し,Type B1は3例でワイヤリングのみが1例,Mennen plate®併用が1例,Locking compression plate(以下LCP)併用を1例に行った.Type B2の2例はステムの再置換を行い,Type Cの1例はLCPとワイヤリングを用いて骨接合を行った.【結果】7例中6例は平均6カ月(3~12カ月)で骨癒合を得た.Mennen plate®使用の1例で偽関節となり,再骨接合術後に感染し,経過中に死亡した.再置換を行った1例で術後感染し,ステム抜去し経過観察中である.残りの5例は受傷前と同レベルの日常生活へ復帰した.【考察】Vancouver分類は治療方針決定に有用であった.LCPはステム周囲骨折に対して強固な内固定として有用と思われた.
  • 松下 任彦, 橋本 伸朗, 福元 哲也, 前田 智, 中馬 東彦, 高田 興志, 楊 拓也
    2014 年 63 巻 4 号 p. 708-713
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    人工骨頭置換術および人工股関節置換術後の大腿骨ステム周辺骨折に関し,発生までの期間と発生頻度をセメントステムとセメントレスステムで比較検討した.発生までの期間は,2007年6月から2014年2月に当科で治療を行った同骨折27例を対象とし,発症頻度については,2007年4月から2014年3月に当科で施行した両手術の合計960例を対象とした.骨折発生までの期間は,セメントステムが平均7年9か月,セメントレスステムが平均5年2か月であった.発生頻度は,セメントステムが1.1%,セメントレスステムが1.9%であった.セメントレスステムでは術後早期での骨折が多く,発生頻度も高い傾向にあった.また,ステムレベルでの骨折が多いことから,本骨折の間接的原因にはステムが周囲の皮質骨に及ぼしている応力も考えられ,症例に応じた両ステムの使い分けが望ましいと考えられた.
  • 山内 貴敬, 仲宗根 哲, 堀苑 英寛, 金谷 文則
    2014 年 63 巻 4 号 p. 714-716
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【はじめに】当院で行ったdirect anterior approachによるTHAの手術成績を検討した.【対象と方法】対象は43例47股,男性7例7股,女性36例40股,手術時平均年齢は59.5歳,平均経過観察期間は16.3か月であった.これらの症例について術前後のJOA score,術後合併症を検討し,ソケットガイド使用の有無によるカップ設置角度とステムの設置について評価した.【結果】JOA scoreは術前平均54.6点から術後平均90.8点へ改善した.術後合併症は深部感染を1例に認め,洗浄にてインプラントを温存し得た.大腿神経麻痺を2例に認めたが自然軽快した.カップ外方開角は平均40.3°,前方開角は平均15.1°であった.ステム設置では屈曲位設置を27.7%に認めた.ソケットガイド使用により,カップ設置は有意に良好となった.【結論】DAAによるTHAの短期成績は良好であった.
  • 坂本 智則, 加来 信広, 原 克利, 田畑 知法, 津村 弘
    2014 年 63 巻 4 号 p. 717-721
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【目的】当科におけるセメントレスカップを用いた寛骨臼側の再置換術の成績について調査を行ったので報告する.【方法】2005年2月から2013年4月までの当科で同一術者による再置換を行い,4ヶ月以上経過観察可能であった39症例42関節を対象とした.女性28症例,男性11症例で手術時平均年齢67.1歳,平均観察期間3年4ヶ月であった.従来型のメタルカップ6関節,HAをコートしたカップ29関節,cancellous metal構造を持つカップ7関節で,寛骨臼のみの再置換は27関節であった.単純X線像での評価においては,術直後のカップCE角やgap形成,術後1・2・3・6・12ヶ月のカップ中心の移動,術後1年までのgap fillingや移植骨の変化を評価した.【結果と考察】JOAスコアは術前50点,最終観察時89点であった.再々置換を行った症例はなく,3群間でX線評価における有意差はなかった.
  • 河野 俊介, 北島 将, 園畑 素樹, 馬渡 正明
    2014 年 63 巻 4 号 p. 722-723
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【要約】初回人工股関節全置換術(THA)を行った6123股を対象とし,術後腓骨神経麻痺合併症例に関して,現疾患,治療経過を検討した.6123股中14股に腓骨神経麻痺を合併しており,現疾患は,亜脱臼性股関節症6股,高位脱臼性股関節症3股,一次性股関節症1股,大腿骨頭壊死症2股,外傷性股関節症1股,骨腫瘍術後1股であった.高位脱臼性股関節症の3股が大腿骨短縮骨切りを併用しておらず,過牽引による発生が疑われた.最終調査時8股に回復を認めた.回復までは1か月から3年を要していた.当科のTHA術後腓骨神経麻痺の発生率は0.23%であった.明らかな発生要因が不明な症例が大多数であったが,当科では手術時,後側方アプローチを用いており手術時の坐骨神経圧迫,術後脊椎麻酔回復前の腓骨頭部圧迫などが一因と考えられた.一度,腓骨神経麻痺が発生すると,回復までに長期間を要し,下垂足,異常知覚のため下肢機能回復が遅延する.
  • 北島 将, 河野 俊介, 園畑 素樹, 馬渡 正明
    2014 年 63 巻 4 号 p. 724-726
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    人工股関節置換術のインプラント設置時に術者は様々な指標を持って行っている.今回は,カップを設置した後のカップ周囲の骨の形態計測が,臼蓋設置の指標となるかどうかを調査した.2012年12月から2013年7月までに人工股関節置換術を行った23例を対象とした.セメントレスカップ設置後に,カップ周囲を確認し,骨とカップの縁との位置関係を45度刻みで8か所計測した.術後単純X線でカップの設置角度を計測し,骨とカップの縁との位置関係の関連を調査した.右側を基準として,7時半,9時,1時半の部位で前方開角と有意な相関を認めた.また,10時半の方向で外方開角との関連を認めた.臼蓋形態を考慮する必要があるが,設置後の骨の形態計測は人工股関節の臼蓋設置の指標となりうる.
  • 仲宗根 哲, 山内 貴敬, 堀苑 英寛, 金谷 文則, 大湾 一郎
    2014 年 63 巻 4 号 p. 727-731
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【目的】臼蓋形成不全股に対する寛骨臼回転骨切り術(CPO)において,CPO前後の骨性被覆を計測し,術前の前方被覆の程度とCPO後の骨性被覆の変化について検討した.【対象と方法】CPOを行った22例23股,全例女性,平均45歳(22~54)を対象とした.3次元解析ソフトウェアを用いて骨頭中心を通る臼蓋の15°毎の放射状断面から臼蓋骨頭被覆角(被覆角)を計測した.臼蓋前方の被覆角が45°未満群と45°以上群に分け,CPO後の被覆角の変化について検討した.【結果】45°未満群は,45°以上群に比べてCPO後の臼蓋前方から上方までの被覆角は,有意に小さかった.CPO前後の被覆角の変化に有意差はなかった.また,両群とも臼蓋の前方側に変化量が大きかった.【考察】前方被覆が小さい症例においても,大きい症例と比較して回転骨片の移動量に差がなく,また,いずれも骨片は前外方へ回転していた.臼蓋形成不全の程度を3次元的に評価し,術前計画を立てる必要があると思われた.
  • ―関節裂隙についての検討―
    吉崎 真吾, 島内 卓, 本松 伸一, 綾 宣恵, 中河原 修, 江口 正雄, 桑畑 睦郎, 井上 三四郎
    2014 年 63 巻 4 号 p. 732-736
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【目的】股関節滑膜性骨軟骨腫症を4例(4股)経験したので文献的考察を加え報告する.【症例】1)46歳男性.2年前より右股痛.単純X線で診断.2)65歳男性.2年前より右股痛.単純X線で診断.3)54歳男性.7年前に他院で内視鏡術後,右股痛の再発あり.単純CTで診断.4)58歳女性.10年前より左股痛.単純X線で診断.【結果】Retrospectiveに単純X線像を検討すると,4例中3例で術前に関節裂隙の開大を認めた.特徴として荷重部よりも上方と内側の関節裂隙の開大を認めた.これはYoonらの報告と一致する.【結論】股関節滑膜性骨軟骨腫症は,遊離体の石灰化・骨化を伴わないものも多数認めるため,単純X線像のみでは骨軟骨腫症の診断が難しい場合もある.股関節痛を訴える患者の単純X線像にて関節裂隙の開大を認めた際には,当疾患を鑑別に挙げることが重要である.
  • ―症例報告―
    伊集院 俊郎, 石堂 康弘, 八尋 雄平, 廣津 匡隆, 栫 博則, 瀬戸口 啓夫, 中條 正典, 福倉 良彦, 小宮 節郎
    2014 年 63 巻 4 号 p. 737-740
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    梨状筋症候群は,明らかな画像所見を伴わないことが多く,診断に苦慮することが多い.腰椎椎間板ヘルニアや神経症状を呈する骨盤内腫瘍など,他の疾患の除外も必要である.我々は,坐骨神経の解剖学的破格が原因であった2例を経験した.一例は,術前に解剖学的破格が推定できなかったが,もう一例は,術前にMRI検査でT2強調画像と拡散強調画像の融合画像により,術前に梨状筋・坐骨神経ともに2分しているBeaton分類B型の解剖学的破格を診断することが可能であった.梨状筋症候群は,坐骨神経の破格を伴うことも少なくなく,診断には他の疾患の除外診断とともに,特徴的な理学所見の有無,慎重な画像診断による解剖学的破格の有無を予測することが診断の一助となる.
  • 細山 嗣晃, 吉岩 豊三, 宮崎 正志, 石原 俊信, 津村 弘
    2014 年 63 巻 4 号 p. 741-745
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,頸椎から腰椎に渡り広範囲に罹患した多発性結核性脊椎炎の1症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.症例は,29歳,男性.半年前より腰痛を自覚するようになり,その後増悪したため精査加療目的にて入院となった.右L4神経根領域の感覚障害を認め,強い腰痛のため歩行困難を呈していた.単純X線像およびCTにてC2,C7,T10,T11,L3,L4椎体に骨破壊像を認め,椎体終板は一部不整であった.
    MRIにてT11,L3,L4椎体はリング状造影効果を呈し,膿瘍が疑われた.生検より結核性脊椎炎の診断にて,インストゥルメンテーションを用いた後方固定術(T8-Iliac)を施行し,L3,L4の病巣掻破,前方固定術(L2-L5)を二期的に行った.本症例では,多発性結核性脊椎炎の診断において全脊椎のCTが有用であった.また,椎体の破壊の進行度によっていかなる治療を行うか十分な検討が必要であった.
  • 冨田 伸次郎, 貝田 英二, 宮崎 洋一, 河合 尚志, 中村 隆幸, 鳥越 雄史, 坂上 秀和, 菅 政和, 浦川 伸弘
    2014 年 63 巻 4 号 p. 746-748
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    胸椎化膿性脊椎炎は手術的にアプローチの難しい疾患である.今回我々は,局麻下経皮経椎弓根的ドレナージ療法が奏功した1症例を経験したので報告する.症例は54歳,男性.アルコール性肝硬変,食道静脈瘤,糖尿病の既往がある.現病歴であるが,2012年12月初めに腰背部痛にて発症し,徐々に激痛となり精査加療の為1月下旬入院となる.精査にて第10/11胸椎の化膿性脊椎炎の診断にいたる.入院当初抗生剤治療を行ったが軽快せず,同年2月手術施行.局麻下左T11椎弓根経由でT10/11病巣部に到達し,手術終了した.培養所見は陰性であったが,臨床的に化膿性脊椎炎に矛盾しない所見であった.術後1ヶ月程度で疼痛消失し,現在外固定なく日常生活に支障ない状態である.考察結語:本症例のごとく骨破壊があっても脊椎alignmentが比較的保持されている場合の1治療法として考えられた.
  • 田邊 史, 井尻 幸成, 山元 拓哉, 永吉 隆作, あべ松 昌彦, 冨永 博之, 伊集院 俊郎, 富村 奈津子, 斎藤 嘉信, 米 和徳, ...
    2014 年 63 巻 4 号 p. 749-752
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    感染性脊椎炎に対する観血的治療法として,近年instrument併用の手術が広まっている.われわれは,2010年以降早期離床を目的に,罹患椎体を避けてその上下椎体に経皮的椎弓根スクリューを用いた後方手術後,前方掻爬腸骨移植術を施行してきた.今回,同法を施行した症例について調査した.対象は6例(男3例,女3例),手術時平均年齢70歳,平均経過観察期間10カ月.高位はT12/L1が1例,L1/2が1例,L2/3が3例,L3/4が2例,L4/5が1例(罹患病変2椎間が2例)で,平均手術時間は後方84分,前方211分,平均術中出血量は後方18g,前方372gであった.instrument failureを1例に認めたが,最終調査時全例に感染の鎮静化が得られた.経皮的椎弓根スクリューは感染性脊椎炎に対する後方instrumentとして有用と考えられた.
  • 豊田 耕一郎
    2014 年 63 巻 4 号 p. 753-755
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【目的】急性腰痛症に対してマッケンジー法による早期運動療法介入の治療成績について報告する.【方法】急性腰痛症69例(男性30,女性39,平均年齢45才)を対象とした.平均罹病期間は4.1日,運動方向は全例伸展であった.腰痛の原因,治療期間,治療回数,腰痛のVAS,JOABPEQについて検討した.NSAIDSは併用とした.【結果】腰痛の特徴は屈曲型腰痛,繰り返す例が多かった.平均治療期間は22日で,平均治療回数は2.5回であった.腰痛のVASの変化量は62,マッケンジー法施行群と非施行群とのJOABPEQの有効率の比較では87%と56%で有意差を認め,マッケンジー法初日介入群と非介入群の比較では治療期間が9.9日,30.7日で有意に短く,JOABPEQの有効率において心理的障害は46%と22%と有意差を認めた.【結論】急性腰痛症に対するマッケンジー法による早期介入は有用であると考える.
  • 小宮山 敬祐, 塚本 伸章, 前 隆男, 川口 謙一, 佛坂 俊輔, 佐々木 宏介, 竹内 直英, 加藤 剛, 松永 大樹
    2014 年 63 巻 4 号 p. 756-759
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    Morel-Lavallee lesion(MLL)は,骨盤周囲の外傷に伴って,剪断力によって生じるデグロービング損傷で頻度は稀である.我々は多発外傷に合併したMLLの1例を経験したので報告する.症例は58歳女性.交通外傷で救急外来に搬送され,外傷初期治療を施行した.入院時より右大腿周囲に広範な皮下血腫があり,同部の挫創から浸出液が持続していた.入院17日目に同部の発赤を認め,血液検査上,炎症反応が上昇し,画像上は被包化された液貯留が散在し感染が疑われた.同日に切開排膿,死腔閉鎖術を施行し,培養結果に基づき,抗生剤を投与した.以後炎症反応は改善し,創癒合も良好であった.再発の所見や感染徴候もなく外来経過観察している.MLLに対する様々な治療法が報告されてきたが,標準的治療法はない.保存加療より外科的介入が有効であるとの報告もあり,MLLを早期に診断し早期外科的治療が重要である.
  • 伊藤 弘雅, 村上 秀孝, 宮崎 剛, 庄田 孝則, 江崎 佑平, 志波 直人
    2014 年 63 巻 4 号 p. 760-762
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    はじめに:筋内及び筋間血腫は放置すると観血的治療が必要となることがある.今回,我々は殿筋内血腫2例に対しウロキナーゼ注入療法を行い良好な成績を得たので報告する.症例1:17歳男子 投手.投球フォームを変えた後より左殿部痛が出現.初診時,左殿部に弾性軟の腫瘤を触知,左股関節ROM制限を認めた.MRIにて中殿筋内血腫と診断しウロキナーゼ注入療法を施行.血腫消失し3週間後よりゲームへ復帰した.症例2:13歳男子 サッカー部 キーパー.試合後より右殿部腫脹出現.右殿部に圧痛・股関節ROM制限を認めた.MRIにて大殿筋内血腫と診断しウロキナーゼ注入療法を施行.2週後にスポーツ復帰した.考察:2002年立石らは筋内血腫が穿刺吸引困難な場合,観血的治療を考慮する前に簡便で低侵襲であるウリキナーゼ注入療法を試みる価値があると報告している.今回,当院で本療法を行った2例で早期にスポーツ復帰が可能であり有効な治療法と考えられた.
  • 田中 一広, 前原 博樹, 當銘 保則, 金谷 文則
    2014 年 63 巻 4 号 p. 763-767
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    近年,その優れた徐法特性から人工骨ペースト(α型リン酸三カルシウム(バイオペックス®-Rアドバンス)が新たなdrug delivery systemとして注目されている.17年間継続した難治性皮膚潰瘍から波及した大腿骨骨髄炎に対して抗生剤入り人工骨ペーストを用いて治療した1症例を報告する.【症例】75才男性【主訴】右大腿部痛,皮膚潰瘍.【現病歴】17年前フルニエ壊疽を加療後より右大腿後面部に難治性潰瘍が発生し他院形成外科にて複数回のデブリドマン,分層植皮術を施行されたが治癒しなかった.その後,画像所見にて感染の大腿骨骨髄への波及と膿瘍形成が認められたため当科を紹介された.【経過】全身麻酔下にデブリドマン,洗浄後,欠損した大腿骨部に2.5%ジベカシンを混入した人工骨ペーストを充填した.術後4週にて創部は閉鎖,術後8週にてCRPは陰性化し現在術後5ヵ月にて再発を認めない.
  • 堤 康次郎, 安樂 喜久, 西里 徳重, 安中 正法, 田原 隼, 伊藤 仁, 興梠 航
    2014 年 63 巻 4 号 p. 768-772
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【目的】我々は,大腿骨遠位部骨折に対し外側ロッキングプレートを使用してきたが,粉砕骨折において骨癒合が遷延する症例を経験した.高度な粉砕骨折に対しダブルロッキングプレートを用いたので報告する.【対象と方法】対象は6例(男性1例,女性5例),平均年齢80歳である.骨折型はA3:1例,C2:4例,C3:1例で,開放骨折を2例に認めた.検討項目はX線学的評価(骨癒合の有無,femoral angle),臨床評価(全荷重時期,膝関節可動域,Workの項目を除くNeerの評価基準,合併症の有無)とした.【結果】全例に骨癒合が得られ,femoral angleは80~84°とアライメント良好であった.Neerの評価基準は平均72点であり,Excellent1例,Satisfactory 5例であった.【考察】粗鬆骨においてロッキングプレートは有用であり,通常は外側からのプレートのみで固定性が得られることが多いが,内側骨皮質の欠損を伴う粉砕骨折においてはダブルロッキングプレートも考慮すべきである.
  • 田浦 智之, 朝長 匡, 飯岡 隆, 池田 倫太郎, 入江 準二, 木下 直江
    2014 年 63 巻 4 号 p. 773-778
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    骨代謝回転過剰抑制が要因と思われる大腿骨転子下骨折の1例を経験したので報告する.症例は48歳,女性.屋外で突如右大腿部痛出現.体動困難となったため,当院救急搬送.X線上,右大腿骨転子下骨折を認めた.既往歴として17年前より全身性エリテマトーデスに対してステロイド内服しており,ビスフォスフォネート製剤内服歴は3年間であった.2週間前より右大腿部痛を自覚していた.骨折に対しては髄内釘による固定術を行った.ところが,術後仮骨形成不良であったため,骨代謝回転過剰抑制による非定型骨折が疑われた.ビスフォスフォネート製剤内服中止し,テリパラチド開始.しかし,今度は健側である左大腿部痛出現.X線上,左大腿骨転子下不全骨折を認めた.治療法に関して患者とのインフォームド・コンセントの結果,健側に対しては保存的療法,手術側に対しては遠位横止めスクリュー挿入術を行った.その後,両側とも仮骨形成を認めていたが,再度,手術側である右大腿部痛出現.X線上,髄内釘近位部の折損及び骨折部の再転位を認めた.そのため髄内釘による再固定術を行い,腸骨から骨移植術も併用.再々手術後9ヵ月現在,保存的療法を行った左側に関しては比較的経過良好であるが,手術的療法を行った右側は骨癒合遅延傾向であり,今後も引き続き厳重な経過観察が必要である.
  • 佐田 潔, 宮本 俊之, 千葉 恒, 諸岡 聡, 白石 公太郎
    2014 年 63 巻 4 号 p. 779-783
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【目的】両大腿骨非定型骨折後に両大腿骨疲労骨折を生じた1例を経験したので報告する.【症例】71歳女性,ビスフォスフォネートの内服歴あり.特に誘因なく左大腿痛が出現しX線で大腿骨転子下不全骨折を認め前医で保存治療を行った.1年後右大腿痛出現しMRIで転子部から小転子下に骨折による異常信号を認め手術加療を行った.左大腿骨転子下骨折の保存治療から2年後,左大腿痛再燃しMRIで近位骨幹部に輝度変化を認め再度保存治療を行ったが,2か月後歩行中突然左大腿に激痛が生じX線で左大腿骨骨幹部骨折を認め手術加療を施行.また右大腿骨手術から5年後インプラント遠位端で不全骨折を認め当科紹介となり,long femoral nailを用いて手術を行った.【考察】本症例では非定型骨折後に大腿骨の外弯が進み疲労骨折が生じたと考えられ,ビスフォスフォネートの中止とlong femoral nailを用いた手術が必要であると考えられた.
  • 馬場 覚, 小宮 紀宏, 池内 寛子, 白木 誠, 北村 貴弘, 仙波 英之, 生田 光, 志田原 哲
    2014 年 63 巻 4 号 p. 784-787
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    脛骨骨幹部遠位1/3骨折に同レベルでの腓骨骨折を合併した症例に対し脛骨髄内釘を用いて骨接合術を行い,術後1年以上経過観察できた6例をX線学的に検討した.対象は男性4名,女性2名で,平均年齢は52.8歳であった.腓骨骨折に対しては全例で観血的整復内固定は行わず,1例でK-Wireによる髄内固定のみ行っていた.手術直後と最終観察時のX線学的計測ではA-P mortise angleの差は平均1.7°,Lateral mortise angleの差は平均1.3°であった.6例中開放骨折の1例で脛骨感染性偽関節となり再手術を必要としたが,最終的には全例で骨癒合した.脛骨骨幹部遠位1/3骨折に同レベルでの腓骨骨折を合併した症例で脛骨髄内釘を用いて骨接合を行った.腓骨の観血的整復内固定は施行しなかったが,大きな矯正損失はなかった.
  • 口石 倫太朗, 志田 純一, 土持 兼之, 末廣 剛敏
    2014 年 63 巻 4 号 p. 788-791
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    下腿に多発する皮膚潰瘍から血管炎症候群が疑われた1例を経験したので報告する.症例は61歳女性.半年前から発症した両下腿の潰瘍病変を主訴に当院受診.HbA1c 6.6%であり糖尿病性皮膚潰瘍として治療を開始.左足背部に径5cm大の潰瘍病変の他に多発する小潰瘍を認めており,加療継続するも改善なし.血管炎を疑いPSL投与を開始したところ,症状の改善がみられた.左足背部の潰瘍内病変はデブリードマン,持続陰圧療法を行った後に全層植皮術を施行した.病理組織所見は血管炎で矛盾しないものであった.経過中に関節リウマチと診断された.リウマトイド血管炎等の可能性が考えられるが症状は典型的ではなく正確な診断は困難であった.今後,皮膚病変の他,臓器病変の合併症に注意して経過観察する必要がある.
  • 塚本 伸章, 前 隆男, 竹内 直英, 佛坂 俊輔, 川口 謙一, 佐々木 宏介, 加藤 剛, 小宮山 敬祐, 松永 大樹
    2014 年 63 巻 4 号 p. 792-796
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【目的】高齢者の股関節周辺骨折を疑いMRIを用いて診断に至った症例を検討した.【対象】2012年の1年間に外傷を契機に股関節周囲の疼痛が出現するも単純X線では確定診断できず股関節MRIを実施した症例21例(平均82.4歳)を対象とした.【結果】受傷機転は転倒19例,下肢を「捻った」が1例,歩行時の打撲が1例であった.初診時の単純X線では3例に大転子単独骨折,2例に恥坐骨骨折が診断された以外では骨傷は指摘されなかった.MRI診断の内訳は骨盤骨折9例,大腿骨近位部骨折が7例,大転子骨挫傷1例,軟部組織損傷3例,外傷変化無しが1例であり,対象の76.2%で骨折が診断された.単純X線で大転子単独骨折を認めた3例では全例MRIで大腿骨転子部骨折を合併していた.MRIで大腿骨近位部骨折と診断した7例では手術を行った.【結論】股関節周辺不顕性骨折を詳細に診断するためにはMRIの役割は大きいと考えられた.
  • 小松 孝, 糸川 高史, 入江 努, 末永 英慈, 田中 哲也, 齊藤 太一
    2014 年 63 巻 4 号 p. 797-801
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【目的】大腿骨転子部骨折術後に再手術を必要とした症例について検討した.【対象】2009年1月から2012年12月までに大腿骨転子部骨折を受傷し手術を行った121例126股を対象とした.平均年齢は84.1歳(62-100歳)であり,男性25股,女性101股であった.術式はshort femoral nail(SFN)が121股,compression hip screw(CHS)が5股であった.再手術例に対して術前術後のX線評価にて検討した.【結果】再手術となった症例は3股(2.4%)であり,cut out例が2股(SFN 1股,CHS 1股),sliding例が1股(SFN 1股)であった.再手術に至った症例は安定型が2股で不安定型が1股であり,術式は人工骨頭置換術が2股,THAが1股であった.【考察】術後整復不良は再手術のリスクを増大させるため,整復不良例に対しては荷重開始時期や注意深い経過観察が必要である.
  • 江良 允, 安達 耕一, 森 愛, 瀬良 敬祐
    2014 年 63 巻 4 号 p. 802-805
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【はじめに】当院で平成20年度から平成24年度の5年間に診断・治療を行った大腿骨頚部・転子部骨折について検討を行ったので報告する.【結果】男性:165例,女性:776例,頚部骨折:486例,転子部骨折:455例であった.術式は人工骨頭:291例,骨接合:563例,手術なし:88例であった.術前待機期間は短縮傾向であったが,自宅退院する症例では社会的理由により入院期間が延長する傾向があった.
  • 伊東 孝浩, 山下 彰久, 原田 岳, 渡邊 哲也, 上森 知彦, 富永 冬樹, 岡 和一朗, 白澤 建藏
    2014 年 63 巻 4 号 p. 806-808
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【はじめに】大腿骨転子部骨折において術後整復位が側面像で髄内型を呈する場合は術後スライディング量が多いことが報告されている.最近当科では術後側面像で髄内型は免荷期間を設けておりその必要性を検討する.【対象】2012年1月から2013年7月までで術後髄内型となった症例で免荷なし9例(男3,女6,平均年齢85歳),免荷あり9例(男2,女7,平均年齢89歳)を対象とし,術直後と術後2週間でのスライディング量を比較検討した.【結果】平均スライディングは免荷なし群:4.11mm,免荷あり群:1.71mmで両群間に有意差を認めた.【考察】大腿骨転子部骨折において術後整復位が側面像で髄内型を呈する場合は免荷によりスライディングが有意に減少しており,その有用性が示唆された.
  • 落合 和久, 池田 天史, 宮崎 真一, 大山 哲寛, 土田 徹, 川添 泰弘, 原 慎太郎, 湯上 正樹
    2014 年 63 巻 4 号 p. 809-811
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【目的】MRI禁忌であり骨シンチにて大腿骨頸部不顕性骨折を診断した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.【症例】85歳女性.1カ月前から左股関節周囲に疼痛を認め,疼痛が増強し歩行困難となったために当科を受診した.単純X線では明らかな骨傷は認めなかったが,大腿骨不顕性骨折を疑い入院とした.植込み型ペースメーカーを使用しておりMRI検査は行えなかった.断層撮影でも骨折は指摘出来ず,疼痛増強後5日目に骨シンチ検査を行い左大腿骨頸部に異常集積を認め,不顕性骨折と診断した.【考察】比較的少なくないとされている股関節周囲の不顕性骨折に対しては,MRI検査が感度・特異度共に100%と報告されているが,本症例の様にMRI禁忌例では骨シンチによる診断が必要である.しかしながら,骨シンチは受傷後72時間以上の間隔をあけて使用することが推奨されており,その使用には注意が必要である.
  • 原口 明久, 城戸 秀彦, 加茂 健太, 城戸 聡, 馬場 省次
    2014 年 63 巻 4 号 p. 812-815
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    〈症例〉80歳,女性.室内を歩行中に転倒し受傷.単純X線で右非定型大腿骨骨幹部骨折と診断した.順行性髄内釘(T2 recon nail)を挿入し,翌日から全荷重で歩行訓練を開始した.術後11日目で外傷などの誘因なく右鼠径部痛が出現し歩行困難となった.レントゲン上,同側の大腿骨転子部骨折を認め,順行性髄内釘(long Gamma nail)による再固定を行った.術後3ヶ月が経過した時点で骨癒合が得られ,独歩可能である.〈考察〉2次的骨折の原因として骨脆弱性によるものや,術中のテクニカルエラーが挙げられるが,これらの要因を完全に予防することは困難である.高齢者の大腿骨骨幹部骨折に対する順行性髄内釘は2次的な大腿骨頚部・転子部骨折を予防するために骨頭方向にスクリューを挿入するタイプの髄内釘を選択する必要がある.
  • 平田 健司, 山本 学, 長弘 行雄, 笈川 哲也, 三原 惇史, 住浦 誠治
    2014 年 63 巻 4 号 p. 816-818
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    大腿骨近位部骨折の多くは高齢者に対する手術であり,入院後合併症によって不幸にも退院できずに死亡される症例もある.今回我々は大腿骨近位部骨折患者の死亡例について検討したので報告する.対象は2003年から2012年の間に当院へ入院した65歳以上の大腿骨近位部骨折1159例のうち,入院中に死亡した37例.死亡原因は肺炎14例,循環器疾患9例,脳血管障害3例,窒息・肺塞栓・腎不全・敗血症・癌死2例,不明1例であった.基礎疾患は高血圧17例,高血圧を除く循環器疾患11例,脳血管障害12例などが続いた.手術施行例のみでは術後2週間以内では急性心不全・腎不全,肺塞栓,また術後2週間以降では肺炎の占める割合が高かった.これらはいずれも予防できる可能性があり,手術的加療を検討する際には術前評価や循環動態の管理,また肺炎予防のため嚥下機能の評価・訓練や口腔ケアなどの対応が必要である.
  • 川口 雅之, 松崎 尚志
    2014 年 63 巻 4 号 p. 819-821
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    高齢者のアキレス腱断裂は若年者に比較して稀な外傷である.今回院内発症した高齢者のアキレス腱断裂を2例経験したので報告する.[症例1]66歳男性.右下腿糖尿病性膿皮症で入院中.早朝に廊下で転倒し左アキレス腱断裂受傷.[症例2]73歳男性.両側の白内障手術で入院中.早朝にトイレで転倒し左アキレス腱断裂受傷.[考察]若年者のアキレス腱断裂はスポーツ中の受傷が多い.それと比較して高齢者のアキレス腱断裂はスポーツ中の受傷は少なく,転倒などの突発的な外傷などでの受傷が多い.院内での転倒・転落などのインシデント・アクシデントでの外傷では頭部打撲や骨折に注意が向き,Xp・CTなどで評価しがたいアキレス腱損傷は見落とされがちである.早期診断のために院内での啓蒙が必要である.
  • 廣田 高志, 尾上 英俊, 中村 厚彦, 森 俊, 大久保 昭史郎, 植木 貴之
    2014 年 63 巻 4 号 p. 822-824
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【はじめに】今回我々は比較的稀と思われる開放性脛骨遠位骨端線離開の1例を経験したので報告する.【症例】11歳男子,自動車にはねられ受傷,当院へ救急搬送された.下腿遠位内側から足関節前面にかけて広範な開放創を認め,脛骨遠位断端が露出していた.単純X線でSalter-Harris分類II型の脛骨遠位骨端線離開を認め腓骨遠位骨幹部骨折も合併していた.受傷当日に緊急手術で十分なデブリドマンと洗浄を行い,脛骨をK-wire 2本で固定し腓骨は保存的に加療した.開放創は緊張なく閉鎖できGustilo分類type IIIaの開放性脛骨遠位骨端線離開であった.術後は6週間の外固定を行った後,PTB装具を用いて歩行訓練を開始した.最終経過観察時である術後3年2ヶ月(14歳時)の単純X線で足関節の内外反変形は2度の左右差を認めたものの疼痛や可動域制限はなかった.
  • 久我 尚之, 花田 麻須大, 水城 安尋, 萩原 博嗣
    2014 年 63 巻 4 号 p. 825-827
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    簡便で小侵襲なWesthues変法はtongue型と一部のdepression型の踵骨骨折に有効と言われるが,骨折型,内固定法,後療法が整復位,予後,合併症に与える影響については不明である.今回,当科でWesthues変法を行ったtongue型18例とdepression型15例の術後Böohler角を経時的に計測し,術直後Böhler角,最終時Böhler角,矯正損失,合併症発生率と骨折型,内固定法,術後免荷期間との関連を統計学的に検討した.X線学的にはtongue型の方がdepression型より最終的な整復位は良好であり,depression型への本法の適応は慎重にすべきと思われた.固定法についてはK-wireよりもスタイマンピンの方が整復効果は高かった.矯正損失は1ヶ月以内に大きく起こり,骨折型や固定法や免荷期間に関連はなかった.合併症発生率と固定法には関連はなかった.
  • 生田 拓也
    2014 年 63 巻 4 号 p. 828-831
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    外反母趾20例25足に対してLindgren変法にて治療を行った.HV角は平均32.0°から16.8°に改善し,M1-M2角は平均14.0°から6.9°に改善した.木村らが改変したBonneyらの判定基準に従うとExcellent:19足,Good:5足,Poor:1足であった.本法は骨切りがシンプルであり骨片の移動距離を任意に変えることができ,なおかつ中足骨長の短縮は殆ど来さず手術が可能であり,治療結果もほぼ満足のいくものであった.本法は理にかなった方法であると考えられた.しかしながら,本法も他の中足骨遠位骨切り同様に軽度~中等度の症例に対しては安定した成績が期待できるが,HV角が35°以上の症例やM1-M2角が15°以上の症例では矯正が不十分となる症例もあり術後成績も劣る傾向にあった.中等度~高度の外反母趾に対しては軟部組織の追加手術を行なうか,近位部骨切り術に切り換えるか検討する必要があると考えられた.
  • 松本 善企, 東 努, 松本 英彦
    2014 年 63 巻 4 号 p. 832-835
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    比較的稀な踵骨裂離骨折の手術症例5例を経験したのでその治療成績を含め報告する.年齢は62~85歳(平均68歳),男性2例,女性3例.治療は全例にTension band wiringを行い,全例再転位なく骨癒合が得られた.2例は創治癒不良にて2次縫合を要したが,踵部痛のため一本杖歩行を要している1例以外は全例受傷前の歩行能力が獲得でき,ADLは自立している.踵骨裂離骨折に対する手術術式は海綿骨スクリューとTension band wiringが主である.海綿骨スクリューの利点は手術手技が容易であることなどがあげられるが,骨片が小さな場合は刺入が困難であり,再転位したという報告が多くみられる.Tension band wiringは,骨片が小さな場合でも割れる危険性が低く,強固な固定が可能であり,今回当院にて施行した5例においても,骨片の転位なく骨癒合が得られた.
  • 川原 俊夫, 貞松 俊弘, 宮原 健次, 牧野 佳朗, 光武 聖史, 島内 誠一郎, 金丸 由美子
    2014 年 63 巻 4 号 p. 836-842
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    我々は断面が長方形の大腿骨骨孔を一個outside-in法にて作成,脛骨側には前内側束用,後外側束用別個に骨孔を作成し,それぞれ直方体類似形に形成した骨付き膝蓋腱の骨片のうち遠位骨片を二つに割り,続けて腱実質を近位骨片まで二つに裂き二重束とし,二つの遠位骨片をそれぞれ脛骨骨孔へ導入する解剖学的矩形骨付き膝蓋腱二重束再建法を行っている.今回その大腿骨骨孔関節内出口をQuadrant法にて評価した.症例は男性11例女性5例の16例であった.術後3D-CT側面像にて骨孔中心位置を評価するとdeep-shallow/high-low表記でそれぞれ平均22.5±4.5%/24.9±6.9%であり全例resident's ridge上及びその後方に位置していた.Outside-in法による長方形断面大腿骨骨孔作成は正確で確実性の高い手技であり本手術法は確実で有用な方法であると考えられた.
  • 大野 貴史, 鬼木 泰成, 中村 英一, 唐杉 樹, 西岡 宏晃, 岡元 信和, 水田 博志
    2014 年 63 巻 4 号 p. 843-848
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    最近4年間に当科で加療した前十字靭帯(ACL)損傷膝に合併する関節軟骨損傷について調査した.対象は40歳未満のACL損傷膝142膝,男59膝,女83膝,手術時平均年齢21歳である.受傷後軟骨損傷評価までの期間は3ヵ月未満39膝(27%),3ヵ月以上12ヵ月未満72膝(51%),12ヵ月以上31膝(22%)であった.活動度は大が111膝(78%),中が19膝(13%),小が12膝(9%)であった.軟骨損傷合併は87膝(61%)にみられた.部位は大腿骨内側顆が78膝(55%)と多く,大腿骨外側顆35膝(25%),脛骨内側顆6膝(4%),脛骨外側顆3膝(2%)であった.大腿骨内側顆の損傷形態は細線維化6膝(8%),亀裂59膝(76%),びらん13膝(16%)であった.半月板損傷があった113膝では,82膝(73%)に軟骨損傷を認めた.本研究結果を1988年に行った調査結果と比較すると,びらんの割合が1988年の80%から大きく減少していた.その理由としては,受傷後1年以上経過例が減少していることが影響しているものと考えられた.
  • 小林 恭介, 宮本 力, 米倉 暁彦, 小関 弘展, 穂積 晃, 木寺 健一, 前田 純一郎, 黒木 綾子, 荒木 貴士, 尾﨑 誠
    2014 年 63 巻 4 号 p. 849-851
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    発熱と左膝痛を主訴とし,保存的治療が有効であった慢性再発性多発性骨髄炎の1例を報告する.症例は12歳3ヵ月の男児.6歳頃に特に誘引なく右膝痛出現し,約1年間疼痛持続した既往あり.1ヵ月前に左膝痛,腫脹出現し,38℃ の発熱を認めたため,近医整形外科を受診.MRI施行し左脛骨近位端に骨髄炎が疑われた.症状改善しないため,当院紹介受診.骨腫瘍も否定できなかったため,病巣部の骨生検を行った.病理組織像は骨壊死,線維性変化,ごく軽度の炎症細胞浸潤を認めるのみで,細菌培養は陰性であった.その後施行した骨シンチグラフィーで脛骨近位端だけでなく左脛骨遠位端など多発性に集積が認められた.これまでの経過および検査所見より,自己炎症症候群のひとつである慢性再発性多発性骨髄炎と診断した.本症例では非ステロイド性抗炎症薬のみで症状軽快し,炎症反応も改善した.
  • 上杉 勇貴, 王寺 享弘, 碇 博哉
    2014 年 63 巻 4 号 p. 852-855
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    大腿骨内側顆及び後顆の骨棘の病態と,その骨棘が内側側副靱帯(MCL)の偏位に及ぼす影響について検討したので報告する.症例は内側型変形性膝関節症94例100膝(男性7例,女性87例)とした.MRIを用いて内側顆,後顆の骨棘面積とMCLの偏位を計測した.また連続したスライスを観察して骨棘の位置及び形態による分類を行った.内側顆,後顆骨棘面積のいずれもMCLの偏位に相関を示した.骨棘の位置と形態による分類では内側顆群が8膝,内側顆,後顆共に骨棘を認める両顆群が92膝(骨連続性なし群18膝,骨連続性あり群74膝)であった.後顆のみに骨棘を認める症例は認めなかった.骨連続性あり群ではKellgren-Lawrence分類grade IVの症例の割合が多く,MCL偏位も4.7mmと大きかった.以上の結果から,内側型膝OAの大腿骨側の骨棘は,内側顆,後顆の順に形成され,それらがやがて連続していくのではないかと推察された.
  • 本山 達男, 尾川 貴洋, 田村 裕昭, 古江 幸博, 永芳 郁文, 川嶌 眞之, 佐々木 聡明, 渡邊 裕介, 小杉 健二, 川嶌 眞人
    2014 年 63 巻 4 号 p. 856-861
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    外側半月周縁縦断裂では半月変性が少ないものは縫合の適応となるが,時に術前診断が容易でないことがある.当院における外側半月縫合例を検討した.対象は当院で行った外側半月中後節部周縁縦断裂で縫合した8例で手術時年齢平均24.5歳(12-47),術後平均観察期間は5年7か月(9か月-11年2か月)であった.手術は鏡視下にoutside-in法を中心に,適宜inside-out法も追加し2-3針縫合した.術前MRI診断と術後の再断裂の有無を後ろ向きに調査した.術前MRI診断は明らかに転位のあったものが2膝,その他の6膝では外側半月周縁高輝度が1膝,外側半月実質部周縁に高輝度ラインがあったものが2膝,高輝度水平ラインのあったものが1膝であった.転位のない例は1膝を除きMRI診断が容易ではなかった.術後再断裂は1膝に認め,半月切除を行った.縫合の適応となるような外側半月縦断裂では転位がない場合,MRIで診断が容易でないことが多かった.
  • 湯浅 伸也, 領木 良浩, 新門 裕三, 小宮 節郎
    2014 年 63 巻 4 号 p. 862-863
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    [目的]膝蓋骨骨折に対する引き寄せ締結法において,吸収性骨接合材及び吸収糸を用いる事で抜釘を不要とする手術法を施行し良好な結果を得ているので報告する.[方法]骨折部を骨把持器にて整復位を保持した状態でガイドピンを2本刺入,ドリリング後に吸収性骨接合材を挿入し固定する.続いて同スクリューの中空部に2重束とした吸収糸を通し,8の字に締結する.[症例]76歳女性.歩行中に転倒受傷.受傷後6日目に本法にて手術施行した.骨癒合は順調に得られ術後3ヵ月でknee brace除去,以降も疼痛認めず正座可能である.[考察]今回抜釘を不要とする目的に本法を施行し良好な結果を得た.通常の引き寄せ締結法で用いられる軟鋼線を使用せず吸収糸を用いている為固定力は劣るものの,2重束とする事や荷重歩行時期を若干遅らせたり,装具使用期間を長くする事で本法でも膝蓋骨骨折に対し対応できるものと思われる.
  • 李 徳哲, 森 治樹, 三橋 龍馬, 梅崎 哲矢
    2014 年 63 巻 4 号 p. 864-867
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    膝蓋骨骨折の保存療法では外固定により膝関節機能低下を起こすことが稀ではない.我々は4ヶ所の小皮切にてtension band wiring法を行い,早期から可動域訓練を開始して加療したので報告する.骨片転位の少ない骨折を中心に,本方法で治療した粉砕,転位が高度な症例を含む男性8例,女性17例,計25例に対しX線所見,手術時間・出血量,渡辺の評価法(一部改変)を用いた臨床成績に関して評価検討した.膝屈曲平均138.9°,extension lag 1.1°,全例独歩安定し,76%が正座可能であった.渡辺の評価法では平均9.4点(10点満点)であり,骨癒合を全例,wire折損を32%に認めた.3mm以上のgapのあるAO type-C3症例でも良好な成績で,経皮的整復可能な症例に対して有効な治療法であった.
  • 赤嶺 良幸, 普天間 朝上, 堀切 健士, 大久保 宏貴, 金谷 文則
    2014 年 63 巻 4 号 p. 868-871
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    14歳の男児で右肘関節の離断性骨軟骨炎による関節内遊離体が早い成長を来した1例を報告する.患者は肘関節の可動域制限が急速に減少したため当院を受診した.放射線画像検査では異所性骨化との鑑別を要した肘関節前方の骨化を認めた.
  • 福島 俊, 佐々木 宏介, 有馬 準一, 大賀 正義
    2014 年 63 巻 4 号 p. 872-874
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【目的】大腿骨近位部骨折術後の深部静脈血栓症(DVT)と術前待機期間との関係を検討すること.【対象と方法】広島赤十字・原爆病院整形外科で大腿骨近位部骨折に対して受傷後2日以内に手術(骨接合および人工骨頭挿入術)が行われた27例(A群)と,受傷後3日以上経過して手術が行われた27例(B群)を対象とした.全例,術後1週目にD-dimer(D値)を測定し,D値≧10μg/mlの場合および症状からDVTが疑われた場合に超音波検査器にてDVTを検索した.【結果】A群16例およびB群20例でD値≧10μg/mlであった.両群間でD値に有意差はなかった.A群で10例(全例遠位型),B群で14例(近位型5例および遠位型9例)のDVTを認めた.総DVTおよび遠位型DVTの発生頻度は両群間で有意差を認めなかったが近位型DVTの発生頻度はB群で有意に高かった.【考察と結論】大腿骨近位部骨折での長い術前待機期間は,術後の近位型DVT発生率を増加させる可能性がある.
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