整形外科と災害外科
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63 巻, 2 号
選択された号の論文の44件中1~44を表示しています
  • 藤本 和弘, 越智 康博, 國司 善彦, 谷川 泰彦, 木戸 健司
    2014 年 63 巻 2 号 p. 189-192
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    大腿骨転子下骨折の手術的治療において観血的整復を必要とする症例の特徴を明らかとすることを目的とした.2008年以降当科で手術的に加療した大腿骨転子下骨折17例17骨折を対象とした.平均年齢78.7歳,整復法は非観血的整復(CR群)8,観血的整復(OR群)9例であった.骨折型,平均術前待機期間,術中出血量,手術時間を検討した.骨折型は,Seinsheimer分類Type IIをS1,Type III~VをS2,Russell-Taylor分類Type IAをR1,Type IB,IIをR2とした.CR群はS1-7,S2-1,R1-7,R2-1例,OR群はS1-2,S2-7,R1-2,R2-7例で,両分類とも有意差を認めた.平均術前待機期間,術中出血量,手術時間は有意差を認めなかった.特にSeinsheimer分類Type V,Russell-Taylor分類Type IIは全例ORを要し,梨状窩まで及ぶ骨折型では,CRに拘ることなく早期のOR選択が必要である.
  • 中島 武馬, 土井口 祐一, 石井 孝子, 宮路 剛史, 増田 賢一, 杉山 健太郎, 西野 雄一朗, 野口 智恵子, 田口 勝規, 小西 ...
    2014 年 63 巻 2 号 p. 193-195
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    【目的】大腿骨転子部・転子下骨折に対しIPT long nailを用いて手術した症例の治療成績を検討すること.【対象と方法】当院にて2010年1月から2013年2月までにIPT long nailを用いて骨接合術を行った35例のうち術後6週以上経過観察しえた19例を対象とした.男性7例,女性12例,平均年齢78歳であった.骨折型は転子部逆斜骨折5例,転子下骨折14例であった.整復操作とワイヤリング操作の有無,骨癒合の有無,手術時間,出血量,術中・術後の合併症,移動能力について検討した.【結果】6例にオープンでの整復操作とワイヤリングを行っていた.合併症としては,術中locking screwの逸脱を1例,術後lag screwの穿孔を1例,術後感染を1例に認めた.Screw逸脱例,術後感染の1例および観察期間の短かった4例を除いた14例には骨癒合を認めた.【考察】cut outなど合併症への対策として,解剖学的整復を得ることはもちろん2nd screwを併用するなど手術法の工夫が必要と考える.
  • 中西 芳応, 細川 哲, 菊池 克彦, 青野 誠
    2014 年 63 巻 2 号 p. 196-199
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    骨格筋は血流が豊富であり免疫系も働きやすく,感染しにくい組織と思われ,骨格筋の化膿性筋炎は,通常,外傷や骨髄炎,周囲組織の感染の波及などが原因となる.外傷や周囲感染に起因しない骨格筋の化膿性筋炎は,熱帯地域では比較的頻度が高くtropical pyomyositisと呼ばれているが,温帯地域ではまれとされる.今回,外傷に起因しない突発的に発症した化膿性筋炎の1例を報告する.症例は73歳女性,主訴は右鼠径部痛.既往歴として糖尿病があり,経口薬にて治療中であった.9月初めにバイクに乗る際に,誘因なく右鼠径部に痛みを認めるようになり,徐々に増悪,血液検査にて高度の炎症反応を認め,造影CTにて右内閉鎖筋から臀筋群にいたる膿瘍を認めた.臀部からのドレナージ,抗生剤投与によって感染は鎮静化し,その後再燃無く経過している.
  • 森口 昇, 杉谷 勇二, 井上 博文, 山田 健治
    2014 年 63 巻 2 号 p. 200-203
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    【目的】発症から診断までに1カ月を要した化膿性仙腸関節炎の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.【症例】18歳,男性.腰痛と発熱を主訴に近医を受診.腰椎MRIを施行されるも明らかな病巣は指摘できず,化膿性脊椎炎疑いにて抗菌薬,安静が行われた.一旦症状は軽快し,退院.1カ月後に症状の再燃を認め,当科受診.骨盤MRIT2強調画像で,左仙腸関節に高信号領域を認めた.化膿性仙腸関節炎の診断にて抗菌薬を開始した.血液培養からは黄色ブドウ球菌が検出された.症状は改善し,自宅退院.抗菌薬投与は赤沈検査が鎮静化するまで継続した.以後,再燃は認めていない.【結語】化膿性仙腸関節炎は比較的まれな疾患であり,診断に時間を要することが多い.腰痛,発熱を主訴とした症例に対して,本疾患の存在を念頭に診察することが必要であると考えられた.
  • 白石 絵里子, 福嶋 信広
    2014 年 63 巻 2 号 p. 204-208
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    掌蹠膿疱症に胸肋鎖骨間関節を主とした骨関節病変を伴うことはよく知られている.今回,掌蹠膿疱症関節炎に伴った鎖骨疲労骨折の1例を経験したので報告する.症例は56歳男性,運送業.20年前に掌蹠膿疱症を指摘されるも放置していたが,1年前に胸鎖関節炎による前胸部痛が出現して以来当院外来フォロー中であった.NSAIDやビオチン内服にて関節痛はコントロールできていたが,6カ月前誘因なく左鎖骨部痛が出現し,レントゲンにて左鎖骨骨幹部骨折を認めた.保存的加療とし,疼痛出現後8週で十分な仮骨形成を認め,11週より仕事復帰可能となった.現在まで再骨折や疼痛なく経過している.掌蹠膿疱症の長期経過例であり,胸肋鎖骨間関節が骨性強直しており運送業従事により鎖骨中央部へ慢性的ストレスが加わり,鎖骨疲労骨折を来たしたものと考えられた.
  • 瀬尾 健一, 泊 真二, 伊藤 康正, 由布 竜矢, 安原 隆寛, 畑野 崇, 酒見 勇太, 吉本 昌人
    2014 年 63 巻 2 号 p. 209-211
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    遠位骨片が粉砕している鎖骨遠位端骨折に対して,Scorpion plate(以下SP)に軟鋼線締結などの追加処置を行ったり,CW plate(以下CW)を用いて治療を行ってきたのでその治療成績を報告する.症例は11例.男性9例,女性2例.手術時年齢は平均45.5歳.術後経過観察期間は平均11.0ケ月.X線上,全例に骨癒合を認め,術後転位増強は認めなかったが,CWの1例で遠位スクリューによる肩峰の浸食を認めた.JOA scoreは疼痛が平均28.2点,可動域が平均27.4点とおおむね良好な結果だったが,CWの1例で著明な肩可動域制限を認めた.従来SP単独では対処困難とされていた遠位骨片の粉砕が強い症例においてもwiringなどの追加処置を行うことで良好な成績をえることができた.また,遠位の骨片がきわめて小さく,SPの遠位設置が余儀なくされ,皮膚障害が懸念される症例にはCWが有効であった.
  • 野村 裕, 栁澤 義和, 中野 壮一郎, 田中 孝幸, 高野 祐護, 増田 圭吾, 酒見 勇太, 片山 雄太, 有馬 準一
    2014 年 63 巻 2 号 p. 212-214
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    一下肢症状を伴った腰椎椎間孔外側アミロイドーシスの一例を報告する.症例は84歳の女性である.多発性骨髄腫の既往がある.誘因なく左大腿前外側部の電撃痛が生じた.左第4神経根ブロックにて再現性と一過性の効果が得られた.腰椎MRIにて左第4/5椎間孔外側にT1強調像で低信号,T2強調像で等~高信号,周囲がリング状に造影される腫瘤陰影を認めた.同様の腫瘤は腰椎脊柱管内や傍脊柱筋にも多発していた.手術は顕微鏡下に円筒レトラクターを用いてアプローチした.術中迅速にて多発性骨髄腫は否定的であった.神経根は周囲組織との癒着が強く,その後根神経節を包み込むように嚢腫が存在していた.神経根を可能な限り剥離した.病理組織検査にて,嚢腫はアミロイド沈着を伴った膠原線維組織で構成されていた.我々が調べた限り,多発性骨髄腫に伴うアミロイドーシスが腰椎に生じて神経根症状を生じた報告はなく,非常に希と思われる.
  • 秋永 慎一郎, 大田 秀樹, 松本 佳之, 中山 美数, 酒井 翼, 井口 洋平, 清田 光一, 木田 浩隆, 竹光 義治
    2014 年 63 巻 2 号 p. 215-218
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    神経症状を伴ったspinal extradural arachnoid cystの3例経験したので報告する.この疾患は稀な疾患と言われてきたが,MRI等の画像検査の進歩により報告が増加している.病因については先天説と外傷説がある.本例は3例とも構造的に脆弱な神経根腋窩部に交通孔があり2例に外傷歴があることから,強い外力が加わることで硬膜が一部破綻し,クモ膜が脱出し嚢腫を形成したものと考えられた.治療の原則は嚢腫摘出であるが,交通孔がMRIのflow void等にて同定できれば,結紮による閉鎖のみでよい.後者は交通孔の部位のみの展開で済むため手術侵襲を軽減できるが,本症例においては交通孔が神経根の腋窩部にあったため,交通孔を結紮するためには椎間関節まで大きく切除しなければならず,通常に椎弓切除下に嚢腫を切除し交通孔閉鎖に対してはネオベールとフィブリン糊による修復術を行い良好な結果を得た.
  • 島袋 孝尚, 三好 晋爾, 大城 義竹, 米嵩 理, 金谷 文則
    2014 年 63 巻 2 号 p. 219-223
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    VATS(Video-Assisted Thoracoscopic Surgery)を併用し摘出した胸椎ダンベル腫瘍の1例を経験したので報告する.症例は46歳男性.住民検診の胸部単純X線像で異常陰影を指摘され,近医を受診した.後縦隔腫瘍を指摘され当科に紹介された.自覚症状なく明らかな神経学的異常所見は認めなかった.MRIでTh4/5右傍椎体部にT1で低信号,T2で高信号,ガドリニウムでほぼ均一で強い造影効果を認めるダンベル型の脊椎硬膜外腫瘍を認めた.CTガイド下生検を施行し,病理診断は海綿状血管腫であった.Th4/5硬膜外海綿状血管腫に対して後方からの腫瘍摘出術とTh3~5の後方固定術を行い,傍脊柱部の腫瘍に対してはVATSを併用し摘出し,術後神経脱落症状は認めなかった.術後1カ月のMRIでTh4椎体右側から椎弓,肋骨基部にかけての残存病変を認めたが,術後10カ月で腫瘍の増大は認めていない.
  • 落合 和久, 谷脇 琢也, 田畑 聖吾, 岡田 龍哉, 藤本 徹, 瀬井 章, 水田 博志
    2014 年 63 巻 2 号 p. 224-226
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    【目的】脊髄髄膜腫は中年女性の胸椎部に好発し硬膜内髄外腫瘍の形態を呈する腫瘍である.今回我々は腰椎部に発生しダンベル状を呈した稀な髄膜腫の1例を経験したので報告する.【症例】40歳男性.数年前から腰痛を自覚していたが,右下肢痛と歩行障害が出現してきたために近医を受診し,MRIで脊柱管内に腫瘍性病変を認めたために当科を紹介された.MRIでは,L3/4レベルにT1で等信号,T2で低~高信号を示す,ダンベル状を呈した腫瘍性病変を認めた.術中迅速病理にて髄膜腫と診断されたために,腫瘍切除および硬膜再建を施行した.術後3年経過しているが再発は認めていない.【考察】脊髄髄膜腫の頻度は硬膜内髄外腫瘍の中で約20%であるが,ダンベル状を呈する症例は2.6%と報告されている.我々が渉猟し得た範囲では腰椎部に発生したダンベル型髄膜腫は1例のみであり,非常に希な症例と考えた.
  • 馬場 覚, 今澤 良精, 福島 俊, 麻生 龍磨, 貝原 信孝, 佐々木 伸一, 河村 誠一, 米増 博俊
    2014 年 63 巻 2 号 p. 227-230
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】脊髄円錐部腫瘍に水頭症を合併した一例を経験したので報告する.【症例】62歳女性,2年程前から腰痛・右下肢のしびれを自覚.症状が次第に増強するため近医を受診したところMRIにて硬膜内腫瘍を指摘され,当科紹介となった.当院での術前MRIにより神経鞘腫,粘液乳頭状上衣腫,髄膜腫などが鑑別にあげられた.上衣腫,髄膜腫は頭部にも遠隔播種することがあるため頭部MRIを施行した結果,水頭症を認めた.理学所見で頑固な頭痛,両視神経乳頭浮腫,複視等の眼症状も認めた.【術後経過】脊髄腫瘍摘出術により,術前に認めていた水頭症と随伴症状の改善を認めた.病理診断は神経鞘腫であった.退院後も腫瘍の再発等なく良好な経過を辿っている.【考察】非常に低頻度ながら,脊髄腫瘍に水頭症を伴うという報告がある.脊髄腫瘍の症例では,水頭症の随伴症状の有無を評価し,術前に頭部 CT・MRI等の検査を追加する必要があると考えられる.
  • 牟田口 滋, 合志 光平, 山本 俊策, 末次 弘征, 二之宮 謙一
    2014 年 63 巻 2 号 p. 231-233
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    骨原発悪性リンパ腫(以下PLB)は比較的稀な疾患である.今回我々は,両下肢筋力低下で発症したPLBの2例を経験したので報告する.【症例1】74歳女性.急速に進行する両下肢筋力低下にて受診.MRIにて第10・11胸椎に腫瘍性病変を認め,椎弓切除術を施行.病理診断はdiffuse large B-cell lymphoma,術後放射線療法・化学療法が行われた.術後3ケ月で歩行器歩行可能となり他院転院となった.【症例2】80歳女性.頸部~背部痛を自覚,その後急激に両下肢筋力低下を認め受診.MRIにて第3胸椎に腫瘍性病変を認め,緊急に椎弓切除術を施行.同様にlymphomaの診断にて放射線療法・化学療法が行われ,術後3ケ月で独歩退院した.【考察】神経症状を呈した原発巣不明である脊椎腫瘍においては,悪性リンパ腫の可能性も念頭において,確定診断・治療のために早急に手術を考慮する必要がある.
  • 中山 美数, 大田 秀樹, 松本 佳之, 酒井 翼, 井口 洋平, 清田 光一, 木田 浩隆, 竹光 義治
    2014 年 63 巻 2 号 p. 234-238
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    極めて稀な一卵性双生児に発生した多発性神経鞘腫を経験したので報告する.48歳男性.腰痛と左鼠径部・下肢痛にて発症し,多発性の馬尾腫瘍を認めたため摘出術を行った.病理所見は神経鞘腫であった.胸髄や左大腿部にも腫瘤を認めた.38歳男性.左側胸部及び背部痛にて発症し,胸髄腫瘍を認めたため摘出術を行った.その後腰椎,右上腕と続発したため手術を行った.父親も皮下腫瘤を自覚していた.神経鞘腫症と神経線維腫症2型との鑑別が必要となったが遺伝子診断は拒否された.聴神経腫瘍の存在が鑑別の決め手となるが検査は今後本人の許可を得て施行する予定である.免疫染色の結果は多発性神経鞘腫症に見られるモザイク状INI-1免疫染色像は認めなかった.以上より今のところ神経線維腫症2型による多発性神経鞘腫が最も疑われる.しかしいずれにせよ発症時期・部位・進展形式は一卵性双生児の場合であっても異なる場合があるということが明らかとなった.
  • 廣田 高志, 尾上 英俊, 金澤 和貴, 木下 浩一, 亀川 史武, 瀬尾 哉, 石松 哲郎
    2014 年 63 巻 2 号 p. 239-241
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】triplane fractureは脛骨遠位骨端線離開の特殊型であり,骨折面が矢状面,水平面,前額面の3平面を有するもので比較的稀な骨折である.今回我々はその2症例を経験したので報告する.【症例1】15歳男子,サッカー中に右足関節を外反強制し受傷.単純X線にてlateral triplane fractureを認めた.受傷翌日に手術を行った.術後は3週間の外固定を行い,術後3ケ月から荷重訓練を開始した.【症例2】13歳男子,ラグビー中にタックルを受けて転倒し受傷.単純X線にてlateral triplane fractureを認めた.受傷後2日に手術を行った.術後は4週間の外固定を行い,術後3ケ月から荷重訓練を開始した.【考察】triplane fractureの予後は骨端線早期閉鎖による後遺症出現の可能性があるが,手術治療によって可能な限り正確な解剖学的整復位を得ることは良好な治療成績につながると考えられた.
  • 米田 高太郎, 光武 慎一朗, 半仁田 勉
    2014 年 63 巻 2 号 p. 242-245
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    【方法】2009年1月から2012年1月までに,当院にて距骨骨折に対して観血的整復固定術を行った7例(男性7例,平均年齢36.4歳)を対象とした.頚部骨折が4例,体部骨折が3例であった.うち脱臼骨折は3例であった.経過観察期間は平均14.0ケ月であった.当院では原則的に受傷直後に手術を行っており,その術後成績を検討したので報告する.【結果】Hawkins改変評価基準を用いた評価では,excellent 4例,good 3例であった.骨壊死は2例に認めた.平均免荷期間は約8週であった.【考察】今回経験した症例では受傷後速やかに整復固定を行うことができ,また骨壊死症例に対しての荷重開始時期については画像所見だけでなく臨床所見も考慮して比較的早期の荷重開始となったが,圧潰等は認めず概ね良好な結果が得られた.
  • 青野 誠, 細川 哲, 菊池 克彦, 中西 芳応
    2014 年 63 巻 2 号 p. 246-250
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】リスフラン関節脱臼骨折は発生頻度の低い骨折である.高エネルギー外傷が多いとされるが比較的軽微な外力よる損傷もしられている.回各1症例ずつに対し手術加療を行ったので報告する.【症例1】26歳男性.転倒受傷.Nunley分類Stage IIの右リスフラン関節脱臼骨折と診断し,受傷後10日目に手術施行.術後6週から部分荷重歩行開始し,術後14週で抜釘術施行.受傷8カ月でADL制限なく生活している.【症例2】43歳男性,鉄板に足を挟まれ受傷.Nunley分類Stage IIの左リスフラン関節脱臼骨折・舟状骨骨折・踵骨骨折を認め,受傷後11日に手術施行.上記同様に荷重・抜釘術施行.受傷6カ月経過し足趾伸展で軽度可動域制限あり,軽度運動時痛を認めるがそれ以外の制限・疼痛なく生活している.【結語】2例とも術後経過は良好であった.早期に解剖学的整復を獲得する手術加療を行うことは有効な加療方法と考える.
  • 佐久間 大輔, 吉野 伸司, 鮫島 浩司, 富村 奈津子, 瀬戸山 傑, 川内 義久
    2014 年 63 巻 2 号 p. 251-255
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    脛骨遠位骨端線損傷後に生じた脛骨天蓋変形をイリザロフ創外固定器を用いて治療した症例を報告する.症例は17歳男児で,3歳時に交通事故で左足関節開放骨折を受傷した.脛骨遠位骨端線損傷により足関節背屈変形を生じ9歳時に矯正骨切り術を受けるも変形再発した.16歳時に変形矯正および脚延長希望し当科受診した.初診時,足関節可動域は背屈10°,底屈25°で3cmの下腿短縮を認めた.レ線検査ではTAS角94°,TLS角45°であり,脛骨天蓋の変形が主体であった.イリザロフ創外固定器を用いて脛骨天蓋アライメント矯正と脚延長を行った.術後レ線上TAS角106°,TLS角86°となり,足関節外反が残存したが関節内変形は矯正された.足関節可動域は背屈5°,底屈30°と保たれ,脚長差も1cmとなり歩容は著明に改善し患者の満足度は高かった.
  • 岡田 文, 山口 司, 西井 章裕, 吉兼 浩一, 大江 健次郎, 仲西 知憲, 伊東 孝浩
    2014 年 63 巻 2 号 p. 256-259
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    はじめに:著明な骨棘と嚢腫のため,通常の靴がはけなくなった強剛母趾を2例経験した.症例1:74歳女性.2年前から腫瘤があり,近医で2回切開処置をうけるも皮膚が上皮化せず,通常の靴がはけなくなり,摘出を希望され紹介となった.母趾背側に腫瘤が突出して皮膚が菲薄化し,レントゲンでは著明な骨棘形成と遊離骨片を認めた.関節縁切除術にて症状は軽快した.症例2:69歳男性.2年位前から腫瘤ができ,2カ月前より近医で週に1回穿刺を受けていたが,摘出を希望され紹介となった.右母趾背側に腫瘤を認め,レントゲンでは著明な骨棘形成があり,一部は基節骨から隆起していた.関節縁切除術にて症状は軽快した.まとめ:強剛母趾Hattrup分類Grade 3で著明な骨棘と嚢腫を認める症例に対し,関節縁切除術を行った.主訴に応じて手術法を選択することで,短期的には良好な結果を得たが,中長期的には再発などの経過観察が必要である.
  • 森田 雄大, 河原 勝博, 田島 卓也, 山口 奈美, 矢野 浩明, 石田 康行, 村上 恵美, 大田 智美, 中村 志保子, 大塚 記史, ...
    2014 年 63 巻 2 号 p. 260-262
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】われわれは,膝前十字靱帯(以下,ACL)損傷と半月損傷を合併した症例で,諸事情により半月縫合術を単独で施行した症例について,ACL再建術時に半月の状態を評価検討した.【対象・方法】対象は2006年1月から2012年12月の期間に,ACL損傷に半月損傷を合併した症例のうち半月縫合のみ施行した症例6例6膝である.これらについて半月損傷形態,縫合方法,再鏡視所見,待機期間との関連について検討した.【結果】6膝中2膝に再断裂を認め,いずれも待機期間の長い症例であった.【考察】ACL不全膝で半月縫合術を施行した症例は,半月単独損傷で半月縫合術を施行した症例と比較し再断裂は高率であった.待機期間の長い症例で再断裂の可能性が高くなることが示唆された.ACL不全膝に対する半月縫合術は半月単独損傷に比べ再断裂の危険性は高いが,癒合率は66.7%であり禁忌でないと思われた.
  • 布施 好史, 吉岡 徹, 沖本 信和, 今村 世津, 寺山 弘志, 坂 信一, 村田 秀則
    2014 年 63 巻 2 号 p. 263-266
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】外側半月板中節横断裂は縫合困難で難治性とされ,一般的に縫合術の適応はないとされる.しかしアスリートに対する切除術は選手生命に影響を及ぼす可能性がある.今回,アスリートの外側半月板中節横断裂に対して縫合術を行った症例を経験したので報告する.【症例】症例1.16歳男性.野球中に受傷.MRIで外側半月板中節に横断裂を認め,受傷から5週後に手術.症例2.17歳男性.ハンドボール中に受傷.MRIで同断裂を認め,受傷から約4週後に手術.両症例とも断裂部両側に outside inにてvertical suture,その後 vertical sutureを跨いでhorizontal sutureを加えた.術後約3ケ月で second lookにて部分的な修復を確認後,ジョギングから運動を許可した.【考察】縫合困難とされていた外側半月板中節横断裂に縫合術を施行した2例を経験した.今後長期成績を検討する必要があるが,アスリートに対しては可能な限り縫合術を試みることが望ましいと考える.
  • 佐々木 誠人, 久賀 太, 古賀 隆弘, 鴛渕 雅男
    2014 年 63 巻 2 号 p. 267-270
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    【目的】半月板断裂患者と健常者の関節音を比較検討すること.【対象と方法】対象は,術前にLittmann社製電子聴診器で膝関節の聴診記録を行い関節鏡で変形性関節症(以下OA)を伴わない単独内側半月板断裂と診断した12膝,OAを伴う内側半月板断裂と診断した36膝と関節鏡は行っていないが膝疾患既往や愁訴の無い若年健常者の26膝である.これらの関節音の振幅と周波数を比較検討した.【結果】振幅の検討では何れの群とも違いを認めなかったが,周波数の検討で健常者群に比して有意に内側半月板断裂群に高い周波数の音の発生が多いという結果を得た.【結論】関節鏡で確認された半月板断裂患者の関節音は,健常者と比較して高い周波数の音が有意に多いことから,関節音の周波数の違いにより膝半月板断裂を簡便な電子聴診器で検出する可能性を今回の検討は示唆した.
  • 上原 慎平, 岡崎 賢, 佐々木 大, 岩本 幸英
    2014 年 63 巻 2 号 p. 271-273
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    比較的まれな,膝十字靭帯にムコイド変性を認めた2症例を経験した.症例(1):51歳男性.誘引なく可動域制限を伴う左膝痛が出現した.診察上,関節水腫を認めた.MRIで前十字靱帯(ACL)は膨化し,T2強調画像で高信号変化を認めたが,連続性は保たれていた.鏡視ではACLは肥厚し内部に黄色粘液貯留を認めた.掻把を行い症状改善した.症例(2):48歳男性.家の掃除後から可動域制限を伴う左膝痛が出現した.診察上,関節水腫を認めた.MRIで後十字靱帯(PCL)は肥厚し,T2強調画像で高信号変化を認めたが,連続性は保たれていた.内部に黄色粘液貯留を認めた.掻把を行い症状改善した.病理診断はムコイド変性だった.ACL,PCLのムコイド変性は部分断裂と誤診されることがあり.注意が必要である.
  • 平山 雄大, 唐杉 樹, 鬼木 泰成, 中村 英一, 岡元 信和, 高田 興志, 水田 博志
    2014 年 63 巻 2 号 p. 274-277
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    症例:39歳,女性.平成元年に当科にて右膝ACL再建術を施行した.平成2年にバレーボール中に左膝ACL損傷を受傷し,自家腱によるACL再建術を施行した.その後特に問題なく看護師の業務やスポーツ活動を行っていた.平成23年11月に誘因なく左膝の腫脹と疼痛が出現し,当科を受診した.単純X線にて左膝外側関節裂隙および膝蓋上嚢部に石灰沈着像を認め,穿刺した関節液検査にてCPPD結晶を認めた.関節炎症状が持続したため関節鏡検査及び滑膜切除術を施行した.膝関節内にはびまん性に結晶沈着を認め,結晶成分のX線回析にてCPPD結晶が同定された.術後,関節炎症状は軽快した.考察:McCartyらはCPPD発症関連因子の一つとして外傷,手術を挙げている.CPPD結晶沈着症は通常高齢者に認められるが,本症例は若年発症であり,他の疾患は否定的,ACL再建術術後であることから,ACL再建術が関連していると考えられた.
  • 久保 祐介, 岡崎 賢, 崎村 陸, 水内 秀城, 濱井 敏, 田代 泰隆, 岩本 幸英
    2014 年 63 巻 2 号 p. 278-283
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    【目的】反復性膝蓋骨脱臼に対して内側膝蓋大腿靭帯再建術(以下;MPFL)を行った症例のうち成績不良であった3症例4膝の要因について検討した.【対象と方法】平成15年7月1日から平成24年8月14日の間に反復性膝蓋骨脱臼に対してMPFL再建術を行った19症例20膝を対象とし,そのうち術後Crosby and Insall評価でfair to poorであった3症例4膝の成績不良要因として外反膝(FTA),膝蓋骨高位(Insall-Salvati比)の比較検討を行った.【結果】術後fair to poor群のFTAは平均170.5度であり,Excellent or good群の173.8度と比して外反が強く,fair to poor群のInsall-Salvati比は平均1.43であり,Excellent or good群1.12と比して膝蓋骨高位であった.(P<0.05,P<0.005)また,術後成績不良例においてQ angleが平均21.3度と大きい傾向にあり,distal realignmentを追加することでapprehension兆候は消失した.【結論】反復性膝蓋骨脱臼において外反膝,膝蓋骨高位,およびQ angleの大きさはMPFL再建術における成績不良因子であり,そのような症例に対してMPFL再建に加えてdistal realignmentを検討すべきである.
  • 桑野 洋輔, 米倉 暁彦, 岡崎 成弘, 尾﨑 誠
    2014 年 63 巻 2 号 p. 284-287
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    【症例】58歳男性,ボウリング中に段差につまずいて右膝関節痛出現.MRIにて大腿骨滑車部に約5×10mmの軟骨欠損を2カ所認め,階段昇降時痛が持続するため膝関節鏡を施行.剥離しかけた軟骨縁を切除後microfracture awlを用いて3-5mm間隔で骨穿孔術を行った.術後MRIにて経時的に再生軟骨の被覆がみられた.また,術後1年のKOOSは術前に比し全項目で改善し(Pain 33→81,Symptoms 18→79,ADL 37→91,Sport/Rec 0→45,QOL 6→44),JOA scoreも80点から95点へと改善した.【考察】40歳以降の膝関節軟骨欠損例に対する骨穿孔術の長期成績は不良とされている.本症例は58歳であったにもかかわらず術後成績が良好であった原因は,軟骨欠損が細長い2カ所であり1カ所あたりの欠損が小さかったためと考える.
  • 仲西 知憲, 岡田 文, 西井 章裕, 吉兼 浩一, 大江 健次郎, 伊東 孝浩, 山口 司, 田宮 貞史
    2014 年 63 巻 2 号 p. 288-292
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    我々は滑膜性軟骨腫症で異なった関節鏡所見2例を経験した.【症例1】22歳女性.立ち上がる際の軋轢音および左膝関節腫脹,歩行時痛を主訴に来院.屈曲制限,関節腫脹あるも圧痛点不明.穿刺で60ml淡血性関節液を採取.MRIで顆間部前内側にφ1 cm大の低輝度な充実性病変を数個認め,初診後1カ月に関節鏡を施行.ACL付着部に腫瘍性滑膜が存在,滑膜切除した.【症例2】54歳女性.1年前からの左膝腫脹,歩行時痛を主訴に来院.疼痛軽減するも水腫が残存.屈曲制限,内側膝蓋上部の圧痛を認めた.MRIで膝蓋上嚢に関節液より低輝度な2 mm大の遊離体を多数認め,初診1カ月後に関節鏡施行.同部に米粒様遊離体を数百個認め,滑膜切除とともに遊離体摘出した.両症例とも局在の不明確な疼痛,膝関節水腫を認めるも,異なった関節鏡所見であった2例で,鏡視下滑膜切除を行い,術後6カ月にて再発症状を認めず,良好に経過している.
  • 熊野 貴史, 藤原 明, 花田 弘文, 山口 史彦, 塩川 晃章, 原 道也, 伊崎 輝昌, 三宅 智
    2014 年 63 巻 2 号 p. 293-297
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    上腕骨大結節骨折に対する手術療法としてScrew,Tension band wiring,Plateなど様々な固定法が行われているが,骨質不良や骨片の粉砕により治療に難渋することが少なくない.そこで,近年では,スーチャーアンカーを用いた固定術が行われるようになり,良好な成績が報告されている.今回我々は,鏡視下腱板断裂修復時に多く用いられているSuture bridge techniqueを用いた,上腕骨大結節骨折に対する治療を経験したので,その手術手技を含めて報告する.
  • 尾上 英俊, 木下 浩一, 亀川 史武, 瀬尾 哉, 石松 哲郎, 廣田 高志
    2014 年 63 巻 2 号 p. 298-300
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    小児上腕骨遠位端coronal shear fractureは比較的希な骨折であり,今回その1例を経験したので報告する.症例:14歳 男児,ボール遊びをしていて肘から転倒し受傷した.CTで上腕骨小頭と滑車を一塊として含む骨折で,後方骨皮質の損傷がないDubberley分類Type 2Aの上腕骨遠位端coronal shear fractureと診断した.第3病日に外側進入で手術を行った.滑車部分では前方骨膜が連続しており,小頭骨折部分の近位側を直視下に合わせることで整復を行い後外側からのscrew固定を行った.本症例では小頭骨折部分が厚い骨片であったため,後外側からのscrew固定で良好な固定性が得られた.術後4年5カ月のXpで小頭関節面に軽度の不整を認めるが良好に骨癒合し骨壊死は生じていない.肘関節の関節可動域に左右差を認めず,疼痛なく鉄筋を組む仕事をしている.
  • 吉村 健, 小笠 博義, 橋本 貴弘, 重冨 充則, 田口 敏彦
    2014 年 63 巻 2 号 p. 301-303
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    卓球選手に生じた上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の1例を経験し,その病巣部位から発生機序について検討した.症例は中学3年生男子の卓球選手で,右肘痛のため競技継続が困難となり来院した.初診時,右肘関節可動域制限と運動時痛があり,画像診断で分離期の病態と考えられ,右膝からの骨軟骨柱移植術を行った.術後経過は良好で,6カ月後に競技復帰し,試合でも良好な成績を残している.本症例での病巣部位は比較的上腕骨小頭の前方に生じ,野球競技で生じる病巣部位と類似しており,卓球競技ではボールインパクト時の肘屈曲位での力学的負荷が障害発生に関与すると考えられた.
  • 松永 渉, 副島 修
    2014 年 63 巻 2 号 p. 304-308
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    末梢神経内血腫の報告は極めて稀であり,発生機序に関しては明確な見解は得られていない.尺骨神経内血腫により急性尺骨神経不全麻痺をきたした1例を経験したため報告する.【症例】67歳,白人女性.左肘の軽微な捻挫後より左肘尺側部の疼痛,左環小指の感覚障害が出現.内在筋筋力低下,感覚障害が進行し,急性尺骨神経不全麻痺の診断にて当科紹介.MRIにて肘部管周囲に尺骨神経を圧迫する血腫の貯留を認めた.手術所見では尺骨神経上膜下に血腫の貯留を認め,神経上膜を切開し,血腫除去および神経剥離術を施行した.術後2ケ月目のMRIで血腫の再貯留を認め,初回手術後7ケ月で再手術を施行した.術後1年半で症状は改善した.【考察】軽微な外傷による神経上膜下の微小血管破綻により神経内血腫が発生したものと考えられたが,血腫の再貯留の原因は不明であった.確定診断,治療をかねた神経上膜切開は有効であった.
  • 佐藤 陽昨, 井原 和彦, 島田 信治, 別府 達也, 竹下 都多夫, 中川 憲之, 保利 俊雄, 石橋 正二郎
    2014 年 63 巻 2 号 p. 309-313
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】まれな小児上腕骨小頭後方剪断骨折の1例を経験したので報告する.【症例】9歳女児.渡り鉄棒から落下し左手をついて受傷,左肘痛出現し近医受診,X-pにて上腕骨外側顆に裂離骨折認め同日当科紹介となった.MRIにて上腕骨小頭後方の骨軟骨骨折認め,受傷4日後に手術を行った.上腕骨小頭後外側に骨軟骨骨折認め,骨折部近位は連続性がありヒンジ状に骨折部が離開し,そこに橈骨頭が衝突し伸展制限をきたしていた.肘関節の明らかな不安定性は認めなかった.骨軟骨片を整復しK-wire2本で固定,4週で抜去した.術後2年の最終観察時では変形無く骨癒合,肘ROM伸展+10°~屈曲145°と左右差なく改善しており疼痛なく日常生活上も問題はない.【考察】小児上腕骨小頭後方剪断骨折はまれな骨折で,保存的治療で肘伸展制限を残した報告例も散見され,早期の観血的治療が必要と考えられた.
  • 福島 俊, 寺田 和正, 小原 伸夫, 宮崎 清, 小早川 和, 宮原 寿明
    2014 年 63 巻 2 号 p. 314-317
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    頚椎分離すべり症は比較的稀な疾患である.我々は第6頚椎分離すべり症に伴う頚髄症の一例を経験したので報告する.症例は62歳男性.外傷の既往なし.某年8月から,両手母指から中指の痺れを自覚していた.翌年1月に両下肢の痺れが出現し同年3月に当科を紹介受診した.手指巧緻運動障害,上肢腱反射の亢進,握力低下,四肢の痺れがあり,MRIではC5/6高位での頚髄の圧排とT2強調像での髄内高信号,およびL4/5高位での脊柱管狭窄を認めた.単純X線写真とCTで第6頚椎の二分脊椎と分離すべり症を認めた.頚髄症と腰部脊柱管狭窄症の合併と診断し,症状増悪傾向のため同年6月に頚椎椎弓切除術(C4尾側,5,6,7頭側)を施行した.術後6か月の時点で上肢の痺れは軽減し,画像検査上も頚髄は除圧良好ですべりや不安定性の増悪なく,局所後弯も認めなかった.除圧術単独で短期経過に問題はないが,不安定性の増強等を中心に長期間の経過観察が必要である.
  • 石井 聡大, 吉村 一朗, 金澤 和貴, 内藤 正俊
    2014 年 63 巻 2 号 p. 318-320
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    Distal lineal metatarsal osteotomy(DLMO法)は簡便で低侵襲な手術方法として近年注目されている.一般的には趾節間外反母趾を有する例は適応外とされている.今回,趾節間外反母趾を伴った外反母趾に対してDLMO法と同時にAkin法を施行した1例を経験したので報告する.症例は63歳男性.左母趾MTP関節に発赤,腫脹を認めた.単純X線像にてHV角20°,趾節間外反母趾角16°,M12角14°であった.趾節間外反母趾に対してAkin法(20°骨切りしK-wire固定)施行した後にDLMO法を施行した.術翌日より装具装着下に踵歩行開始し,7週目でK-wireを抜去した.術後約7カ月の現在疼痛無く,HV角5°,趾節間外反母趾角-2°,M12角8°レクリエーションも可能であり経過良好である.今回Akin法と組み合わせることよりDLMO法が施行可能となり有益であった.
  • 大園 宏城, 坂井 健介, 吉田 健治, 吉田 史郎, 田中 憲治, 神保 幸太郎, 加藤田 倫宏, 井手 洋平, 胤末 亮, 後藤 琢也, ...
    2014 年 63 巻 2 号 p. 321-325
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    【目的】鎖骨遠位端骨折に対するClavicle hook plateによる治療成績を検討した.【対象】症例は70例70肩であり,その内訳は男性49例,女性21例であった.受傷時年齢は平均46.2歳,術後観察期間は平均12.3か月であり,32例に抜釘後3DCTを施行し,肩峰の骨侵食について評価を行った.【結果】骨癒合率は92.9%で,5例に偽関節を認めた.合併症はプレートのbackout 3例,肩峰骨折2例,プレート近位部の骨折を1例,感染を1例に認めた.疼痛のJOA scoreは平均27.5点,可動域は屈曲が平均164.3°,外転は平均161.2°であった.【考察】本法は不安定な骨折型に対しても強固な固定が得られる一方,フックによる合併症が散見されており,骨癒合後は速やかな抜釘が望まれる.さらにフックによる肩峰の骨侵食を低減するためにはインプラントデザインの改良が期待された.
  • 喜友名 翼, 安里 英樹, 比嘉 勝一郎, 新垣 寛, 知念 弘, 金谷 文則
    2014 年 63 巻 2 号 p. 326-329
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    高齢者でBankart病変を伴わず肩関節前方脱臼を生じ,腱板広範囲断裂を認めた2例について報告する.症例1,79歳,女性.転倒し右肩関節を脱臼し,近医で整復後,就寝中に再脱臼した.MRIでBankart病変は認めなかったが腱板広範囲断裂を認めた.受傷後3ヵ月で自動挙上が不能であったため手術を施行した.鏡視にてBankart病変は認めず,腱板広範囲断裂を認め,腱板の一次修復が困難であったため,棘下筋移行術を施行した.術後12ヵ月で,自動可動域は屈曲/外転/外旋/内旋:140°/150°/60°/Th12,JSS-SISは術前16点が62点,JOA scoreは術前8点が81点に改善し,再脱臼を認めない.症例2,73歳,女性.転倒し右肩関節を脱臼し,近医で整復後,外固定が行われた.MRIでBankart病変は認めず,腱板広範囲断裂を認めたため当院に紹介された.腋窩神経領域の麻痺は認めなかったが,受傷後12週においても自動挙上が不能であったため,鏡視下腱板修復術を施行した.術後12ヵ月で,自動可動域は屈曲/外転/外旋/内旋:140°/150°/60°/L1,JSS-SISは術前16点が67点,JOA scoreは術前15点が81点に改善し,再脱臼を認めない.腱板の再建・修復を行うことで再脱臼を防止し,肩関節機能は改善した.
  • ―術後5年以上経過例―
    大田 秀樹, 松本 佳之, 中山 美数, 酒井 翼, 井口 洋平, 木田 浩隆, 竹光 義治
    2014 年 63 巻 2 号 p. 330-335
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    われわれは軽度な不安定性腰椎変性疾患に対してSSCSによる制動術を行っている.5年以上経過した43例の手術成績を検討した.術前JOA scoreの改善率は75.3%.当該椎間板可動域は10.1°が2.3°となり有意に減少していた.MRI上の隣接障害は9例(21.9%)に発生していた.有症状例は5例(11.6%)で1例(2.3%)に再手術を要した.Screwの切損は2本,looseningは2椎間制動術の1例に生じた.椎間の自然癒合は6例(13.9%)に生じた.
  • 居石 卓也, 田代 泰隆, 岡崎 賢, 崎村 陸, 水内 秀城, 濱井 敏, 岩本 幸英
    2014 年 63 巻 2 号 p. 336-339
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    【目的】骨欠損を伴う膝の高度変形や破壊に対し,骨補填材料を併用して人工膝関節置換術(TKA)を行った症例を検討した.【対象と方法】対象は2001年以降にaugment blockやstem extensionを併用して初回TKAを行った20膝(OA:14,RA:5,骨壊死:1)のうち3年以上観察しえた17膝(85%)で,手術時平均73歳,観察期間5.3(3~9)年だった.【結果】臨床的経過は全例良好で,X線上ゆるみや沈み込みを認めなかった.脛骨側でブロック後内側のclear zone出現を1例,近位の骨萎縮を2例認めた.【結論】骨欠損に骨補填材料を併用したTKAの中期成績はおおむね良好で,uncontained typeの大きな欠損でも有用な対処法と考えられた.ただし脛骨側でclear zoneの出現や骨萎縮を認めた症例もあり,長期的な経過観察が必要である.
  • 米倉 豊, 井手 衆哉, 藤田 君支, 高山 剛, 西古 亨太, 上杉 勇貴, 園畑 素樹, 馬渡 正明
    2014 年 63 巻 2 号 p. 340-344
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    人工関節の術後成績評価方法には,医療者サイドからみた関節機能評価と,患者サイドからみたQOL評価がある.今回,QOL評価であるOxford Knee ScoreとSF-8を用いて,人工膝関節術後患者のQOLを調査した.対象は両側同時TKA群56例112膝,片側TKA群32例32膝であった.両群において術前後でのKnee ScoreとFunction Score,Oxford Knee Score,SF-8を調査した.Knee Score,Function Scoreは両群ともに術前と比較すると,術後2か月,4か月,6か月,1年で有意に改善した.またOxford Knee Scoreは術前,術後6か月においてそれぞれ,両側同時TKA群37.6点,23.0点,片側TKA群31.4点,23.5点であり,両群とも有意に改善した.SF-8は,術前後で両側同時TKA群においてすべての項目で,片側TKA群において身体の痛みが有意に改善した.つまりTKA後のQOLは術後6か月程度で改善することが示唆された.
  • 田籠 泰明, 宮崎 正志, 吉岩 豊三, 小寺 隆三, 津村 弘
    2014 年 63 巻 2 号 p. 345-349
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    脊髄血管腫は椎体血管腫が一般的であり,椎体病変のない脊髄硬膜外血管腫は比較的稀な疾患である.そのうち,椎間孔およびその外側へ進展し,ダンベル型を呈したものの報告はさらに少ない.われわれはダンベル型を呈した脊髄硬膜外血管腫の3症例を経験した.3症例すべて数ヶ月かけて徐々に進行する脊髄症状を呈していた.MRIではT1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号,ガドリニウム造影で均一に造影され,すべての症例で椎間孔内外に進展していた.すべて手術療法により全摘することができ,術前の症状は消失し,現在のところ再発も認めていない.
  • 中川 亮, 菊池 直士, 井上 三四郎, 宮崎 幸政, 松田 匡弘, 吉本 憲生, 阿久根 広宣
    2014 年 63 巻 2 号 p. 350-354
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    烏口突起は解剖学的に強固な支持機構に囲まれており,強い安定性を示すため外傷を受けにくい部位である.逆に骨折を認めた場合には強い外力が加わっており,多数の肩甲帯損傷を合併するのが特徴である.烏口突起に烏口鎖骨靱帯を介しての剪断力と牽引力が働き骨折が生じ,肩甲帯損傷との合併損傷例に関しては不安定性が大きいため観血的整復が必要と考えられる.今回烏口突起骨折に肩鎖関節脱臼,鎖骨遠位端骨折を合併した2症例に対して観血的整復を行い良好な成績を得たので報告する.
  • 熊野 貴史, 竹田 智則, 藤原 明, 花田 弘文, 山口 史彦, 松元 敬, 浅野 圭, 原 道也
    2014 年 63 巻 2 号 p. 355-357
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】腱板不全断裂の術後成績はあまり知られていない.我々は,腱板不全断裂は腱板小中断裂と比較し,術後拘縮を来しやすいが,再断裂を起こしにくいのではないかとい仮説を立てた.本研究の目的は,腱板不全断裂の術後成績を腱板小中断裂のそれと比較検討することである.【対象】当院にて腱板不全断裂および腱板小中断裂に対して鏡視下腱板修復術を施行した33例35肩.腱板不全断裂群(以下,P群)14例14肩,腱板小中断裂(以下,C群)20例21肩,手術時平均年齢65.1歳,平均経過観察期間は293.5日であった.【方法】肩関節疾患治療成績判定基準および菅谷分類を用いて比較検討した.【結果】仮説に反し,最終経過観察時の可動域および再断裂率(P群7.1%,C群9.5%)は両群間に有意差を認めなかった.【考察】両群間で,最終経過観察時に可動域および再断裂率に有意差を認めなかったが,腱板不全断裂の術後成績を調査した貴重な研究と思われた.
  • 伊藤田 慶, 末永 英慈, 田中 哲也, 入江 努, 糸川 高史, 齊藤 太一
    2014 年 63 巻 2 号 p. 358-361
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    【目的】大腿骨頸部骨折に対しDual SC Screw Systemを用いて骨接合術を行った症例の治療成績について検討した.【方法】2006年6月から2012年4月までに大腿骨頚部骨折に対して骨接合術を行った31例のうち,1ヶ月以上経過観察可能であった26例26股(男性4股,女性22股)を対象とした.手術時年齢は58歳から91歳(平均78.8歳)で,術後平均観察期間は8.9ヶ月(1~42ヶ月)であった.骨折型はGarden分類stage I:13例,stage II:12例,stage III:1例であった.全例にスレッドバレル2本を使用した.【結果】平均手術時間は40.2±11.2分,出血は少量であった.再手術を要した症例は3例あり,その内容は骨頭壊死1例,偽関節1例,転子下骨折1例であった.【結論】臨床成績は短期成績ではあるが概ね良好であった.本手技の適応範囲,再手術のリスク,長期成績に関してはさらなる検討が必要であるが,比較的侵襲も少なく,有用な骨接合材料であると考えられた.
  • 桑島 海人, 藤原 将巳, 齊田 義和, 宮岡 健, 秋山 徹
    2014 年 63 巻 2 号 p. 362-364
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    当院では,不安定性の無い腰椎椎間板外側ヘルニア症例に対して,主に顕微鏡下外側開窓+ヘルニア摘出術を行ってきた.外側ヘルニアの診断にはMRIや椎間板造影,神経根ブロックを用いるが,今回我々は外側ヘルニアのMRI画像所見に関して評価したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例はH19年1月以降H24年8月までに当院での外側型ヘルニア手術症例54例(男性36例,女性18例),手術時年齢は36歳~87歳(平均64.4歳)であった.外側ヘルニアはcontained type,non-contained typeに分け,症状発生時期からMRI撮像までの期間や術前JOAscoreについて調査した.
  • 橋田 竜騎, 仲摩 憲次郎, 原 秀, 川﨑 優二, 別府 俊介, 白濱 正博, 志波 直人, 永田 見生
    2014 年 63 巻 2 号 p. 365-368
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    今回我々は上腕骨外側顆骨折を伴った小児肘関節脱臼の1例を経験したので報告する.症例は8歳,男児.丸太の上で遊んでいる際に転落し受傷した.肘関節後内側脱臼骨折を認め脱臼に対して徒手整復後当院紹介となった.受傷後5日目に上腕骨外側顆骨折に対して骨接合術を施行した.後療法は内側側副靭帯の損傷を認めたため3週間の外固定を行った.小児における純粋な肘関節脱臼は少なく,その多くは骨傷を伴う.合併骨折として内側上顆骨折を伴うことが多く,外側顆骨折を伴うことは比較的稀である.上腕骨外側顆骨折を伴った小児肘関節脱臼は上腕骨遠位骨端離開との鑑別が重要である.両者の鑑別として上腕骨外側顆骨折を伴った小児肘関節脱臼では橈骨長軸の延長が外側顆の中心を通らず,骨端離開では橈骨長軸の延長が外側顆中心を通るとされてきたが,本症例のように上腕骨外側顆骨折を伴った肘関節後内側脱臼で橈骨長軸の延長が外側顆中心を通る症例も散見される.術中の関節造影検査が確定診断に有用であった.
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