【はじめに】大腿骨転子部病的骨折により診断し得た骨原発成人T細胞白血病(ATL)の1例を経験したので報告する.
【症例】64歳男性.主訴は右股関節痛で単純X線にて右大腿骨大転子部に骨融解像を認めた.原発巣精査を行っている段階で転倒され,右大腿骨転子部病的骨折となった.PET,胸腹部CTで他臓器に病変はなく,切開生検にて骨組織からT細胞系の異常細胞増殖およびHTLV-1プロウイルス単クローン性バンドを認め,骨原発ATLの診断となった.可及的な腫瘍掻爬と骨セメント併用人工骨頭置換術を施行することでPSの改善を得た.術後,血液内科で化学療法を行っており有病生存中である.
【考察】ATLにおいて骨を主病変とするものは稀であり,過去に数例の報告があるのみである.しかし,九州を中心とする西南地方に多く,地域によっては鑑別に入れておくべき疾患である.術式選択においては,生命予後を当該科と相談しながら慎重に決定する必要がある.
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