整形外科と災害外科
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65 巻, 1 号
選択された号の論文の46件中1~46を表示しています
  • 内田 泰輔, 安川 晋輔, 野原 栄, 田山 尚久
    2016 年 65 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    皮膚病変に細菌感染を合併することは,日常の診療でしばしば遭遇するが,その起因菌は皮膚常在菌であることが多く,通常は抗菌薬の内服で軽快することが多い.しかし,糖尿病などの免疫力低下の背景を持つ患者では重症化し,壊死組織の除去を含めた外科的処置に加え全身管理が必要となることがある.今回我々は糖尿病患者において皮膚病変の感染が壊死性軟部組織感染症に進展した2例を経験したので報告する.両症例とも切開排膿術を施行し,抗菌薬の投与および厳重な血糖コントロールを行い軽快した.糖尿病などの易感染性の患者では皮膚の感染が重症化する可能性があり,早期に除圧目的の小切開を検討する必要があるのではないかと考えた.
  • 松下 任彦, 橋本 伸朗, 福元 哲也, 前田 智, 中馬 東彦, 平井 奉博, 浦田 泰弘
    2016 年 65 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    人工股関節手術(人工股関節置換術および人工骨頭置換術)において術中に内閉鎖筋を温存した症例と切離した症例を比較し,同筋に生じる術後変化に関してCT画像での確認を試みた.更に,画像上変化の出現時期についても推測した.2010年9月から2015年5月に当科で施行した両手術の中で60例を対象とし,内閉鎖筋を温存し得たと術者が判断した28例28股をA群,同筋を切離した32例32股をP群として比較検討した.切離された内閉鎖筋には有意に萎縮変化が生じており,同筋が温存されているか否かを術後にCT画像で推定・判断することは可能であることが示唆された.また,術後3ヵ月未満で画像上に変化が出現し,その後から次第に明確になると推測された.
  • 北島 将, 河野 俊介, 園畑 素樹, 馬渡 正明
    2016 年 65 巻 1 号 p. 10-12
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    【目的】人工股関節全置換術(THA)を後方アプローチで展開する場合,筋肉を切離して展開するため術後の筋力低下が指摘されている.屈曲,外転筋力に関する報告は散見されるが,外旋筋力に関する報告は少ない.今回の目的は,人工股関節置換術前後の外旋筋力を比較することである.【方法】2013年10月から2014年10月までにTHAを行い術前後の筋力を比較できた18例22股を対象とした.男性4股,女性18股.平均年齢70歳(54-87歳)であった.THAは全例後方アプローチで行い,高位脱臼症例,再置換術症例は除外した.外来受診時(術後半年もしくは1年)に,徒手筋力計モービィ(SAKAImed)を用いて,屈曲,伸展,外転,内転,外旋,内旋の筋力を測定し術前後で比較した.【結果】外旋筋力は術前9.4kgf,術後8.6kgfであった.【考察】THA後の外旋筋力回復には個人差があるが,正常と同じレベルまで回復する症例も存在する.
  • 永芳 郁文, 川嶌 眞之, 本山 達男, 古江 幸博, 渡邊 裕介, 佐々木 聡明, 川嶌 眞人, 田村 裕昭
    2016 年 65 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    【目的】変形性股関節症に対し,ショートテーパーウェッジ型ステムを使用した人工股関節全置換術を行ったので,短期成績を報告する.【対象および方法】2011年10月から2014年12月までに施行した60例のうち,1年以上経過観察しえた44関節を対象とした.内訳は,男性5症例,女性39症例,手術時平均年齢69.4歳,術後平均観察期間は2.1年,使用インプラントは,Taperloc(Biomet社)である.調査項目は,臨床評価として日整会股関節機能判定基準(JOAスコア),X線学的評価は(1)髄腔形状(2)ステムアライメント(3)Enghの固定性評価(4)Stress shieldingの有無である.【結果と考察】JOAスコアの改善と全例の良好な固定性が確認された.ステム設置に関しては,屈曲位挿入を4関節(9.1%)に認め,ステムが短くフラットな形状であり,アライメントに対する設置時の充分な注意が必要であると思われた.
  • 棚平 健, 渡邉 弘之, 赤崎 幸二, 相良 孝昭, 瀬形 建喜, 畠 邦晃, 田村 諭史, 清家 一郎
    2016 年 65 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    人工股関節置換術(THA)のインプラント固定様式の世界的な傾向はセメントレスTHAの割合が増加しており我が国でもセメントレスTHAが圧倒的に多い.一方セメントTHAはこれまですぐれた長期成績が多数報告されており,特に高齢者ではセメントレスTHAに比べセメントTHAが再置換率が低いという報告もある.高齢者のTHAにおけるセメントレスステムの術後長期経過後の画像上の変化に関して,JMM PerFix HAステムを用いた初回THAで術後10年以上経過観察しえた症例について検討したので若干の考察を加えて報告する.
  • 曽根崎 至超, 加来 信広, 田畑 知法, 津村 弘
    2016 年 65 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    大腿骨側の人工股関節再置換術において,海綿骨の残存が少ない症例や骨欠損を伴う症例に対し,当科では骨量の回復を目的としたImpaction bone grafting法(以下IBG法)を用いてきた.2005年から2012年までに当科で施行したIBG法を併用した再置換術は18症例18関節であり,男性1例,女性17例であった.術前診断は無菌性ゆるみが13関節,ステム周囲骨折が4関節,偽関節が1関節であり,骨欠損はEndo-Klinik分類でgrade2が6関節,grade3が8関節,grade4が4関節であった.経過観察期間は1年から9年6ヶ月(平均5年9ヶ月)であった.1関節のみ術中セメント抜去時に骨折を認め,術後はステム周囲骨折が1関節,脱臼が1関節,深部静脈血栓症が2関節にみられた.X線像においてステムの沈下は平均1.1mmであり,3mm以上の沈下を生じた関節はなかった.骨透亮像を認めた関節はなく,同種骨の同化は全関節にみられた.JOAスコアは平均40点から87点へ改善し,術後にゆるみを生じた関節はなく,おおむね良好な成績が得られていた.
  • 河野 大, 尾上 英俊, 中村 厚彦, 廣田 高志, 大里 恭平, 柴田 光史
    2016 年 65 巻 1 号 p. 29-31
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    我々はPilon骨折に対してIlizarov創外固定器を用いた二期的手術を行っており,若干の文献的考察を加えて報告する.対象は2011年~2014年までに当院にてPilon骨折に対し初期治療でIlizarov創外固定を行い,二期的内固定を行った8例とした.男性7例,女性1例,受傷時平均年齢は42.5歳(13~62歳),平均経過観察期間は1年2か月(11か月~1年7か月)であった.二期的内固定はプレート:7例,CCS:1例で,全例で骨癒合を認め合併症は認められなかった.Ilizarov創外固定器装着時に遠位リングを用いて整復操作を行うことでligamentotaxisによりアライメントが矯正され,二期的内固定を行う際の手術操作が容易となるため有用な方法と思われる.
  • 田籠 泰明, 生田 拓也, 阿南 敦子, 西野 剛史, 束野 寛人, 笠 智就
    2016 年 65 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    足関節脱臼骨折は多くの場合容易に徒手整復可能である.Bosworthは1947年に腓骨が脛骨後面に転位固定される整復困難な足関節脱臼骨折を報告した.我々は2004年にBosworth型足関節脱臼骨折の1症例を報告し,その後さらに2症例を経験した.3症例とも無麻酔下に徒手整復を試みたが整復困難であり,観血的整復術を行った.足関節脱臼骨折において整復困難な症例では本脱臼骨折を念頭に置き,CT撮影で病態を把握し,準緊急的に整復術を行うことが必要であると考える.
  • 柴田 光史, 尾上 英俊, 中村 厚彦, 亀川 史武, 廣田 高志, 河野 大, 大里 恭平
    2016 年 65 巻 1 号 p. 37-39
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    【はじめに】上腕骨近位端骨折に合併する腋窩動脈損傷の報告は欧米では散見されるものの,我が国では少ない.今回我々は自験例を通じて上腕骨近位端骨折と腋窩動脈損傷の関連性を文献的考察を加え報告する.【症例】76歳女性,自転車で走行中に自己転倒し,当院へ救急搬送された.左肩から上腕にかけての疼痛,患肢皮膚温低下,手関節・手指の伸展制限を認め,橈骨動脈触知は微弱であった.単純X線像で左上腕骨近位端骨折(AO 11-A3)と診断し,造影CTでは骨折部位による左腋窩動脈の途絶を認めたが末梢の描出は良好であった.受傷後4日目に観血的骨接合術を行い骨折部を整復することで橈骨動脈の拍動は回復した.【結語】腋窩動脈損傷が疑われた上腕骨近位端骨折の1例を経験した.
  • 李 容承, 松浦 恒明, 進 訓央, 兼川 雄次, 谷口 秀将
    2016 年 65 巻 1 号 p. 40-42
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    3例と症例数は少ないが,肩関節前方脱臼に対して上腕近位部を外側に水平移動させることで上腕骨頭が関節窩の前縁を越えるようにして整復することができた.本法は,脱臼時の肢位のまま整復するため,侵襲が少ないと言える.多くの場合,救急外来における肩関節前方脱臼の整復法の第一選択は前方挙上法で,第二選択がStimson法やヒポクラテス法であるが,Stimson法は腹臥位・長い整復時間を要するし,ヒポクラテス法は骨折や腋窩神経損傷を起こす恐れがある.第一選択の前方挙上法で整復できない場合,第二選択として本法を試すことは有意義かもしれない.
  • 橋本 卓, 原田 洋, 諸岡 孝明, 増田 祥男, 諸岡 正明
    2016 年 65 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    鏡視下Surface-holding法を施行した腱板断裂43例43肩の術後成績を検討した.男性26肩,女性17肩,手術時平均年齢は66.4歳,術後平均経過観察期間は21.7ヵ月であった.断裂サイズは不全・小断裂7肩,中断裂5肩,大断裂9肩,広範囲断裂22肩で,広範囲断裂の4肩に大腿筋膜移植術を併用した.検討項目は術前後のJOAスコア,Goutallierらの分類による術前の筋脂肪変性の程度,Sugayaらの分類による術後のcuff integrityである.JOAスコアは術前平均56.8点から術後88.9点と有意に改善した.再断裂は9肩(再断裂率:20.9%)で,広範囲断裂に限ると再断裂率は27.3%,筋脂肪変性がgrade 3以上の症例の再断裂率は33.3%であった.広範囲断裂及び高度の筋脂肪変性を有する症例では筋膜移植やRSAなどの方法も考慮して行く必要性が考えられた.
  • ―縫合糸の違いによる比較―
    木村 岳弘, 諸岡 孝明, 原田 洋, 橋本 卓, 砂辺 完治, 増田 祥男, 諸岡 正明
    2016 年 65 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    【目的】中断裂以上の腱板断裂に対し,ノットレスアンカーを用いたbridging suture法による鏡視下腱板修復術(ARCR)を行ってきた.縫合糸として従来の細い糸をbridgingしたsuture bridge法(SB法)と2mm幅のFiberTapeのbridgingを併用したSpeedBridge法(SP法:Arthrex)を行ってきたので,その治療成績について報告した.【対象と方法】2011年から2014年に著者がbridging suture法によるARCRを行い,6か月以上経過観察可能であった52例を対象とした.SB法を25例(B群)に,SP法を27例(P群)に行い,臨床成績,MRIによる腱板修復状態について検討した.【結果】両群でJOA score,自動屈曲可動域の改善を認めた.MRIにおける再断裂をB群では7例(28%)に,P群では6例(22.2%)に認めた.【まとめ】両群ともに概ね良好な臨床成績であった.P群はB群と比較し再断裂率が低かったが有意差は認めなかった.
  • 森 圭介, 崎村 俊之, 依田 周, 水光 正裕, 根井 吾郎, 矢部 嘉浩
    2016 年 65 巻 1 号 p. 51-53
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    【はじめに】本邦では報告の少ない遠位上腕二頭筋腱断裂の1例を経験し,手術により良好な結果を得たので報告する.【症例】41歳男性.ラグビーでタックルをした際,相手の膝が右前腕に当たり受傷した.受傷翌日の初診時,肘関節前方の疼痛および前腕回外,肘関節屈曲の筋力低下を認めた.またMRIで遠位上腕二頭筋腱断裂を認めた.手術は2皮切法で行い,Krachow法で腱に高強度糸を2本通し,pull-out法で橈骨粗面に修復した.術後3週間は肘関節90度屈曲,回外位でシーネ固定した.術後4ヵ月から段階的にコンタクトプレーを再開し,術後合併症や筋力低下,可動域制限などの問題なく術後6ヵ月で競技復帰した.【考察】本症例に対する術式には1皮切法,2皮切法があり,それぞれに利点,欠点が報告されている.本症例では2皮切法を行い良好な結果が得られた.
  • 横江 琢示, 田島 卓也, 中村 嘉宏, 山口 奈美, 黒木 修司, 帖佐 悦男
    2016 年 65 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    宮崎大学医学部整形外科は宮崎県と連携し,積極的にスポーツイベントへのメディカルサポートを行なっている.平成25年度に当科が行ったメディカルサポート状況につき調査した.宮崎大学医学部整形外科所属の医師が出務した宮崎県外・海外へのチーム帯同や医事運営は10件でその期間は3日間から32日間であった.内訳としては,U-17女子サッカー日本代表帯同が3件,国民体育大会(国体)宮崎県選手団帯同が3件,国体サッカー少年の部帯同が3件,全国高校ラグビー大会帯同が1件であった.宮崎県内で開催されたスポーツイベントのマッチドクター,医事運営への出務は46競技会62日間であった.内訳としては,ラグビー32日,サッカー11日,柔道8日,マラソン2日でその他競技が9日であった.出務医師総数は15人で8人はスポーツドクター資格保持者であった.当科でのスポーツイベントへの医師派遣の現状および課題について報告する.
  • 渡辺 恵理, 髙﨑 実, 畑中 均, 上條 秀樹
    2016 年 65 巻 1 号 p. 58-61
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    (目的)今回我々は,当院で長母指伸筋腱皮下断裂に対して局所麻酔下に固有示指伸筋腱の腱移行術を行い,術後に早期運動療法を行った5例の成績について報告する.(方法)手術は,エピネフリン入り局所麻酔下でターニケットを使用せずに施行した.固有示指伸筋腱を長母指伸筋腱に2~3回interlacing sutureを行った後に,自動運動を行い,腱移行の緊張度を最終決定した.術後1週以内からセラピストの監視下で自動可動域訓練を開始し,その後は屈曲制限付きのthumb spica splintを使用した.術後4週でほぼsplintを除去した.(結果)最終経過観察時の%TAMは,平均94.1%であった.Riddellの評価基準では,excellent4例,good1例であり,良好な結果であった.(結論)長母指伸筋腱皮下断裂に対し,術後早期運動療法を行った局所麻酔下腱移行術の成績は良好であった.
  • 上條 秀樹, 畑中 均, 髙﨑 実
    2016 年 65 巻 1 号 p. 62-65
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    著者らは保存療法で改善しない母指CM関節症に対して,suspensionplastyを施行している.しかし,術後の母指列短縮の経時的変化を測定した論文は少ない.本研究はsuspensionplastyの術直後・1,3,6,12ヶ月後及び12ヶ月後に2kgのkey pinch負荷した時の,母指列短縮の経時的変化を追跡した.【対象】45~69歳の7例8指を対象とした.平均年齢は63歳であった.Eaton分類ではstage II,III,IVがそれぞれ1,6,1例,評価期間は12ヶ月であった.【結果】握力,key pinch,ROM,DASH scoreともに統計学的有意差をもって改善した.大菱形骨切除後の空隙を母指基節骨の長さもしくは第1中手骨の長さで除したそれぞれの平均値を母指列短縮の指標とした.いずれも術後1ヶ月で短縮をみとめたが,以後1年間において短縮は観察されなかった.
  • 緒方 光次郎, 岡 潔, 佐藤 広生, 末吉 貴直, 浦田 泰弘, 水田 博志
    2016 年 65 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    目的:左第3中足骨に発生した類骨骨腫の1例を経験したので報告する.症例:患者は8歳男児.2か月前にサッカーをした後から左足背部の腫脹,疼痛を認め近医にて疲労骨折の診断を受けるも,改善なく当科紹介となった.単純X線像では第3中足骨に全周性の骨硬化像と,第2中足骨の外側皮質骨にも硬化像が見られた.単純CTでは,中足骨基部にnidusを認めた.MRIでは,nidus周囲にはT2強調画像及びSTIR像にて高信号域の拡散を認め,炎症の波及と思われた.手術にてnidusを摘出した.病理検査の結果,類骨骨腫と診断が確定した,術後4か月で第3中足骨の皮質骨の肥厚は残存するも,第2中足骨の肥厚はリモデリングされていた.考察:骨皮質の肥厚にはプロスタグランジンが関係していると考えられている.治療は手術,RF焼経過灼術にて治療を行うが,どちらも10%程度の再発率があり,今後も経過観察が必要である.
  • 徳永 敬介, 宮田 倫明, 富田 雅人, 鶴 展寿, 新見 龍士, 尾﨑 誠
    2016 年 65 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    症例は45歳女性.小児期より巨人症の症状があり,薬物療法を受けていたがドロップアウトしていた.15年前より左下腿に皮膚潰瘍を認め保存的加療を行っていたが,動脈性出血を繰り返すようになり,出血性ショックに至ることもあった.保存的には治療困難であり,外科的治療目的に当科紹介となった.全身の骨肥厚,変形が強く,特に左下肢に著明で,左下腿遠位前面に広範囲の潰瘍を形成していた.溶連菌・大腸菌による感染を認め,瘻孔癌の発生も危惧されたため,創閉鎖は困難と考えた.左大腿部にて四肢切断術を行い,止血および近位側への感染拡大の予防目的に切断した大腿骨髄腔にバンコマイシン含有骨セメントを充填した.大腿骨および下腿骨の病理検査では線維性骨異形成の診断であった.潰瘍周囲に瘻孔癌は認めなかった.術後,断端の創状態は問題なく,今後,義足を作成する方針としている.本症例に若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 宮田 倫明, 富田 雅人, 尾﨑 誠
    2016 年 65 巻 1 号 p. 75-77
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    【はじめに】鼠径部軟部組織悪性腫瘍に伴う血行再建術後にMRSA感染を生じた1例を経験し良好な結果を得たので報告する.【症例】症例は72歳の男性である.右鼠径部に発生した低悪性型筋線維芽細胞肉腫に対して血管合併切除を行ない,人工血管を用いた血行再建を行った.術後リンパ漏と創縁の皮膚壊死を生じたためデブリードマン,Vacuum-assisted closure(VAC®)装着,分層植皮を行い創閉鎖していた.術後42日目に創部より排膿ありMRSAが検出された.治療はVAC®システムを用いて人工血管を温存する方法を選択した.VAC®装着期間は35日間,感染発生から創閉鎖までの期間は65日間であった.創閉鎖から現在まで感染の再燃はみられていない.【考察】以前は人工血管の感染に対して抜去が一般的であったが,近年VAC®療法によって人工血管を温存する報告も散見される.VAC®療法は人工血管感染において下肢の虚血を防止でき有効な治療法の選択肢となり得ると考えた.
  • 中川 愛梨, 濱田 哲矢, 平岡 弘二, 庄田 孝則, 後藤 雅史, 松田 光太郎, 長田 周治, 志波 直人
    2016 年 65 巻 1 号 p. 78-81
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    木村氏病(軟部好酸球性肉芽腫)は,全身の軟部組織,特に頭頸部に好発する好酸球浸潤を伴う炎症性肉芽腫である.上腕発症例の報告は少なく,本症を経験したので報告する.症例は,36歳男性.特に誘引なく右上腕の腫瘤に気が付き掻痒感が強く近医を受診,MRI検査を施行し上腕の軟部腫瘍の疑いで当院を紹介された.右上腕内側に3×3 cm,5×5 cmの硬い腫瘤を2個触知した.MRIで腫瘤は,皮下に存在しておりT1強調像でiso,T2強調像でvery high,造影検査では漸増性に造影された.木村氏病を念頭に切除生検を行い確定診断した.術後2カ月,局所再発は認めないが右腋窩部,左鼡径部に掻痒感を認めた.全身CTを施行し,同部位に多発するリンパ節腫脹を認めた.プレドニゾロン投与40mg/dayを開始し10mg/dayまで減量し再発は認めない.木村氏病はまれな疾患だが,特徴を把握すれば鑑別が可能で,軟部腫瘤で掻痒感を認めた場合,考慮されるべきである.
  • 富田 雅人, 宮田 倫明, 尾﨑 誠
    2016 年 65 巻 1 号 p. 82-87
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    比較的稀な腫瘍である胞巣状軟部肉腫(ASPS)3例の治療を経験したので報告する.症例は全例女性で,年齢は11,18,25歳であった.経過観察期間は平均4年8ヵ月であった.発生部位は全例筋層内(三角筋,大腿四頭筋,下腿三頭筋)であった.原発巣の治療は,辺縁切除+追加広範切除1例,広範切除1例,大腿切断1例であった.術後局所再発は1例も認めていない.2例に初診時既に多発肺転移を認め,他の1例も経過中に多発肺転移を生じた.更に頭蓋骨転移1例,小脳転移1例をみとめた.転移巣に対する治療は,1例に肺腫瘍切除,頭蓋骨腫瘍切除が,1例に放射線照射が行われた.化学療法は1例にADR+IFM+VCRが,1例にADR+IFMが行われ,2例にパゾパニブが投与された.1例でパゾパニブによる転移性肺腫瘍の縮小を認めたが,肺腫瘍は3例ともに緩徐に増大している.腫瘍学的転帰は3例ともにAWDであった.今後ASPSに対する有効な治療法の確立が望まれる.
  • 井上 三四郎, 吉田 裕俊, 富永 冬樹, 中家 一寿
    2016 年 65 巻 1 号 p. 88-90
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    1997年,三尾母らは,当院での脊椎カリエスの治療経験を本誌に発表した.今回,2009年から2014年までに当院で治療を行った脊椎カリエス25例について,既報との比較を行った.男性8人女性17人であった.平均75.6(32~90)歳であり,70歳以上の症例が22例(88%)を占めた.肺結核などの脊椎カリエス以外の結核は,15例(60%)に合併した.糖尿病などの合併症は,8例(32%)に認めた.入院時麻痺は10例(40%)に認めた.治療法は,16例(64%)に手術(前方固定7例,腸腰筋膿瘍掻把1例,後方固定8例)を施行し,9例(36%)は保存的に治療した.経過観察期間は,平均20.5(1~50)か月のフォローで,最終調査時に7例が死亡しており,うち5例は保存治療が行われていた.既報と比較し,年齢と治療法に統計学的に有意差を認めた.約20年前と比べて,患者は高齢化し手術が躊躇される患者が増加した.
  • 藤井 陽生, 河村 誠一, 麻生 龍磨, 畑中 敬之, 今澤 良精, 橋口 智光
    2016 年 65 巻 1 号 p. 91-93
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    【目的】大腿骨近位部骨折患者では摂食・嚥下障害を認めることが少なくない.術前から安全に経口摂取を行うことにより低栄養,誤嚥などを予防できると考え2015年1月より入院時から嚥下に配慮した食形態(嚥下食)を導入した.【対象と方法】2014年4月から2015年3月まで当科で手術治療を実施した大腿骨近位部骨折58例を対象とした.入院時より嚥下食を導入した群(早期介入群)14例,入院時よりの嚥下食非使用群44例である.嚥下食非使用群のうち摂食・嚥下障害によりST介入を要した群(ST介入群)10例,ST介入を要さなかった群(ST非介入群)34例であった.各群の血清アルブミン,手術までの待機時間,誤嚥の有無について調査を行った.【結果】ST介入群に比べてST非介入群の入院時と退院時の血清アルブミンに差が認められた.手術までの待機時間に有意な差を認めなかった.早期介入群には誤嚥性肺炎の発生はなかった.
  • 清水 大樹, 佐々木 大, 萩原 博嗣, 水城 安尋, 内村 大輝, 千住 隆博, 矢野 良平, 巣山 みどり
    2016 年 65 巻 1 号 p. 94-98
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    【目的】大腿骨近位部骨折に対して,手術を延期せざるをえなかった症例の解析を行った.【対象】2012年1月~2013年12月に大腿骨近位部骨折を受傷し,当院で手術した296症例のうち,術後1年までカルテ上追跡可能であった107例を対象とした.【結果】入院から手術までに8日以上かかった症例は28例(26.2%)であった.延期理由は抗血小板薬の休薬13例,呼吸器・尿路感染症による発熱が3例ずつ,腎後性を含む急性腎機能低下が2例,認知症が強く発見が遅れた2例であった.手術を7日以内に行った群と8日以上待機した群で生命・機能予後には有意差を認めなかった.【考察】本研究では1年後ADL低下は8日以上群でむしろ小さかった.1年後に再来可能であった症例に限定しているため,成績不良例が除外された可能性があるが,これは諸家の報告にあるように,高齢者でも8日以上待機しても生命・機能予後に劣らないということを示すと思われる.また,当科において待機日数を減らす可能性のあるものとしては抗血小板薬の休薬期間を設けずに手術を行うことが挙げられるが,今後は内服中であっても手術をできるだけ早期に行い,それ以外の要因の場合は合併症治療を行った上で手術を行う方針とした.
  • 原口 和史, 佐伯 覚, 加藤 徳明, 村上 武史, 野口 雅夫, 林 秀俊, 蜂須賀 研二, 糸満 盛憲
    2016 年 65 巻 1 号 p. 99-100
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    北九州リハ医会が運営母体となり,2011年8月より運用してきた北九州大腿骨近位部骨折地域連携パス―北九州標準モデル―の現況と問題点について報告した.パスの様式は連携に必要な患者情報に特化し,詳細な内容や期間等は含めていない.ホームページからダウンロードでき,電子入力も可能であるが,パスデータの送付は紙ベース.連絡協議会は北九州脳卒中パスと同時開催である.2015.4.15現在,参加施設は急性期病院15,回復期リハ病棟など34,維持期5,計54施設で,北九州市,遠賀中間地区の主要医療機関が参加.総パス利用件数は2225件である.参加しやすさを優先したため,診療計画や達成目標を明確でない,二次骨折の予防の視点に欠けるなどの問題点があり,パスの改訂作業を予定している.
  • 普天間 朝拓, 池間 正英, 上原 健志
    2016 年 65 巻 1 号 p. 101-105
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    我が国の高齢者人口の増加に伴い,大腿骨近位部骨折に罹患する患者も年々増加している.2030年には約30万人の患者の発生が推計されている.1)当院でも大腿骨近位部骨折患者は増加の一方をたどり,2014年度は約150人の患者が受診し手術治療を受けた.大腿骨近位部骨折の治療原則は早期手術,リハビリテーションであり2005年のガイドラインでは“少なくとも受傷1週以内”の早期手術を推奨している.我が国では,各病院のシステムなどの問題から待機手術にならざる得ない現状があり,実際平均待機日数は4.6日と報告されている2)今回の調査で当院での手術待機期間は平均10.6日であり明確な遅延理由のない症例だけでも平均7.1日と我が国の平均待機期間4.6日より長い結果となっていた.大腿骨近位部骨折に対する麻酔科を含めた他科の理解を深め,出来るだけ早期の手術を提供できるよう病院のシステムを改善する必要がある.
  • 松木 佑太, 村上 智俊, 越智 康博, 國司 善彦, 木戸 健司
    2016 年 65 巻 1 号 p. 106-109
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    大腿骨転子部骨折に対するshort femoral nailによる骨接合術での髄腔幅とnailの遠位径の差(mismatch),nailの内反移動,及び術後成績の検討を行った.当院で大腿骨転子部骨折に対して骨接合術を施行した51例(男12例,女39例)を対象とした.検討項目は単純X線前後像におけるmismatch,術直後の単純X線とその後の変化,lag screwのsliding量,nailの内反とした.mismatchが2mmより大きい症例をM群,2mm以下の症例をm群とすると術直後,最終観察時共にM群の方が内方型,髄内型が有意に多かった.また整復位の変化,nailの内反もM群に有意に多かった.今回のmissmatchの検討より,髄腔が広い症例に径の小さいnailを使用することで,nailの内反を引き起こし整復位の損失やその後のcut outのリスクに繋がることが示唆された.
  • 田中 寿人, 笠原 貴紀, 秋山 菜奈絵
    2016 年 65 巻 1 号 p. 110-115
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    【目的】大腿骨転子部骨折の治療において術中の整復が困難で難渋する場合がある.また術前の画像でもその困難さを予見できない.予め術中整復手技を用意しておく事でより安全な治療が担保できると考えた.【手技】手技1:通常の外側皮切より近位骨片に向かいエレバを挿入.皮切部付近をテコとして骨片を整復する.手技2:前方に皮切を加え,エレバを骨折部に挿入し牽引力を加えながら整復する.【結果】手技1の利点は新たな皮切を加える必要がない点である.欠点は牽引力が加えられないので整復できない場合がある事と手術操作部と同じ皮切のため手術操作に干渉する事,さらに前方から点で押さえるだけなので骨片把持力が弱い事である.手技2の利点は骨折部に牽引力や遠位骨を持ち上げる力を加えられるので整復が確実に行える点である.欠点は前方に皮切を追加する必要がある点だが,部位はScarpa三角よりもかなり外側で神経血管束を損傷する危険はなかった.
  • 生田 拓也, 野口 和洋, 阿南 敦子, 西野 剛史, 田籠 泰明
    2016 年 65 巻 1 号 p. 116-118
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    【要旨】大腿骨転子部から転子下偽関節に対してDCS(dynamic condylar screw)による治療を行ったので報告した.症例は4例で,男性3例,女性1例,平均年齢71.9歳であった.初回手術方法はnail:3例,CHS:1例であった.大まかな整復の後,ガイドピンおよびlag screwはフリーハンドにて挿入したあと,lag screwおよびplateを連結し固定した.術後療法は約4週間免荷のあと荷重を開始した.手術時間は平均2時間35分,出血量は平均313mlであった.1例にインプラント折損を認め再手術,再再手術を行った.最終的にはこの1例を含め全例で骨癒合が得られた.DCSは大腿骨転子部から転子下偽関節に対する内固定材として,抜去したlag screwの空隙があっても固定力に影響を受けないため,一定期間の免荷が必要となるデメリットを考慮しても選択肢の一つとなりうる方法であると考えられた.
  • 村上 大気, 濱本 祐樹, 山本 真人, 谷田 玲, 近藤 康光
    2016 年 65 巻 1 号 p. 119-121
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    大腿骨転子部骨折に対する髄内釘固定術後の二次骨折について検討した.対象は2010年1月から2015年1月までに大腿骨転子部骨折に対して髄内釘固定術を行った273症例のうち同側の大腿骨骨幹部骨折を生じた症例とした.検討項目は二次骨折の発生率,骨折形態,骨折時期,受傷機序,手術法とした.二次骨折は5例あり,その発生率は1.8%,骨折形態はネイル先端から遠位横止めスクリューにかかる二次骨折が4例,ネイル先端遠位の二次骨折が1例,それぞれの骨折時期は骨接合術後平均53.8日,1年であった.受傷機序は転倒2例,移乗動作時が3例,手術方法は全例ロングネイルで固定した.髄内釘固定術後の二次骨折のうちネイル先端から遠位横止めにかかる大腿骨骨幹部骨折は,遠位横止めにかかる応力の集中が関与している.二次骨折は術後早期に軽微な外力で生じており,高齢者や認知症による転倒リスクが高い症例では避けられない合併症の一つであると思われた.
  • 山口 洋一朗, 森 治樹, 三橋 龍馬, 梅﨑 哲矢
    2016 年 65 巻 1 号 p. 122-124
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    【はじめに】大転子単独骨折のように見える症例でも,不顕性の転子部骨折を合併することがあり,その場合は慎重な経過観察の必要がある.今回,当科で経験した大腿骨大転子骨折の患者に不顕性転子部骨折の有無を検索して加療した症例を検討したので報告する.【対象と方法】2007年4月~2014年12月に当科で大腿骨大転子骨折と診断された19肢が対象.【結果】平均年齢82.7歳で男性2例3肢,女性16例16肢,各症例についてXp,CT,MRIを用いて画像検索を行った.手術症例は1肢,保存症例は18肢であった.MRIを撮影した症例は5肢あったが,全例小転子まで及ぶ骨折線を認めた.起立訓練までは平均2.5日,歩行訓練までは平均3.8日であった.【まとめ】大転子骨折には高率に転子部不顕性骨折を合併した.転子部不顕性骨折を認める症例でも保存的加療での早期荷重・早期離床も選択肢となり得た.だが,本人・家族の理解と同意や慎重な経過観察が必要と考えられた.
  • 徳本 寛人, 泉 俊彦, 高野 純, 山下 芳隆, 永野 聡, 小宮 節郎
    2016 年 65 巻 1 号 p. 125-127
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    当院における大腿骨頚部骨折に対する人工骨頭置換術において,前外側アプローチ(ALS)と前方アプローチ(DAA)の短期成績を比較検討した.2014年5月から2015年2月までに人工骨頭置換術を行ったALS群13例とDAA群8例に対して手術時間,術中出血量,下肢伸展挙上(SLR)獲得時期,合併症について比較した.手術時間はALS群59.5分,DAA群54.5分,術中出血量はALS群99.2ml,DAA群81.9ml,入院中SLR獲得者はALS5例,DAA5例で獲得時期はALS6.0日,DAA8.2日,合併症はDAA群で1例に外側大腿皮神経障害を認めた.人工骨頭置換術において両群間の短期成績に有意差を認めなかった.
  • 西 竜一, 我謝 猛次, 杉浦 由佳, 金城 健, 粟国 敦男, 上原 敏則
    2016 年 65 巻 1 号 p. 128-131
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    20歳女性,自殺目的で15階から墜落,ショックで当院搬送.診断は第5腰椎(以下L5)脱臼骨折,両側L1-5横突起骨折,L3スライス骨折.合併損傷は左大量血胸,左多発肋骨骨折,腹腔内出血,脾損傷,左腎損傷,右股関節前方脱臼,右大腿骨骨幹部骨折,左上腕骨骨幹部骨折,左橈尺骨骨折であった.緊急動脈塞栓術,脾摘,観血的股関節脱臼整復,大腿骨直達牽引及び大量輸血で循環動態は落ち着いた.第6病日に四肢外傷に対して観血的骨接合術を行い,脊椎損傷は全身状態の回復を待ち手術予定とした.しかしその後多臓器不全となったため保存治療とした.全身状態は徐々に回復し,第93病日にリハビリ目的で転院となった.転院時には右凸Cobb角15度(L1/4)であった側弯が,受傷11ヶ月後には40度に増悪したため後方矯正固定術を行った.術後7ヶ月経過した現在,instrument failureなく,矯正を維持しており経過良好である.
  • 栗之丸 直朗, 中村 英一郎, 山根 宏敏, 邑本 哲平, 酒井 昭典
    2016 年 65 巻 1 号 p. 132-135
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    腰椎すべり症に対してExtreme lateral interbody fusion(以下XLIF)を施行し,脊柱管の間接的な除圧効果が得られた1例を経験したので報告する.【症例】51歳 女性.18ヵ月ほど前から両下肢痛が出現し,内服加療効果がないため入院した.神経学的にはL3/4での馬尾障害と左L4神経根障害と診断した.X線にてL3前方すべりを認め,MRIにてL3/4の狭窄を認めた.L3前方すべり症と診断し,XLIF(L3/4)および経皮的L3-4後方固定(with PPS)を施行した.脊柱管の直接的な除圧術は施行しなかった.手術時間4時間45分,出血30gであった.術後4ヶ月の時点で術前に認めた痛みは改善し,MRIでは狭窄が改善していた.【考察】XLIFは,適切な椎間板腔の獲得と強固な固定により間接的な脊柱管除圧効果が得られ,また,低侵襲であることから出血や感染リスクの低減がはかれる方法である.
  • 浦上 勝, 藤本 徹, 岡田 龍哉, 谷脇 琢也, 水田 博志
    2016 年 65 巻 1 号 p. 136-139
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    【目的】高度腰椎変性後側弯症に対する後方矯正固定術症例における臨床症状・X線所見を術前後にて比較検討した.【方法】Cobb角40°以上の側弯か後弯30°以上を認める症例で後方矯正固定術を施行した6例に対し手術時間,術中出血量,固定椎関数を測定し,臨床所見としてJOA Score・VAS,X線所見としてCobb角・Sagittal Vertical Axis(SVA)・Lumber Lordosis(LL)・Pelvic Tilt(PT)・Sacral Slope(SS)・Pelvic Incidence(PI)を術前後で比較検討した.【結果】手術時間は平均8時間26分,術中出血量は平均2,550ml,固定椎間数は平均8.1椎間,Cobb角・LL・PT・SS・PI-LLは術後有意に改善しており,腰痛も改善していた.腰椎前弯矯正改善群と不良群に分けて検討すると,前弯矯正改善群にて術後SVA改善が良好で,症状改善も良かった.【考察】腰椎前弯の再獲得が体幹バランスの矯正と臨床症状改善に寄与していると考えられた.
  • 柳澤 義和, 野村 裕, 高野 祐護, 田中 孝幸, 有馬 準一
    2016 年 65 巻 1 号 p. 140-141
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    [はじめに]腰椎除圧後の合併症で手術高位の不安定性による神経障害がある.今回腰椎除圧術後に同部位で経椎間孔的腰椎椎体間固定術(TLIF)を行った症例について検討した.[対象と方法]2011年4月から2014年12月まで腰椎除圧術後にTLIFを施行した4例.調査項目として,(1)発生率(2)高位(3)初回手術からTLIFまで要した期間(4)原因(5)腰椎アライメント変化(6)JOA変化について検討した.[結果](1)は2.4%であった.(2)はL2/3:1例,L3/4:2例,L4/5:1例であった.(3)は平均67.8週で,(4)は片側下関節突起骨折例:3例,再手術後両側下関節突起骨折例:1例であった.(5)は初回cobb角8.0度から術直前に13.0度に増悪し,最終経過観察期間では13.0度のままであった.(6)は術前9.8点,最終経過観察時点18.3点と改善していた.[考察]局所アライメントとJOAスコアも改善したが,全体のアライメントは変化なく,将来的な隣接の椎間孔障害やアライメント不良による慢性腰痛による再手術が懸念された.
  • 竹内 直英, 籾井 健太, 久保田 健介, 播广谷 勝三, 本村 悟朗, 濵井 敏, 松本 嘉寛, 川口 謙一, 林田 光正, 岡田 誠司, ...
    2016 年 65 巻 1 号 p. 142-145
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,不安定型骨盤輪骨折に対する内固定術の治療成績を検討することである.【対象と方法】2007年4月~2014年12月までに内固定術を施行した22例(男性7例,女性15例,平均年齢:50.0歳,平均経過観察期間:1年9ヶ月)を対象とした.手術術式は,仙腸関節plate固定術:5例,腸骨plate固定術:4例,仙腸関節screw固定術:10例,腰椎腸骨間後方固定術:2例,腰仙椎腸骨間後方固定術:1例であった.臨床成績(Majeed score, Iowa pelvic score)と合併症について検討した.【結果】Majeed scoreは平均84.2点,Iowa pelvic scoreは平均84.8点であった.合併症はL5神経根障害:1例,変形癒合:1例,感染:0例であった.【考察】骨折型に応じた適切な内固定術を選択することで良好な臨床成績が得られた.
  • 井田 敬大, 田中 潤一, 倉 明彦, 金山 博成, 石倉 宏恭, 木下 浩一, 内藤 正俊
    2016 年 65 巻 1 号 p. 146-149
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    【目的】骨盤輪骨折の初期治療では,創外固定により骨折部の安定を速やかに図ることが重要である.今回我々は受傷後3時間以内に創外固定を行った群(早期群)とそれ以上かかった群(遅延群)とを比較して,固定開始時間の違いが術後のHb値に及ぼす影響を検討したので報告する.【対象と方法】2008年2月から2014年12月までに当センターで治療を行った骨盤輪骨折の110例のうち,来院時CPA例や受傷後24時間以内の死亡例,創外固定を初期治療に使用しなかった例,Injury Severity Scoreが40点以上の例,創外固定よりもTAEを先に行った例を除外した30例を対象とした.これを早期群と遅延群に分類し両群間における来院時,第1病日,第7病日のHb値,来院後24時間の輸血量を比較した.【結果】早期群は21例,遅延群は28例であり,第1病日と第7病日のHb値は早期群の方が有意に高かった.輸血量に有意差は認めなかった.【考察】今回の結果から速やかな創外固定の開始が貧血の改善に寄与する可能性が示唆された.
  • 塚本 伸章, 前 隆男, 川口 謙一, 佛坂 俊輔, 佐々木 宏介, 加藤 剛, 塩本 喬平, 稲光 秀明, 櫻木 高秀, 桑原 正成
    2016 年 65 巻 1 号 p. 150-156
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    【対象と方法】骨盤部骨折に対して手術が行なわれた14例を対象に受傷後2.3~5.7年の時点での患者立脚型の機能評価を実施した.骨折の内訳は骨盤輪骨折9例,寛骨臼骨折3例,骨盤輪寛骨臼合併骨折2例であった.各患者に対して日本語版Lower Extremity Functional Scale(LEFS)による評価を行った.LEFSは下肢が関わる動作20項目についての困難さを患者に回答してもらう質問から構成され,80点満点で80点が最良となる.【結果と結論】各骨折型におけるLEFSの平均点は骨盤輪骨折が54.1点,寛骨臼骨折70.3点,骨盤輪寛骨臼合併骨折56.5点と骨盤輪を含む骨折では得点が低い傾向があった.屋内動作に関する項目では比較的高得点であったが,走るなど激しい動作に関しては困難である傾向があった.疼痛の強さとLEFSの得点には負の相関を認めた.骨盤外傷後の機能評価に既存の患者立脚型評価法の有用性が示唆された.
  • 福田 和昭, 阿部 靖之, 田上 学, 水溜 正也
    2016 年 65 巻 1 号 p. 157-160
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症性脊椎椎体骨折後の偽関節や遅発性麻痺に対して椎体形成術を併用した後方固定術が行われることが多い.椎体形成の際に使用される充填物としてはHAブロックやCPC PMMAなどが使用される場合が多い.通常はいずれか単独で使用されているが,HAブロックとCPCを併用することで良好な成績が得られたとの報告がある.今回我々も両者を併用するハイブリッド椎体形成術を12例に行いその治療成績について評価を行った.画像上の椎体高や局所後弯の損失については以前のハイブリッド椎体形成術の成績に及ばなかった.椎体形成の手技,使用インスツルメントの違い,固定範囲などが成績不良の原因の可能性があり,充填物の内容だけでなく周辺の手術手技の工夫が必要と考えられた.
  • 宇都宮 健, 今村 寿宏
    2016 年 65 巻 1 号 p. 161-164
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    2014年3~9月に当院でBKPを施行した11症例14椎体の内,術後6ヵ月以上経過観察できた7症例9椎体(男2:女5),手術時平均年齢78.5歳(67.1-85.4歳)を対象とした.臨床的にVisual Analogue scale(VAS)や続発性椎体骨折の有無等を評価した.また立位矢状面アライメントと疼痛改善との相関を検討した.VAS平均は術前61.7mmから術直後11.1mmへ改善したが最終観察時31mmと術直後より増悪した.術後4症例4椎体(44%)で続発性骨折を生じ,全て隣接椎体であった.VAS改善はセメント量・椎体高復元率・局所後弯の矯正角と相関を認めた.立位矢状面アライメントはBKP前後で変化はなかった.BKPは疼痛改善に有用であり,疼痛改善とセメント量・椎体高復元率・局所後弯の矯正角は相関した.続発性骨折や立位矢状面インバランスはBKP後疼痛増悪の一因と考えられた.
  • 新見 龍士, 田上 敦士, 野口 智恵子, 津田 圭一, 安達 信二, 尾﨑 誠
    2016 年 65 巻 1 号 p. 165-169
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    【症例】74歳,女性.併存症として下垂体機能低下症のため約20年来のステロイド使用歴,圧迫骨折受傷歴あり.BMD:YAM値77%(大腿骨頚部).25年前より腰痛,3年前から腰痛増悪,右下肢痛,逆流性食道炎が出現.神経脱落症状はなし.術前X線ではT9-L4に111度の高度後弯を認め,PT:46度,PI:44度,TK:43度,LL:-6度,SVA:118mm.手術はまず後方から広範囲にPonte osteotomyを行い,次にT9/10~L4/5にXLIF施行.再度後方にまわりUIV:T8,LIV:骨盤(S2AIscrew,LSIT使用)の範囲で椎弓根スクリューとsublaminar wiringを用いてcantilever手技を使用し後方固定した.L5/SのPLIFは施行不可能であった.最終時X線でも大きな矯正損失なくUIV頭側の胸椎の後弯獲得も得られていた.
  • ―金属支柱とポリカーボネイト支柱との比較検討―
    片江 祐二, 田畑 洋司, 井上 めぐみ, 吉田 愛希, 松本 康二郎, 近藤 秀臣, 西田 茂喜
    2016 年 65 巻 1 号 p. 170-173
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    【目的】骨粗鬆症性椎体骨折の保存療法において,ジュエットコルセットの支柱の材質(金属(M群),ポリカーボネイト(P群))の違いによる治療成績を比較検討すること.【対象と方法】対象は65歳以上で,3ヶ月以上単純X線による評価を行えた骨粗鬆症性椎体骨折患者とした.M群は58例,平均年齢78.7歳,P群は26例,平均年齢81.0歳であった.それぞれの治療群の最終観察時の局所立位後彎角悪化度,立位楔状角悪化度,骨癒合率について検討した.【結果】局所立位後彎角悪化度はM群4.5°,P群4.3°,立位楔状角悪化度はM群3.2°,P群4.5°,骨癒合率はM群90%,P群73%でいずれも有意差は認めなかった.【考察】M群がP群に比べて楔状変形の進行が少なく骨癒合率が高い傾向にあった.P群は自験例のダーメンコルセットの治療成績に近く,支柱の側方可撓性は楔状変形と骨癒合に影響する可能性が示唆された.
  • 石原 和明, 松口 俊央, 松下 優, 馬場 省次, 中川 剛, 岩崎 元気, 小田 竜, 菊池 直士, 阿久根 広宣
    2016 年 65 巻 1 号 p. 174-175
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は74歳男性.他院にて上腕骨近位端骨折を認め,保存加療を受けていた.経過中に再転倒し,左肩の腫脹増大を認め,検査にて腋窩動脈瘤を認めた.ステント留置を施行されたが,左上肢壊死を認め,当院救急搬送され同日血管塞栓術・肩関節離断術を施行した.その後,一度落ち着いたが,創部に深部感染を起こし,洗浄・デブリドマン・肩甲骨切除術を施行した.だが,術後再び左肩腫脹し,下行肩甲動脈末梢より動脈性の出血を認め,血管塞栓術・血腫除去術を施行した.その後は,寛解増悪を繰り返し永眠された.上腕骨骨折に仮性動脈瘤が合併することは稀ではあるが,早期診断が重要な合併症となる.早期には症状が揃わないことも多く,疑った場合は検査を行い早期に診断対応していくことが重要である.
  • 富永 冬樹, 井上 三四郎
    2016 年 65 巻 1 号 p. 176-181
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    小児両前腕骨骨幹部骨折に対する手術例について,臨床上の注意点を検討した.対象は2013年4月から2014年12月までに手術を行った11例(男児8例,女児3例).年齢は平均8.9歳で,追跡期間は平均7.5ヵ月.受傷機転はスポーツが5例,転倒が4例,転落が2例であり,受傷部位は中1/3が7例,遠位1/3が3例,近位1/3が1例であった.全例Kワイヤーを用いた髄内釘による骨接合術を行った.これらの症例について,Grace & Eversmannの機能評価,レントゲンの角状変形の推移,合併症について調査した.機能評価は全例優であった.角状変形は平均で橈骨正面は6.9度が0度に,橈骨側面は20.5度が3度に,尺骨正面は2.4度が0度に,尺骨側面は13.3度が1.1度にいずれも改善し尺骨正面以外は有意差を認めた.合併症は2例に再骨折を認め,初回と同じスポーツ中の受傷であった.11例の臨床評価と画像は概ね良好であったが,再骨折を2例に認め早期のスポーツ復帰がリスクと思われ注意すべきと考えられた.
  • 杉原 祐介, 米倉 暁彦, 小関 弘展, 金丸 由美子, 尾﨑 誠
    2016 年 65 巻 1 号 p. 182-186
    発行日: 2016/03/25
    公開日: 2016/05/16
    ジャーナル フリー
    前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament,ACL)再建後の再断裂に内側型変形性膝関節症(Knee osteoarthritis,Knee OA)を合併した症例の治療に際しては考慮すべき点が多い.我々はACL再再建術と内側開大式高位脛骨骨切り術(Medial Open Wedge High Tibial Osteotomy,MOWHTO)を一期的に施行した1例を経験したので報告する.症例は49歳,男性.右ACL断裂に対しハムストリング腱を用いた靱帯再建術を施行され経過良好であったが,転倒後に膝崩れと膝内側部痛が出現した.KT2000で患健差5mmの脛骨前方動揺性を,単純X線で内側関節裂隙の狭小化を,MRIで再建ACLの断裂を認めた.手術は骨付き膝蓋腱(Bone Patella Tendon Bone,BPTB)を用いたACL再再建術とTomofixTM plate(DePuy Synthes,Pennsylvania U. S. A.)を用いたMOWHTOを一期的に施行した.術後1年の臨床所見では疼痛,膝崩れは消失し,脛骨前方動揺性は患健差1mmに改善し,JOA scoreは術前85点から術後95点に改善した.一期的手術は,活動性が高くKnee OAが中等度の症例では良い適応と考えるが,既存ACL再建骨孔の状態によっては二期的手術も考慮すべきと考える.
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