整形外科と災害外科
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65 巻, 3 号
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  • 広松 聖夫, 木下 斎, 井上 明生
    2016 年 65 巻 3 号 p. 389-395
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    [はじめに]変形性股関節症に対する各種温存手術の後,関節症変化が進行してきたときの対応には,いろいろの方法があるが,今回は特にわれわれが保存療法として勧めているジグリング(貧乏ゆすり様運動)の成績を検討した.[対象と方法]温存手術の後,関節症変化がいったんは良くなったものの再び悪化してきた症例,および術後3年以上たっても改善してこない症例を対象に,一日2時間以上のジグリングを指導し,6か月ごとに追跡し,関節裂隙の開大とともに症状,主としてJOA score疼痛点の改善で評価した.[結果]対象になったのはキアリ手術術後29関節,寛骨臼回転骨切り術後4関節,棚形成術術後3関節の合計36関節で,そのうち著明に改善したのは17関節47%であった.[結語]変形性股関節症に対するキアリ手術の成績向上のために考案したジグリングは,温存手術の成績不良例にも試しみる価値のある治療手段であることがわかった.
  • 中村 嘉宏, 帖佐 悦男, 坂本 武郎, 渡邊 信二, 関本 朝久, 池尻 洋史, 舩元 太郎, 日吉 優, 川野 啓介
    2016 年 65 巻 3 号 p. 396-399
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    寛骨臼球状骨切り後に股関節症の進行を来した症例への人工関節置換術に関し報告する.
  • 矢野 良平, 山下 彰久, 渡邊 哲也, 原田 岳, 橋川 和弘, 千住 隆博, 上原 慎平, 嶋 勇一郎, 白澤 建藏
    2016 年 65 巻 3 号 p. 400-404
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    【目的】低侵襲腰椎側方椎体間固定術(Lateral Lumbar Interbody Fusion(LLIF))は後方の骨,靭帯を温存でき,ligamentotaxisによる脊柱管の間接除圧が期待できる.今回我々は画像を用いてLLIFの間接除圧効果を検討したので報告する.【対象と方法】2015年2月よりLLIFを施行し,画像が揃った16例33椎間を対象とした.MRIで各椎間板高位の硬膜管前後径と面積を,CTで椎間孔頭尾側径・椎体間高を術前後で比較した.また術前の椎体間高6mm未満群(16椎間,A群)と6mm以上群(17椎間,B群)に分け,各計測値の増加率を両群間で比較した.【結果】脊柱管前後径8.27→10.9mm2,面積88.7→127.6mm2,椎間孔頭尾側径右16.3→19.4mm,左16.7→20.1mm,椎体間高6.35→10.4mmと各々有意に増加した(p<0.01).A群はB群より椎間孔頭尾側径で有意な拡大率(27.9%と19.6%(p<0.05))を示した.【考察】LLIFによる脊柱管・椎間孔の間接除圧の有効性が画像的に示唆された.また,椎間孔拡大に関しては椎間板変性の高度な症例に特に有効と思われた.
  • 片岡 秀雄, 富永 俊克, 舩場 真裕, 城戸 研二
    2016 年 65 巻 3 号 p. 405-408
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    腰部脊柱管狭窄症に対する脊椎内視鏡(MED)手術の術後2年成績を調査した.腰部脊柱管狭窄症に対して脊椎内視鏡下に除圧手術を行い,術後2年で調査が可能であった52例(男性34例,女性18例)を対象とした.年齢は平均68歳(54~83歳)であった.変性すべり症は37例存在し,そのうち30例にX線動態撮影にてすべり率の変化が見られた.JOAスコア(腰痛症)は術前15.1±0.7が術後2年で22.0±0.7となり有意に改善していた.VAS(痛み),RDQ,ODIも有意に改善した.2例に追加手術が必要であった(1例:すべりの進行に対する椎体間固定,1例:椎間孔外狭窄に対する内視鏡下除圧).当院では中間位ですべり率20%以下の症例を脊椎内視鏡下除圧手術の適応とし,すべり率20%を超える症例には固定術を施行している.脊椎内視鏡下除圧術の術後2年成績は概ね良好であった.今後,更なる追跡調査や適応基準の見直しも必要である.
  • 吉兼 浩一, 飯田 圭一郎, 大江 健次郎, 深川 真吾, 平田 正伸, 島田 英二郎, 西井 章裕
    2016 年 65 巻 3 号 p. 409-411
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    腰部脊柱管狭窄(すべり症Myerding1度まで)に対する後方除圧術として当科では片側進入両側除圧を2004年open手術として開始,同コンセプトのもと2006年からMEL(Micro Endoscopic Laminotomy)を,2014年からはPEL(percutaneous endoscopic laminotomy)を導入した.MELの導入により除圧部に到達するまでの腰椎後方支持組織への侵襲は低減され,特にPELで激減し術中の出血も計測不能と極少量となった.PEL,MEL,openの3群間の比較では臨床成績はいずれも良好であった.灌流下に行う水中手術PELでは,操作部位の直上まで内視鏡が到達でき拡大された良好な視野のもと安全な除圧が行える利点のある一方,ごく僅かの出血でも視野障害に陥りやすい欠点も表裏一体として挙げられる.出血部位の特徴を押さえ,術中の厳密な出血コントロールが手術の要点となる.対応策を含め系統だった手技の確立が必要である.内視鏡下低侵襲脊椎手術ではワーキングチャンネルは狭く,器械の取扱い等手技の習得にはラーニングカーブがある.
  • 山下 彰久, 矢野 良平, 渡邊 哲也, 原田 岳, 橋川 和弘, 千住 隆博, 上原 慎平, 嶋 勇一郎, 白澤 建藏
    2016 年 65 巻 3 号 p. 412-417
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    【目的】骨粗鬆症性椎体骨折に対するBKP(Balloon Kyphoplasty)の成績と留意点を報告する.【対象と方法】2011年7月以降BKPを施行した71例のうち,続発性骨粗鬆症,3ヶ月未満のフォローを除いた44例(男性12例,女性32例)を調査した.手術時平均年齢は79歳,平均調査期間は21ヶ月,BKP施行椎体はL1:18,Th12:12,その他14例であった.疼痛,レ線指標の経過,続発性骨折などを調査し統計学的解析を加えた.【結果】手術時間は平均42分であった.VASは有意に改善した(術前73→術後26mm).セメント塞栓や術後感染はなかった.局所後弯は改善したが立位脊椎矢状面アライメントは不変であった.続発性骨折の発生率は38.6%で,危険因子はSQグレード3以上の既存骨折と術前のSVA(後弯)であった.【まとめ】骨粗鬆症性椎体骨折に対するBKPの除痛効果は良好で,低侵襲かつ安全性の高い手技であった.続発性骨折の危険因子は高度の圧潰を伴った既存骨折と,もともとの脊柱後弯変形であった.
  • 比嘉 勝一郎, 屋良 哲也, 伊藝 尚弘, 仲宗根 朝洋, 勢理客 久, 金谷 文則
    2016 年 65 巻 3 号 p. 418-422
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    cortical bone trajectory(以下CBT)は,椎弓根に対し内側から外側へ,尾側から頭側へ向かう椎弓根スクリューの刺入軌道で,スクリューの刺入点が従来よりも内側にあることにより,後方筋群の展開を最小限に抑え,より低侵襲な手術が可能となる.当院では腰椎椎体間固定術に,CBTを用いている.今回,CBTを用いて1椎間の腰椎椎体間固定術を行い,術後1年以上観察が可能であった15例について報告する.【対象】症例は男性10例,女性5例.年齢は44~74歳(平均65歳).腰椎変性すべり症9例,その他6例.高位はL4/5:12例,L3/4:3例.観察期間は12~23カ月(平均19.2カ月)であった.【結果】手術時間は2時間12分~4時間3分(平均3時間31分),出血量10~350ml(平均121ml),術後12~22カ月の単純X線像で,15例中14例に骨癒合を認めた.術後6カ月で偽関節と診断した1例は,術後18カ月で再手術を行い,経過観察中である.【結語】CBTを用いた腰椎椎体間固定術は有用な治療法と思われた.
  • 千住 隆博, 山下 彰久, 嶋 勇一郎, 上原 慎平, 矢野 良平, 橋川 和弘, 渡邊 哲也, 原田 岳, 白澤 建藏
    2016 年 65 巻 3 号 p. 423-428
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    【目的】感染性脊椎炎に対する最小侵襲脊椎安定術(Minimally invasive spine stabilization: MISt)の有用性を報告する.【対象】2012~2015年に本症に対してMIStを行った9例.起炎菌,罹患高位,手術までの日数,入院期間,術後CRP陰性化までの期間等を検討した.【結果】手術までの平均日数は21日,入院期間は平均89日,術後CRP陰性化までの期間は平均34日,骨癒合は8例中3例に認め,全例で感染の鎮静化を得た.【考察】従来,本症に対するインストゥルメント固定術は否定的であった.インプラントが筋組織に被覆され感染局所と交通しないMIStを活かした治療戦略とは,菌の同定→抗菌薬投与→2週後に抗菌薬反応不良群,反応良好でもCRPが遷延すればMIStを行うものである.【結論】MIStを活かせば低侵襲に早期離床,感染鎮静化,骨癒合促進,変形予防が可能と考える.
  • 神保 幸太郎, 佐々木 威治, 田邉 潤平, 松浦 充洋, 塚本 祐也, 中村 洋輔, 江崎 佑平, 石橋 千直, 重留 広輔, 坂井 健介 ...
    2016 年 65 巻 3 号 p. 429-433
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    保存治療抵抗性の化膿性脊椎炎に対して罹患椎PPS(経皮的椎弓根スクリュー)を用いた後方固定術を行った.罹患椎挿入の判断はCTを用いてscrewの固定性が得られるかどうかを評価し,MRIで軽度の椎体汚染があっても許容した.対象は5例で男性4例,女性1例,平均年齢69.4歳であった.固定椎間は1椎間が1例,2椎間が2例,3椎間が2例であった.罹患椎挿入は両方が3例,片方が2例であった.手術時間は平均107分,出血量は平均25g,追加手術は無かった.起炎菌は4例(80%)で検出され,黄色ブドウ球菌2例,MRSA 1例,大腸菌1例であった.CRPは全例とも術後順調に改善,平均3.8週で陰性化(1mg/dl未満)した.症例を選べば,罹患椎PPSを用いた後方固定術は保存治療抵抗性の化膿性脊椎炎に対し有効であった.
  • 清原 悠太, 宮﨑 信, 沼田 亨祐, 楊 拓也, 棚平 健, 髙田 弘誠, 中島 三郎
    2016 年 65 巻 3 号 p. 434-436
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    (目的)Knee Align 2を用いて行ったTKAの大腿骨と脛骨の骨切り精度を検討することである.(対象)2014年7月から2015年5月までにTKAを行った21膝(男性:5膝 女性:16膝),平均年齢74.4歳である.(方法)Knee Align 2の骨切り角度は全例冠状面において大腿骨,脛骨ともに機能軸に垂直,矢状面においては大腿骨を屈曲 3°,脛骨を後方傾斜 3°に設定し,使用機種は全例バンガードPS typeとした.(結果)目標設置角の前後2度以内をsafe zoneとしたとき,大腿骨冠状面では66.7%,矢状面では85.7%,脛骨冠状面では85.7%,矢状面では81.0%であった.(考察)諸家の報告による骨切り精度は,従来法では約65-80%,Knee Align 2では約90-95%であった.当院のそれは約66-86%であり,従来法よりは良かったが,Knee Align 2の諸家の報告よりは劣っていた.
  • ―持続硬膜外ブロック法との比較―
    酒本 高志, 緒方 宏臣, 山下 武士, 岩本 克也, 川谷 洋右, 米村 憲輔
    2016 年 65 巻 3 号 p. 437-439
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    【目的】人工膝関節置換術(TKA)における関節周囲多剤カクテル注射の術後疼痛・リハビリ経過への影響に関し,持続硬膜外ブロック法と比較検討を行った.【対象】変形性膝関節症で初回片側TKAを受けた患者を調査対象とした.2013年4月~2014年3月に持続硬膜外ブロック法でTKA施行した20例20膝(Epi群),2014年4月~2015年3月に関節周囲多剤カクテル注射でTKA施行した20例20膝(カクテル群)に対し,術後当日・1・2・7日目のVRS,膝屈曲90・120度,車椅子移乗,歩行器歩行,杖歩行,独歩の開始時期に関し,比較検討を行った.【結果】カクテル群はEpi群に比べ,術後当日・1日目で有意に鎮痛が得られ,早期に機能回復していた.【考察】関節周囲多剤カクテル注射は容易で効果安定し,副作用も少ない上,術直後の鎮痛効果に優れていた.
  • 棚平 健, 宮﨑 信, 中島 三郎, 沼田 亨祐, 楊 拓也, 清原 悠太, 髙田 弘誠
    2016 年 65 巻 3 号 p. 440-442
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者数は年々増加傾向にあるが,糖尿病患者では血糖値を適切に管理することが感染制御に重要である.血糖管理の方法には,スライディングスケール法,強化インシュリン療法,人工膵島などがある.スライディングスケール法は簡便ではあるが厳密な血糖管理は難しく,強化インスリン療法は血糖値を厳密に管理できるものの低血糖のリスクや頻回の血糖測定による負担が大きい.一方で人工膵島は血糖値を一定に維持することが可能で周術期の血糖管理の方法として有用である.今回血糖コントロール不良な1型糖尿病の患者に対して人工膵島を用いて血糖管理を行い,人工膝関節置換術を施行した1例を経験したので若干の考察を加えて報告する.
  • 栗之丸 直朗, 森 俊陽, 川崎 展, 佐羽内 研, 塚本 学, 酒井 昭典, 大西 英生, 名倉 誠朗
    2016 年 65 巻 3 号 p. 443-446
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    今回,人工股関節全置換術(THA)後1年が経過した時点で人工膝関節全置換術(TKA)を施行し,金属アレルギーを発症した1例を経験したので報告する.症例は73歳女性.72歳時に右THAを施行し,術後経過良好であった.術後1年で右変形性膝関節症に対し右TKAを施行した.術後4週で全身に浮腫性紅斑が出現した.パッチテストにて,クロム,コバルト,水銀,ニッケル,使用インプライント金属に対して陽性を示し,TKA術後の金属アレルギーと診断した.ステロイドパルス療法により症状は沈静化した.人工関節術後には約6.5%に金属感作が成立するとされているが,本症例においても先行のTHAに使用されたインプラントの金属に対し感作が成立し,その後のTKAにて同種の金属を使用したことにより重篤な金属アレルギーを発症したと考えられた.
  • 高野 純, 伊集院 俊郎, 佐久間 大輔, 前田 昌隆, 東郷 泰久, 小倉 雅, 永野 聡, 瀬戸口 啓夫, 小宮 節郎
    2016 年 65 巻 3 号 p. 447-450
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    第4.5手根中手関節(以下CM関節)は,第4.5中手骨長軸方向への外力が加わった時に脱臼骨折を起こしやすい.2010年から2015年までの6年間に当院にて治療を行なった第4.5手根中手関節の脱臼骨折は6例であった.そのうち保存治療1例,フォローアップ出来なかった1例を除外し手術を行った4例を対象とした.脱臼骨折の原因として,右尺側Rolando骨折1例,左尺側Bennett骨折1例,有鈎骨体部骨折1例,有鈎骨体部骨折と有頭骨骨折,第3中手骨基部骨折を合併するもの1例であった.観察期間は平均2年8ヶ月(9ヶ月~5年1ヶ月)であった.結果は,整復位は良好で全例に骨癒合が得られた.尺側Bennett骨折や尺側Rolando骨折は優位に握力低下がおこりやすいと言われているが,当院の症例でも尺側Rolando骨折1例で握力低下を認めた.解剖学的正確な整復と手術による強固な固定が必要である.
  • 永吉 信介, 善家 雄吉, 田島 貴文, 小杉 健二, 平澤 英幸, 目貫 邦隆, 酒井 昭典
    2016 年 65 巻 3 号 p. 451-455
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    化膿性屈筋腱腱鞘炎に対し閉鎖陰圧療法を用いて治療を行った症例について検討した.症例は3症例で年齢は54,64,83歳でいずれも男性であった.1例は基礎疾患にII型糖尿病,肝硬変を有しており,また明らかな誘因は熱傷が先行した1例のみであった.発症から初回手術までの期間は全例1日で,うち1例は他院で初療が行われていた.当院初回手術は掌側Zigzag切開で進入し,徹底して病巣を掻把したのち部分的な開放創とし,浸出液コントロールのため閉鎖陰圧療法を併用した.またその際,指尖部をカットしたサージカルグローブを装着することで早期より自動運動を促し拘縮予防を図った.全例とも当院初回手術より数日後にSecond look手術を行い,皮膚欠損を有した1例を除いてドレーン留置,創閉鎖を行った.起炎菌はMRSA 1例,MSSA 1例,Streptococcus agalactiae 1例であった.いずれの症例も追加のデブリドマン手術は必要とせず,感染の再燃を認めなかった.徹底したデブリドマンとNPWTの併用により良好な成績を得た.
  • 吉野 孝博, 土田 徹, 池田 天史, 宮崎 真一, 大山 哲寛, 川添 泰弘, 二山 勝也, 大野 貴史
    2016 年 65 巻 3 号 p. 456-459
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    非結核性抗酸菌による肺外病変は稀である.今回我々は非結核性抗酸菌感染による化膿性屈筋腱腱鞘炎4例の治療を経験したので報告する.対象は男性3例女性1例であり,全例で病巣滑膜切除および化学療法を行った.病理組織では全例で類上皮性肉芽腫を認めた.抗酸菌培養では2例で菌の検出を認めた.抗酸菌性腱鞘炎は慢性に経過し,病理組織学的および細菌学的検索により確定診断が得られる.全例とも術後早期に化学療法を開始し1例経過を追えなかった例を除き再発は認めなかった.
  • 大里 恭平, 竹山 昭徳, 河野 大, 亀川 史武, 小阪 英智
    2016 年 65 巻 3 号 p. 460-462
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    今回当院で血液透析患者に発生した橈骨遠位端骨折に対して,創外固定器を用いて手術療法(Bridging法)を行い良好に経過した症例を経験したので報告する.1例目は70歳女性,左前腕に透析シャントあり,同部位にAO分類:23-C1の骨折を認めた.受傷当日に創外固定器による手術を行った.手術翌日よりシャント使用に関して問題なく,また術後11週で骨癒合認め,疼痛の訴えはなかった.2例目は85歳女性,左前腕に透析シャントあり,同部位にAO分類:23-A2の骨折を認めた.当初はシーネ固定による保存療法を行ったが,疼痛の訴えが強く手術を希望されたため,受傷後7日目に創外固定器による骨接合術を行った.術後2日目からシャント使用し問題はなかった.術後3ヶ月の時点で骨癒合は不十分であるが疼痛はほとんどなく,ADLは受傷前のレベルとなり透析も継続している.
  • 太田 真悟, 土居 満, 中添 悠介, 前原 史朋, 田口 勝規
    2016 年 65 巻 3 号 p. 463-467
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    外傷などにより急激に生じた四肢の腫脹の中でも,コンパートメント症候群は後に機能障害を残す可能性のある重篤な疾患である.四肢の筋区画内圧の上昇により筋組織壊死や神経麻痺を引き起こすため,早急の診断と治療が重要となる.今回我々は比較的稀な前腕コンパートメント症候群の3例を経験したので診断・治療法につき考察を加える.今回の症例では全例で前腕コンパートメント内圧が30mmHg以上と高値を示しており,疼痛・他動的伸展時痛・知覚異常・運動麻痺の臨床所見と総合的に判断しコンパートメント症候群と診断した.確定診断後,早急に筋膜切開術を施行し良好な結果を得られた.コンパートメント症候群の診断は受傷後の6P症状に加え,その後の経時的変化や内圧測定との総合的判断が重要である.受傷から筋膜切開術までの時間がその後の機能的予後に大きく関わるため,診断後は可及的速やかな観血的治療が必要であると考える.
  • 浦上 勝, 渡邉 弘之, 相良 孝昭, 瀬形 建喜, 清家 一郎, 畠 邦晃, 寺本 周平, 緒方 光次郎
    2016 年 65 巻 3 号 p. 468-470
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    セメントレスTHAにおけるステム内反設置症例の臨床成績および画像上の影響について検討した.ステム内反設置(大腿骨軸に対してステム長軸が2°以上内反)症例で1年以上経過観察できた7症例について,臨床評価としてJOAスコアの推移,合併症の有無,画像評価として単純X線によるstress shielding,radiolucent line,Enghらによる固定性分類などについて調査した.その結果,臨床成績では全例で合併症は認めず,JOAスコアも改善が認められた.画像評価では,Enghらによる固定性分類において全例fixation by bone ingrowthであったが,stress shieldingは3度が3例に認められた.
  • 青木 龍克, 前田 純一郎, 千葉 恒, 穂積 晃, 宮本 力, 米倉 暁彦, 富田 雅人, 尾﨑 誠
    2016 年 65 巻 3 号 p. 471-473
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    【はじめに】特に誘因なく生じたS-ROMステム遠位部破損の1例を経験したので報告する.【症例】57歳女性.Crowe分類typeIVの脱臼性股関節症に対して,骨転子下骨切り併用人工股関節置換術(S-ROM,PINNACLE,臼蓋骨移植併用)を施行し,外来でフォローしていた.術後6年の股関節レントゲンで,ステムの遠位1/3のスリット後方に横断する破損を認めた.外傷などの明らかな誘因はなかった.軽度疼痛の訴えがあったものの,現在のところ1年間保存的に経過観察しており,疼痛は改善傾向である.今後,ステムの緩みや疼痛の増悪があれば,再手術の方針としている.【考察】S-ROMステム遠位部での破損は,我々の渉猟し得た限り,これまでに2例しか報告がない.いずれも本症例と同様,外傷のエピソードを伴わずに生じており,破損部位はステム遠位1/3のスリット後方であった.原因として,破損部位にbendingstressが集中し,金属疲労を生じたのではないかと推察される.
  • 千丈 実香, 渡邉 弘之, 相良 孝昭, 瀬形 建喜, 清家 一郎, 畠 邦晃, 寺本 周平, 緒方 光次郎, 浦上 勝
    2016 年 65 巻 3 号 p. 474-476
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    【目的】高齢者セメントレスTHA症例におけるカップ側についてのX線学的評価を行う.【方法】THA術後10年以上経過観察できた手術時年齢70歳以上の症例において,単純レントゲン両股関節正面像におけるCup CE角・外方開角・前捻角,骨盤の前後傾斜,ポリエチレンライナーの線摩耗,カップ周囲の骨反応について調査した.【結果】土井口法による骨盤後傾角は,術前は高齢群21.7°,若年群16.9°で有意に高齢群が大きく,最終観察時も,高齢群24.1°,若年群17.9°で有意に高齢群が大きかった.また,高齢群において術前に比べ最終観察時の後傾が2.4°強まっていたが有意差はなかった.Cup外方開角は両群とも術前後でほとんど変化が無かったが,前捻角は高齢群において,術前と比べ最終観察時1.9°増大していた.ポリエチレンライナーの年間線摩耗量は高齢群0.045mm,若年群0.09mmで,有意差はないが高齢群の方が少ない傾向であった.McPhersonらによるCup固定性の分類は全例Bone ingrowthであった.
  • 酒見 勇太, 池村 聡, 櫻井 立太, 井口 貴裕, 光安 浩章, 松井 元, 馬渡 太郎
    2016 年 65 巻 3 号 p. 477-480
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    人工股関節全置換術・人工骨頭置換術後に生じたVancouver分類type B2ステム周囲骨折に対して遠位固定型セメントレスロングステムへの再置換術およびcableもしくはcable/plateによる固定の併用を行った4症例を経験した.術後は可及的全荷重とした.術後明らかな合併症なく,術後1ヶ月で転院となった2例でも歩行器歩行可能となり,その他の2例では術前のADLと同じ杖歩行まで回復した.術前画像でのステムのゆるみの評価は困難であるため,常にtype B2であることを念頭に置き,術中も積極的にゆるみを確認することで術後トラブルの危険性をさげうる.また,髄腔内に干渉せず,整復位を保持可能なcable/plateは有用な固定法であり,遠位固定型ロングステムとの併用で術後早期離床・荷重開始が可能であると考えられた.
  • 守谷 和樹, 田島 貴文, 善家 雄吉, 沖本 信和, 吉岡 徹, 布施 好史, 目貫 邦隆, 平澤 英幸, 辻村 良賢, 酒井 昭典
    2016 年 65 巻 3 号 p. 481-484
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    【症例】(1)47歳男性,転倒し受傷した.(2)77歳男性,歩行中に右踵部痛を自覚した.画像上,これら2例とも骨化部が近位に転位していた.(3)33歳男性,長引くアキレス腱付着部の疼痛があり,運動により増悪した.画像上骨化部の転位はなかった.【治療経過】症例(1)(2)は,アキレス腱付着部で腱成分が断裂し骨化部とともに近位へ転位していた.踵骨母床とアキレス腱骨化部の海綿骨を露出させ,骨化部と母床との骨接合を行った.症例(3)は,骨化部を摘出し,弛緩したアキレス腱を縫縮した.その結果,骨接合を行った2例とも骨癒合を認め,最終観察時に自覚症状や可動域制限は認めなかった.また骨化部を切除した1例も経過良好である.【まとめ】まれなアキレス腱付着部骨化症3症例を経験した.2例は断裂例で骨化部を利用した骨接合を行い,1例は疼痛例で骨化部を摘出したうえで腱の縫縮を行い,それぞれ良好な成績を得た.
  • 木村 岳弘, 諸岡 孝明, 原田 洋, 橋本 卓, 増田 祥男, 諸岡 正明
    2016 年 65 巻 3 号 p. 485-488
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    ポリオ後遺症に伴い強直変形した重度内反尖足に対して,一期的に変形を矯正し,全足関節固定術を行った1例を経験したので報告する.症例は67歳男性.幼少時にポリオを発症し,麻痺性内反足を合併した.後方解離術による矯正を受けたが再発し,成人になり徐々に内反尖足変形が進行し足背歩行となり,足趾に潰瘍を形成するようになったため当院を受診した.足関節は内反20度,底屈110度で強直していた.変形が強く装具使用は困難と考え,一期的に矯正固定術を行った.手術は,はじめに後方の軟部組織解離を行い,続いてLorthioir-神中法に準じて距骨を摘出し,足関節を底背屈0度に矯正後,摘出した距骨を移植し創外固定を行った.ただし原法と異なり,距骨は海綿骨をチップ状に作成して移植した.術後に皮膚障害および知覚鈍麻を認めたが徐々に改善した.術後4年現在,骨癒合が得られ,痛みなく足底接地で荷重歩行可能となっている.
  • 片山 修浩, 岡元 信和, 中村 英一, 佐藤 広生, 西岡 宏晃, 唐杉 樹, 山部 聡一郎, 水田 博志
    2016 年 65 巻 3 号 p. 489-492
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    【症例】54歳女性.1年前より誘因無く右足関節痛が出現し,画像検査で右踵骨の異常陰影を認めたため当科を紹介受診となった.血液検査では,CRPは陰性で,X線検査にて踵骨の距骨下関節近傍に骨透亮像を認め,関節面の不整像がみられた.造影MRI検査では同部にT1 low,T2 high,周囲に造影効果を認めた.診断確定のため切開生検を施行し,乾酪性壊死を伴う肉芽腫を認め,PCR検査でM. tuberculosisが陽性であり,結核性骨髄炎と診断した.胸部CTでは,結核を疑う病変は認めなかった.抗結核薬を6ヶ月間投与し感染は鎮静化した.その後右距踵関節症による疼痛に対して固定術を行い疼痛および感染の再燃なく経過良好である.
  • 真田 京一, 吉村 一朗, 金澤 和貴, 萩尾 友宣, 蓑川 創, 内藤 正俊
    2016 年 65 巻 3 号 p. 493-496
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    【目的】今回Maisonneuve骨折に対し,吸収性螺子を用いて脛腓間固定を行った2症例を経験したので報告する.【症例1】63歳男性.階段を踏み外し転倒して受傷.単純X線でMaisonnueve骨折を認めた.内果骨折に対し骨接合術及び脛腓間を4.5mm吸収性螺子2本で固定した.術後1年で骨癒合良好であり内果の螺子の抜釘,吸収性螺子のヘッドの除去を行った.【症例2】53歳男性.ソフトボール中下腿外側へ他選手が乗り受傷.単純X線でMaisonnueve骨折を認めた.足関節鏡及び脛腓間を4.5mm吸収性螺子2本で固定した.【考察】従来遠位脛腓間固定には金属製螺子を使用されることが多かったが,抜釘の必要性や荷重の時期などが問題となる.吸収性螺子を使用することで,抜釘の必要性がなくなり早期の機能回復が期待できる.今回Maisonneuve骨折の2症例に対し吸収性螺子を用いた脛腓間固定を行い良好な成績を得ることができた.
  • 土井 庸直, 柴田 陽三, 伊﨑 輝昌, 櫻井 真, 黒田 大輔, 三宅 智, 野口 貴雄, 中島 圭
    2016 年 65 巻 3 号 p. 497-501
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    【はじめに】今回我々は,手術時の関節鏡視所見により骨接合施行せず,保存加療を選択し,良好な成績を得た肩甲骨関節窩骨折の1症例を経験したので報告する.【症例】31歳女性.旅行先にてスノーボード中に転倒して左肩を受傷.某医にて左肩甲骨関節窩骨折と診断され,手術目的に当院紹介受診.X線・CT検査にて関節面に約7mmの転位を伴うIdeberg分類typeIIの骨折認め,骨接合を行う予定で,関節鏡を施行した.鏡視所見にて骨折部の不安定性なく,肩甲上腕関節の適合性も良好であった.肩関節の動的・静的安定機構の損傷を認めなかったため,骨接合術は行わず保存加療の方針とした.受傷後6ヶ月,肩関節可動域制限はなく,JOA scoreも100点と良好な成績である.【考察】画像上肩甲骨関節面の転位を認めても,鏡視にて肩甲上腕関節の適合性や制動因子に問題なければ,保存加療でも肩関節の機能低下は来さないものと思われる.
  • 菊川 憲志, 高田 興志, 森田 誠, 橋本 憲蔵
    2016 年 65 巻 3 号 p. 502-504
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    三角筋皮下断裂を合併した腱板断裂肩に対し手術療法を行った2例を経験したので報告する.【症例1】79歳,女性.術前MRIおよび鏡視所見では棘上筋・棘下筋断裂,関節窩レベルまで退縮していた.直視下に三角筋の変性部位を切除すると3×4cmの欠損となり,腱板修復とともに三角筋修復(側々縫合,肩峰に骨孔を開けて縫合固定)を行った.JOAスコアは術前54点,術後1年で76.5点であった.【症例2】78歳,女性.術前MRIおよび鏡視所見では棘上筋・棘下筋断裂,直視下に三角筋の変性部位を切除すると2×4cmの欠損となり,腱板修復術(長頭腱をパッチとして使用)とともに三角筋修復(側々縫合,肩峰に骨孔を開けて縫合固定)を行った.JOAスコアは術前60.5点,術後1年で81.5点であった.
  • 野口 貴雄, 柴田 陽三, 城島 宏, 秋吉 祐一郎, 櫻井 真, 黒田 大輔, 中島 圭, 土井 庸直, 伊﨑 輝昌, 三宅 智
    2016 年 65 巻 3 号 p. 505-508
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    全人工肩関節置換術(以下,TSA)は,変形肩関節やリウマチ性肩関節症に対して行われ,人工骨頭置換術と比較して良好な成績が報告されている.TSA術後に見られるglenoid componentと骨との間の早期radiolucent zoneの発生率は25~70%前後と報告されている.この透過像の範囲が拡大すれば関節窩コンポーネントのルースニングが進展すると考えられる.よって,この早期radiolucent zoneの発生率を低下させる目的でセンターポストがポーラスチタン合金製となっているものが開発された.今回我々はBIOME社製comprehensive shoulder systemを用いた症例を経験したので報告する.
  • 中島 圭, 柴田 陽三, 伊﨑 輝昌, 城島 宏, 秋吉 祐一郎, 櫻井 真, 黒田 大輔, 三宅 智, 野口 貴雄, 土井 庸直
    2016 年 65 巻 3 号 p. 509-511
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    【はじめに】我々はRSA術後に肩峰骨折を生じた3症例を経験したので報告する.【症例1】82歳,女性.左上腕骨近位端骨折にRSA施行.術後10ヵ月で肩峰骨折認め,安静で2ヵ月で骨癒合.疼痛は消失.術後10ヵ月でJOAスコア65.5点 屈曲;70度 外旋;0度.【症例2】75歳,女性.右CTAにRSA施行.術後5ヵ月で肩峰骨折を認めた.疼痛なかったため経過観察.術後7ヵ月で偽関節状態.術前術後で,それぞれ屈曲60度,90度,外旋40度,35度,JOAスコア47点,74点.【症例3】82歳,男性.Massive tearに対しRSA施行.術後4ヵ月で肩痛再燃.三角巾1ヵ月で疼痛消失.術前と術後8ヵ月で,屈曲40度,115度,外旋60度,35度,JOAスコア50点,77.5点.【まとめ】RSAは挙上時三角筋に負荷がかかり術後肩峰骨折を生じることがあるが,我々の症例ではこれによる明らかな機能損失はなかった.
  • 小林 恭介, 安達 耕一, 森 愛, 瀬良 敬祐
    2016 年 65 巻 3 号 p. 512-514
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    目的)高齢化社会の進行に伴い,入院患者も高齢化している.このため様々な疾患,認知度,日常生活動作レベルを持った患者が入院しており,入院中の転倒や転落等により骨折を起こすことがある.今回当院における入院中に大腿骨近位部骨折を起こした症例を検討したので報告する.対象及び方法)2010年4月から2014年3月までの5年間に当院に入院した10795例(整形外科入院患者5892例)を対象とした.入院中に大腿骨近位部骨折を起こした症例を調査し,その症例の入院時の認知度,日常生活動作レベル,受傷機転等を検討した.結果)当該期間中に11例で大腿骨近位部骨折(大腿骨頚部骨折6例,大腿骨転子部骨折4例,人工骨頭ステム周囲骨折1例)を認めた.患者の認知度は比較的正常なものが多く,受傷前ADLは歩行可能なものが多かった.考察)入院中の転倒による大腿骨近位部骨折を起こす患者は少数ではあるが,その対策は重要と考える.
  • 竹内 潤, 宮本 俊之, 福島 達也, 田口 憲士, 水光 正裕, 米倉 暁彦, 富田 雅人, 尾﨑 誠
    2016 年 65 巻 3 号 p. 515-517
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    長崎大学病院は3次救急施設であり,合併症のために紹介となる大腿骨近位部骨折の患者が多い.治療成績向上のために多職種と連携し治療を行ってきた.2011年11月からの3年間で加療した大腿骨近位部骨折51例のうち1年以上追跡可能であった45例を対象に手術までの日数,既存合併症,術後合併症,1年後の生存率を調査した.その結果,初診から手術までの平均待機日数は0.62日であり,多くが合併症のあるASA2及び3であった.周術期の死亡は0%,合併症としては45例中1例に心不全の増悪を認めた.1年生存率は80%であった.整形外科単独では周術期管理が難しい症例に対し連携を取ることが待機日数の短縮および周術期合併症の減少につながり本邦においてもこのようなシステムの構築が望ましいことが示唆された.
  • 井手尾 勝政, 安樂 喜久, 堤 康次郎, 安藤 卓, 立石 慶和, 田原 隼, 松下 紘三
    2016 年 65 巻 3 号 p. 518-522
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    大腿骨頭骨折は股関節脱臼に関連して生じ,治療方針は骨片の大きさと部位により決定される.観血的治療を行った4例を経験したので報告する.症例は男性4例で,受傷時平均年齢は31.5歳,平均観察期間は11ヵ月であった.当科では,骨片の大きさが骨頭の1/3未満の場合は摘出し,1/3以上の荷重部にある骨片は骨接合を行い,年齢に応じてTHAを検討する方針としている.Pipkin分類type IIが2例,type IVが2例であり,Pipkin分類type IIの2例は前方からアプローチしスクリューを用いて整復固定を行った.type IV2例のうち1例は後方アプローチにて骨片を摘出し,骨片が骨頭の1/3以上の大きさであった1例はSurgical dislocationにて骨片を整復固定した.最終追跡時,全例が独歩可能であり,骨頭壊死や偽関節および関節症性変化を来した症例はない.
  • 柴田 光史, 尾上 英俊, 中村 厚彦, 亀川 史武, 野田 昌宏, 稲光 秀明
    2016 年 65 巻 3 号 p. 523-525
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    【はじめに】大腿骨転子部骨折に伴う仮性動脈瘤の報告は本邦では未だに少ない.今回,我々はその中でも極めて稀な合併症である小転子骨片により仮性動脈瘤を生じた1例を経験したので報告する.【症例】90歳女性,屋内で転倒後歩行困難な状態となり,当院へ救急搬送された.単純X線写真では左大腿骨転子部骨折(Jensen分類5型)の所見であり,受傷後4日目で観血的骨接合術を施行した.術後4日目に左大腿部腫脹,急速なヘモグロビン値の低下を認めた.造影CTにて外側大腿回旋動脈に仮性動脈瘤を形成していたため,緊急でコイル塞栓術を施行した.術後左大腿部腫脹,貧血は速やかに改善した.【考察】大腿骨転子部骨折での小転子骨片による血管損傷は非常に稀な合併症であるが,発生すると致命的である.小転子骨片が内方転位した症例に関しては,血管損傷の可能性を常に念頭に置き治療方針を立てる必要がある.
  • 梅﨑 哲矢, 森 治樹, 三橋 龍馬, 山口 洋一朗, 今里 浩之
    2016 年 65 巻 3 号 p. 526-528
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    大腿骨近位部骨折では,寝たきりのような低いADLの患者を除いては手術を勧めるべきある.ただし高齢者はADLに関わらず全身的に重要臓器の機能低下があり,厳重な周術期管理が必要である.当院では心臓病センターがあるため心疾患を有する骨折患者の紹介が多く,80歳以上では術前評価として心エコー検査を全例実施している.その結果をもとに高齢者の周術期心疾患リスクについて検討した.対象は2013年1月~2014年12月の間に手術治療を行った80歳以上の大腿骨近位部骨折の患者438例.平均年齢は88歳(80~104歳),性別は男性58例,女性383例.調査の結果,周術期管理に注意すべきである高度大動脈弁狭窄症や低心機能症例が数%の頻度で見られた.多くは無症候性であり,全例に心エコー検査を行うのも現実的ではない.このため高齢者に潜むリスクを理解し,十分な説明を行ったうえで手術と周術期管理を行うべきである.
  • 萩尾 聡, 松崎 尚志
    2016 年 65 巻 3 号 p. 529-531
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    重度の大動脈弁狭窄症(以下AS)は非心臓手術において周術期の高い危険因子の一つである.ASの姑息的治療として,近年カテーテル治療を用いバルーンにて狭窄部を拡張させるバルーン大動脈弁形成術(以下BAV)がある.早期の手術が重要である大腿骨近位部骨折では術前にBAVを行う事は周術期管理の上で有用であると考えられる.今回我々は大腿骨近位部骨折の術前にBAVを施行した3症例について検討をおこなった.すべての症例で弁口面積の拡大をみとめ,周術期に重篤な合併症や死亡例なく施行可能であった.また待機期間としても全例が他院よりの紹介であったが,入院~BAV施行まで最短1日,BAV施行~手術まで最短2日で可能であり短期間待機での手術が可能であった.重度AS合併大腿骨近位部骨折に対して術前BAVは有用である可能性が高いことが示された.
  • 中江 一朗, 秋吉 寿, 石橋 千直, 野田 明生, 川崎 優二, 吉田 史郎, 仲摩 憲次郎, 松垣 亨, 白濵 正博, 志波 直人, 坂 ...
    2016 年 65 巻 3 号 p. 532-535
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    近年,高齢者の骨折増加に伴い,骨盤輪骨折が占める割合も増加傾向にある.今回,当院における高齢者骨盤輪骨折症例の治療経過を検討した.2008年4月から2015年6月までに当院に搬入された全骨盤輪骨折240症例の中で70歳以上の高齢者骨盤輪骨折85症例を対象とした.年齢は70歳から92歳の平均79.8歳,骨折型はAO分類に従いTypeAは19例,TypeBは46例,TypeCは20例であった.治療は56症例に経カテーテル的動脈塞栓術(以下TAEと略す),20症例に創外固定術,9症例に内固定術を施行した.一般的にTypeA症例は安定型骨折と称されるが,約半数にTAEを要した.高齢者は予備能が低く容易にショックとなり得るため,循環動態が不安定もしくは経過中に破綻を来し得る症例では骨折形態に関わらず,早期TAEによる動脈性出血のコントロールが推奨され,初期治療が重要である.
  • 冨田 哲也, 高野 祐護, 田中 孝幸, 野村 裕, 栁澤 義和, 福徳 款章, 渡辺 恵理, 山本 典子, 有馬 準一
    2016 年 65 巻 3 号 p. 536-540
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    【目的】高齢者の骨盤輪骨折に対する脊椎instrumentationを用いた内固定術について検討した.【対象と方法】2014年4月~2015年6月に手術施行した10例(男性2例,女性8例,平均80.2歳)を対象とした.手術時間,出血量,骨折型,骨密度,骨粗鬆症治療の有無,脆弱性骨折の既往,術後のADL及び予後を検討した.【結果】1例で前方固定,9例で後方固定を施行した.平均手術時間150分,平均出血量238ml,FFP分類typeIII4例,IV6例,YAM70%未満5例だった.術後骨粗鬆症治療は8例で6例がPTH製剤を使用した.脆弱性骨折の既往は4例だった.術直後から全例で全荷重許可し9例で歩行可能だった.術後合併症はSSI1例だった.フォロー期間中に6例で骨癒合または仮骨形成を認めた.【考察】instrumentationによる内固定は低侵襲で早期離床可能であり,高齢者にも有用と考える.
  • 西 亜紀, 﨑村 俊之, 依田 周, 野口 智恵子, 矢部 嘉浩
    2016 年 65 巻 3 号 p. 541-544
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    【はじめに】今回我々は仙骨部に発生し腫瘍と鑑別を要した椎間関節嚢腫を経験したので報告する.【症例】74歳女性.2年前より右下肢の違和感を自覚.徐々に増悪し,右下肢痛・しびれ出現,歩行困難となったため当院受診.MRIのT2強調画像で仙骨部の脊柱管内にhigh,low混在する15mm大の腫瘤性病変を認めた.腫瘤は造影MRIで造影効果なく,Myelo CTでも造影されず硬膜外腫瘤と判断した.手術は右L5/Sよりアプローチし,S1神経根を同定してから尾側の腫瘤へ向かって徐々に骨切除した.S1神経根背側に暗赤色調の腫瘤を認め一塊として摘出.病理診断は椎間関節嚢腫であった.【考察】L5/Sにできた椎間関節嚢腫は長期間の経過で椎間関節近傍より移動し腫瘍性病変との鑑別が必要となる場合がある.若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 田畑 聖吾, 中野 哲雄, 越智 龍弥, 山内 達朗, 稲葉 大輔, 安岡 寛理, 中原 潤之輔, 福間 裕子
    2016 年 65 巻 3 号 p. 545-547
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    【背景】最少侵襲脊椎安定術は経皮的椎弓根スクリュー(PPS)の発展により進歩したが,PPSにはlearning curveが存在する.【目的】PPS導入初期の刺入精度および安全性を検討すること.【方法】対象は2014年5月から2015年7月までにPPSを用いた11例(65本)である.腰椎変性すべり症3例,ASHに伴う椎体骨折3例,腰椎破裂骨折3例,椎体骨折後麻痺2例である.術後CTでMobbs Raley法でPPSを評価した.【結果】ガイドワイヤーによる合併症は認めなかった.PPSの誤刺入は3本(4.6%)でGrade1が1本,Grade2が2本であった.逸脱による神経,血管損傷はなかった.逸脱したPPSは右のTh10,Th12,L1であった.【考察】PPSは従来法より刺入点が外側となるため強斜位での刺入が必要なり外側への逸脱が多い.特に横突起基部が椎弓根外縁の外側に位置する症例では刺入点がより外側になるため術前の計測に基づいた十分な刺入角度が必要である.【結論】PPS導入初期の刺入精度は95.4%で安全に刺入でき合併症は認めなかった.
  • 嶋 勇一郎, 山下 彰久, 渡邊 哲也, 原田 岳, 橋川 和弘, 千住 隆博, 矢野 良平, 上原 慎平, 白澤 建藏
    2016 年 65 巻 3 号 p. 548-551
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    【目的】高度の脊柱後弯変形を伴う骨粗鬆症性椎体骨折に対するBKP(Balloon Kyphoplasty)の治療成績を報告する.【対象と方法】70歳以上で術前SVA(Sagittal Vertical Axis)90mm以上である15例,平均年齢80.7歳に対しBKPを施行した.臨床的評価,X線的評価,術後合併症を調査し統計学的検討を加えた.【結果】平均手術時間44分で全身合併症は認めなかった.VAS(Visual Analogue Scale),JOABPEQ,局所後弯角は有意に改善したがSVAは不変であった.続発性椎体骨折を8例(53.3%)に認め,全て隣接椎体であった.【考察】高度の脊柱後弯変形を伴う骨粗鬆症性椎体骨折に対するBKPは,矢状面アライメントは矯正されず,術後の続発性骨折も多い.しかし低侵襲手術で除痛効果が得られる利点が欠点を上回る際には,考慮してもよい治療方法である.
  • 細川 浩, 岡田 二郎, 城下 卓也, 岡村 直樹, 井本 光次郎, 岡野 博史, 林田 洋一, 宮本 和彦, 本多 一宏, 佐久間 克彦, ...
    2016 年 65 巻 3 号 p. 552-556
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    胸腰椎破裂骨折に後方固定術を行った.S4FRIを使用した16例16椎体.平均年齢42.6歳,平均経過観察期間14.6ヶ月,Denis分類 typeA 9例 typeB 7例,椎体粉砕度はload sharing classification(以下LSC)平均6.1点であった.原則OPEN法で2椎間固定と椎体形成とし後方骨移植併用とした.検討項目は平均手術時間,平均出血量,術後合併症,最終観察時の疼痛評価,神経症状の変化,局所後弯角推移,椎体圧潰率推移とした.平均手術時間168分,平均出血量158ml,合併症は皮下感染1例,スクリュー折損1本.全例鎮痛剤不要で,麻痺悪化症例はなかった.局所後弯角は矯正損失1.9度,椎体圧潰率は矯正損失6%であった.S4FRIは後弯矯正に有用だがLSC高得点例は矯正損失が予想され,固定範囲延長,前方支柱再建の必要性がある.
  • 甲斐 一広, 増田 圭吾, 櫻木 高秀, 富永 冬樹, 北村 貴弘, 仙波 英之, 生田 光, 志田原 哲
    2016 年 65 巻 3 号 p. 557-560
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    【はじめに】Ankylosing spinal disorders(以下ASD)に伴う椎体骨折は不安定型骨折であることが多い.また,診断の遅れが遅発性麻痺を招くこともある.【目的】ASDに伴う椎体骨折の診断過程について検討すること.【対象と方法】2009年から2015年に本骨折と診断した6例(DISH5例,AS1例)を対象とした.平均年齢は76.8歳(68―87歳).受傷機転,初診の医療機関,医療機関への移動手段,神経障害の有無,受傷から当科紹介・手術までの期間を調査した.【結果】受傷機転は交通事故が2例,転落が3例,転倒が1例.初診の医療機関は開業医2例,当院含め市中病院4例であり,開業医は徒歩,市中病院は救急車で来院していた.神経障害は2例に認めた.初診が開業医である症例の受傷から当科紹介・手術までの期間は非常に長かった.【まとめ】ASDに伴う椎体骨折は不安定型骨折であることが多いことを認識し,ASD例では症状が軽微であっても,可能な限りCT,MRIを撮影することが正確な診断には必要と考えられた.
  • 平川 雄介, 帖佐 悦男, 濱中 秀昭, 猪俣 尚規, 黒木 修司, 比嘉 聖, 永井 琢哉, 李 徳哲, 横江 琢示
    2016 年 65 巻 3 号 p. 561-564
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    第1~3腰椎レベル腸腰筋内に多発浸潤した脱分化型脂肪肉腫を,NUVASIVE社XLIF用神経モニタリング装置を用いて切除した一例を経験した.80歳男性.近医でのエコー検査にて左後腹膜に複数の腫瘤像を認めた.疼痛・腫脹などの自覚症状は認めなかった.CT・MRI検査にて左後腹膜に最大5cm径の腫瘍を指摘された.腫瘍は腎臓,腸腰筋,腰方形筋内に発生しており,泌尿器科と合同で腫瘍切除を行った.腹腔鏡補助下に腎動静脈,尿管の処置を行い,その後腹膜外アプローチにて腫瘍部を展開した.腸腰筋部分の剥離の際にMEPモニタリングで神経接近を示す特有の黄・赤信号は認めないまま,充分な切除縁を持って手術を終えた.術後下肢麻痺,膀胱直腸障害など神経症状は発生しなかった.通常のBr-MEP法での波形変化は,神経損傷の結果をみている可能性があり,腸腰筋内浸潤腫瘍切除の大きな合併症である腰神経叢損傷回避において,本機器でのリアルタイムモニタリングは有用であった.
  • 濱田 大志, 中村 英一郎, 山根 宏敏, 邑本 哲平, 竹内 慶法, 江副 賢生, 酒井 昭典
    2016 年 65 巻 3 号 p. 565-568
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    脊椎固定手術後の感染は人工物の表面にバイオフィルムを形成するため治療に難渋することが多い.これまで,バンコマイシンパウダー創内散布が感染予防に効果が有ると報告されてきた.また最近になり術後感染の沈静化に効果があると報告されている.当院でも術後感染にバンコマイシンパウダーを創内散布し,感染が沈静化した4例を経験した.バンコマイシンパウダー創内散布は術後感染沈静化に有効で比較的安全な治療法であると考える.
  • 木下 栄, 信藤 真理, 白地 仁, 田中 潤, 内藤 正俊
    2016 年 65 巻 3 号 p. 569-571
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    23歳,男性.中学生頃より仰向けや座位で後ろに体重をかけた際に,尾骨部に疼痛を認めた.高校生頃より皮膚の隆起を認め徐々に増大傾向であった.20代になり座位での疼痛増強傾向であり当院形成外科より当科紹介となった.仙尾部に3×5cm,弾性軟,表面平滑な腫瘤を認め,仙骨尖から尾骨にかけて圧痛を認めた.末梢血,血液生化学,尿検査に異常なく単純X線側面像にて仙骨尖の後方突出,尾骨の屈曲偏位を認めた.MRI像ではT1強調像にて仙尾骨部下方に比較的低信号な線維性病変を認め,Coccygeal padが疑われた.疼痛の原因は尾骨の不安定性によると考えられたため,皮膚腫瘤切除及び尾骨切除を行った.病理検査では表皮の過角化,皮下組織に肥厚した膠原繊維の増殖を認めた.術後6か月には疼痛の改善がみられ再発を認めていない.
  • 桑野 洋輔, 古市 格, 井上 拓馬, 小河 賢司, 秋山 隆行, 渡邉 航之助, 荒木 貴士
    2016 年 65 巻 3 号 p. 572-576
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    【はじめに】頚椎外傷後に咽頭後間隙血腫を生じ,保存的治療で軽快した5例を経験したので報告する.【症例】年齢は47~89歳(平均63.8歳).男性4例,女性1例.交通外傷によるものが3例,転落外傷によるものが2例であった.全例に頚椎骨折を認め,1例は頚髄損傷を合併していた.抗血小板薬を常用しているものが1例あった.咽頭後間隙の最大値は11~37mmであった.2例に気管挿管を必要とし,1例は受傷後3時間で気道閉塞症状が出現したため行い,1例は予防的に行った.抜管までには12~14日間を要した.3例は気管挿管を施行せずに自然軽快した.【考察】咽頭後間隙血腫は遅発性に気道閉塞を引き起こし致命的となることもあるため,その可能性を念頭に置いた治療が必要である.
  • 大野 貴史, 池田 天史, 宮崎 真一, 大山 哲寛, 土田 徹, 川添 泰弘, 二山 勝也, 吉野 孝博
    2016 年 65 巻 3 号 p. 577-580
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    外傷性四肢主幹動脈損傷は,受傷から血流再開までの時間により予後が大きく左右され,またたとえ血流再開しても阻血時間が長ければ重大な後遺障害を残す可能性がある.今回我々の病院で経験した外傷性四肢動脈損傷4例について報告する.症例は男4例で,年齢は25~68歳であった.損傷動脈は膝窩動脈断裂2例,閉塞1例,上腕動脈閉塞1例であった.受傷原因は機械圧挫2例,交通事故2例であった.合併損傷として4例中3例に骨折を伴っており,このうち2例は開放骨折であった.阻血時間は4~20時間であり,受傷後6時間以内に血流再開し得た症例は1例のみであった.手術は大伏在静脈によるグラフト3例,バイパス1例であった.3例は患肢を温存できたが,全例に阻血によると思われる筋障害が発生し,そのうち2例に追加手術を要した.外傷性四肢主幹動脈損傷の上記4例の治療経過を検討し,文献的考察を加え報告する.
  • 高山 剛, 嶋崎 貴文, 松浦 恵里子, 中島 武馬, 松村 陽介
    2016 年 65 巻 3 号 p. 581-584
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    新規骨粗鬆症治療薬であるデノスマブの短中期成績を調査した.H25年7月~H27年1月に当院にてデノスマブを投与し半年以上経過した149例(男性2名,女性147名,平均年齢80歳)を対象とし,投与後6,12,18か月時の治療継続率,投与前に比した骨代謝マーカー,骨密度(橈骨DXA)の変化,有害事象の有無を調査した.6,12,18か月後にデノスマブ継続可能であったのはそれぞれ90,83,80%であった.骨代謝マーカーであるALP,P1NP,TRACP-5bは6,12,18か月後のいずれの時点においても投与前より有意に減少していた.6,12,18か月後の骨密度変化率はそれぞれ1.3,1.0,1.7%であり,投与前に比し有意に増加していた.有害事象として投与後1週時の低Ca血症(血清Ca8.4mg/dl未満)が147例中18例,12.2%にみられた.橈骨DXAで骨密度上昇が確認できる治療薬は限定されるが強力な骨吸収阻害剤である本剤ではその効果を微小ながらも検出可能であった.
  • 原口 和史, 日野 敏明
    2016 年 65 巻 3 号 p. 585-587
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
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    外来通院患者370例を対象に変形性膝関節症(膝OA)と骨粗鬆症の関連性を調査するとともに,膝OAの骨代謝についても検討した.症例をKellgren-Lawrence分類により4群に分類,各群の骨密度(腰椎,大腿骨頸部YAM%)と骨代謝マーカー(TRACP-5b,P1NP)を比較検討した.また,骨代謝マーカーとJKOM(QOL)との相関も調査した.結果は膝OAのXP重症度が進行すれば,骨密度は腰椎,大腿骨頸部ともに増加しており,これは膝OA重症例ほど肥満が多いことが原因と思われた.一方,膝OAのXP重症度が進行すれば,TRACP-5b,P1NPともに亢進する傾向にあり,これは軟骨下の骨髄病変により生じたと思われた.また,骨代謝マーカーとJKOMには弱いが相関が認められた.骨髄病変は変形性関節症の進行や症状と深く関わっている.
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