整形外科と災害外科
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65 巻, 4 号
選択された号の論文の57件中51~57を表示しています
  • 井上 三四郎
    2016 年 65 巻 4 号 p. 819-824
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    当院でボードと通称されている複数診療科による合同カンファレンスを紹介する.2年半の間に著者が関わりボードで検討された9例を対象とした.平均83.6(75~94)歳,男性4人女性5人であった.整形外科の入院病名は,大腿骨近位部骨折が3例で最多であった.入院中に生じた内科的問題点や疾患名や転帰を調査した.内科的問題は様々であるが,SpO2低下5例発熱4例が症状として多く,肺炎や肺癌などの呼吸器科疾患が6例を占めた(重複あり).ボードは平均4(0~10)日で開催され,全例で治療方針の検討及び確認がなされた.最終的な転帰は,転院5例(うち当院再入院3例),退院2例,死亡2例であった.複数臓器に問題を抱える患者の診療は実に難しく,整形外科のみでは解決できない.ボードは情報共有・合意形成・相互協力に有効であり,各科の垣根を超えるコミュニケーションツールとして,一定の成果を上げていると考える.
  • 櫻井 立太, 原 俊彦, 中村 哲郎, 藤井 政徳, 末田 麗真
    2016 年 65 巻 4 号 p. 825-827
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    人工股関節全置換術(以下THA)術前に下肢長を一致させる計画を行う際に,正中位骨盤線に対して大腿骨機能軸遠位参照点を一致させる.しかし下肢長とは下腿長を含む長さであり,これらの症例で下腿長がどの程度一致しているかは不明である.本研究の目的はここまで当院で施行したTHA症例の下腿長の違いを検討することである.また下腿長の計測の際に,大腿骨遠位参照点は利用できるかを検討することである.方法は当院でTHA施行した32例(男性4例,女性28例).3Dテンプレートを用いて下腿長として脛骨窩間隆起内側頂点と脛骨距腿関節中央点間の距離を計測し左右差の検討を行った.次に窩間隆起内側頂点をepicondylar axis中心点または大腿骨機能軸関節面参照点で代用できるかの検討を行った.下腿長左右差は0.8±1.9 mm(max 7.1 mm, min 0 mm)であった.顆間隆起内側頂点を大腿骨機能軸関節面参照点で代用した場合の誤差は0.9±1.0 mmと小さかった.Epicondylar axis中心点では0.7±0.6 mmであった.
  • ―従来法との比較―
    廣瀬 毅, 山下 彰久, 原田 岳, 渡邊 哲也, 橋川 和弘, 原口 明久, 河野 紘一郎, 坂本 和也, 白澤 建藏
    2016 年 65 巻 4 号 p. 828-832
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    近年,従来の腰椎後方固定術の問題点を解決する手段としてMIS手術が広く普及してきている.当院で施行した従来法によるTLIF(Transforaminal Lumbar Interbody Fusion:以下TLIF)/PLIF(Pos-terior Lumbar Interbody Fusion:以下PLIF)とMIS(Minimally Invasive Surgery;以下MIS)-TLIF/PLIFの成績と問題点の比較検討を行った.対象は2012年から2014年の間に当院で1椎間のTLIF/PLIFを施行した70例であり,内訳は従来法によるTLIF/PLIF群(以下,Open群)34例,MIS-TLIF/PLIF群(以下,MIS群)36例,平均年齢は71.3歳であった.検討項目として術後3日目(最大値)のCRP値,CK値,周術期出血量,手術時間,在院日数である.術後CRP値,CK値は統計学的有意差は認めなかった.一方,出血量や在院日数ではMIS群で有意に少なかったが,手術時間はOpen群で有意に短かった.MISの有効性が示唆される一方で,手術時間はMISで長く,learning curveの存在が示唆された.今後,さらなる検討が必要である.
  • 廣瀬 毅, 山下 彰久, 原田 岳, 渡邊 哲也, 橋川 和弘, 原口 明久, 河野 紘一郎, 坂本 和也, 白澤 建藏
    2016 年 65 巻 4 号 p. 833-836
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    Balloon kyphoplasty(以下,BKP)後の続発性椎体骨折に対して,テリパラチド(teriparatide:以下,TP)使用による予防効果の検討を行った.対象は2011年から2014年の間に当院でBKPを施行した50例であり,術後TP使用の有無により2群間に分けた.内訳は男性16例,女性34例,平均年齢は78.7歳であった.TP投与群は男性6例,女性17例の計23例,非投与群は男性10例,女性17例の計27例であった.年齢,骨密度,既存椎体骨折数,術前の保存療法期間,術後の経過観察期間は両群間で有意差は認めなかった.本研究における続発性椎体骨折の発生率は全50例中17例(34%)であった.TP投与の有無による,骨折発生率の差は認めなかった.本研究群ではBKP施行直前および直後にTP治療が開始されており,TP投与時期に関してより早期に治療介入する必要があると思われた.
  • 横田 秀峰, 池田 天史, 宮崎 真一, 大山 哲寛, 土田 徹, 川添 泰弘, 二山 勝也, 米満 龍史
    2016 年 65 巻 4 号 p. 837-840
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    我々は林業従事者を対象に定期的に振動障害の一次検診を行っている.今回過去のデータを解析し,林業従事者における振動障害の現状や今後の課題について検討した.一次検診の項目は1)職歴および自覚症状調査票,2)検査,3)診察で,計1638名を対象とした.検査は室温を20℃±1℃ の会場で末梢循環機能検査(皮膚温,爪圧迫)と末梢神経機能検査(痛覚,振動覚)を行い,昭和61年労働省労働基準局より示された健康管理区分に分類した.結果はA:1462名,B1:125名,B2:41名,B3:10名,C:0名であった.B2およびB3は振動障害を疑う所見はほぼなく,頚椎症,肘部管症候群,手根管症候群を疑う症例が多かった.全国的には,林業よりも建設業で振動障害と診断される症例が多いとの報告がある.林業従事者では自覚症状や検査異常を認める場合,他疾患を考慮し2次検診での鑑別診断が重要と考えられた.
  • 米満 龍史, 土田 徹, 横田 秀峰, 二山 勝也, 川添 泰弘, 大山 哲寛, 宮崎 真一, 池田 天史
    2016 年 65 巻 4 号 p. 841-844
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    治療にLIPUSを用いた右大腿骨頚部疲労骨折を1例経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.【症例】10歳,男児.【経過】1ヵ月前より特に誘因なく間欠的な右股関節痛を自覚していた.2週間前より疼痛が持続,増悪するため,平成26年1月に当科を受診となった.初診時,歩行時痛および右大腿内転筋付着部に圧痛を認めた.CTでは頚部から小転子部に骨硬化像があり,MRIでは右大腿骨頚部から転子部にT1WIで低信号,T2WIで高信号,STIRで高信号を呈していた.大腿骨頚部疲労骨折と診断し,運動中止,松葉杖使用での部分荷重歩行,LIPUSを導入した.疼痛出現7週後のXpでは,頚部に骨硬化像を認め,10週で競技復帰とした.【考察】大腿骨頚部疲労骨折は下肢全疲労骨折のうち1~2%と比較的稀な骨折である.自験例では,症状出現早期よりLIPUSを導入し,比較的早期に競技復帰することができた.早期LIPUS導入により,骨癒合の促進および早期回復の可能性があると考えられた.
  • 吉原 智仁, 森本 忠嗣, 塚本 正紹, 園畑 素樹, 馬渡 正明
    2016 年 65 巻 4 号 p. 845-848
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/12/06
    ジャーナル フリー
    比較的稀な脊髄硬膜外血腫の3例を経験した.症例は,男性1例,女性2例,年齢は49歳,71歳,73歳である.発症時の症状はいずれも突然の背部痛であり,2例はその後麻痺を認めた.既往歴は高血圧2例,Hippel Lindau病1例であった.抗凝固薬内服例はなかったが,1例は片麻痺を呈していたため脳梗塞と判断され,t-PA治療がなされていた.血腫部位は頸椎部1例,頸胸椎部2例であった.背部痛のみで麻痺を認めなかった1例は保存治療を行い,不変・増悪の2例(t-PA治療例含む)は手術を行い,2例ともに改良Frankel分類でC1からEへと改善した.麻痺を呈さない症例については保存治療,麻痺の程度が不変・増悪例については手術治療が有効であった.また脊髄硬膜外血腫は片麻痺で発症する場合もあり,脳梗塞と誤診されt-PA治療により血腫増大,麻痺増悪を来たした報告も散見され,注意を要する疾患である.
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