整形外科と災害外科
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68 巻, 4 号
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  • 川口 健悟, 園田 和彦, 浜崎 晶彦, 美浦 辰彦, 土持 兼信, 牛島 貴宏, 小薗 直哉, 金堀 将也, 新井 堅, 原 俊彦
    2019 年 68 巻 4 号 p. 607-610
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【背景】当院では人工股関節全置換術(THA)において,京セラ3Dテンプレートを用いて3次元術前計画を行い,レーザーガイド下にマニュアルでカップ設置を行っている.今回,術後CTを用いてカップの設置精度について検証した.【方法】対象は2018年4-7月にprimary THAを施行した21症例21関節.術後CTを使用し,3Dテンプレート上で術前のfunctional pelvic planeに近似した座標を作成し,外方開角,前方開角とカップ中心位置(X:内外側,Y:上下,Z:前後)を計測し,術前計画と比較した.【結果】術前後の誤差は,外方開角:-0.6[-8.0~7.1]°,前方開角:0.6[-5.3~5.7]°,X:1.8[-1.6~5.0]mm,Y:-1.5[-4.5~2.0]mm,Z:-1.3[-4.1~1.3]mmであった.【結語】当院でのTHAにおけるカップ設置精度を検証した.

  • 大迫 浩平, 山下 彰久, 原田 岳, 渡邉 哲也, 橋川 和弘, 太田 浩二, 綾部 裕介, 白石 さくら, 白澤 建藏
    2019 年 68 巻 4 号 p. 611-614
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【目的】当院における同時期の同一ステム,同一術者でのStryker社Trident HA(TR群)とZimmer社Continuum,Trabecular Metal Modular Cup(TM群)のX線学的短期成績を比較した.【対象と方法】2015年9月から2016年9月までにZimmer社Kinectiveを使用し初回THAを行った40症例42股を対象とした.Cup CE角,術後1週でのinitial gap,術後1年及び2年でのradiolucent line,術後2年でのカップ固定性を調査した.【結果】X線学的成績は全項目で有意差はなかった.両群ともほとんどの症例でgap fillingを認め,固定性も良好であった.【結語】TR群,TM群でX線学的短期成績に差はなく,両群ともに良好な成績であった.

  • 白井 佑, 木下 浩一, 坂本 哲哉, 山本 卓明
    2019 年 68 巻 4 号 p. 615-617
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    Excia stemを用いた人工股関節全置換術(以下THA)後のステム周囲骨反応を調査することであった.2013年6月から2016年6月までに当科でExcia stemを用いてTHAを行い術後1年以上経過観察可能であった症例を対象とした.結果に記載する患者データおよびX線学的評価項目を調査した.患者データは16例16股(男4股,女12股),平均年齢66歳,平均BMI 24.3 kg/m2,原疾患は変形性股関節症15股,特発性大腿骨頭壊死症1股,平均経過観察期間は3.7年であった.Spot weldsを81%に認め,手術から出現確認までの平均期間は6か月であった.全例Stress shieldingを認め,Engh1)の分類1:6股,2:9股,3:1股であった.固定性は全例fixationであった.術前の大腿骨髄腔形状はNoble5)の分類でChampagne-flute:3股,Normal:12股,Stovepipe:1股であった.Excia stemの固定性は良好でspot weldsも比較的早期に出現することが示唆された.

  • ~East Baltimore Lift~
    古川 寛, 菊池 直士, 井上 三四郎, 岩崎 元気, 田中 宏毅, 内田 泰輔, 大角 崇史, 有田 卓史, 井上 隆広, 阿久根 広宣
    2019 年 68 巻 4 号 p. 618-619
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    (はじめに)East Baltimore Lift(EBL)は外傷性股関節後方脱臼に対する徒手整復法として報告された手技である.一方,人工股関節全置換術(THA)術後の後方脱臼に対する具体的な成績を示した文献はない.(対象と方法)2012年4月から2018年7月までに当院でEBLにより治療したTHA術後の後方脱臼はのべ16例であった.年齢は平均82.8(71~90)歳,男性5人,女性3人であり,期間内に2回脱臼が1人,3回脱臼が2人,4回脱臼が1人であった.16例のうち9例は透視室で鎮静下に整復を行った.7例は麻酔科に依頼し手術室で整復を行った.(結果)EBLを行い全例に整復が得られた.合併症はなかった.(考察)EBLの利点は患者,術者ともに安全な体勢で行うことできる点である.整復の成功率も高く,推奨される方法と考える.

  • 石原 昌人, 仲宗根 哲, 平良 啓之, 山中 理菜, 親川 知, 松田 英敏, 東 千夏, 神谷 武志, 金谷 文則
    2019 年 68 巻 4 号 p. 620-623
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    人工股関節置換術(THA)後の腸腰筋インピンジメントに対して腱切離を行い改善した1例を報告する.【症例】62歳女性.左変形性股関節症に対し左THAが行われた.術後より左股関節自動屈曲時の鼠径部痛を認めていた.歩行は可能であり鎮痛薬内服で経過観察を行っていたが,症状の改善がなく術後6ヵ月時に当院を紹介され受診した.左股関節の自動屈曲は疼痛のため不能で,血液検査で炎症反応上昇はなく,単純X線像でTHAのゆるみは見られなかったが,カップの前方突出を認め,腸腰筋インピンジメントと診断した.キシロカインテストで疼痛は消失し術後8ヵ月で手術を行った.腸腰筋は緊張しカップの前縁とのインピンジメントを認め腸腰筋腱切離を行った.術当日より疼痛は改善し術後3日目に独歩で退院した.術後2ヵ月でADL制限なく職場復帰した.腸腰筋インピンジメントの観血的治療として腱切離は低侵襲で有効な治療法と思われた.

  • 樋口 健吾, 隈元 真志, 本家 秀文, 馬渡 正明
    2019 年 68 巻 4 号 p. 624-626
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【はじめに】Total Hip Arthoplasty(THA)後の腸腰筋インピンジメントは遷延する鼡径部痛の原因となりうる病態である.今回,本病態に対してcup revisionを行い良好な臨床成績が得られた1例を経験したため文献的考察を加えて報告する.【症例】51歳,女性.42歳時に大腿骨頚部骨折に対しTHAを行われている.51歳頃より階段を上る際や車の乗り降りの際に鼡径部痛が出現した.画像検査では臼蓋前方でcup辺縁の突出を認め,cup前方の腸腰筋周囲に血腫の貯留を認めた.cup revisionを行い,鼡径部痛は改善し経過は良好である.【考察】THA後の腸腰筋インピンジメントに関する報告は散見されるが,臨床での認知度は高いとは言えない.感染やlooseningなどの鑑別は必須であるが,遷延する鼡径部痛を認める場合は本病態を念頭に置いた診療が必要と考える.

  • 鍋島 貴行, 森 俊陽, 松本 康二郎, 島田 佳久, 西田 茂喜, 片江 佑二
    2019 年 68 巻 4 号 p. 627-630
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    (はじめに)比較的稀な寛骨臼脆弱性骨折を生じた症例を経験したので報告する.(症例)85歳,女性.3ヶ月前から誘因なく左股関節痛を自覚.1ヶ月前から跛行が出現したため,近医受診しX線で異常は指摘されなかったが,疼痛が強く骨盤周囲脆弱性骨折を疑われ,当院紹介受診となった.初診時,左股関節痛が著明で,立位・歩行困難であったため,安静入院とした.MRIにて左寛骨臼荷重面に浮腫性変化を認めた.また骨シンチにて同部位に異常集積を認めた.2ヶ月経過しても疼痛が軽減せず,またCTで骨折部の転位の進行を認めたため,人工股関節全置換術(THA)を施行した.(考察)近年高齢者の外傷性寛骨臼骨折に対して一期的THAを行う報告がみられるが,今回のような脆弱性骨折で関節内骨折の場合,かつ関節症性変化の進行が危惧される場合,THAが治療選択肢となりうる.

  • 池田 直史, 熊谷 達仁, 西田 智
    2019 年 68 巻 4 号 p. 631-634
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【はじめに】一過性大腿骨頭萎縮症(以下,TOH)は,中年男性,妊娠後期の女性に多いとされるが,両側発症の報告は少ない.今回,中年女性の両側に発症したTOHを経験したので報告する.【症例】54歳女性.初診の1ヶ月前より特に誘因なく右股関節に激痛が生じ,疼痛継続するため当院受診.身体所見は,明らかな関節可動域制限はなく,Patric test陽性,スカルパ三角に圧痛を認めた.MRIでは大腿骨頭から転子部にかけてT1強調で低信号,STIRで高信号領域を認めた.TOHを疑い,外来にて免荷を行い,徐々に疼痛は改善していた.右股関節痛発症より9ヶ月後に,誘因なく左股関節痛が出現し,MRIでは右股と同様の所見を認めた.一方,右大腿骨頭の所見は改善を認めたが,左免荷による再燃を防ぐため入院加療とした.免荷による保存加療を約1ヶ月行い,経過良好にて退院した.外来フォロー中であるが,再燃は認めていない.【考察とまとめ】中年女性の両側に発症した稀なTOHを経験した.

  • 西村 博行, 浦上 泰成
    2019 年 68 巻 4 号 p. 635-639
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    従来,認知障害はリハの阻害因子と報告されてきた.今回,認知障害の有無と重症度が,回復期リハを行った高齢骨折患者のADLに及ぼす影響を検討した.対象は,65歳以上で自宅在住の高齢骨折患者683名.ADLは,Barthel index(BI)で,認知機能は,改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)で評価・分類した.自立軽介助群(BI 60-100点)は自宅退院を可能にするADL能力と考えられているが,軽度認知障害(HDS-R 15-20点)では,回復期リハ入院時に減少していた自立軽介助群患者数が,非認知障害同様に,退院時には受傷前の患者数に改善した.軽度認知障害はリハの阻害因子とは考えにくい結果であった.中等度および重度認知障害の退院時ADLは,受傷前への改善はみられなかったが,入院時に比べ,改善した.認知機能とADLの関係では,認知機能分類の順序にしたがって,ADLが変化した.

  • 大石 聡
    2019 年 68 巻 4 号 p. 640-643
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆症性骨折の増加が社会問題となっている.一方,骨粗鬆症治療率は低く,治療開始後も治療継続率は低い.この状況を改善すべくイギリスで始まった“骨折リエゾンサービス”は有効性が認められ,世界各地に広まっている.当院では脱落を防ぐ介入“10のポイント”として実践してきた.結果は1年継続率において+20%程度の上乗せ効果があると思われる.残念ながら経年的増加は認めなかった.

  • 大石 聡
    2019 年 68 巻 4 号 p. 644-645
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆症性骨折の増加が社会問題となっているが,骨粗鬆症治療率は未だに低いと言われている.今回,壱岐市の現状を調査した.壱岐市の骨粗鬆症治療率は34.24% と日本の平均よりは良かったが,大腿骨近位部骨折発生数および率は,この10年間増加傾向であった.当院は骨粗鬆症性骨折保存的治療後に骨折リエゾンサービスを行い治療継続率を向上させ有効性を報告したが,地域の骨粗鬆症性骨折を減少させるインパクトは無かった.今後は地域の骨粗鬆症骨折リエゾンサービスを行う必要がある.

  • 大石 聡
    2019 年 68 巻 4 号 p. 646-647
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆症性骨折の増加が社会問題となっている.一方,骨粗鬆症治療率は低く,治療開始後も治療継続率は低い.この状況を改善すべくイギリスで始まった“骨折リエゾンサービス”は有効性が認められ,世界各地に広まっている.当院では脱落を防ぐ介入“10のポイント”として実践してきた.結果は1年継続率において+20% 程度の上乗せ効果があった.今回は介入不能因子である属性(性・年齢)による骨粗鬆症治療継続率への影響について検討した.性別では男性が6.1% 低かった.年齢別では80歳未満と80歳以上の差が18.1% と大きかった.今後,男性骨粗鬆症の診断率は上がり,高齢者の更なる高齢化および核家族化は進行する.属性に関して,逆に積極的に介入する意識を持つべきである.特に80歳以上の高齢者の治療継続の為に家族や介護職・行政職と協力して“地域包括骨粗鬆症骨折リエゾンサービス”が必要であろう.

  • 柴原 啓吾, 中原 寛之, 齊藤 太一, 糸川 高史, 入江 努, 田中 哲也, 青野 誠
    2019 年 68 巻 4 号 p. 648-652
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    ビスフォスホネート製剤(以下BP製剤)の長期投与中に発症した両側非定型尺骨近位骨幹部骨折の1例を経験したので報告する.症例は80歳女性,薬缶を持ち上げたときに右前腕痛を自覚した.X線で右尺骨近位骨幹部単純横骨折を認めた.12年のBP製剤使用歴,軽微な受傷機転,骨折型から右非定型尺骨近位骨幹部骨折の診断し,アレンドロン酸投与中止,プレートによる骨接合術を行った.術後3ヶ月後にスクリュー折損と骨折部の転位を認めたため再骨接合術を行った.2回目手術から術後6ヶ月で骨癒合を確認し術後1年で抜釘した.しかし早期再骨折をきたし再々骨接合術を施行し術後4ヶ月で骨癒合した.その後,特に誘引なく左前腕痛を自覚,非定型尺骨近位骨幹部骨折の診断でプレートによる骨接合術を施行した.非定型大腿骨骨折の報告はあるが,非定型尺骨骨折の報告は稀である.非定型骨折の骨癒合は遷延する傾向にあるため,骨接合術後は慎重に経過観察を行うべきと考えられた.

  • 棚平 健, 中島 三郎, 宮崎 信, 沼田 亨祐, 寺本 周平, 浦上 勝, 吉野 孝博, 有馬 嵩博
    2019 年 68 巻 4 号 p. 653-655
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    ビスフォスフォネート製剤(以下,BP製剤)長期内服患者における大腿骨転子下や大腿骨骨幹部のいわゆる非定型骨折(以下,AFF;atypical femoral fracture)が数多く報告されている.今回我々はBP製剤長期内服患者で両側同時に大腿骨転子下骨折を生じた1例を経験したので報告する.症例は78歳,女性.強皮症に対し,近医皮膚科で2007年からプレドニゾロンが開始となり,2010年からBP製剤が追加されていた.2017年12月に風で飛ばされた帽子を追いかけようと駆け出した際に転倒し,両大腿部痛のため当院へ救急搬送された.単純X線像で両側大腿骨転子下骨折を認め,髄内釘による観血的骨接合術を施行した.術後は低出力超音波パルス(以下,LIPUS;low-intensity pulsed ultrasound)およびテリパラチドを使用し,術後12ヶ月の現在骨癒合も得られ経過は良好である.

  • 日高 三貴, 李 徳哲, 濱中 秀昭, 黒木 修司, 比嘉 聖, 川野 啓介, 永井 琢哉, 関本 朝久, 帖佐 悦男
    2019 年 68 巻 4 号 p. 656-660
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【はじめに】妊娠・出産に伴いCa喪失やエストロゲン分泌低下などの内分泌環境の変化により骨量は生理的に低下するが,稀に若年にも関わらず高度な骨粗鬆症を呈する場合がある.出産後に多発椎体骨折をきたした2例を報告する.【症例1】40歳,第2子普通分娩2ヶ月後,多発椎体骨折により強い腰痛を自覚し,腰椎YAMは70%,TRACP-5Bは著明高値であった.断乳とテリパラチド連日投与18ヶ月で腰痛や新規骨折なく,腰椎YAMは9% 増加した.【症例2】28歳,第1子普通分娩5ヶ月後に多発椎体骨折により歩行困難となり,腰椎YAM 56%,尿中NTXは著明高値であった.断乳およびリセドロネート内服4ヶ月で尿中NTXは正常範囲に低下し,内服32ヶ月で腰痛はほぼなく腰椎YAMは22% 増加した.【考察】両症例とも腰痛は速やかに改善したが,YAM改善に時間を要した.安全な育児を可能にし,今後の脊柱変形を予防するには断乳のみでは不十分で,適切な薬物療法が必要であることが示唆された.

  • 北島 雄人, 米倉 豊
    2019 年 68 巻 4 号 p. 661-663
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆症性椎体骨折が生じると生活機能やQOLの低下を招く.骨折の予防のため治療介入が重要であるが,その実施率は20% 程度とされる.当院で2015年度に骨粗鬆症性椎体骨折と診断された87例を対象とし,既往骨折の有無,受傷前後での骨粗鬆症治療率と継続率,脆弱性骨折の再発の有無を調査した.椎体骨折の既往は38例(43.4%)にあり,受傷時治療が行われていたのは18例(20.8%)であった.受傷後は55例(63.2%)に治療が行われたが,1年以上継続できたのは33例(37.9%)であった.脆弱性骨折の再発は19例で,再々発は6例であった.骨粗鬆症性椎体骨折は再発する可能性が高い骨折であるが治療の継続率は低いということが明らかになった.治療の継続率をあげるため,治療の重要性を十分に説明し,薬剤を検討した上で,かかりつけ医などと協力することが今後の課題である.

  • 太田 浩二, 山下 彰久, 野村 裕, 渡邊 哲也, 原田 岳, 橋川 和弘, 大迫 浩平, 綾部 裕介, 白石 さくら, 白澤 建藏
    2019 年 68 巻 4 号 p. 664-669
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆症性椎体骨折(以下OVF)に対するBalloon Kyphoplasty(以下BKP)の有用性は多数報告されている.【目的】後壁損傷を伴う不安定型OVFに対してBKP+Percutaneous Pedicle Screw(以下PPS)を施行した症例について検討する.【方法】2017年6月から2018年5月の1年間に施行したBKP症例(B群),BKP+PPS症例(B+P群)のうち3ヶ月以上フォロー可能であった34例(B群28例,B+P群6例),B群(男性6例,女性22例,平均年齢82.1±5.5歳),B+P群(男性3例,女性3例,平均年齢82.2±6.0歳)において,手術時間,透視時間,出血量,セメント量,骨密度,手術までの日数,在院日数,ADL,術前術後の画像所見,合併症について統計学的検討を行った.【結果】手術時間,出血量はB群で有意に少なく,楔状率はB+P群で有意に改善した.【考察】明らかな後壁損傷を伴う不安定型OVFなどBKP単独では支持性が得られにくい症例にはPPSによる後方制動が有用である可能性が示唆された.

  • 綾部 裕介, 山下 彰久, 辛島 詠士, 原田 岳, 渡邊 哲也, 橋川 和弘, 太田 浩二, 大迫 浩平, 白石 さくら, 白澤 建藏
    2019 年 68 巻 4 号 p. 670-673
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【背景】重症下肢虚血に対してやむなく切断術を行う際には,術後のADLを考慮するとなるべく切断高位を低減することが望まれる.血管内治療での切断高位低減の可能性について調査した.【対象と方法】2015年1月から2017年12月の3年間に重症下肢虚血に対して施行した下肢切断術23例のうち,浅大腿動脈から膝窩動脈に閉塞病変のある14例を対象とし,血管内治療で浅大腿動脈が開通した群8例としなかった群6例に分けて調査した.【結果】浅大腿動脈開通群は8例のうち7例が大腿切断を免れ,非開通群は6例全例が大腿切断となった.【結語】切断術の術前もしくは術後に血管内治療を併用することで切断高位低減できる可能性がある.

  • 美山 和毅, 城野 修, 清水 敦
    2019 年 68 巻 4 号 p. 674-676
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    閉鎖孔ヘルニアは嵌頓整復を繰り返し急性下肢痛発作の原因となりえて高齢の痩せ型女性に好発するが,その一般的認知度は低い.今回閉鎖孔ヘルニアにより慢性的に左下肢痛の急性疼痛発作が生じていた一例を経験したので報告する.症例は67歳の痩せ型の女性.4年前から特に誘因無く怒責時などに左鼠径部から左膝周囲にかけての強い疼痛を自覚されており近医受診.股関節,膝関節レントゲンや腰椎MRI検査で疼痛につながる器質的異常を認めず.仙腸関節ブロック,装具療法施行されたが疼痛持続し精査加療目的に当院紹介となった.股関節MRIを施行し,腹腔内脂肪組織が一部陥入した左閉鎖孔ヘルニアを認め外科へコンサルト.閉鎖孔ヘルニアによる左下肢痛と考えられ腹腔鏡下ヘルニア修復術を施行.術後は以前の様な強烈な痛みは改善した.高齢痩せ型女性の下肢痛発作の原因として本疾患を念頭におくことも必要である.

  • 後藤 剛, 古江 幸博, 川嶌 眞人, 田村 裕昭, 永芳 郁文, 本山 達男, 佐々木 聡明, 渡邊 祐介, 嵐 智哉, 川嶌 眞之
    2019 年 68 巻 4 号 p. 677-680
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    脛骨粗面骨折は比較的稀な骨折であるが,骨端線が完全に閉鎖していない思春期に好発すると言われている.今回著者らは成人に生じた脛骨粗面骨折症例を経験したので報告する.症例は69歳男性.約2 mの高さの木に登り,剪定をしていて転落.転落した際に地面で左膝,左下腿を打撲し受傷.翌日,徐々に左膝の腫脹,皮下出血が増悪したため当院初診となった.X線,CTで左脛骨粗面骨折を認め,近位への転位,粉砕を認め,受傷5日目に径4.0 mmの中空ネジとFiber wireを用いて観血的骨接合術を行った.術後は膝関節伸展位で外固定を行い,術翌日から荷重を許可した.膝関節の可動域訓練は術後3週から開始した.術後5か月で膝関節可動域は-5°/145°で疼痛などの愁訴はない.成人に稀な脛骨粗面骨折は骨端線閉鎖前の骨折と比べ骨の脆弱性,直達外力などにより骨折部が粉砕している可能性が高く,補強手術まで行うことが重要と考えられる.

  • 小倉 拓馬, 中村 優子, 海江田 光祥, 嶋田 博文, 有島 善也, 東郷 泰久, 小倉 雅, 谷口 昇
    2019 年 68 巻 4 号 p. 681-683
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    スポーツ障害の1つである疲労骨折は繰り返し加わる小さな力によって起こるため,早期診断に苦慮する事もある.特に荷重のかかる下肢の疲労骨折は,復帰時期も含めて治療に難渋する事が多い.今回,我々は比較的稀な足関節内果疲労骨折の3例を経験し,その後の経過について検討を行ったので報告する.【症例1】20歳男性,大学陸上部のやり投げ選手.本人が手術を希望せず保存的加療.経過良好にて競技復帰【症例2】14歳男性,剣道部.手術加療も再骨折し,再手術施行し競技復帰【症例3】14歳女性,テニスクラブに所属.手術加療後競技復帰.本骨折は保存的加療を行っても良好な経過がみられるが,遷延治癒や再骨折もあり早期スポーツ復帰を希望する場合は手術を考慮するべきである.手術加療を行っても偽関節の形成や,抜釘後に再骨折を来す場合があり,抜釘時期も含めて注意深く経過を観察していく必要がある.

  • 蛯原 宗大, 井上 知久, 島田 信治, 竹下 都多夫, 佐藤 陽昨, 中川 憲之, 藤井 勇輝, 井原 和彦
    2019 年 68 巻 4 号 p. 684-686
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    立方骨を含む中足部骨折は全骨折の0.4% のみと比較的稀である.立方骨骨折は足部多発骨折のうちの1つであることが多いが,今回単独立方骨粉砕骨折に対して立方骨ロッキングプレートを用いた骨接合を経験したので報告する.症例は32歳男性,バイク走行中に転倒し受傷した.単純X線,CTにてAO/OTA 84C,nutcracker骨折と診断し,立方骨ロッキングプレートによる骨接合と人工骨β-TCP移植を行なった.術後2週よりROM訓練と踵接地歩行を開始し,術後6週から部分荷重での踏み返し歩行を開始した.これまで立方骨骨折では創外固定やStapler,架橋プレートなどが使用されており,長期間の固定や抜釘が必要となっていた.立方骨ロッキングプレートでは正確な整復位の獲得や外側アライメントの保持が行え,後療法の短縮が期待できる.

  • 髙田 紘平, 安樂 喜久, 堤 康次郎, 安藤 卓, 立石 慶和, 上川 将史, 今村 悠哉, 古閑 丈裕, 柴田 悠人
    2019 年 68 巻 4 号 p. 687-690
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    抜釘後再骨折は重篤な合併症であり,予防策を講じる必要がある.当科で経験した3症例を報告する.【症例1】66歳男性.大腿骨転子下骨折に対し髄内釘を用いて骨接合術を施行.術後1年半で抜釘を行い,抜釘後22日目にラグスクリュー刺入部に再骨折を来した.【症例2】42歳男性.脛骨遠位部骨折に対しプレートを用いた骨接合術を施行.術後1年で抜釘を行い,抜釘後28日目にスクリュー刺入部に再骨折を来した.【症例3】55歳女性.鎖骨骨幹部骨折に対してプレートを用いた骨接合術を施行.術後1年で抜釘を行い,抜釘後7日目にスクリュー刺入部に再骨折を来した.いずれの症例も再手術後骨癒合が認められた.再骨折の原因として変形癒合,仮骨形成不良,骨欠損に伴う強度低下等が考えられた.単純X線やCT検査での骨癒合確認,段階的抜釘,抜釘後の安静・免荷・外固定,抜釘しない,など再骨折を念頭に置いた対応が肝要である.

  • 坂本 幸成, 塚本 伸章, 前 隆男, 加藤 剛, 小宮 紀宏, 岡 和一朗, 馬場 覚, 末田 麗真, 松尾 拓, 松永 慶
    2019 年 68 巻 4 号 p. 691-694
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    近年,小児四肢骨幹部骨折に対して外科的治療が積極的に行われている.今回我々は4~7歳の小児四肢骨幹部骨折の3症例に対し弾性髄内釘であるDepuy Synthes社のTitanium Elastic Nail SystemTM(TEN)を用いた治療を経験したので報告する.前腕両骨骨幹部骨折の2例,大腿骨骨幹部骨折の1例にTENを適用したが,いずれの症例においても順調に骨癒合と抜釘に至り大きな合併症は認めなかった.今回のTENを用いた治療経験では全例とも経過は良好であったが,本法の長期的な有用性を検証するためには今後も症例の蓄積が必要である.

  • 大野 貴史, 薬師寺 俊剛, 栁澤 哲大, 有村 仁志, 前田 和也
    2019 年 68 巻 4 号 p. 695-699
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【はじめに】小児における大腿骨骨幹部骨折治療に関しては,従来保存療法が主流であったが,近年小侵襲手術を行うことで良好な成績を得た報告を多数認める.今回我々は,小児大腿骨骨幹部骨折に手術加療を行ったものの,再骨折を繰り返し治療に難渋した1例を経験したので文献的な考察を踏まえ報告する.【症例】交通外傷により閉鎖性大腿骨骨幹部骨折を受傷した10歳男児.【経過】搬送当日に創外固定を施行したが,その後骨癒合が不十分であったため大腿骨遠位からEnder釘を挿入した.ファンクショナルブレイスを併用し,骨癒合が得られたため抜釘を行ったが,その後軽微な外傷で再骨折し順行性髄内釘固定を行った.最終的には骨癒合が得られたが,長期の入院加療を要した.

  • 前田 和也, 薬師寺 俊剛, 栁澤 哲大, 有村 仁志, 大野 貴史
    2019 年 68 巻 4 号 p. 700-702
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    1歳1ヶ月男児.主訴は右上肢を動かさないこと.初診時は右肘関節の腫脹や発赤は認めなかったが,WBC 15800/μl,CRP 7.9 mg/dlと炎症所見を認めた.翌日には右肘関節の腫脹,発赤,熱感を認め,関節穿刺にて黄褐色混濁の関節液を採取し,グラム染色によりグラム陽性球菌を認めた.以上より化膿性関節炎と診断し,同日洗浄・デブリードマンを行った.関節液の細菌培養の結果,MRSAが検出された.術後抗生剤加療を行い術後11日でCRPの陰性化を認めた.経過は良好であり術後1年の時点で感染の再燃や可動域制限等の後遺症は認めていない.

  • 中島 大介, 今釜 崇, 関 寿大, 関 万成, 徳重 厚典, 坂井 孝司
    2019 年 68 巻 4 号 p. 703-704
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【目的】術前の関節液培養と,術中の組織培養,関節液培養の関連性と,検出率について検討したので報告する.【対象】2010年から2017年に当院で手術を行い,術前,術中に培養検査を行った人工股関節術後感染12例26股,人工膝関節術後感染13例22膝,化膿性股関節炎4例6股,化膿性膝関節炎7例9股,計36例63関節を対象とした.【結果】術前の関節液培養陽性率は全体で39/63関節(61.9%)であった.また術中関節液培養陽性率は全体で21/50関節(42.0%)で,術中組織培養陽性は19/46関節(41.3%)であった.術前と術中関節液培養結果が異なったものが全体で15/50関節(30.0%)で,術前関節液培養結果と術中組織培養結果が異なったものが全体で16/46関節(34.8%)であった.【考察】術前関節液培養と術中関節液・組織培養の結果が異なる可能性があり,特に術前培養から手術までの期間が長い症例,瘻孔のある症例,術前に抗菌薬投与された症例では,術前培養と術中培養で結果が異なる可能性がある.

  • 藤田 潤
    2019 年 68 巻 4 号 p. 705-707
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【背景】梨状筋膿瘍は,通常易感染性を持つ高齢者やCrohn’s病の既往を持つ患者に生じる事が多い.既往の無い若年者に生じる事もあるが,非常に稀である.【目的】若年者に梨状筋膿瘍が生じた症例を経験したので報告する.【症例】15歳男性.既往に喘息と痔瘻あるがその他は特記事項なし.特に誘因なく右臀部痛と40度台の発熱あり当院受診.右臀部に著明な疼痛を認め,歩行も困難な状態であった.下肢伸展挙上(SLR)テストは陽性であったが,その他は明らかな神経学的所見の異常は認めなかった.MRIを施行し梨状筋に膿瘍を疑う異常信号を認め,梨状筋膿瘍の診断の上,入院となった.エコーガイド下にドレナージも検討したが,膿瘍が確認できず,抗生剤にて加療を開始した.【結果】抗生剤開始後は症状改善し,第32病日に退院の方針となった.

  • 福澤 かおり, 野谷 尚樹, 金﨑 彰三, 坂本 智則, 曽根 崇史, 坂本 照夫, 津村 弘
    2019 年 68 巻 4 号 p. 708-711
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    足部コンパートメント症候群(以下FCS)は発生頻度が2-5% と比較的まれな疾患とされている.今回FCSの1例を経験したので報告する.症例は67歳男性,バイク運転中に自動車と衝突し受傷した.来院時バイタルは安定していたが,右足部全体の緊満,足趾の色調不良を認めた.足趾の運動は可能であったが感覚鈍麻を認めていた.レントゲンで右踵骨,舟状骨,立方骨,第3,4中足骨に骨折を認めた.足部のコンパートメント内圧を測定すると内側,足底いずれも45 mmHg以上であったため,FCSと診断し,同日緊急で減張切開を施行した.術後,腫脹は軽減し色調も改善した.右足の減張切開部は創閉鎖困難であったため受傷後6日目に全層植皮を行った.足部の骨折については転位がわずかであったため植皮生着後ギプス固定として保存的治療を行い骨癒合良好であった.現在術後6ヶ月で足趾拘縮などの合併症なく独歩可能で経過している.

  • 中村 周道, 野口 幸志, 江崎 祐平, 久米 慎一郎, 後藤 昌史, 志波 直人, 大川 孝浩
    2019 年 68 巻 4 号 p. 712-715
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    23歳,男性.ラグビー選手.プレー中に右足で踏ん張り受傷.前医では,足関節捻挫の診断であったが,当院初診時の単純MRIにて仮性嚢を確認でき腓骨筋腱脱臼の診断が可能であった.短腓骨筋腱の低位筋腹も認めていたが,Das De変法のみを施行した.術後2か月でラグビーに復帰していたが,1年後に逆の足関節を捻り受傷.単純MRIにて仮性嚢と短腓骨筋腱の低位筋腹,第4腓骨筋の破格も認める腓骨筋腱脱臼であった.右と同様のDas De変法に第4腓骨筋の切除も行った.術後2~3か月で競技に復帰し,再脱臼なくプレーを継続している.腓骨筋腱脱臼を発症する患者素因として短腓骨筋の低位筋腹や第4腓骨筋の存在,腱溝低形成など解剖学的変異が報告されている.手術療法としては軟部組織制動術であるDas De変法が主流となっているが,解剖学的変異への処置を行うかどうかは,術前・術中に脱臼素因を正確に評価し適切な処置を行う事が再発を防ぐ上で重要だと考える.

  • 沼田 有生, 金澤 和貴, 吉村 一朗, 萩尾 友宣, 長友 雅也, 山本 卓明
    2019 年 68 巻 4 号 p. 716-718
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    当院における陳旧性アキレス腱断裂に対する腓腹筋筋膜弁を用いた再建術の治療成績を検討した.症例は7例7肢(男性4肢,女性3肢),平均年齢は59歳であった.陳旧性アキレス腱断裂7肢であった.術後平均経過観察期間18ヵ月であった.手術はアキレス腱変性部を切除後,core縫合し,アキレス腱中枢部より幅1.5 cmの有茎腓腹筋筋膜弁にて再建した.JSSF scaleは術前平均56点が術後最終調査時平均94点と改善していた.合併症としては,創傷治癒遅延2肢に認めた.腓腹筋筋膜弁を利用したアキレス腱再建術は概ね良好な治療成績であった.

  • 相馬 史朗, 舛田 哲朗, 岡元 信和, 佐藤 広生, 伊藤 仁, 湯上 正樹, 中村 英一, 藤本 肇
    2019 年 68 巻 4 号 p. 719-722
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【はじめに】距骨滑車中央部に発症した骨軟骨障害の1例を報告する.【症例】7歳男児.6ヶ月前より歩容の異常と左足関節痛を主訴に近医を受診し,保存的加療を継続されたが,改善がみられなかったため,当科に紹介された.初診時の単純X線では距骨滑車中央部に陥凹と周囲に硬化像を伴う透亮像を認められた.MRIでは,病変はT1強調像で低信号,T2強調像で辺縁に低信号を伴う高信号を呈し,明らかな軟骨面の欠損は認められず,距骨骨軟骨障害と考えられ保存療法にて経過観察とした.以後,疼痛なく経過し,画像上病変部は縮小を認め,3年後には消失した.【考察】距骨滑車中央部の骨軟骨障害の発症率は1~2% と比較的稀とされている.治療法については過去の文献を参考にし,今距骨内外側発症例と同様の治療を行い,良好な経過をたどった.

  • 生田 拓也, 工藤 悠貴, 田中 秀明, 野田 祥平
    2019 年 68 巻 4 号 p. 723-725
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    母趾変形性MTP関節症に対してMTP関節固定術を行い,良好な結果を得ているので報告した.症例は8例で,性別は男性2例,女性6例で,年齢は56-74歳,平均65.6歳であった.原疾患は全例変形性MTP関節症であった.固定方法はCCS 2本での固定3例,プレート固定5例であった.術後1週でアルフェンスシーネ固定の上,踵歩行を開始し,術後3週より全足底接地とし,術後6週より踏み返し歩行を開始した.全例において順調に骨癒合が得られた.MTP関節の運動時痛は改善し,明らかな機能的問題はなかった.母趾変形性MTP関節症では機能的な問題や美容的な問題は少なく,主訴は関節の運動時痛である.関節固定術は運動時痛を取り除くためには確実な方法であり,また術後の明らかな機能的問題の訴えはなく有用な方法であった.

  • 横手 龍一郎, 萩尾 友宣, 吉村 一朗, 金澤 和貴, 山本 卓明
    2019 年 68 巻 4 号 p. 726-728
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【目的】当院では2007年より外反母趾に対して低侵襲手術である第一中足骨遠位直線状骨切り術(DLMO)を行っている.今回,外反母趾に対するDLMOの中・長期成績を検討した.【対象と方法】対象は2007年10月から2012年11月までに軽度~重度の外反母趾に対しDLMOを施行した55例のうち,5年以上経過観察可能であった31例36足とした.手術時年齢は平均59.5歳,経過観察期間は平均72.6ヶ月であった.放射線学的評価は,荷重位単純X線足背底像を用いて術前,最終経過観察時のHVA,IMA,DMAA,round徴候および種子骨の位置を評価した.臨床評価として日本足の外科学会 母趾判定基準(JSSF hallux scale),合併症について調査した.【結果】JSSF hallux scaleは,術前64.3点から最終経過観察時には92.0点と有意に改善していた.HVA,IMA,DMAA,round徴候,種子骨の位置は,術前に比べ最終経過観察時には有意に改善していた.外反母趾の再発を36足中5足(13.9%)に認めた.【結語】軽度~重度の外反母趾に対しDLMOを施行し中・長期成績は良好であった.

  • 杉 修造, 薄 陽祐, 岡口 芽衣, 小澤 慶一
    2019 年 68 巻 4 号 p. 729-732
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【はじめに】関節リウマチによる第2~5趾MTP関節脱臼を伴う外反母趾に対してMann変法+短縮骨切り・切除関節形成術を施行した1例を経験したので報告する.【症例】74歳,男性,以前から関節リウマチの影響により関節の変形を認めており,近医にてフォロー中であった.今年の5月より両側足底部の疼痛が出現し,その後も改善なく当院整形外科受診となる.両側外反母趾・腱膜瘤,内反小趾,両側足底部有痛性胼胝形成を認めていた.レントゲンではHV角が右52.4度,左37.4度,M1M2角が右18.3度,左19.6度であり,第2~5趾MTP関節脱臼,骨萎縮も認めていた.症状の強い右側より手術を行い,外反母趾に対しては,Mann変法+短縮骨切りを,第2~5趾MTP関節脱臼に対しては,切除関節形成術を施行した.【結果】術後,HV角が8.5度,M1M2角が3.1度と改善し,歩行時の足底部の疼痛も改善した.【結語】関節リウマチによる第2~5趾MTP関節脱臼を伴う外反母趾に対し,中足骨近位での矯正・短縮骨切り術を行い良好な成績を得たので文献的考察を加え報告する.

  • 髙橋 洋平, 安部 幸雄, 藤澤 武慶, 末冨 裕, 田邨 一訓, 津江 和成
    2019 年 68 巻 4 号 p. 733-735
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    上腕骨遠位端骨折は成人の肘周囲骨折の2% とされ比較的稀な骨折である.骨粗鬆症のある高齢者では粉砕例が多く,特に関節内粉砕骨折例は整復,強固な内固定が困難とされている.骨粗鬆症のある高齢者では正確な整復,強固な内固定が困難であり,術後早期に可動域訓練を行うことが困難であるケースもある.当科では2015年9月から2017年11月に4例の上腕骨遠位端粉砕骨折例,偽関節例に対して一期的TEAを行った.すべて女性で,平均年齢は76歳,平均経過観察期間は9.5ヵ月,上腕骨顆部粉砕骨折が3例(すべてAO C3),遠位端偽関節が1例であった.インプラントは全例,半拘束型人工関節を使用した.最終follow up時のROMは屈伸Arcで平均93.8°であり,痛みなく日常生活動作が可能であった.経過観察期間中に再手術を要した症例はなかった.骨質が不良な上腕骨遠位端粉砕骨折,偽関節に対する一期的TEAは短期的には良好な成績が期待できる治療法であると考える.

  • 山下 明浩, 大茂 壽久, 蒲地 康人, 杉野 裕記, 宮里 和明, 藤田 潤, 古子 剛, 濱田 賢治, 大友 一, 清水 建詞, 田原 ...
    2019 年 68 巻 4 号 p. 736-739
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    受傷から40年以上経過した尺骨骨幹部偽関節を伴う陳旧性Monteggia骨折(Bado分類typeⅠ)に対し,尺骨偽関節手術と腕尺関節形成術(reverse Sauve-Kapandji法)を行った.術後1年6ヶ月経過し,尺骨偽関節部,近位橈尺関節部の骨癒合を得て,右前腕,肘関節の不安定性,可動域制限,疼痛を認めず良好な結果を得た.

  • 朝永 育, 宮崎 洋一, 野中 俊宏, 杉原 祐介, 太田 真悟, 小河 賢司, 村田 雅和, 古市 格
    2019 年 68 巻 4 号 p. 740-743
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    遊離腓腹神経移植後の長期経過の報告は稀である.橈骨尺骨骨幹部骨折に合併した尺骨神経断裂に対し遊離腓腹神経移植を行い,8年経過した1例を報告する.症例は16歳男性.ベランダから転落し受傷.橈骨尺骨骨幹部開放骨折と橈骨尺骨遠位端骨折を認め,観血的骨接合術を行った.受傷時より尺骨神経麻痺を認め,改善がみられないため3ヶ月後に観血的に尺骨神経を確認し,神経断裂が判明した.1週間後に尺骨神経の3 cm欠損部に対して遊離腓腹神経移植を行った.術後1年で尺骨神経麻痺は改善した.神経移植後8年,重量物を挙上した後に前腕尺側の痺れが出現し,神経剥離術を行った.神経移植部は連続しており,ニュートレーサー刺激での反応を認めた.末梢神経断裂の症例では適切な手術方法を選択する必要がある.神経移植において年齢は予後不良因子として重要となる.また小児開放骨折の神経麻痺では神経展開・再建時期を見極める必要がある.

  • 杉野 裕記, 大茂 壽久, 宮里 和明, 山下 明浩, 蒲地 康人, 藤田 潤, 古子 剛, 濱田 賢治, 大友 一, 清水 建詞, 田原 ...
    2019 年 68 巻 4 号 p. 744-747
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    手根管症候群(CTS)に対し直視下手根管開放術が行われた60名70手に対し,メタボリックシンドロームの有無を確認し,メタボリックシンドローム群:MetS群と非メタボリックシンドローム群:非MetS群の臨床的特徴と手術成績を比較検討した.メタボリックシンドロームを35.0%(21/60名)に認め,両群間に年齢の差を認めなかった(MetS群72.6±10.2歳 VS 非MetS群67.5±12.8歳).メタボリックシンドロームを男性44.4%,女性は28.5% が満たし有意に男性に多かった.MetS群はトリグリセライド(TG),HDLコレステロール(HDL-C),血糖,HbA1c値が非MetS群と比較して有意に高値であった.また,メタボリックシンドロームの診断基準を満たす群は満たさない群と比較して術前の手の痺れと機能障害が強く,術後の機能回復が悪かった.

  • 小倉 友介, 吉田 健治, 田原 慎太郎, 白石 絵里子, 井上 貴司, 中村 英智, 森松 稔, 志波 直人
    2019 年 68 巻 4 号 p. 748-751
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【はじめに】Preiser病は手関節痛を来す稀な疾患であり治療法に関しては確立されていない.今回我々は進行期Preiser病に対して舟状骨遠位骨片摘出術(Distal Scaphoid Resection Arthroplasty:DRSA)に加え関節鏡下滑膜切除,長掌筋腱充填を施行した1例を経験したので報告する.【症例】67歳女性.誘引なく右手背腫脹,右手関節痛が出現した.発症より2か月後の当科初診時X線では明らかな所見を認めず,MRI T1, T2強調画像で舟状骨全体に異常信号を認めた.保存療法で経過観察したが疼痛は改善せず,X線で舟状骨の圧壊進行を認めた.初診より5か月後に関節鏡下滑膜切除術,DRSA,長掌筋腱充填を施行した.術後1年4か月が経過し,関節可動域の改善を認め,手関節痛は軽快した.【まとめ】本症例はSLAC wristに伴う関節症変化を認めているが遠位骨片を切除することで橈骨-舟状骨間関節症にも対応できると考えられ,関節鏡下滑膜切除を追加することで更なる鎮痛効果を期待できる.短期成績であるが経過は良好であった.

  • 中村 優子, 有島 善也, 小倉 雅, 小倉 拓馬, 海江田 光祥, 嶋田 博文, 東郷 泰久, 谷口 昇
    2019 年 68 巻 4 号 p. 752-753
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【目的】遠位橈尺関節症(DRUJ-OA)による伸筋腱皮下断裂は関節リウマチ(RA)によるものと比べると頻度は低いが時に遭遇する疾患である.当院での3例の手術経験を報告する.【症例】症例1 81歳女性.1ヶ月前に環小指伸展不能となる.2腱断裂(小指総指伸筋腱(EDC4, 5))を認め,隣接腱(EDC3)への端側縫合とSauve-Kapandji法(SK法)による関節形成術を行った.症例2 86歳女性.1ヶ月前に環小指伸展不能となる.2腱断裂(EDC4, 5)認め,隣接腱(EDC3)への端側縫合とSK法を行った.症例3 77歳女性.1ヶ月前に小指伸展不能となる.1腱断裂(EDC5)を認め,隣接腱(EDC4)への端側縫合とSK法を行った.【考察】DRUJ-OAではRAと異なり,橈骨尺側切痕の変形や尺骨頭の背側転位などの骨形態が腱断裂に関与すると考えられる.臨床成績は他の報告と同様良好であった.

  • 鶴 展寿, 一宮 邦訓, 薦田 仁朗, 岡本 渉大
    2019 年 68 巻 4 号 p. 754-757
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    米粒体を伴う滑膜炎は,関節リウマチや結核で見られることが多く,その発生部位は肩関節に多いとされている.今回,我々は特に基礎疾患のない患者の手根管開放術後に生じた米粒体を伴う屈筋腱鞘滑膜炎を経験したので報告する.症例は71歳男性.手根管開放術後3ヵ月で左手関節掌側の腫脹と正中神経領域のしびれを来たした.MRIにて浅・深屈筋腱周囲にT1強調像で等信号,T2強調像で高信号の中に多数の粒状の低信号を呈する腫瘤と正中神経の圧排を認めた.手術所見では,屈筋腱鞘内に米粒体を伴う滑膜の増生を認め,米粒体の掻爬と可及的な滑膜切除を行った.採血,病理組織検査では関節リウマチ,感染は認めず,病理所見では滑膜の炎症細胞浸潤,線維素性遊離体を認めた.術後5ヵ月で再発し,再度滑膜切除術を施行した.滑膜の残存がないよう入念に切除を行った.再手術後1年経過し,軽度の屈曲拘縮はあるが再発は認めていない.

  • 田中 秀明, 入江 弘基, 工藤 悠貴, 倉 明彦, 束野 寛人, 田嶋 光
    2019 年 68 巻 4 号 p. 758-762
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【要旨】今回,手根管内の屈筋腱の肥厚により手指弾発現象が生じた1例を経験したので報告する.症例は,78歳男性,2年前に前医で右示指・中指弾発指の診断で,腱鞘切開術を施行されたが,示指の弾発現象は残存していた.1年後に再手術されるも改善なく当科紹介となった.初診時,右示指の弾発現象を認め,超音波検査では手根管部分での腫瘤性病変が疑われた.造影MRIにて,同部位は手根管内の腱滑膜肥厚であったため,腱滑膜切除術を行うこととした.術中所見では,手根管遠位部で肥大した示指FDSがみられ,手根管における腱の通過障害を認め,弾発現象の原因でと考えられた.肥大したFDSは白色沈着物が付着しており,半切除を施行し病理に提出した.腱組織内には非結晶性の塩類沈着を集簇として認め,通常の石灰沈着と差がなく石灰性腱炎の診断となった.手指に発生した石灰性沈着性腱炎の報告は稀であるが,今回のように,手根管内での本疾患を原因とした弾発指症例はなく,文献的考察を交えて報告する.

  • 園田 裕樹, 髙崎 実, 大森 康宏, 畑中 均
    2019 年 68 巻 4 号 p. 763-766
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    Dupuytren拘縮に対しては従来手術療法が行われてきたが,2015年にコラゲナーゼ注射治療が認可され当院でも施行している.今回,注射治療後3ヶ月以上経過追跡可能であった10例11指について治療成績を検討した.症例は全例男性で,平均年齢は72歳,平均経過観察期間は6.5ヶ月だった.罹患指は中指2指,環指2指,小指7指で,拘縮の主要関節はMP関節であったものが7指,PIP関節であったものが4指であった.全例の伸展不足角の平均は治療前がMP関節-35度,PIP関節-35度であったが,治療後はMP関節-6度,PIP関節-24度に改善していた.Tubianaの治療評価では良が8指,可が3指であった.合併症は,腫脹と疼痛は全例に認めたが,血疱3例で皮膚裂創は認めなかった.屈筋腱断裂や靭帯損傷,アナフィラキシーなどの重大な合併症は認めなかった.Dupuytren拘縮に対するコラゲナーゼ注射は短期成績ではあるが,比較的安全に拘縮改善を得ることができた.

  • 廣田 高志, 副島 修, 密川 守, 渡邊 徳人, 矢野 真太郎, 瀧井 穣, 内藤 正俊
    2019 年 68 巻 4 号 p. 767-771
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    当院では,進行期母指CM関節症に対して強固な固定と早期運動を目的として二重折長掌筋腱とSuture Buttonを併用した関節形成術(LRSA法)を行っており,術後3日目より早期運動療法を開始している.今回我々は両母指CM関節症に対し手術を行い,左右の後療法の経過が異なった2症例を経験した.【症例1】56歳女性,右利き.右側は従来のCM関節症術後に準じた後療法が行われたため開始が遅れた.【症例2】55歳女性,右利き.左側は術中に短母指伸筋腱を損傷し後療法が遅れた.2症例とも,早期運動療法を行った側は術後早期の時点で母指MP関節・手関節の可動域が大きく,Pinch・Grip・VASは優れている傾向にあった.早期運動に耐えうる強固な再建とsuspensionを行うことで隣接関節の拘縮を予防でき,良好な成績につながる可能性が示唆された.

  • 森本 浩之, 田中 祥継, 山本 卓明
    2019 年 68 巻 4 号 p. 772-775
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    はじめに:母指CM関節症に対して様々な手術法がこれまでに提案されており,将来起こり得る追加の手術にも対応可能な第1中手骨の骨切り術は1973年Wilson17)のextension osteotomy以降良好な成績の報告を散見するが,その骨切り方法や名称には曖昧な部分もあり一定した基準がないことも事実である.本研究の目的は第1中手骨切り術に係る文献を渉猟し,ある一定の見解を得る事にある.電子書誌データベースPubmedを用いCM関節症に対し中手骨骨切り術に関る論文検索を行い,比較検討した.検討項目は,1.骨切り法 2.手術適応(Eaton分類StageⅠ~Ⅳ) 3.術後経過 経過フォロー期間 4.骨切り部の固定方法,固定期間 5.術後成績.結果:第1中手骨切り術の骨切り方法は中手骨基部を楔形に切除し意図する方向へ遠位骨片を傾け固定する手技であるが,手術適応は様々であった.Eaton分類でⅠ,Ⅱに該当する症例が多く施行されていた.骨切り部はK-Wireで固定され,長期Splint固定されているものが多く,関節の安静も術後の予後に寄与しているものと考えられた.術後成績には一定の評価基準がなく,多く見られたのはpinch力,握力を対側と比較したもの,X線にて長期フォローしたもの,Quick DASHでスコアリングしたもの,患者満足度などが挙げられたがどれも成績は良好であった.

  • 上野 智規, 坂井 健介, 秋吉 寿, 志波 直人
    2019 年 68 巻 4 号 p. 776-780
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【はじめに】小児基節骨頚部変形治癒骨折に対してSubcondylar fossa reconstruction(以下SFR)を行った2例を報告する.【症例1】8歳,男性,右利き.ドッチボールにて右小指を受傷.受傷後約4週目に当科を紹介受診した.【症例2】12歳,男性,右利き.自転車走行中に電柱に激突し受傷.受傷後約3ヶ月目に当科を紹介受診した.【経過】両例とも,小指PIP関節の屈曲制限を認めており,単純X線では基節骨骨頭が背側へ転位・癒合していた.特に症例2では尺側転位も認めていた.ともにSimmondsらの方法に準じて掌側アプローチより掌側骨棘を切除しつつ骨頭直下のfossaを形成した.後療法は外固定なく術翌日より積極的に可動域訓練を開始した.経時的には自家矯正も加わり,それぞれ最終観察期間は異なるものの,両例ともに健側とほぼ同等の可動域,握力まで回復した.【考察】小指基節骨頚部骨折背側転位型の陳旧例に対するSFR法は有用であった.

  • 岡口 芽衣, 中村 哲郎, 大角 崇史, 有隅 晋吉, 大野 瑛明, 中川 剛, 伊藤田 慶, 岩﨑 賢優, 進 悟史, 土屋 邦喜, 折口 ...
    2019 年 68 巻 4 号 p. 781-783
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    高齢者が多い大腿骨近位部骨折患者の薬剤内服状況と問題点について検討した.また,当科における多職種連携下での薬剤調整の取り組みについても報告する.大腿骨近位部骨折60例を対象とし,受傷機転,転倒受傷時間,定期内服数および内容を検討した.受傷機転は転倒転落54例,歩行中1例,誘因なし5例であり,受傷時間は夜間13例,日中31例,不明10例であった.平均薬剤内服数は6.1剤(0-13剤)であった.転倒リスクを高めると報告のある降圧薬,BZPの内服率が高く,夜間転倒群においてBZP内服率が高い傾向にあった.当院では2017年10月からポリファーマシーカンファレンスを開始しており,期間中の17患者で計42剤の薬剤を減量可能であった.処方適正化には多職種・他施設間での協力が必要であろう.

  • 有隅 晋吉, 中村 哲郎, 中川 剛, 伊藤田 慶, 進 悟史, 岩崎 賢優, 土屋 邦喜
    2019 年 68 巻 4 号 p. 784-789
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    【はじめに】高齢化に伴い大腿骨近位部骨折患者数は増加傾向にあり,再手術を要する症例も少なくない.当院で施行した大腿骨近位部骨折の再手術症例について調査した.【対象と方法】過去10年の大腿骨近位部骨折に対する手術症例1182例のうち,再手術を施行した47例(男性10例,女性37例,平均年齢77歳)を対象とした.骨折部位は大腿骨頚部36例,転子部6例,転子下5例であった.術式は初回手術が骨接合術33例,人工物置換術14例,再手術が人工物置換術34例(THA 29例BHA 5例),骨接合術12例,抜釘1例であった.【結果および考察】再手術となった主な原因は手術の不適切な適応・手技(40%),転倒(30%),外傷性骨頭壊死(21%)であった.Conversion THA後の経過は概ね良好であったが,周術期合併症の報告は多く,特に術中の出血や骨折,術後脱臼には注意する必要がある.

  • 菊地 慶士郎, 神保 幸太郎, 西田 一輝, 森戸 伸治, 島﨑 孝裕, 南 公人, 原口 敏昭, 川﨑 優二, 中村 秀裕, 志波 直人
    2019 年 68 巻 4 号 p. 790-794
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/12/17
    ジャーナル フリー

    当院で保存治療を行った小児脛骨骨幹部骨折の治療成績について検討した.2008年から2017年までに当院で治療を行い,受傷時年齢が15歳未満で,骨癒合まで確認した42例(42肢)のうち保存治療を行った25例(25肢)を対象とした.平均年齢は7.4(3~13)歳,性別は男児15例,女児10例,観察期間は平均15.9(3~77)か月,受傷機転は転倒2例,転落9例,スポーツ8例,交通外傷6例だった.骨折型(AO分類42)はA type 22例,B type 3例,C type 0例だった.11例に腓骨骨折,2例に腓骨塑性変形を合併した.外反変形が7例中2例,内反変形が6例中1例,前方凸変形が1例中0例,後方凸変形が7例中3例に残存した.高学年以降の小児の脛骨骨幹部骨折に対してはより厳密な整復を必要とし,特に後方凸変形に注意すべきである.

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