整形外科と災害外科
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70 巻, 1 号
選択された号の論文の41件中1~41を表示しています
  • ―その特徴―
    瀬戸 哲也, 谷 泰宏, Barbs Rayel, 村松 慶一
    2021 年 70 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    【はじめに】関節リウマチ(以下RA)は骨折リスクが高いとされる.本研究の目的は,RA患者における新規骨折発生率および骨粗鬆症治療の特徴について検討することである.【対象】2006~2015年の期間に骨密度検査後,5年以上経過観察可能であった骨折既往のない閉経後女性172例(RA 72例,非RA 100例).平均年齢70.2歳,平均観察期間7.74年.【結果】初診時骨密度はRA 66.0%,非RA 62.5%とRAで有意に高かったが,新規骨折発生率はRA 13.9%,非RA 20.0%と有意差を認めなかった.5年間の治療継続率はRA 95.9%,非RA 62.5%でありRAで有意に高かった.RA群内での新規骨折発生率はPSL使用群で35.0%,PSL非使用群では5.7%とPSL使用群で有意に高かった.【結論】RA患者の骨粗鬆症治療においては,骨折発生リスクが高い患者群であることを患者に十分説明し,寛解後も骨粗鬆症治療を継続して行うことが重要である.経口ステロイドの使用については新規骨折発生の大きなリスク因子となるため,極力減量するように留意する必要がある.

  • 宮坂 悟, 米倉 暁彦, 中添 悠介, 岡崎 成弘, 千葉 恒, 尾﨑 誠
    2021 年 70 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    【目的】Double level osteotomy(DLO)は高度内反変形を伴う変形性膝関節症に対して生理的関節面傾斜が得られる手術と報告されている12).今回術前JLCAが大きい症例に脛骨顆外反骨切り術(TCVO)を用いてDLOを行った症例の術前後変形解析を報告する.【対象】対象は8例9膝(男性3例,女性5例),平均年齢53.6歳,K-L分類は全例Grade3または4.【方法】片脚立位下肢全長X線で,Mechanical lateral distal femoral angle(mLDFA),Medial proximal tibial angle(MPTA),Joint line convergence angle(JLCA),%Mechanical axis(%MA),Hip-knee-angle(HKA)を術前と最終観察時とで計測した.【結果】術前mLDFA 91.5°,MPTA 84.7°,JLCA 5.2°,%MA -6.0%,HKA -12.2°が最終経過観察時はそれぞれ87.0°,90.1°,2.2°,54.9%,0.4°と改善した.【結論】高度内反膝に対してTCVOを用いたDLOは生理的関節面が得られ,JLCAも改善するため良い適応と考えられる.

  • 山本 俊策, 二之宮 謙一, 合志 光平, 牟田口 滋, 佐々木 大, 坂本 悠磨, 福島 庸介
    2021 年 70 巻 1 号 p. 10-11
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    金属アレルギーの患者に対して人工膝関節全置換術を行ったので治療経験について報告する.症例1:78歳女性 現病歴:2年ほど前から右膝関節痛を認めていたが歩行時困難感を認め当科受診となった.既往歴:関節リウマチ,身体所見は可動域20-100度JOAスコア55点 金属アレルギーの既往があるため当院皮膚科へ紹介し術前にパッチテストを行ったところCo強陽性Ni陽性であった.KYOCERA社製Bi-surfaceを使用し人工膝関節置換術を行った.外来経過観察中で術後3年の身体所見は可動域10-120度JOAスコア90点である.症例2:74歳女性 現病歴:4年ほど前から右膝関節痛を認めていたが歩行時困難感を認め当科受診となった.既往歴:糖尿病 身体所見は可動域30-80度JOAスコア30点 金属アレルギーの既往のためパッチテストを行ったところ,Co強陽性Cr陽性Ni陽性であった.同機種で人工膝関節全置換術を行った.術後2年の身体所見は可動域20-110度,JOAスコア85点である.術前に金属アレルギーの有無について問診することが重要である.

  • 加峯 亮佑, 森 達哉, 河野 勤, 田代 泰隆, 神宮司 誠也, 加治 浩三, 畑中 均, 今村 寿宏, 鬼塚 俊宏, 松延 知哉, 岩本 ...
    2021 年 70 巻 1 号 p. 12-14
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    【はじめに】大腿骨・脛骨骨折術後の変形治癒による著明な大腿骨内旋・外反変形を呈した変形性膝関節症(以下膝OA)に対して楔状矯正骨切り後,TKAを施行した症例を経験したので報告する.【症例】59歳男性.主訴は右膝痛.25歳時に交通外傷で右大腿骨・脛骨骨接合術を施行され,術後変形治癒により著明な大腿骨内旋・外反変形が残存した.可動域は0-105度,FTA138度,大腿骨は48度内旋変形しており,膝蓋骨も外側に脱臼していた.これに対し,大腿骨顆上部を楔状骨切りし,大腿骨遠位骨片を内反・外旋させ,ロッキングプレートで固定後,ステムを用いたTKAを行った.術後は,疼痛に応じて歩行・可動域訓練を開始し,術後1ヶ月で屈曲100度,平行棒内歩行まで可能となった.【考察】重度の関節外変形を伴う膝OAに対してTKAを施行する場合,変形を矯正して良好な下肢機能軸を得ることが重要である.本症例では,骨切りを併用することで,良好な人工関節設置ができた.

  • 中谷 公彦, 井田 敬大, 千々岩 芳朗, ファン ジョージ
    2021 年 70 巻 1 号 p. 15-18
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    大腿骨転子部骨折は早期手術を行うことが推奨されているが,休薬による待機を余儀なくされていることが多い.当院において抗血栓薬内服患者の早期手術の安全性についての検討を行った.2017年1月~2018年12月に当院で大腿骨転子部骨折に対して骨接合術を施行した197例のうち,年齢・術前待機日数・手術時間・術中出血量・輸血量・術前と術翌日と術後1週Hb値・死亡率の記載が確認できた157例を対象とし,抗血栓薬の内服群,内服休薬群,非内服群にわけて比較検討を行った.結果は術前待機日数と手術時間は休薬群が他の2群と比較し有意に延長したが,術中出血量・輸血量・術前から術後1週間のHb値推移は3群間で有意差を認めなかった.抗血栓薬は休薬せずに早期に手術を行うことが可能であると考えられる.

  • ―転子間線に着目して―
    大隈 暁, 畠山 英嗣, 花田 修平, 岡田 宗大, 朝長 星哉, 杉木 暖
    2021 年 70 巻 1 号 p. 19-21
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    【背景】転子間線より近位に前内側骨皮質の骨折線があるタイプの転子部骨折において,股関節中間位の単純X線側面像で,骨折部の前内側骨皮質は,転子間線に隠れてしまい,整復位側面像の正確な評価ができていない可能性がある.【目的】転子間線より近位に前内側骨皮質の骨折線がある転子部骨折における,単純X線とCTの整復位側面像の不一致率を検討する事.【方法】大腿骨転子部骨折に対し,当科で骨接合術を施行した172例中,骨頭骨片の遠位前内側骨皮質の骨折端が,転子間線より近位にある74例(転子部骨折の43.0%)を抽出.術後1週の単純X線側面像とCT側面像における,それぞれの整復位を比較.【結果】74例中35例(47.3%)で,整復位側面像の不一致あり.①「実は髄内」(単純X線で髄外か解剖型,CTで髄内型)が10例(28.6%),②「実は髄外」(単純X線で髄内か解剖型,CTで髄外型)が23例(65.7%),「実は解剖」(単純X線で髄内か髄外型,CTで解剖型)が2例(5.7%)であった.

  • 井上 三四郎
    2021 年 70 巻 1 号 p. 22-25
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    (目的)大腿骨近位部骨折の手術説明について調査すること.(対象)60歳以上の大腿骨近位部骨折患者109例.平均年齢83.1±7.7(63~100)歳,男性19例女性90例.大腿骨頸部骨折47例,転子部骨折(頸基部と転子部も含む)62例に対し,骨接合術63例,人工骨頭置換術45例,人工股関節全置換術1例を行った.麻酔は全例麻酔科に依頼した.以上の症例について,手術同意書の内容について調査した.(結果)手術同意書は全例で確認できた.本人署名のみ3例,本人と家族の署名98例,家族署名のみ8例であった.家族の署名は,配偶者17例,子供73例,孫2例,兄弟6例,甥姪7例,後見人1人であった.意思表示が困難な患者で本人の署名が少ない傾向にあるものの,統計学的有意差はなかった.(考察)治療現場では,意思表示が難しい患者の代理人に,迅速かつ容易に手術同意を取得できるシステムが求められている.

  • 池永 仁, 前原 史朋, 志田 崇之
    2021 年 70 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    当院のFemoral Neck System(以下FNS)の短期治療成績について評価したので報告する.対象は2018年6月~2019年12月までに非転位型大腿骨頚部骨折に対してFNSで骨接合を行い術後半年以上経過観察できた14例(男性2例,女性12例,平均年齢76.9歳)とした.各症例の骨折型,術前待期期間,抗血栓薬内服の有無,手術時間,術後歩行能力の変化,術前後合併症の有無,X線学的評価を行った.骨折型は全例非転位型で4例で合併症を認め,3例で再手術を行った.合併症を生じた原因に関して調査を行い正面像でのGarden Aliment Index(以下GAI)185°以上,骨塩定量検査の低値による骨脆弱性が骨接合術後成績不良との関連している可能性があった.今後,長期において同様の評価を続けていくことや,今回得られた問題面への対策が課題と考える.

  • 橋本 雄太, 石原 昌人, 仲宗根 哲, 翁長 正道, 平良 啓之, 東 千夏, 当真 孝, 上原 史成, 比嘉 浩太郎, 西田 康太郎
    2021 年 70 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    31歳女性.コラーゲンタイプ2異常症による骨系統疾患あり.5年前より股関節痛認め,3年前に歩行困難となり,他院より紹介された.身長124cm,34kgと低身長で著明な可動域制限を認めた.単純レントゲンでは,両股関節とも関節裂隙は消失していた.CTでは,寛骨臼の低形成および大腿骨は短く,髄腔は扁平化していた.変形性股関節症の診断で右人工股関節置換術(THA)を行った.手術は側臥位後方アプローチで行った.Zimmer trabecular metal cup 38mmにオフセットライナーを用いて28mm骨頭を使用した.大腿骨はWagnar coneステムを用いた.術翌日よりリハビリテーションで歩行訓練を行った.術後1週目にステムの沈下を認めたが,進行はなかった.術後半年で左THAを行った.現在,術後2年経過し,カップやステムの緩みなく経過良好である.骨系統疾患に対するセメントレスTHAの際には,適切なインプラント選択には注意が必要であると思われた.

  • 太田 克樹, 塚本 学, 川崎 展, 鈴木 仁士, 藤谷 晃亮, 鍋島 貴行, 酒井 昭典
    2021 年 70 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    巨大な寛骨臼骨欠損に対してmetal augmentを用いた人工股関節全置換術(THA)の良好な短期成績が報告されているが,augmentの大きさや設置位置を術前に計画するのは容易ではない.我々は3Dプリンターを用いて患者の骨盤模型を作成し,実際の手術を想定した術前計画を行った上で治療に臨んだ1例を経験したので報告する.症例は71歳女性.左寛骨臼移動術後20年間は経過良好であったが,左股関節痛に伴う歩行障害が出現してきたためTHAを計画した.寛骨臼前壁から前柱にかけて巨大な骨欠損を認め,Paprosky分類typeⅢBであった.3Dプリンターで骨盤模型を作成し,metal augmentのサイズと設置位置をシミュレーションして左THAを施行した.術後6ヶ月時点では,インプラントに関する術後早期の問題は生じておらず,疼痛のない安定した歩行が可能となった.巨大な寛骨臼骨欠損症例に対するTHA術前計画ツールとして3Dプリンターは有用であった.

  • 翁長 正道, 仲宗根 哲, 石原 昌人, 平良 啓之, 比嘉 浩太郎, 上原 史成, 当真 孝, 東 千夏, 西田 康太郎
    2021 年 70 巻 1 号 p. 38-41
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    【症例】54歳女性.ステロイド関連の両大腿骨頭壊死症に対し前方アプローチで左人工股関節全置換術(THA)を行った.自宅退院後2日目,自宅のトイレに座っている際に左股関節痛が出現し,歩行不能となり救急外来を受診した.単純X線像で前方脱臼を認め,全身麻酔下に整復した.整復後3日目に院内のトイレで再脱臼し,再整復を行った.座位の骨盤側面単純X線像で深く座ると骨盤は23°後傾,浅く座ると骨盤はさらに39°後傾していた.再整復後は股関節可動制限装具を装着し,脱臼なく経過している.【考察】THA後に座位姿勢で前方に脱臼することは稀である.しかし,立位から座位で骨盤の後傾が大きくなる症例では,座位でカップの前方開角が増大し,前方脱臼のリスクがある.本症例は座位姿勢で骨盤が後傾し,カップの前方開角増大のため前方脱臼したと考えられた.

  • 久米 慎一郎, 原口 敏昭, 山木 宏道, 林田 一友, 後藤 昌史, 大川 孝浩, 志波 直人
    2021 年 70 巻 1 号 p. 42-45
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    【目的】低侵襲な条件下に設置可能とされる,SL-PLUS MIA stemの術後固定性に関係する経過について検討した.【対象と方法】2012年以降,HA coatingされていないタイプのSL-PLUS MIA stemを使用して人工股関節置換術(THR)を施行し,4年以上経過観察可能であった130例(手術時年齢36-86歳:平均61歳)の術後X線変化,特にradiolucent zone(RLZ)の経時的変化を中心に検討した.【結果と考察】経過観察中に2mm以上のstem sinkingを認めた症例はなく,最終経過観察時において良好な設置が維持されていた.reactive lineをともなうRLZはいずれもstem近位のみに出現しており,約39%に認めたが,経過とともに半数以上は縮小しており,中には消失する症例も認めた.その出現と経過においては明らかな大腿部痛の訴えもなく,少なくともlooseningを示唆するnegativeな事象ではないと考える.

  • 刈谷 彰吾, 安樂 喜久, 立石 慶和, 安藤 卓, 上川 将史, 柳澤 哲大, 大野 貴史, 寺本 周平, 髙田 紘平, 三浦 渓
    2021 年 70 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    【目的】BiCONTACTステムの術後周囲骨反応について検討すること【方法】2008年7月から2019年2月にBiCONTACTを用いたセメントレスTHAを施行し,術後1年以上追跡可能であった442例について,挿入位,沈み込み,stress shielding(以下SS),cortical hypertrophy(以下CH),Radiolucent line(以下RLL),spot welds,pedestalの有無をX線学的に評価した.【結果】442股中,Dステム367股,Sステム68股,Nステム7股であった.全て内外反3度以下で挿入され,3mm以上沈下例はなかった.Grade2以上のSSはDステム24.8%,Sステム20.6%に認めた.CHはDステム42.5%,Sステム20.6%に認め,Sステムで発生割合が低かった(P<0.05:χ2検定).RLLは5.2%,spot weldsは15.5%,pedestalは3%に認めた.【考察】DステムおよびSステムともに初期固定性は良好であったが,近位径の広いSステムで遠位部骨反応が少ない傾向にあった.

  • 原口 敏昭, 久米 慎一郎, 神保 幸太郎, 山木 宏道, 高田 寛史, 志波 直人, 大川 孝浩
    2021 年 70 巻 1 号 p. 50-53
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    【はじめに】川崎病亜急性期に合併した股関節炎の1例を経験したので報告する.【症例】6か月女児.川崎病に対し小児科で入院加療され経過良好にて退院となっていた.退院4日後,機嫌が悪く右下肢を動かさないとのことで近医を受診後,当院紹介となった.体温は38.5度,右下肢は仮性麻痺様であった.採血所見は白血球17200,CRP4.02でありMRIにて関節液の貯留がみられた.Cairdの予測因子で3項目以上が該当し,また関節液の所見から化膿性股関節炎を疑い,同日に関節切開排膿術を施行した.術後抗生剤の治療も行ったが,体温37~38度を推移した.術後4日で冠動脈の拡張を認めガンマグロブリンによる加療が行われると体温も解熱し全身状態は改善した.最終的な診断としては川崎病亜急性期に合併した股関節炎と考えた.【考察】化膿性股関節炎は関節に不可逆的な変化が生じるため川崎病等の非化膿性の股関節炎との鑑別を検討した上で迅速な処置を積極的に行う必要がある.

  • 水田 康平, 高江洲 美香, 宮田 佳英, 仲宗根 哲, 石原 昌人, 翁長 正道, 平良 啓之, 東 千夏, 上原 史成, 比嘉 浩太郎, ...
    2021 年 70 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    51歳男性.6年前に自己免疫性下垂体炎でステロイドパルス治療を受けた.その後,ステロイド補充療法をしていた.3年前に両股関節痛が出現し,MRIで両側大腿骨頭壊死症と診断し,人工股関節置換術を予定した.3週間前より間欠的に発熱を認め,両股関節痛が増悪し,近医より当院紹介され,精査目的に入院した.採血ではCRPは10.3mg/dlと炎症反応が高値であった.CTで股関節に液貯留を認め,化膿性股関節炎が疑われた.股関節穿刺で細菌培養が陰性であり,内科にてステロイド減量中であったため,副腎不全が疑われ,ステロイド内服増量を行った.その後,発熱や炎症反応は改善した.ステロイド内服を継続し,5か月後に人工股関節置換術を行った,術後半年,発熱や人工関節の緩みなく,独歩可能で仕事にも復帰し経過良好である,本症例では,発熱や炎症反応高値,股関節痛,関節液貯留を認め,化膿性股関節炎との鑑別に股関節穿刺が有用であった.

  • 樋口 富士男, 大作 明広
    2021 年 70 巻 1 号 p. 58-64
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    黄金比は,美術の中では美しい比率である.数学では,フィボナッチ数列の前項と次項の比1:1.618と表現される.この数字1.618は,幾何学,生物学,音楽,天文学にもみられる.黄金角は,円の面積を二つの半径で黄金比に分けた時の二つの半径の中心をなす角137.5度である.この黄金比と黄金角を,股関節のレントゲン像の中で探した.

    股関節を含む立位骨盤の単純レントゲンの中に,黄金比を5ヶ所,黄金角を3ヶ所に見出だした.Sharp角と呼ばれる臼蓋角は,黄金角の補角に当たる42.5度に該当した.黄金角は優れた機能の人工股関節のステムにも見られた.

    美しさを表す指標である黄金比,黄金角が,股関節のレントゲン像にみられた.人類の股関節は,250万年の時を経て球形へと進化したが,進化の過程で自然淘汰を受けるので,現在の形は機能的にも優れたものである.黄金比のある股関節は,美しいだけでなく機能の良い関節といえる.

  • 岡田 宗大, 大隈 暁, 朝長 星哉, 杉木 暖, 畠山 英嗣
    2021 年 70 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    肩関節後方脱臼骨折に対し,非観血的整復後も容易に脱臼し,観血的整復固定術を要した1例を経験したので報告する.症例は,46歳男性.タグラグビー中に転倒,左肩を打撲して受傷.同日当院受診,左肩関節後方脱臼骨折を認め,静脈麻酔下に徒手整復施行,三角巾を用いて肩関節内旋位で固定した.翌日,誘因なく左肩関節痛増強,精査の結果,左肩関節は後方に再脱臼していた.再整復するも左肩関節を内旋すると容易に後方脱臼するので,左肩を10度程度外旋位で固定した.受傷から3日後に,ロッキングプレートを用いて,観血的整復固定術を施行した.固定後は,左肩内旋位による易脱臼性は消失した.ただ,術後は,念のために,外旋位装具を装着した.リハビリ時のみ,左肩関節を軽度外旋位に保った状態での可動訓練開始,術後3週終了時から内旋可動訓練を開始した.術後4ヶ月時点で,骨折部の矯正損失なし,左肩可動域も良好である.

  • 柿添 隼, 竹内 直英, 小薗 直哉, 千住 隆博, 中島 康晴
    2021 年 70 巻 1 号 p. 70-75
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    【症例】74歳女性.歩行中に右手をついて転倒受傷した.右上腕骨近位端骨折と診断され保存的に加療されていたが,右肩関節痛が持続したため,受傷3ヶ月後に当院受診となった.右肩関節の自動可動域は屈曲95°,外転95°,外旋25°,内旋S levelであった.Xp,CTで上腕骨近位部が外反位で変形癒合していた.MRIでは棘上筋・棘下筋の断裂を認めた.右上腕骨近位端骨折変形癒合の診断で,リバース型人工肩関節全置換術(RSA)を施行した.上腕骨は後捻20°,小結節中央の高さで骨切りし,大結節はインピンジが消失する最小限の骨切除を行った.術後1年時点での自動可動域は,屈曲110°,外転115°,外旋40°,内旋L4 levelと改善した.また,日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOA score)は術前51点から術後1年時点で86点へ改善した.【考察】上腕骨近位端骨折変形癒合に対するRSAは,成績良好であると報告されている反面,技術的に困難であることも指摘されている.骨切り面の形態が通常と異なるため,大結節の処置やstem挿入位置に注意することが必要であると考えられる.

  • 松原 秀太, 菊川 憲志, 田村 諭史, 小田 勇一郎, 白石 大偉輔, 浦田 泰弘, 荒木 崇士
    2021 年 70 巻 1 号 p. 76-79
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    肩甲骨関節窩の高度菲薄化を示す両側変形性肩関節症に対してbone increased offset reverse shoulder arthroplasty(BIO-RSA)を施行した症例を経験したので報告する.症例は83歳女性.主訴は両肩痛,自動挙上(右35°,左60°),外旋(-30°,0°),内旋(殿部,殿部),術前JOAスコアは(25点,34.5点)であった.単純X線像,CTでは関節裂隙の消失,骨頭・関節窩の変形・骨棘・骨硬化像,肩甲骨関節窩の著明な菲薄化(Walch type A2),MRIでは腱板の菲薄化,腱板筋萎縮を認めた.症状の強い右肩に対しBIO-RSAを施行,6か月後左肩もBIO-RSA施行した.術後2年経過,両肩とも疼痛は消失,自動挙上130°,外旋-20°,殿部以下,術後JOAスコア右79点,左83点,肩回旋を除き改善した.

  • 栫 博則, 海江田 英泰, 中村 俊介, 藤元 祐介, 今村 勝行, 廣津 匡隆, 藤井 康成, 谷口 昇
    2021 年 70 巻 1 号 p. 80-82
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
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    我々はより正確な人工関節の設置を目指し,ナビゲーションを導入している.本研究の目的はReverse Shoulder Arthroplasty(以下RSA)におけるスクリュー固定に対するナビゲーションの効果を検討することである.対象はRSA施行後CT撮影が可能であった13例13肩とした.ナビゲーションの使用の有無で2群に分け(使用群8肩,非使用群5肩),使用したスクリュー長及びスクリュー先端から骨皮質までの距離を測定した.スクリューは上方,前下方,後下方,下方の4か所で使用していたが,ナビゲーションの使用の有無で有意差を認めたのは上方スクリューのみであった.(使用群平均29.3mm,非使用群平均21.2mm)スクリュー先端から骨皮質までの距離では有意差を認めなかった.ナビゲーション使用群で上方スクリューのみであったが有意に長いスクリューを安全に挿入できていたと考えた.

  • 江口 大介, 竹内 直英, 小薗 直哉, 千住 隆博, 中島 康晴
    2021 年 70 巻 1 号 p. 83-87
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    【目的】リバース型人工肩関節置換術におけるglenoid baseplateの下方screwの至適長及び至適角度を検討すること.【対象・方法】20例を対象とした.肩甲骨関節窩の長軸に平行に切ったCT前額面において,baseplate(Exactech社)の最下方のscrew holeの中心点をplotした.次にその位置から関節窩の短軸に平行な面に対して0°(A群),5°(B群),10°(C群),15°(D群)下方に向けた断面を抽出した.関節窩中点から肩甲骨骨皮質の最遠位部までの距離(至適長)を計測し,各群で比較検討した.また,関節窩の垂線に対する前後方向の角度(至適角度)を計測した.【結果】screwの至適長は,A群:27.9mm±3.2mm,B群:28.8mm±3.4mm,C群:29.9mm±3.4mm,D群:31.7mm±3.6mm(平均±標準偏差)であり,D群がA,B群に比べて有意に長かった(p=0.0051).至適角度は前方へ5.8±4.8°であった.【考察】下方screwは,関節窩の短軸に平行な面に対して15°下方で,かつ前方に向けると長く刺入できることが示唆された.

  • ―初期固定性の検討―
    瀬戸 哲也, Jason Arcinue, 谷 泰宏, 村松 慶一, 木戸 健司
    2021 年 70 巻 1 号 p. 88-91
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    【はじめに】肩鎖関節脱臼は,スーチャーボタンテープやタイトループを用いた烏口鎖骨靭帯再建のみでの治療成績は不良であり,当科では肩鎖関節整復位の一時的な保持を目的として追加内固定を行っている.今回,固定材料の初期固定性について検討した.【対象】2017年1月~2019年5月まで肩鎖関節脱臼に対し烏口鎖骨靭帯再建を行い追加固定した7例を,固定方法でK-wire群(K群),Hook Plate群(H群)に分けた.術後の矯正損失の評価として烏口鎖骨間距離の健側比,肩鎖間距離を計測し,臨床成績としてJSSH ACJ scoreを評価した.【結果】最終観察時の烏口鎖骨間距離の健側比はH群で99%,K群で142%であった.肩鎖間距離はH群で2.9mm,K群で9.4mmであり,いずれもH群で良好であった.JSSH ACJ scoreはH群95点,K群87点とH群で良好であった.【考察】肩鎖関節脱臼に対する烏口鎖骨靭帯再建に追加する固定として,K-wireでは初期固定力が不十分であり,より固定力の高い材料を選択するべきである.

  • 豊島 嵩正, 山中 芳亮, 田島 貴文, 辻村 良賢, 清水 太一, 善家 雄吉, 酒井 昭典
    2021 年 70 巻 1 号 p. 92-95
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    長期ビスホスホネート製剤(以下BP)内服中に発症した非定型尺骨骨幹部骨折を3例経験したので報告する.【症例1】83歳女性(BP内服歴5年).転倒時に左非定型尺骨骨幹部骨折を受傷した.保存加療後に偽関節となったため,自家骨移植を併用したプレート固定術を行い,骨癒合を得た.【症例2】79歳女性(BP内服歴6年).誘因なく左前腕痛が出現し,左非定型尺骨骨幹部骨折と診断した.プレート固定術を行い,骨癒合を得た.【症例3】81歳女性(BP内服歴8年).剪定中に左前腕痛が出現し,右非定型尺骨骨幹部骨折と診断した.プレート固定を行ったが偽関節となったため,自家骨移植を併用したプレート固定術を行った.BP長期内服患者に軽微な外力で発症した尺骨骨折は,非定形骨折の可能性を念頭に治療計画を立てる必要がある.

  • 村岡 智也, 村田 雅明, 川口 馨, 築谷 康人, 金谷 治尚
    2021 年 70 巻 1 号 p. 96-100
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    【はじめに】上腕骨骨幹部偽関節に対し,経肘頭ガイドピン刺入法による順行性髄内釘入れ替えを行い,骨癒合を得た症例を経験したので報告する.【症例】68歳女性.軽乗用車運転中に対向車と衝突して受傷した.左上腕骨骨幹部骨折に対し同日創外固定を行った.10日後に前方最小侵襲プレート固定法を行ったが骨癒合が得られず,術後1年で順行性髄内釘による偽関節手術を行った.それでも骨癒合が得られず,再手術後6か月後に経肘頭ガイドピン刺入法による順行性髄内釘の入れ替えを行った.再々手術後3か月で骨癒合が得られた.【考察】経肘頭ガイドピン刺入法では,遠位横止めスクリューに加えて肘頭窩まで刺入された髄内釘先端による固定力の追加が期待される.髄内釘後の上腕骨骨幹部偽関節は一般的にはプレート固定が選択されるが,症例によっては考慮されてもよい方法と思われた.

  • 倉光 正憲, 下河邉 久雄, 大茂 壽久, 古子 剛, 濱田 賢治, 大友 一, 清水 建詞, 田原 尚直, 山本 卓明
    2021 年 70 巻 1 号 p. 101-104
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    比較的稀な上腕三頭筋皮下断裂に対しsuture bridge法による解剖学的修復術を行ったので報告する.症例は15歳男性.友人に背後から抱きついたところ,背負い投げをされて右肘関節伸展位で地面に手をついて受傷した.初診時に右肘関節後方の腫脹,肘頭直上に陥凹を触知し,−30°~70°の関節可動域制限を認めた.単純X線で肘関節中枢側に転位した肘頭剥離骨片を認め,肘頭剥離骨折を伴った上腕三頭筋皮下断裂と診断した.治療はsuture bridge法による解剖学的修復術を行った.術後6か月経過し,肘関節の可動域制限を認めず,上腕三頭筋筋力はMMT 5であり,骨片の転位なく骨癒合を確認できた.肘頭剥離骨折を伴う上腕三頭筋皮下断裂に対するsuture bridge法は,手技が簡便でfoot printを広く被覆することが可能で骨片も強固に固定できる有用な方法と考えられた.

  • 小倉 友介, 吉田 健治, 白石 絵里子, 井上 貴司, 中村 英智, 志波 直人
    2021 年 70 巻 1 号 p. 105-110
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    【はじめに】上腕骨通顆骨折術後の異所性骨化をともなう肘関節拘縮に対して比較的早期に関節授動術を行った1例を経験したので報告する.【症例】78歳,男性.既往歴:糖尿病.左上腕骨通顆骨折に対して骨接合術を行った.後方進入でdual plateにて固定した.術後2週,異所性骨化を認め,ROMの改善は見られなかった.血清アルカリフォスファターゼ値(ALP)は正常であった.患部の腫脹が改善し異所性骨化が比較的硬化したので,術後3か月で肘関節後外側進入法により肘関節授動術を行った.手術後9か月で異所性骨化の再発はなくROMは-20°~135°と改善しDASH score 14点と良好であった.【まとめ】術後の異所性骨化をともなう肘関節拘縮は発症より1年以降の手術が推奨されてきたが,その時期については確立されたものではない.今回,比較的早期に関節授動術を行い良好な成績が得られたので文献的考察を加えて報告する.

  • 山城 正一郎, 金城 政樹, 金城 忠克, 仲宗根 素子, 大久保 宏貴, 西田 康太郎
    2021 年 70 巻 1 号 p. 111-114
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    【はじめに】母指ボタンホール変形は,関節リウマチ(RA),外傷などに起因することが多い.両側長母指伸筋(EPL)腱,短母指伸筋(EPB)腱の脱臼から生じた特発例を報告する.【症例】59歳女性,主婦.誘因なく10年前より両母指変形を自覚し,徐々に進行した.1年前から両母指MP関節の自動伸展が困難となった.外傷歴なく,RA検査は陰性であった.両母指MP関節屈曲時にEPL腱とEPB腱が尺側へ脱臼し,左側はMP関節屈曲位からの自動伸展は不可で,左母指からwide awake surgeryで行った.関節包を縫縮して亜脱臼を整復.EPB腱を停止部で切離し,術中MP関節伸展0°屈曲45°が可能な緊張で再縫着,EPL腱と側々縫合し橈側伸筋腱帽を縫縮した.術後MP関節鋼線・ギプス固定後,術後5週で自動運動,8週から他動運動開始した.9か月後に右側の手術を行った.左側術後3年,右側術後2年3か月で両側MP関節自動伸展可能であり,変形の再発は認めていない.

  • 赤須 優希, 大茂 壽久, 宮良 俊, 清水 建詞, 西野 剛史, 古子 剛, 蒲地 康人, 濱田 賢治, 大友 一, 田原 尚直
    2021 年 70 巻 1 号 p. 115-118
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    有頭骨単独骨折は舟状骨骨折と同様に単純X線検査のみで診断することが困難な骨折である.今回,診断の遅れから遷延癒合を生じた有頭骨単独骨折を経験し,2本のheadless compression screwと腸骨移植術を行い良好な結果を得たので報告する.症例は16歳 男性.転倒し右手をついて受傷.右手背の圧痛,腫脹を認め近医を受診し打撲と診断され外固定を行わず経過観察を行った.その後も疼痛の改善を認めず,受傷3か月後のMRI検査,CT検査にて骨壊死を伴わない有頭骨遷延癒合と診断し手術を行った.有頭骨遷延癒合部を搔爬,新鮮化した後,骨欠損部に自家骨移植を行い2本のheadless compression screwにて固定し術後4週間の前腕シーネ固定を行った.術後6か月経過し,可動域制限と筋力低下を認めず,骨癒合を確認できた.有頭骨単独骨折後の遷延癒合の原因として,診断・治療の遅れが挙げられる.早期診断と治療のために積極的な手根骨CT及びMRIの撮影が有用である.また,有頭骨遷延癒合に対しては,自家骨移植とheadless compression screw固定が有用であった.

  • 千丈 実香, 田嶋 光
    2021 年 70 巻 1 号 p. 119-120
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    特発性後骨間神経麻痺の1例で,術前エコーと術中所見で神経束の括れを確認したので報告する.症例は52歳女性で6カ月前に左上腕から肘までの激痛後に,手指伸展障害を主徴とする後骨間神経麻痺を発症した.肘関節皮溝6cm近位の圧痛点において術前エコーで2ヶ所の括れと,術中同部位での橈骨神経本幹の経度の腫脹と神経束間剥離により2ヶ所の括れを確認した.括れ部での神経上膜裏面と神経束間の強い繊維性癒着があり,この部位での何らかの炎症後の病態が示唆された.術後6カ月で麻痺は徐々に回復傾向である.既報告の通り術前エコーにより括れが確認されれば,早期の神経束間剥離術は回復には有効であると思われる.

  • 鶴居 亮輔, 竹内 直英, 小薗 直哉, 幸 博和, 千住 隆博, 中島 康晴, 花田 麻須大
    2021 年 70 巻 1 号 p. 121-124
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    【目的】特発性前骨間神経麻痺の原因の一つに,手術を先行イベントとするpost-surgical inflammatory neuropathyが考えられる.頸胸椎移行部硬膜内髄外腫瘍術後に発生した特発性前骨間神経麻痺の1例を経験したので報告する.【症例】44歳男性:頸胸椎移行部硬膜内髄外腫瘍(悪性黒色腫)に対して腫瘍摘出術を受けた.その1週間後より誘因なく左母指IP,示指DIP関節の自動屈曲が不能となった.針筋電図,MRIにて特発性前骨間神経麻痺と診断した.保存治療では改善せず,発症11ヶ月後に前骨間神経剥離術を施行した.神経は浅指屈筋腱(FDS)のtendinous archのレベルで発赤・扁平化を認めた.術後1年で長母指屈筋腱(FPL):MMT 4,示指深指屈筋(FDP):MMT 4と改善した.【考察】術中所見からFDSのtendinous archレベルの狭窄部位で,手術侵襲に伴う炎症性変化が合併し前骨間神経麻痺が発症したと推察した.post-surgical inflammatory neuropathyの疾患概念を知っておくことは,特発性前骨間神経麻痺を診断する上で重要である.

  • 桑畑 健太郎, 小倉 雅, 東郷 泰久, 有島 善也, 海江田 光祥, 音羽 学, 三重 岳, 佐々木 裕美, 谷口 昇
    2021 年 70 巻 1 号 p. 125-126
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    2010年から2019年までに当院で舟状骨偽関節に対して手術治療を行った13例(全例男性)について治療成績を検討した.手術時年齢は18~70(平均36)歳,骨折部位は体部11例,近位2例,Filan-Herbert分類はD1 1例,D2 10例,D3 2例,受傷から手術までの期間は受傷時期不明の2例を除き,2か月~2年8か月(平均8.3か月)であった.全例で遊離自家骨移植(腸骨11例,橈骨遠位1例,肘頭1例)を行い,headless compression screwで固定した.1例で骨癒合が得られず再度遊離骨移植術を行い,最終的に全例で骨癒合が得られた.今回の症例は殆どが体部骨折でD1,D2症例であったが,これらにおいては遊離自家骨移植にて諸家の報告する血管柄付き骨移植術の成績とも差のない成績が得られており,症例を吟味すれば遊離自家骨移植は今後も有力な選択肢となるものと考えた.一方骨癒合が得られにくいとされるD3,D4症例では,血管柄付骨移植術を考慮する必要があると思われた.

  • 下永吉 洋平, 鳥越 雄史, 高橋 良輔, 佐保 明, 荒川 大亮, 相良 学, 小西 宏昭
    2021 年 70 巻 1 号 p. 127-130
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    【はじめに】今回,比較的稀である大腿四頭筋腱皮下断裂の2例を経験したので報告する.【症例1】59歳男性.階段から転落し受傷,左膝痛を主訴に当科を受診.初診時,膝の自動伸展は不能であり,膝蓋上部の腫脹,圧痛を認めた.MRIで大腿直筋,内側広筋の断裂を認め,術中所見では大腿直筋,内側広筋の膝蓋骨付着部で断裂を生じていた.【症例2】52歳男性.階段から転落し受傷,左膝痛を主訴に当科を受診した.膝の自動伸展は不能であり,単純X線で膝蓋骨上嚢の石灰化があり,MRIで左大腿中間広筋断裂を認めた.術中所見でも,中間広筋の断裂を確認した.【考察】大腿四頭筋腱皮下断裂は,受傷機転として直達外力よりも介達外力によるものが多く報告されている.症例1においては,階段から転落した際に,大腿四頭筋腱に強い牽引力が加わり断裂を来したと考えられる.さらに症例2においては,同様に牽引力による断裂であるが,組織の脆弱性を伴った断裂であったと考える.

  • 水田 康平, 高江洲 美香, 宮田 佳英, 仲宗根 哲, 西田 康太郎
    2021 年 70 巻 1 号 p. 131-136
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    83歳女性.5年前に左大腿骨転子部骨折に対してGamma Nailを用いた骨接合術を行った.今回,自宅で転倒し,ネイル遠位で大腿骨骨幹部骨折を受傷した.大腿骨は高度の弯曲を認め,ロングネイルの挿入が困難であった.手術は,既存ネイルを抜去し,骨折部の外側を楔状に切除し,矯正骨切りを併用した髄内釘による骨接合術を行い,骨折部に切除骨を移植した.術後はLIPUSとPTH製剤を併用し,術後3週後より部分荷重を行った.術後3か月で骨癒合が得られ,疼痛無く杖歩行が可能となった.高齢者の大腿骨骨幹部骨折において,高度な弯曲を有する症例があり,その場合ネイル先端での皮質骨穿破の危険があるためインプラント選択に難渋する.今回,高度弯曲を有する大腿骨骨幹部骨折に対して矯正骨切りを併用した髄内釘固定術を行い,経過は良好であり,有用な方法と思われた.

  • 糸瀬 賢, 宮本 俊之, 森 圭介, 西野 雄一朗, 土居 満, 田口 憲士, 尾﨑 誠
    2021 年 70 巻 1 号 p. 137-140
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    【目的】当院の軽症下腿開放骨折の治療成績について評価した.【対象と方法】2010年から2019年に加療した下腿開放骨折のうちGustilo type I,II,IIIAの軽症64例を受傷時期で前期(2010年4月~2011年9月),中期(2011年10月~2016年9月),後期(2016年10月~2019年12月)に分け,症例毎のデブリードマンの回数,最終固定までの日数,受傷日からの開放創の閉鎖までの日数,感染症の有無,合併症の有無を調査した.【結果】デブリードマンの回数は前期2.6回(1-4回),中期2.2回(1-4回),後期1.7回(1-3回),最終固定までの日数は前期7.7日(1-25日),中期7.3日(1-21日),後期5.6日(0-20日),開放創閉鎖までの日数は前期10.6日(0-34日),中期2.3日(0-19日),後期0.8回(0-9回),感染症は前期2例,中期1例,後期1例だった.経時的にデブリードマンの回数の減少,開放創閉鎖までの期間短縮が見られた.【考察】症例を集約化し多職種間連携が整えば,軽症下腿開放骨折は閉鎖骨折と同等の治療が可能である.

  • ―転院時期および転院原因疾患―
    西村 博行, 浦上 泰成
    2021 年 70 巻 1 号 p. 141-148
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    回復期リハ中に,急性疾患が生じることがある.今回,我々は,運動器疾患に対する回復期リハにおいて,転院治療を必要とした急性疾患を検討した.対象は,平成25年から令和1年に,当院回復期リハ病棟に入院した入院期間90日以内の運動器疾患患者1551名のうち,急性疾患治療のため転院した125名(8.1%).急性疾患は,消化管疾患15名(12.0%)が最多で,次に胆嚢胆管炎14名(11.2%),循環器疾患12名(9.6%),深部静脈血栓症8名(6.4%).転院患者数は,入院1月目が最多で65名(52.0%).急性疾患のうち,新規疾患は80名,併存疾患増悪は45名.疾患別に,転院時期および新規・併存疾患の占める割合は異なり,深部静脈血栓症は全例新規で,入院1月以内の転院.消化管疾患は,新規が多いが,多くは入院2月以降に転院.胆管胆嚢炎および循環器疾患は併存が多数で,多くは入院1月以内の転院.

  • 關 千尋, 中村 哲郎, 白﨑 圭伍, 瀬戸山 優, 中川 剛, 伊藤田 慶, 進 悟史, 河野 裕介, 土持 兼信, 岩﨑 賢優, 土屋 ...
    2021 年 70 巻 1 号 p. 149-151
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    【はじめに】整形外科入院後に転科および死亡退院となった症例について検討したので報告する.【対象と方法】2013年1月から2020年2月の整形外科入院患者で転科または死亡退院となった114例(男性56例,女性58例,平均年齢76.6歳)を対象とした.整形外科疾患,治療法,併存症,転帰等について調査した.【結果および考察】整形外科死亡退院13例,転科101例,転科後の死亡退院15例であった.疾患部位の内訳は上肢6例,下肢51例,脊椎7例,腫瘍関連21例,感染14例,その他15例であり,高齢者の低エネルギー外傷による骨折患者が最も多かった.手術は73例に施行され,併存症は循環器系が最多であった.死因は呼吸器疾患8例,循環器疾患7例,消化器疾患3例,悪性腫瘍4例,敗血症4例,その他3例と内科的合併症による死亡が多かった.高齢化に伴い増加が予想される併存症を有する高齢患者の治療には,他科との連携は必須であり,全病院的な対応が求められる.

  • 清水 太一, 田島 貴文, 善家 雄吉, 大隈 佳世子, 岡田 祥明, 山中 芳亮, 酒井 昭典
    2021 年 70 巻 1 号 p. 152-155
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    我々は,過去に当大学同門会員に対して,抜釘に関する意識調査を行い,その結果を報告した.今回,さらに解析を追加し,部位別の抜釘の傾向を検討した.質問内容は抜釘を行う部位や理由など計65項目とした.229名のうち81名(男性79名,女性2名,平均年齢41.7歳)より回答を得た(回答率35.4%).「必ず行う(100%)」および「だいたい行う(80%)」の頻度で抜釘を行う部位は,小児における髄内ピン(97.5%),肘頭TBW(tension band wiring)(72.8%),鎖骨プレート(71.6%),膝蓋骨TBW(66.7%)であった.逆に「決して行わない(0%)」および「めったに行わない(20%)」部位は,上腕骨髄内釘(77.8%),上腕骨骨幹部プレート(74.1%),大腿骨髄内釘(67.9%)などであった.また,術者の年齢が高くなるほど橈骨遠位端プレートを抜釘する傾向が有意に高く,前腕骨骨幹部プレートを抜釘する傾向は有意に低かった.

  • 川岸 正周, 岩﨑 達也, 津村 弘
    2021 年 70 巻 1 号 p. 156-159
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    Hurler症候群のX脚変形に対してeight-plateによるguided growth法を行い良好な矯正が得られたので報告する.[症例]11歳男児.診断:X脚変形(Hurler症候群)[現病歴と経過]2歳10ヶ月Hurler症候群と診断され加療開始.徐々にX脚が進行してきたため手術予定となった.両大腿骨遠位および脛骨近位骨端線内側にeight-plateを挿入しLDFA(Lateral Distal Femoral Angle)79/82°→87/91°,MPTA(Medial Prpximal Tibial Angle)99/100°→90/91°,LDTA(Lateral Distal Tibial Angle)91/88°,89/90°,MAD(Mechanical Axis Deviation)31/29→0/-10mm,FTA(femorotibial angle)157/159°,173/180°と改善を認めた.[考察]ムコ多糖症Ⅰ型(Hurler症候群)のX脚にeight-plateによるguided growth法は有効であった.

  • 山﨑 大輔, 徳丸 哲平, 倉田 秀明, 松尾 卓見
    2021 年 70 巻 1 号 p. 160-163
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    67歳男性,農業作業中にトラクターの運転操作を誤り右胸部を車体に挟まれ受傷.右第2/3/4/5/6肋骨骨折に伴うフレイルチェスト,胸骨柄骨折,大量血胸を認め,緊急経カテーテル的動脈塞栓術,気管挿管を行った.強い疼痛,胸郭動揺が遷延したため,人工呼吸器装着期間を短縮し人工呼吸関連肺障害の回避,ADL低下予防を目指し受傷6日目に胸骨柄骨折,右多発肋骨骨折に対して観血的整復固定術を施行した.術後2日目(受傷8日目)に抜管し,再挿管など大きな合併症は生じず受傷37日目に自宅退院となった.フレイルチェストを呈した重症胸部外傷患者に早期の観血的整復固定術を施すことで人工呼吸器関連肺障害の予防,気管切開の回避,良好な機能回復が得られたため報告する.

  • 井上 隆広, 井上 三四郎, 菊池 直士, 増田 圭吾, 岩崎 元気, 田中 宏毅, 中村 良, 川本 浩大, 泊 健太, 阿久根 広宣
    2021 年 70 巻 1 号 p. 164-165
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    【緒言】鎖骨骨折術後経過フォロー中にVariax Clavicle Plate(Stryker社)が折損し再手術を余儀なくされた1例を経験したので報告する.【症例】症例:55歳男性,既往歴特記事項なし.ロードバイク走行中に転倒し受傷した.当科受診しX線検査で右鎖骨骨幹部骨折(Robinson分類Type2B1)を認めVariax Clavicle Plateを用いて内固定術を行った.術後経過良好であったが,受傷約2ヶ月後ロードバイク走行中に再度転倒し,プレート折損及び鎖骨骨幹部粉砕骨折を認め当科再診となり再手術施行した.【考察】鎖骨骨折に対してプレートによる内固定を行う場合は,プレート折損の可能性について患者に十分説明し,スポーツ再開についても骨癒合を確認した上で許可すべきであることを再確認させられた.

  • 髙木 寛, 武藤 和彦, 宮崎 眞一, 大山 哲寛, 土田 徹, 川添 泰弘, 二山 勝也, 坂本 佳菜子, 池田 天史
    2021 年 70 巻 1 号 p. 166-171
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    【背景】特発性脊髄硬膜外血腫は比較的稀有な疾患であり初診時に片麻痺を呈することがあるため脳卒中との鑑別が重要である.【症例】83歳女性,突然発症の右片麻痺と右肩違和感で当院救急搬送された.頭部単純MRIで明確な新規脳梗塞病変は認めなかったが,一過性脳虚血発作また心源性脳塞栓症疑いで入院となった.入院後も麻痺症状の改善はなく入院3日目に当科紹介され画像検査にて第3から第5頚椎上縁レベルに脊柱管内の血腫を認め脊髄硬膜外血腫の診断となり緊急で第3,4頚椎片側椎弓切除並びに血腫除去を行った.以後緩徐に麻痺は改善し術後15週に歩行器歩行で退院となった.【考察】特発性脊髄硬膜外血腫が脳卒中との鑑別に苦慮する原因に片麻痺を呈することが挙げられる.初期症状に頸部から肩にかけての放散痛を認めることが多いが疼痛の程度は様々であり,誤診を防ぐためには本疾患を念頭に置き入念な問診が重要であると考えられる.

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