整形外科と災害外科
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選択された号の論文の67件中1~50を表示しています
  • 喜屋武 諒子, 大久保 宏貴, 仲宗根 素子, 米田 晋, 西田 康太郎
    2024 年 73 巻 4 号 p. 681-684
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    受傷から3か月以上経過した舟状骨偽関節に対する手術成績を報告する.対象は8例9手,全例男性,年齢は平均29.6歳,手術までの待機期間は平均40.3か月,術後経過観察期間は平均7.9か月であった.手術で使用した内固定材は全例headless screw 1本で,池田分類の線状型1手は骨移植なし,嚢胞型3手は手根中央関節鏡で軟骨面に亀裂を認めたため鏡視下骨移植を,硬化転位型5手のうち2手に直視下骨移植術を,術後偽関節2手に骨釘挿入と直視下骨移植術を,MRIで近位骨片に血流を認めなかった1手に血管柄付き骨移植を行った.骨癒合例と非癒合例を比較した.9手中7手で骨癒合が得られ,骨癒合までの期間は平均4.1か月であった.手関節全可動域は術前130°,術後155°,握力の患健比は術前平均90%,術後平均88%であった.MMWS(Modified Mayo Wrist Score)は平均92点であった.骨癒合が得られなかった2手はいずれも近位部での硬化転位型であり,同骨折型は骨癒合が得られにくい傾向を認めた.

  • 福島 俊, 秋元 哲夫, 岩田 慎太郎, 小林 英介, 小倉 浩一, 尾崎 修平, 戸田 雄, 村松 脩大, 鮒田 貴也, 竹森 俊幸, 近 ...
    2024 年 73 巻 4 号 p. 685-687
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】2018年4月1日より,根治的手術が困難な骨軟部腫瘍に対する陽子線治療が保険適用となった.前腕悪性軟部腫瘍に陽子線治療を行った2症例を報告する.【症例1】86歳女性.右前腕多形紡錘形細胞肉腫.機能を温存した根治切除は不可能であり,放射線治療(30 Gy/10回)を行った.治療後412日で再発し,陽子線治療(64 GyE/32回)を実施した.陽子線治療終了後497日で再発し,右上腕切断術を行った.【症例2】70歳女性.左前腕多形紡錘形細胞肉腫.機能を温存した根治切除は不可能であり,化学療法後に陽子線治療(69 GyE/23回)を行った.Grade 4の放射線性皮膚炎を合併した.局所感染を合併し,陽子線治療終了後199日で左上腕切断術を行った.【考察】根治切除不能の前腕悪性軟部腫瘍において,陽子線治療で一定期間の患肢温存が可能だった.根治性や合併症について今後も検討が必要である.

  • 久保田 悠太, 河野 正典, 岩﨑 達也, 臼井 和樹, 糸永 一朗, 加来 信広, 津村 弘, 田仲 和宏
    2024 年 73 巻 4 号 p. 688-690
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【背景】進行軟部肉腫において,標準治療であるドキソルビシン治療後に増悪した場合の2次治療以降の標準レジメンは確立されていない.今回当科におけるパゾパニブ使用例について検討したので報告する.【対象・方法】対象は当科で2012年1月から2023年10月の期間に切除不能・進行軟部肉腫に対してパゾパニブ治療を行った27例とした.平均年齢は66.0歳,組織型は平滑筋肉腫,未分化多型肉腫が各6例,その他に粘液型脂肪肉腫等が含まれていた.後方視的に無増悪生存期間(PFS),全生存期間(OS),12週時点無増悪生存率(12 W PFSR),病勢コントロール率(DCR),有害事象等について調査した.【結果】全体のPFS中央値4.1ヶ月,OS中央値11.5ヶ月,12 W PFSR 70%,DCR 57%であった.主なGrade 3/4有害事象は,高血圧症30%,肝酵素上昇22%等であった.【考察】パゾパニブは標準的1次治療が行えない場合の代替や2次~4次治療として有用と考えられた.

  • 篠原 道雄, 久我 茂誠, 伊原 公一郎, 栗山 龍太郎, 坪根 徹, 米原 孝則, 峯 孝友
    2024 年 73 巻 4 号 p. 691-693
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆性椎体骨折は現在の高齢化社会でよく経験し保存的治療が有効であることが多いが,椎体圧壊を生じ腰痛が遺残する場合や,遅発性神経症状が出現した場合には手術的加療を要する.手術は経皮的椎体形成術から椎体置換術など骨折形態や神経症状などにより多岐に渡る.当科では椎体圧壊の進行した骨粗鬆性椎体骨折に対して椎体置換術と2 above 2 belowにより椎体再建を行ってきたが,セメント注入型スクリューの登場により1 above 1 belowでのshort fusionの固定を数件行ってきた.1年以上経過観察できた実例で臨床症状,椎体圧壊の進行の有無,インプラント障害,骨癒合など評価した.結果はスクリューの緩み,引き抜けもなく骨癒合良好であり臨床成績良好であった.

  • 髙島 佑輔, 渡邉 弘之, 興梠 航, 酒本 高志, 岡田 龍哉, 相良 孝昭
    2024 年 73 巻 4 号 p. 694-695
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【目的】寛骨臼形成不全の治療方針を決める際,手術のリスクとベネフィット,手術を行わない場合の自然経過などをふまえて検討する必要がある.片側RAO後長期経過観察を行っている症例の,非手術側股関節について調査した.【方法】対象は両側寛骨臼形成不全のうち片側RAO施行時の非手術側病期が前・初期であり15年以上経過観察できた25例(女性23例,男性2例),手術時平均年齢40.1歳.最終観察時,非手術側の病期が進行期・末期・THAに移行したものを進行群,前・初期にとどまったものを非進行群とし,二群間の比較を行った.【結果】非進行群では進行群と比較してCE角,AC角,AHIで有意差を認め,病期進行についてCE角のカットオフ値は16°であった.年齢,BMI,関節適合性,手術側の病期進行に差はなかった.【結語】寛骨臼形成不全の程度が強い症例では股関節症進行のリスクが高く,前・初期の間に寛骨臼被覆を是正する手術を積極的に検討する必要がある.

  • 久保田 聡, 山口 亮介, 名取 孝弘, 本村 悟朗, 濵井 敏, 川原 慎也, 佐藤 太志, 原 大介, 宇都宮 健, 中島 康晴
    2024 年 73 巻 4 号 p. 696-699
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【目的】寛骨臼形成不全に伴う前・初期変形性股関節症の自然経過と進行に関連する因子を検討すること.【方法】2005年から2012年に当科で股関節手術を施行された患者のうち,非手術側が前・初期股関節症で,5年以上経過観察が可能であった134例134関節(男性10例,女性124例)を対象とした.初回評価時年齢は14-82歳(平均51歳),経過観察期間は5-22年(平均13年)であった.THA施行あるいは進行期への病期進行をエンドポイントとして関節生存率と進行に関連する因子を調査した.【結果】前・初期股関節症は5年で8%,10年で22%,15年で40%がTHA施行あるいは進行期へ病期が進行していた.単変量・多変量解析の結果,初回評価時年齢が独立した予後因子であり,高齢であるほどTHA施行あるいは病期が進行しやすかった.【結語】前・初期股関節症は経年的にTHAあるいは病期進行の割合が増加し,高年齢がリスク因子であった.

  • 竹内 龍平, 池村 聡, 青木 秀親, 齋藤 武恭, 安原 隆寛, 由布 竜矢, 加藤 剛, 泊 真二
    2024 年 73 巻 4 号 p. 700-703
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    緒言:大腿骨前捻角に関してTHAにおける脱臼影響因子の1つとして多くの報告があるが,膝関節に与える影響を検討した報告は少ない.目的:大腿骨前捻角と膝回旋角の相関有無,膝回旋によりPF関節の変性が起こるかを検討した.方法:両股関節から膝関節までのCTを撮像した154股(男性34女性120,平均年齢72歳)を対象とした.変形性股関節症(OA)84股,大腿骨頭壊死症16股,頚部骨折54股であった.水平断で前捻角と回旋角を測定,PF関節の変性(PFOA)についても検討した.結果:前捻角は平均16.6°,年齢は頚部骨折が有意に高く,性別はOAが有意に女性に多く,前捻角と回旋角には弱い負の相関(前捻が強くなれば膝は内旋)を認めた.一方,回旋とPFOAに有意な関連は認めなかった.考察:過去の報告では,回旋が強いとPF接触圧が高まるとされ,症例数を増やして更なる検討が必要と考える.結語:大腿骨前捻角と回旋角について調査した.前捻角と回旋角には弱い負の相関を認めた.

  • 森山 弘朗, 神保 幸太郎, 井手 洋平, 原口 敏昭, 戸次 将史, 岡部 成倫, 岡崎 真悟, 赤塚 孝太, 脇田 将嗣, 草場 宣宏, ...
    2024 年 73 巻 4 号 p. 704-707
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    坐骨大腿骨インピンジメント(IFI)は,従来骨形態によるものと考えられていたが,人工股関節全置換術(THA)後の患者でも発症することが報告されている.人工骨頭置換術(BHA)後にIFIを呈し,THAで治療し得た1例を報告する.74歳女性.左大腿骨頚部骨折に対しBHA施行.痛み,歩行時痛が持続した.CTで左の坐骨大腿骨間距離(IFS)の短縮,ステムの過前捻設置が示された.症状が持続し,BHA術後23カ月でTHA施行.ステムは変更せず,ネックを伸ばしカップを設置した.術後CTで,左IFSは延長し,症状が改善した.IFIはIFSの短縮に,股関節の動きが加わり発症する.今回BHAでIFSが短縮しIFIの静的因子となった.その主な原因は,ステム過前捻設置により小転子が後方へシフトしたことが考えられた.BHAのステム過前捻設置に注意を要する.

  • 五島 漱志朗, 前山 彰, 原 純也, 石松 哲郎, 松永 大樹, 中山 鎮秀, 秀島 義章, 山本 卓明
    2024 年 73 巻 4 号 p. 708-711
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【目的】膝関節症発症前の状態を推測する分類としてCPAK分類が提唱されている.全人工膝関節置換術(TKA)において,発症前のアライメントを再現することを目標とするkinematic alignment法の術後成績が良好であるとの報告がある.そこで当院におけるTKAの術前後アライメントと臨床成績を後方視的に検討した.【対象と方法】術後1年時の経過観察が出来た2020年2月から2022年12月までのTKA症例48例50膝のうち,術前CPAK分類type 1かつ術後も内反アライメントであった25膝を対象とした.JOAスコア,KOOSを評価項目として検討し,術後アライメントと術後臨床成績の関連を検討した.【結果】MA変化量とKOOS symptoms変化量との間に有意な負の相関を認めた(r=-0.46, p=0.02).MA変化量を2群間比較したところ,術前より30%以下のアライメント変化の方がKOOS symptoms変化量が有意に改善した.【考察】CPAK分類type 1の症例において術前後でアライメントを近似させた症例の方が臨床成績の改善度が良好であることが示唆された.

  • 内田 研, 小畑 彰
    2024 年 73 巻 4 号 p. 712-714
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【対象・方法】内反型OAに対して2019年5月~2022年3月迄,年齢54~99歳,UKA 252膝,TKA215膝に対して脛骨冠状面アライメントの調査を内反・外反・neutralの三つの項目でADL,意識調査(FIM・PCS・FJS)を行った.また,脛骨冠状面アライメントの予後に影響を及ぼすと考えられる脛骨sinking調査も行った.【考察】脛骨内反・外反・neutralで外反グループは内反及びneutralグループと比較して,明らかな有意差を認めなかったが低い値を示した.満足度スコアにおいてUKA・TKA術後sinkingあり・なし症例の間に明らかな有意差は認めなかったが,UKAの設置角度のみ有意差を認め,外反がsinkingしやすい傾向にあった.

  • 安達 淳貴, 川原 慎也, 國分 康彦, 濵井 敏, 赤崎 幸穂, 佐藤 太志, 中島 康晴
    2024 年 73 巻 4 号 p. 715-718
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    内側人工膝関節単顆置換術(UKA)55膝について術前および術後1年で評価を行った.全下肢単純X線写真でmHKA,MPTA,LDFAを計測,aHKAとJLOを算出しCPAK分類にあてはめた.術後CPAK分類におけるaHKAとJLOの各群がKSSの術前後改善に及ぼす影響を検討し,関節面傾斜およびインプラントアライメントとの関連を評価した.KSSの変化とaHKAの関係については,Valgus群で有意に改善度が低く,LDFAの変化量に有意差を認めた.KSSの変化とJLOの関係については,Apex distal群で有意に改善が低く,同様にLDFAの変化量に有意差を認め,また大腿骨コンポーネントは有意に屈曲位設置であった.以上より,膝関節伸展位で大腿骨を不足なく骨切りすることが,KSS改善に重要と考えられた.

  • 堀川 朝広, 樽美 備一, 富野 航太, 今村 悠哉, 平井 奉博, 山下 武士, 緒方 宏臣
    2024 年 73 巻 4 号 p. 719-723
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    当科での単顆型人工膝関節置換術(UKA)の手術手技は脛骨骨切りに基づくgap techniqueを用いており,脛骨インプラントの後傾は術前X線を基に決定している.【目的】脛骨前面の脛骨稜を指標にした従来法(マニュアル法)とポータブルナビゲーションを用いた脛骨骨切りの後傾を比較すること.【対象と方法】2020年4月から2023年10月までに施行したUKA 44膝を従来法(M群)16膝とポータブルナビゲーションを用いた群(P群)28膝に分けX線学的に脛骨インプラントの設置後傾角度を測定した.【結果】M群の術後平均後傾角度は7.1°±1.80,P群の術後平均角度は5.8°±2.96とP群で小さい傾向がみられたが有意差はなかった.しかしながらP群で3-10°の範囲を超えるoutlierを数例認めた.【考察】ポータブルナビゲーションの脛骨骨切りは脛骨近位中央と遠位の内・外果の3点で設定される.しかしながら当科においてその精度には疑問が残る結果であった.

  • 伊藤 輝, 酒井 隆士郎, 巣山 みどり, 髙橋 祐介, 野口 康男, 島内 卓, 江口 正雄
    2024 年 73 巻 4 号 p. 724-727
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【背景】人工膝関節置換術(以下TKA)後の膝蓋腱断裂は確立した治療法はなく,治療に難渋する.今回我々はTKA後に脛骨側と膝蓋骨側の異なる2ヶ所で膝蓋腱断裂をきたした稀な症例を経験したため報告する.【症例】76歳女性.変形性膝関節症に対しTKAを施行し,術後17日目に膝関節の伸展が不能となった.膝蓋腱断裂の診断で膝蓋腱再建術を施行した.外側半分は膝蓋骨付着部で骨片を伴い剥離しており,内側半分の膝蓋腱は遠位で骨片を伴い剥離していた.【考察】TKA後に異なる2ヶ所で膝蓋腱断裂した報告は我々の渉猟し得た範囲では過去にない.患者は統合失調症を併存しており,受傷時の記憶が曖昧で正確な受傷起点は不明である.膝蓋腱脆弱性に加え精神疾患によりリハビリコントロールができなかったことが膝蓋腱断裂が2ヶ所で起きた原因と推察する.【結語】TKA後に異なる2ヶ所で膝蓋腱断裂をきたした稀な症例を経験した.

  • 又野 佑太, 石松 哲郎, 工藤 悠貴, 前山 彰, 松永 大樹, 中山 鎭秀, 山本 卓明
    2024 年 73 巻 4 号 p. 728-730
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【目的】CWHTO後の脛骨形態変化と膝蓋大腿(PF)関節への影響を評価すること.【対象と方法】2020年~2022年にinterlocking CWHTOを施行した10例を対象とし,術前と術後1年時のX線,CTによる脛骨アライメント変化と膝蓋骨高(CDI)を計測し,各項目との相関を検討した.また,術前と抜釘時にPF関節のICRSを評価した.【結果】脛骨粗面の前方移動量は平均4.2 mmで,近位移動量は6.6mmと有意な変化を認めた(p<0.01).脛骨外旋変化量,CDIは有意差を認めなかった.矯正角は前方移動量と正の相関(r=0.798,p<0.01),術後脛骨外旋角と負の相関(r=-0.751,p<0.01)を認めた.ICRSは10例中9例で変化は無かった.【考察】CWHTO後,脛骨粗面は前上方化しており,これがPF軟骨に良い影響を与える可能性がある.

  • 市川 賢, 花田 弘文, 野村 耕平, 原 純也, 大島 由貴子, 竹山 文徳, 相良 智之, 山口 史彦, 久保 勝裕, 藤原 明, 原 ...
    2024 年 73 巻 4 号 p. 731-734
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【要旨】高度外反変形膝関節症に対する矯正骨切り術は,適応症例も少なく,その報告は少ない.今回,高度外反変形膝関節症に対して膝周囲骨切り術を施行した一例を報告する.症例は,55歳女性.30歳より右膝に歩行時痛が出現,49歳より左膝痛も出現.保存加療は奏効せず,日常生活にも支障を来たしたため紹介受診.趣味は卓球であり活動レベルが高い方であった.右優位の外反変形,両膝外側関節裂隙の圧痛を認めた.単純X線ではKL-Ⅳ,外反ストレスで不安定性を認めた.右膝アライメントは,%MA138%,mLDFA 77°,MPTA 89°であった.膝関節MRIでは,外側コンパートメントの骨硬化,外側半月板の消失を認めた.患者希望は関節温存手術であり,生理的関節面再構築を目指し,大腿骨遠位内側閉鎖式楔状骨切り術,脛骨内側閉鎖式楔状骨切り術施行.術後1年で骨癒合を確認,抜釘術施行.術後アライメントは,%MA 35%,mLDFA 92°,MPTA 85°に改善,スポーツ復帰可能であり比較的良好な治療成績であった.

  • 黒岩 慶成, 松永 大樹, 島田 哲郎, 石松 哲郎, 中山 鎭秀, 前山 彰, 山本 卓明
    2024 年 73 巻 4 号 p. 735-738
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,高位脛骨骨切り術の不可視出血量と,それに影響する因子を検討することである.【対象と方法】2021年1月から2022年12月までに当院で内側開大式高位脛骨骨切り術(OWHTO)を行った患者29例のデータを収集し,最終的に28例を対象として後方視的に検討した.主要評価項目を不可視出血量(HBL)および総出血量(TBL)とし,併存疾患を含む患者データを副次評価項目として,各項目と出血量との関連を調査した.【結果】平均年齢61.4歳,男性8例,女性20例,平均HBLは350.8 ml,平均TBLは587.4 mlであった.高血圧症を有する患者では,高血圧症を有さない患者と比較して,不可視出血量は有意に多かった.また,開大角やBMI,手術時間などは不可視出血量に影響しなかった.【結語】高血圧治療中の患者は不可視出血量が有意に多く,HTOの出血に関しては血圧管理に注意する必要がある可能性が示唆された.

  • 宮本 和樹, 藤井 政徳, 坂井 達弥, 松村 陽介, 長嶺 里美, 馬渡 正明
    2024 年 73 巻 4 号 p. 739-741
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【目的】TKA/UKA術前の患者における足関節痛の頻度と,膝関節の症状・健康状態との関連を明らかにすること.【方法】2023年1月から4月の間に初回TKAまたはUKAを行った41例47足を対象とした.術前アンケートを用いて,膝関節特異的PROMs(痛み・満足度VAS, FJS-12, KOOS-12)や健康状態(EQ-5D)と,足関節痛の有無との関連について検討した.【結果】TKA/UKA術前患者の34%(16/47関節)が足関節痛を有し,32%(15/47関節)に高倉分類grade ≥2の足関節OAを認めた.足関節痛がある患者は無い患者に比し,FJS-12(7 vs. 17, p=0.038),KOOS-pain(19 vs. 38, p=0.024),EQ-5D VAS(48 vs. 75, p=0.013)が低かった.【考察】TKA/UKA術前患者の34%が足関節痛を有しており,膝関節への意識や疼痛,患者の健康状態に関連することが示唆された.

  • 松本 和宏, 田中 潤, 萩原 秀祐, 塩川 晃章, 柴田 達也, 眞田 京一, 佐々木 颯太, 山本 卓明
    2024 年 73 巻 4 号 p. 742-745
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【緒言】日本整形外科学会頚部脊髄症評価質問表(JOACMEQ)の有効性が報告されているが,頚椎椎弓形成術後の成績を年齢別に比較した報告は少ない.【目的】JOACMEQを用いて頚椎椎弓形成術後の年齢別成績を比較検討すること.【方法】2015-2020年に頚椎症性脊髄症および後縦靱帯骨化症に対し頚椎椎弓形成術を施行した40例を若年群(64歳以下),前期高齢群(65-74歳),後期高齢群(75歳以上)に分け,術後1年時のJOACMEQ,VASを用いて比較検討した.JOACMEQΔ:術後-術前,VASΔ:術前-術後とし,Δ≧20を「治療効果あり」と定義した.【結果・考察】若年群13例,前期高齢群14例,後期高齢群13例であった.JOACMEQ頚椎機能,頚部痛VASに有意差を認め,前期高齢群が最も改善を示した.若年群で後縦靱帯骨化症の割合が高く,この結果が術後成績に影響を与えた可能性が考えられた.

  • ―術後C2-7角減少例と非減少例の比較―
    勢理客 久, 比嘉 勝一郎, 屋良 哲也
    2024 年 73 巻 4 号 p. 746-750
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【目的】当院で頚椎症性脊髄症(CSM)に対して施行した,片開き式頚椎椎弓形成術の術後1年時成績を,頚椎X-pパラメーターおよびJOACMEQを用いて検討すること.【対象と方法】2016年4月~2022年6月の期間に条件を満たした40例で,術前後でC2-7角が7°以上減少した群(C2-7減少群)と7°未満減少群(非減少群)の2群に分け,JOACMEQおよびX-pパラメーターの術前後の変化について比較した.【結果】JOACMEQ頚椎機能の獲得量,下肢機能の獲得量,有効率に関してC2-7減少群は非減少群に比較し有意に劣っていた.また術前C2-7屈曲角は非減少群に比較しC2-7減少群において有意に大きかった.

  • 水溜 正也, 畠 邦晃, 井上 哲二, 川谷 洋右, 吉野 孝博, 山口 裕介, 阿部 靖之
    2024 年 73 巻 4 号 p. 751-754
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】環軸椎後方固定術を施行し,比較的早期に歯突起後方偽腫瘍の縮小を認めた2症例を経験したので報告する.【症例】症例1:44歳女性,関節リウマチの加療中.頚椎屈曲位でADI 10.0 mmと顕著な環軸椎不安定性を伴う頚髄症を認め,かつ活動性の高い壮年期であるため環軸椎後方固定術を施行した.術後8週のMRIで偽腫瘍の縮小を認めた.症例2:72歳男性,頚椎屈曲位でADI 6.2 mm.高齢だが,中下位頚椎からの頚髄症に加えて,大後頭神経痛による睡眠障害が持続するため,C3-5椎弓形成術および関節貫通スクリューによる環軸椎後方固定術を施行した.術後8週のMRIで偽腫瘍の縮小を,術後4か月ではさらなる縮小を認めた.症例1,2とも,偽腫瘍内はT2強調画像にて高信号域を認めた.【結論】歯突起後方偽腫瘍は,T2強調画像で高信号域を認める場合,強固な内固定にて早期に縮小する.

  • 金城 英樹, 野原 博和, 伊波 優輝, 知念 修子, 仲間 靖, 新垣 寛, 知念 弘, 西田 康太郎
    2024 年 73 巻 4 号 p. 755-759
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【要旨】広範囲脊椎硬膜外膿瘍に伴う四肢麻痺に対し,手術を行った1例を経験したので報告する.症例は60歳男性.入院5日前からの発熱,2日前からの後頚部痛,四肢の痺れ,歩行困難を主訴に救急搬送され,入院となった.入院当日,上下肢筋力はMMT 4程度であったが尿閉のため尿道カテーテル留置した.入院時のMRIでC1~2高位の頚髄腹側硬膜外にT1WIで筋肉と等信号,T2WIで低・高信号域が混在する腫瘤性病変,またL3/4,L4/5高位の右側傍脊柱の軟部組織,脊柱管内硬膜外にT2WIで不均一な高信号域を認め,広範囲に及ぶ硬膜外膿瘍を疑い,抗菌薬投与を開始した.入院2日目朝に上肢MMT 3~4,下肢MMT 2~3と低下,夕には上下肢共にMMT 2程度に四肢麻痺が進行し,呼吸困難となったため,入院3日目にC1後弓切除とC2~3の椎弓切除術を行った.術翌日より上肢下肢MMTは4に回復し,呼吸困難も消失した.抗菌薬投与で膿瘍は縮小,リハビリテーションを継続し独歩可能となった.

  • 津田 宗一郎, 吉田 悠哉, 神崎 貴仁, 田口 勝規
    2024 年 73 巻 4 号 p. 760-763
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    高齢者でさえ非転位型の大腿骨頚部骨折に対して骨接合術が行われるが,骨頭圧壊や偽関節などの合併症があり転位角や骨折型が関連因子として報告されている.今回,転位角や転位形態と治療成績の関連性を調査し骨接合術の適応を明らかにすることを目的とした.対象は過去10年間に当科で骨接合術を施行した35例で,男性6例,女性29例,平均年齢は77歳であった.X線学的評価は外反,後傾のほか,正面像,軸位像での皮質骨の重なりを陥入とし,陥入の数に応じて1~4面陥入型と分類し評価を行った.35例中34例が骨癒合した.合併症は3例あり骨頭圧壊が2例,偽関節が1例であった.3例とも転位角は小さく3面陥入型が1例,4面陥入型が2例であった.転位角の影響は少なく,陥入面数が増えるほど合併症の危険性は増加していた.2面陥入型は骨接合術の適応だが4面陥入型の適応は難しい.3面陥入型は成績不良因子の更なる精査,検討を要する.

  • 徳永 真巳, 富永 冬樹, 矢野 良平, 山口 雄大
    2024 年 73 巻 4 号 p. 764-770
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    Hansson DC nail(HDCN)はツインフックピン(TH)を採用し,ピン挿入部遠位にノッチを作製することで,THのスライディング(SL)に加えて髄内釘の骨幹軸方向への動き(Advanced Dynamisation:AD)を許容し,骨折部にかかる圧迫力を効率的にした.この新しい髄内釘の使用経験を報告する.【対象と方法】大腿骨転子部骨折7例(平均手術時年齢88.6歳)を対象とした.この症例で,手術時間,術後整復位,術直後AD,術後1週/2週/1か月/3か月/6か月のSL距離とAD距離,骨癒合を調査した.【結果及び考察】手術時間は平均76.6±34.7分であった.術後整復位はX線側面像でsubtype A:5例,N:2例と良好であった.術直後ADを3例で認めた.術後1週/2週/1か月/3か月/6か月のSL距離はそれぞれ1.6/2.4/2.9/3.6/3.3 mmで,ADは6例で術後2週までには完了していた.全例で骨癒合を認めた.HDCNはユニークな骨折部圧迫機構を有し今後の良好な成績が期待される.

  • 森 達哉, 河野 勤, 鬼塚 俊宏, 今村 寿宏, 松延 知哉, 花田 麻須大, 平本 貴義, 高崎 実, 田代 泰隆, 三浦 裕正
    2024 年 73 巻 4 号 p. 771-774
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【目的】ハンソンDCネイル(以下DCネイル)は,ヘッドエレメントがフックタイプであり,アドバンスドダイナミゼーション(以下AD)という骨軸方向への圧迫を加えるためのノッチを機械的に作成できる機能をもつ.今回,DCネイルを用いた大腿骨転子部骨折の治療成績について検討した.【方法】対象はDCネイルを用いて治療した大腿骨近位部骨折25股である.検討項目は,フック長と位置,スライディング・AD量,整復位,5 mm以上のスライディング症例とした.【結果】スライディング量は2.4mm,AD量は3.3 mmであり,術後整復位の損失は認めなかった.5 mm以上のスライディング症例は4例で,そのうち狭髄腔で,処置を要したものが3例であり,有意に多かった.【考察】DCネイルを用いた大腿骨転子部骨折の治療成績は良好であった.しかし,狭髄腔症例においてはADが起こりにくく,スライディングが大きくなる可能性が示唆されたため,ADが治療に有用な可能性があると思われる.

  • 名子 明里, 吉川 誉士郎, 高江洲 美香, 仲宗根 哲, 西田 康太郎
    2024 年 73 巻 4 号 p. 775-778
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【諸言】Adaptive Positioning Technology(以下ADAPT)はGamma 3ラグスクリューの適切な設置をアシストするコンピュータ手術支援システムである.今回ADAPTの治療経験を報告する.【対象と方法】当院で大腿骨近位部骨折に対しガンマネイルを行った33例(男性7例,女性26例,平均年齢84.6歳)を対象とし,ADAPT使用群(A群)24例と非使用群(N群)9例を比較した.手術は1~4年目の整形外科専攻医が担当し,Tip-apex distance(以下TAD)は単純X線像で計測し,ラグスクリュー挿入位置はCTで計測した.【結果】平均手術時間はA群86分,N群94分で,平均出血量はA群95 g,N群132 gであった.平均TADはA群13.3 mm,N群15.6 mmで有意差を認めなかったが,N群の3例でTAD>20 mmとなった.ラグスクリューがcenter-centerに挿入できた症例はA群87.5%,N群77.8%であった.【考察】ADAPTの使用において,手術時間や出血量に有意差はないが,ラグスクリュー挿入の位置と角度と長さの決定に有用であった.

  • 鮎川 周平, 石橋 正二郎, 水内 秀城, 屋良 卓郎, 春田 陽平, 石津 研弥, 木原 大護
    2024 年 73 巻 4 号 p. 779-781
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】大腿骨骨幹部骨折における分節型や遠位型は偽関節リスクが高い.今回髄内釘にadditional plateを併用し早期骨癒合を得た2例を経験したので報告する.【症例1】21歳男性.バイク走行中にトラックと衝突し受傷.右大腿骨骨幹部骨折(AO/OTA 32-C2分節型)に対して同日創外固定術を施行.創外固定後9日目に髄内釘および骨折部外側,分節部遠位に1/3円locking plateを併用し固定.4週免荷し部分荷重開始.術後3か月で骨癒合が得られた.【症例2】55歳男性.バイク走行中に軽自動車と衝突し受傷.左大腿骨遠位骨幹部骨折(AO/OTA 32-A3)に対して同日創外固定術を施行.創外固定後7日目で髄内釘および1/3円locking plateを骨折部外側に併用し固定.6週免荷し部分荷重を開始.術後4か月で骨癒合が得られた.【結語】Additional plateの併用は偽関節リスクが高い骨折型に対して早期骨癒合の点で有用であることが示唆された.

  • 松本 洋太, 江﨑 克樹, 金江 剛, 小澤 慶一
    2024 年 73 巻 4 号 p. 782-783
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【目的】大腿骨頚部骨折(以下N群)と大腿骨転子部骨折(以下T群)で,頚部と転子部の部位毎の骨密度を検討した.【対象】2020年4月から2022年3月までに大腿骨近位部骨折に対し当院で手術を施行し,術後1カ月以内に健側の骨密度を測定した185例を対象とした.【結果】N群94例,T群91例で性別に有意差は見られなかったが,年齢はT群においてより高齢であった.両群ともに頚部のYoung Adult Mean(YAM)値が転子部のYAM値と比較して有意に低かった.頚部と転子部のYAM値の差はT群で有意に小さかった.【考察】加齢に伴い頚部と比較して転子部の骨密度はより低下するといわれている.今回の調査でもT群の方が高齢であり,高齢になるにつれて転子部の骨密度が低下し大腿骨転子部骨折となりやすいと考えられる.

  • 倉本 孝文, 藤原 悠子, 土持 兼之
    2024 年 73 巻 4 号 p. 784-787
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    (はじめに)当院の大腿骨近位部骨折症例において椎体骨折既往の有無を調査し,入院時骨粗鬆症治療介入率および骨密度について検討した.(対象と方法)2022年4月から2023年3月までに当院で手術を行った大腿骨近位部骨折患者55症例を対象とし,入院時骨粗鬆症介入率を調査した.また,椎体骨折の有無で骨密度を比較検討し,椎体骨折あり群のうち,骨粗鬆症治療介入の有無でさらに比較検討した.(結果)入院時骨粗鬆症治療介入率は,椎体骨折あり群で有意に高く,82%がビスホスホネート製剤であった.また,椎体骨折あり群のうち,治療介入にも関わらず介入あり群で骨密度が低い傾向があった.(結論)大腿骨近位部骨折の入院時治療介入率は低く,地域との連携等により介入率および継続率を上げることが重要である.また,低骨密度症例やビスホスホネート製剤による効果不十分な症例に対しては,治療介入時からの骨形成促進薬使用を検討する必要がある.

  • 城間 将人, 石橋 卓也, 宮﨑 弘太郎, 仲村 佳彦, 喜多村 泰輔, 石倉 宏恭, 山本 卓明
    2024 年 73 巻 4 号 p. 788-791
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【背景】造影CTでExtravasation(Extra)がない骨盤骨折のTranscatheter Arterial Embolization(TAE)適応については未だ不明確である.【目的】Extraがなく循環動態が安定した骨盤骨折の活動性出血の出血予測因子を解明すること.【対象と方法】対象は2013年1月から2023年3月に当センターに入院し,搬入時収縮期血圧90 mmHg以上であり,造影CTでExtraを認めなかった骨盤骨折患者とした.対象患者を搬入後24時間以内の輸血の有無で輸血群と非輸血群に分け搬入時のデータを比較した.【結果】対象患者は22人[輸血群:7人(31.8%),非輸血群:15人(68.2%)]で,輸血群ではFibrin/Fibrinogen Degradation Products/Fibrinogen(FDP/Fbg)[0.77(0.43-1.42)vs 0.35(0.18-0.42),p=0.032]が有意に高くカットオフ値は0.516であった.非輸血群でHemoglobin(Hb)[10.6(9.5-11.6)vs 13.5(11.95-14.4),p=0.014]が有意に高くカットオフ値は10.9であった.また骨盤AO/OTA分類は輸血群でB2,B3が多く,非輸血群でB1が多かった.【考察】Hbが低くFDP/Fbgが高い骨盤骨折は循環動態が安定し造影CTでExtraを認めない症例でも活動性出血の出血予測因子になり得ると考えられた.

  • 西野 良, 松永 大樹, 木下 浩一, 瀬尾 哉, 秀島 義章, 吉村 郁弘, 山本 卓明
    2024 年 73 巻 4 号 p. 792-795
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    大腿骨転子部骨折後の大腿骨頭壊死は稀であるが,今回術後同時期に2例を経験したので報告する.【症例】症例1は76歳女性,転倒し,受傷.右大腿骨転子部骨折の診断で骨接合術(髄内釘)を施行.症例2は66歳女性で,重症筋無力症の既往があり,ステロイド治療中.洗濯物を干している際に転倒し,受傷.左大腿骨転子部骨折の診断で骨接合術(髄内釘)を施行.両症例とも術後7ヶ月頃から徐々に股関節痛が出現,精査にて骨頭圧壊を認め大腿骨頭壊死の診断でTHAを行った.術後経過については短期間であるが,良好であった.【考察】大腿骨転子部骨折後の大腿骨頭壊死の原因は明らかになっておらず,高エネルギー外傷やリーミングの際の血管損傷,骨折型,整復不良,ラグスクリューの不適切位置への挿入など挙げられているが,明確にはされていない.Salvage手術としてBHAやTHAを行う際にはステムの選択や術中骨折に注意する必要がある.

  • 坪根 遼平, 中村 厚彦, 稲光 秀明, 矢野 竜大, 倉光 正憲, 酒井 政彦, 片岡 佑太, 春島 慎之介
    2024 年 73 巻 4 号 p. 796-798
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】痙攣発作後に発症した両側大腿骨転子部骨折の1例を経験したので報告する.【症例】23歳,男性.精神発達遅滞,てんかんの既往があり意思疎通は困難であった.受傷前ADLは手引き歩行,食事や入浴,更衣は全介助.初診前日の深夜に両側上下肢の痙攣発作を発症し前医に救急搬送.頭部MRIで明らかな異常なく帰宅となったが,起立不能であり両側大腿部の腫脹と疼痛があることに母親が気付いて当院に救急搬送された.両側大腿骨転子部骨折の診断で当科入院.初診から2日後に髄内釘による骨接合術を行った.術後2週から疼痛に応じて起立歩行訓練を開始,術後1か月でリハビリ目的に転院,介助下で起立,車椅子移乗が可能になり術後3か月で自宅退院となった.術後2年で骨癒合を認め,手引き歩行が可能で受傷前の移動能力まで改善している.【考察】痙攣発作により非外傷性に関節周囲骨折や骨盤骨折を生じる可能性があり注意が必要である.

  • 照屋 周, 仲宗根 哲, 翁長 正道, 鷲﨑 郁之, 伊藝 尚弘, 國吉 さくら, 西田 康太郎
    2024 年 73 巻 4 号 p. 799-802
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】今回,Vancouver分類に基づいて当院における大腿骨ステム周囲骨折の治療成績を検討した.【対象】2018年1月~2023年6月に当院で大腿骨ステム周囲骨折の治療を行った9例で,受傷時のVancouver分類はtype B1:3例,type B2:6例,全例セメントレスステムTHAであった.治療はtype B1の3例に骨接合術を行い,type B2の2例に骨接合術,4例にステム再置換術を行った.検討項目として臨床評価は手術内容,免荷期間,先行手術から骨折までの期間,歩行能力,合併症とし,画像評価はステム沈下量,骨癒合の有無とした.【結果】全例で骨癒合が得られたが,type B1の1例に歩行能力の低下を認めた.合併症はtype B2で浅層感染1例,大転子骨折1例を認めた.type B2の骨接合を行った2例にステム沈下を認めた.【まとめ】当院での大腿骨ステム周囲骨折の治療成績は概ね良好であった.Vancouver分類type B2での骨接合術の適応は先行手術から骨折までの時期により考慮し得ると思われた.

  • ―髄内釘とプレートの比較―
    山下 哲平, 安樂 喜久, 立石 慶和, 安藤 卓, 上川 将史, 大野 貴史, 唐田 宗一郎, 佐藤 慶治, 髙田 紘平, 浅沼 涼平
    2024 年 73 巻 4 号 p. 803-805
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    TKA周囲骨折に対する骨接合術の治療成績を報告する.対象は,2013年4月~2023年4月に手術を行った39例で,手術時平均年齢は85.6歳であった.術式は,髄内釘(IMN群)7例,外側プレート(LP群)15例,ダブルプレート(DP群)17例であった.手術時間,出血量,および追跡可能症例(62%)について最終追跡時の屈曲可動域,骨癒合の有無を調査した.平均手術時間はIMN群131.7分,LP群137.5分,DP群192.6分で,DP群で有意に長かった.平均出血量はIMN群278.6 g,LP群257.3 g,DP群297.5 gで,屈曲可動域はIMN群105.7°,LP群95.3°,DP群94.3°でいずれも3群間に差は無かった.IMN群は全例骨癒合を認め,遷延癒合,偽関節はいずれもプレート症例であった.DP群で手術時間が長い傾向にあったが,どのような骨折型でも使用可能というメリットがある.

  • 平田 健悟, 樋口 健吾, 末次 宏晃, 松原 庸勝, 吉松 弘喜, 馬渡 正明
    2024 年 73 巻 4 号 p. 806-808
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    大腿骨顆部冠状骨折はHoffa骨折と呼ばれ,比較的稀な骨折である.今回Hoffa骨折後偽関節の1例を経験したので報告する.症例は,37歳男性.4年前にネパールでバイクに挟まれ受傷.現地の病院で骨折は指摘されず,疼痛を感じながら生活していた.その後,左膝関節痛が増悪し,当院受診した.左大腿骨外側顆部のHoffa骨折後偽関節,MRIで外側円板状半月断裂の合併を認めた.関節鏡下に半月板縫合を行い,外側傍膝蓋アプローチで展開した.直視下に偽関節部新鮮化,自家骨移植,4.5 mm径HCS,1/3円plate 2枚を用いて内固定を行った.術後6週より部分荷重を開始した.術後3ヶ月で全荷重歩行,ROMは0~145°が得られ,骨癒合の進行もみられた.Hoffa骨折は解剖学的に強い剪断力が加わり,関節内骨折であるため解剖学的整復,強固な内固定が推奨されている.本症例では,比較的良好な治療成績が得られている.観察期間が短期のため今後も慎重な観察が必要である.

  • 伊藤 洋輝, 安部 幸雄, 片岡 秀雄, 武藤 正記, 藤澤 武慶, 高橋 洋平, 淺野 圭
    2024 年 73 巻 4 号 p. 809-812
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    外傷性膝関節脱臼は比較的稀な疾患である.当院における外傷性膝関節脱臼の治療経験について報告する.2017年~2023年に当院で膝関節脱臼と診断された症例は男性2例,女性2例,年齢は35~82歳であった.受傷機転は耕運機による外傷1例,労災1例,交通外傷2例であった.骨折を伴う症例は3例でうち1例は多発開放骨折であった.造影CTで膝窩動脈の閉塞は1例であり,閉塞例はコンパートメント症候群のため大腿切断に至った.Schenckの膝関節脱臼分類はKD-Ⅲ:1例,V:3例であった.1例は当院で骨接合術を行い他院へ転院し保存的加療となった.靱帯再建は1例でMCL,ACLを再建,PCL保存,1例でMCL,LCL,ACL,PCLを再建した.膝関節脱臼の初期治療には膝窩動脈損傷の可能性を念頭におく必要がある.また,膝靭帯だけでなく神経血管損傷および他臓器損傷の合併や患者背景により治療内容や治療時期が異なるため,画一的な治療は難しく,未だコンセンサスが得られていない.

  • 加峯 亮佑, 荒武 佑至, 有馬 準一, 土井 俊郎, 田中 孝幸, 高野 祐護, 福徳 款章, 副島 悠, 岡野 博史, 新庄 慶大, 津 ...
    2024 年 73 巻 4 号 p. 813-815
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】小児化膿性仙腸関節炎の1症例を経験したので報告する.【症例】9歳男児.誘因なく右股関節痛を自覚した.前医を受診され単純性股関節炎の診断で経過観察となっていたが,その後に疼痛が増悪し,38度台の高熱も伴ったため,急性化膿性股関節炎疑いにて第5病日に当院へ紹介となった.初診時には右股関節から殿部にかけての著明な疼痛のため体動困難であり,炎症反応はCRP 20.1 mg/dLと異常高値を認めた.同日緊急MRIで右化膿性仙腸関節炎と診断,入院の上,抗生剤加療を開始した.治療経過は良好で,第18病日にCRPが陰性化,第30病日に独歩で疼痛なく自宅退院となった.その後3ヶ月の経過でも再発は認めていない.【考察】小児化膿性仙腸関節炎は比較的稀な疾患であることや症状が多彩であることもあり,早期診断に難渋し,治療開始が遅れることが少なくない.同疾患において,MRIは早期の確定診断に至る有用な方法である.

  • 酒井 鴻, 松下 優, 佐々木 貴之, 小川 宗一郎, 田代 勇人, 木村 太一, 平林 健一, 馬場 覚, 小宮 紀宏, 塚本 伸章, 林 ...
    2024 年 73 巻 4 号 p. 816-819
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】小児前腕骨骨幹部骨折の治療後の再骨折はしばしばみられる合併症である.当院で経験した橈骨遠位端骨折に橈骨骨幹部再々骨折を合併した1例を報告する.【症例】14歳男児,11歳時にサッカー中に転倒,右橈骨骨幹部骨折を受傷して,他院で骨接合術を実施された.抜釘後に再骨折を起こしたため,再度骨接合術・抜釘術を実施された.治療経過は良好であったが,抜釘から2年後,14歳時にサッカー中に転倒し,右橈骨遠位端骨折に合併して,前回骨折部と同部位の右橈骨骨幹部骨折を受傷した.当科で右橈骨骨幹部再々骨折に対して骨接合術を実施し,右橈骨遠位端骨折に対して保存的加療を行った.術後経過は良好である.【結論】小児前腕骨骨幹部骨折の中でも思春期症例は,再骨折リスクを考慮して,骨接合時には角状変形を残さないように注意し,術後は抜釘時期,スポーツ復帰までの期間を慎重に検討して治療を行う必要がある.

  • 中野 暖基, 園田 和彦, 山口 亮介, 美浦 辰彦, 浜崎 晶彦, 藤村 謙次郎, 久保 祐介, 小宮山 敬祐, 北 拓海, 駒井 傑, ...
    2024 年 73 巻 4 号 p. 820-823
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【症例】11歳女児.身長150 cm.自転車で坂を下る際にカーブを曲がりきれず転倒し受傷した.【経過】右大腿骨遠位骨幹端粉砕骨折を認め,骨端線は残存していたが骨折部の安定性を得るために外側locking plateによる骨接合術を施行した.骨接合術後4ヶ月で抜釘したが,growth spurtと重なったことによる外反膝変形を認めたため,骨接合術後7ヶ月でエイトプレートによる骨端線抑制術を施行した.骨接合術から1年2ヶ月後に外反矯正を認めエイトプレートを抜去した.受傷後3年で疼痛や可動域制限,ADL障害の訴えはない.【まとめ】growth spurt期の小児大腿骨遠位骨幹端粉砕骨折術後に生じた外反膝変形に対し,エイトプレートによる骨端線抑制術は有用であった.

  • 吉本 将和, 原口 明久, 野中 裕文, 加茂 健太, 佐々木 良, 田中 秀道, 門屋 亮, 城戸 秀彦
    2024 年 73 巻 4 号 p. 824-827
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【症例】7歳男児.現病歴:X-24日空手の稽古後に右股関節痛,跛行が出現.その後一時症状改善するもX-11日より症状が再燃・増悪し,X日精査目的に当院整形外科紹介となった.既往歴:雲梯から墜落して腰椎圧迫骨折(5歳時),難聴なし.初診時現症:荷重時の右股関節の疼痛あり.圧痛点なし.単純X線で右大腿骨近位端の骨萎縮あり.単純MRIで大腿骨骨頭,頚部,遠位骨幹端に境界不明瞭なT1 low, T2 STIR highの骨髄浮腫像あり,同部位は造影効果あり.一過性大腿骨頭骨萎縮症の診断で右下肢免荷とし,X+4ヶ月パミドロン酸を投与.経過観察を行い疼痛は改善した.【考察】一過性骨萎縮症の代表例である大腿骨頭萎縮症は,中高年男性と妊娠女性に多いとされ,学童期の報告は限られている.確立された治療法はなく,負荷を避け,安静にすることで,6-8ヶ月で自然軽快することが多いとされるが,生活に与える影響は大きい.今回経験した,学童期の骨萎縮症の1例について報告する.

  • 江藤 聡一, 伊東 孝浩, 中村 幸之, 村山 弘和, 藤澤 徳仁, 千住 隆博, 上田 幸輝, 内村 大輝, 水城 安尋
    2024 年 73 巻 4 号 p. 828-831
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    [背景]比較的稀な小児大腿骨頸部骨折後に大腿骨頭壊死を生じ,免荷で壊死の回復を認めた症例を経験したため報告する.[症例]13歳男児.特別支援学級通学中.交通外傷で受傷の右大腿骨頚部骨折Colonna分類typeⅢに対して骨接合術施行,術後は骨頭圧壊予防のため免荷とした.術後3ヶ月MRIで圧壊はないものの広範囲に骨頭壊死を認めた.免荷を継続し経時的に壊死範囲の縮小が確認できたため術後17ヶ月で部分荷重,術後18ヶ月で全荷重許可した.術後30ヶ月時点で疼痛なく経過良好である.[考察]大腿骨頸部骨折後の合併症として骨頭壊死症が挙げられるが,成人と比較し,小児では保存治療で壊死の回復が期待できるため術後早期の骨頭壊死の診断が重要である.[結語]小児大腿骨頸部骨折後の骨頭壊死に対し,松葉杖による免荷にて壊死の回復した症例を経験した.

  • 大野 鉄平, 中村 嘉宏, 今里 浩之, 福永 幹, 藤田 貢司, 山口 洋一朗, 日吉 優, 舩元 太郎, 坂本 武郎, 帖佐 悦男
    2024 年 73 巻 4 号 p. 832-834
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】小児の外傷性股関節脱臼は稀で,陳旧例の報告はほとんどない.観血的整復を要した小児の陳旧性股関節脱臼を報告する.【症例】12歳女児.前後に開脚するように受傷,膝関節痛と歩行困難を示した.近医にて保存加療されていたが,受傷4か月に外傷性股関節脱臼の診断で,当院受診となった.観血的脱臼整復術を施行,寛骨臼内は線維組織が充満しており,同部を切除し脱臼を整復した.【考察】小児の陳旧性外傷性股関節脱臼は極めて稀である.外傷性脱臼はすみやかに整復すべきであるが,陳旧例では寛骨臼内に線維組織が充満し,非観血的整復が困難なことが多い.小児の膝関節痛では本疾患を疑うことも必要である.

  • 矢部 恵士, 山口 亮介, 中村 幸之, 高村 和幸, 柳田 晴久, 山口 徹, 中島 康晴
    2024 年 73 巻 4 号 p. 835-838
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【目的】小児の脚長差に対するtension band plate(TBP)を用いた脚長補正術の有効性と影響する因子について検討すること.【方法】2012~2022年に脚長差に対してTBPによる脚長補正術を施行し,1%未満まで脚長差が改善あるいは抜釘に至った小児49例53肢を対象とした.脚長補正達成率および脚長補正達成に影響する因子を検討した.【結果】脚長補正量は平均3.1%,補正期間は平均24ヶ月で,補正達成率は35/53肢(66%)であった.影響因子を解析した結果,術前脚長差および手術時年齢が影響因子であった.術前脚長差のcut off値である4.3%未満では11.4歳までに手術を行うことで補正達成可能であった.【結語】小児の脚長差に対するTBPを用いた脚長補正術は,脚長差が大きく,高年齢の症例では補正達成が困難だが,4.3%までの差なら11歳前に行うことで全例補正可能である.

  • 春田 陽平, 水内 秀城, 屋良 卓郎, 石橋 正二郎, 石津 研弥, 木原 大護, 鮎川 周平
    2024 年 73 巻 4 号 p. 839-842
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【背景】肥満細胞腫症は二次性骨粗鬆症の原因疾患の1つである.今回,骨折を契機に肥満細胞腫症と診断された症例を経験したので報告する.【症例】83歳男性,歩行中に転倒し右大腿骨頚部骨折,右肘頭脱臼骨折の診断:血液検査で血清ALP高値,股関節X線で硬化像・溶骨像が混在したため,右大腿骨の転移性骨腫瘍・病的骨折が疑われた.髄内釘による骨接合術を施行中に採取した骨髄組織からは転移を疑う腫瘍細胞は検出されない一方で,トルイジンブルー染色で異染性を示し,c-kit陽性となる肥満細胞を多数認めた.術後,血液内科での精査で肥満細胞腫症と診断された.健側である左大腿骨頚部における骨密度はYAM値50%と重度骨粗鬆症であった.術後7週で杖歩行可能にて自宅退院となった.【結論】高ALP血症に硬化像・溶骨像が混在するX線所見を合併した際には,鑑別診断として,転移性骨腫瘍の他に肥満細胞腫症を認知しておく必要がある.

  • 金澤 和彦, 中山 鎭秀, 松永 大樹, 石松 哲郎, 前山 彰, 山本 卓明
    2024 年 73 巻 4 号 p. 843-846
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    脛骨近位部に発生したBrodie膿瘍の2例を経験したので報告する.【症例】症例1は65歳男性,誘因なく右下腿部痛が出現し前医受診.血液検査でCRPの軽度上昇,Xpで脛骨近位外側に骨透亮像を認め,MRIでPenumbra signを認めた.症例2は18歳男性.誘引のない右膝痛で前医受診.Xpで脛骨粗面に骨融解像,MRIにて右脛骨粗面~近位部外側に骨髄炎の所見を認めた.2例ともBrodie膿瘍と診断し外科的に掻爬・洗浄,抗菌薬含有セメントビーズを充填した.術中組織より症例1ではSalmonella enteritidis,症例2ではMSSAが検出された.3ヶ月間の抗菌薬投与後に二期的に骨移植術を施行し術後は感染の再燃なく経過している.【考察】2例とも十分な期間の抗菌薬投与と二期的手術を行い経過良好であった.起炎菌として稀にグラム陰性桿菌もあり適切な抗菌薬の選択に術中グラム染色が有用であった.

  • 橋詰 惇, 遠藤 誠, 藤原 稔史, 鍋島 央, 廣瀬 毅, 八尋 健一郎, 金堀 将也, 大山 龍之介, 塚原 康平, 松本 嘉寛, 中島 ...
    2024 年 73 巻 4 号 p. 847-849
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【背景】一般的に悪性腫瘍手術の術後創部感染は術後化学療法の実施を困難にし,生命予後を悪化させる因子の1つとされる.一方で骨肉腫では,基礎実験等で免疫の活性化による骨肉腫の進行抑制が報告されるなど,感染による免疫の活性化が生命予後を改善させる可能性が示唆されている.【対象と方法】2006年から2021年に当科で診療を行った78例のうち,手術を実施し,データ入手可能であった66例を対象とし,後方視的に臨床情報を収集した.【結果】対象群の診断時年齢中央値は17歳,部位は大腿骨が最多で29例,続いて脛骨が17例であった.66例中,11例(16.7%)に創部感染を発症した.5年及び10年生存率は,感染例100%/88.9%,非感染例78.6%/66.2%であった(p=0.1342).【結語】骨肉腫患者では術後創部感染は予後を悪化させず,むしろ感染例で予後良好である傾向を示した.しかし,最終的な結論を得るにはより多数例での解析が必要である.

  • 花谷 拓哉, 宮本 俊之, 向井 順哉, 山口 圭太, 大場 陽介, 森 圭介, 野村 賢太郎
    2024 年 73 巻 4 号 p. 850-854
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】がん患者の増加,医療の進歩よるがんサバイバーの増加に伴い骨転移患者が増加し,大腿骨に病的骨折を起こすと日常生活が著しく制限される.当院における大腿骨骨転移患者の病的骨折または切迫骨折に対する手術成績について調査した.【対象】当院で2023年4月~9月に大腿骨病的骨折または切迫骨折に対して手術を施行した5例5肢.【結果】男性1例,女性4例で年齢は51~83歳であった.原発巣は肺癌が2例,甲状腺癌,乳癌,食道癌が1例ずつで,病的骨折が2例2肢,切迫骨折が3例3肢であった.術後インプラント折損や感染の症例はなく,死亡例以外の4例は術後ADLの改善を認めた.【考察】大腿骨転移性腫瘍に対する手術合併症のリスクが高いが,手術でADL,QOLの改善が得られ本研究でも良好な成績を得られた.【結語】骨転移患者の病的骨折に対して一般整形外科医が早期介入し,他科連携,多職種連携,腫瘍整形外科医との連携が重要である.

  • 迫 教晃, 宮崎 正志, 阿部 徹太郎, 加来 信広
    2024 年 73 巻 4 号 p. 855-857
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】心アミロイドーシスは確定診断から平均生存期間が約3年と予後不良の疾患である.近年トランスサイレチン四量体安定化薬が予後を改善させるとして早期診断が重要とされている.今回腰部脊柱管狭窄症の手術を契機に診断に至った心アミロイドーシスの2例を経験したため報告する.【症例1】73歳男性.特記既往歴なし.術前心電図でST-T異常,J波,エコーで心房中隔肥厚を認め,循環器内科へ対診行った.手術時摘出した黄色靭帯よりアミロイド検出,心筋シンチにて集積を認め確定診断となった.【症例2】66歳男性.特記心疾患の既往歴なし.術前心電図でST-T異常,完全右脚ブロックを認め,循環器内科へ対診行った.黄色靭帯よりアミロイド検出,心筋シンチにて集積を認め確定診断となった.【結語】腰部脊柱管狭窄症術前に心電図,エコーでの異常所見がある患者は積極的に循環器内科介入が望ましい.

  • 陣林 秀紀, 末永 賢也, 清原 壮登, 稲富 健, 川口 雅之, 平田 正伸, 田山 尚久
    2024 年 73 巻 4 号 p. 858-860
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    [背景]腰椎後方椎体間固定術(PLIF:Posterior Lumber Interbody Fusion)の術後合併症として比較的稀な症候性近位型深部静脈血栓症を認めた症例を経験したので報告する.[症例]71歳女性.来院4ヶ月前からの両臀部から大腿後面,下腿後面の痛みを主訴に受診した.MRI検査でL3/4高位の中等度狭窄,L4/5高位の高度狭窄を認め,L3/4の椎弓切除及びL4/5 PLIFを施行した.術後10日目に誘因なく左下肢全体の疼痛を自覚し,その後左下腿浮腫が出現した.造影CT検査で左総腸骨静脈に血栓を認め,抗凝固薬で治療を開始した.次第に症状は軽快し,術後53日目に自宅退院した.[考察]解剖学的に左総腸骨静脈は前方の右総腸骨動脈と後方の腰椎に挟まれて血栓形成し易い部位とされ,May-Thurner Syndrome(MTS)として知られている.本症例ではMTSを背景に,手術操作の影響も考えられた.L4/5高位の脊椎手術後管理においては本病態を念頭に置くことが重要である.

  • 金城 英雄, 島袋 孝尚, 宮平 誉丸, 藤本 泰毅, 青木 佑介, 大城 裕理, 當銘 保則, 西田 康太郎
    2024 年 73 巻 4 号 p. 861-864
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】頚椎可動域制限を伴う椎体前方骨性隆起による嚥下障害に対し,頚椎前方骨棘切除術を経験したので報告する.【対象と方法】対象は4例5手術(全例男性),手術時年齢は平均59.8歳,観察期間は平均40.6ヵ月であった.術前と最終調査時の臨床症状,頚椎単純X線像で術前後の頭蓋頚椎アライメントを計測し,単純CTで骨棘の範囲と形態,最大骨棘の高位と厚さを評価した.【結果】術前の骨性隆起は,厚さ平均13.3 mm,平均4椎体に連続して増生し,局所可動性は消失していた.術前の頚椎アライメントは各平均値でC2-7角12.4°,O-C2角20.4°,PIA 77.2°であった.全症例において術前swallowing line(S-line)は陰性であった.最終経過観察時に3例は嚥下障害消失し,1例は術後13年で骨性隆起の再増大と嚥下障害の残存を認めた.【結語】頚椎可動域制限を伴う嚥下障害の評価においてS-lineも指標となりうると考えられた.再発も報告されており,長期経過観察が必要であると考えられる.

  • 臼井 和樹, 河野 正典, 久保田 悠太, 岩﨑 達也, 糸永 一朗, 加来 信広, 田仲 和宏
    2024 年 73 巻 4 号 p. 865-868
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/11/13
    ジャーナル フリー

    神経鞘腫は軟部に好発するが,稀に骨内にも原発する.今回我々は大腿骨内に発生した骨内神経鞘腫を経験したので報告する.症例は64歳,女性.20年前から右膝内側の腫瘤を自覚,数年前から徐々に増大傾向であったが放置していた.最近右膝を捻った際に疼痛を生じ前医受診,骨腫瘍疑いで当科紹介された.単純X線像で右大腿骨内側上顆に辺縁硬化を伴う骨透亮像を認め,MRI T1強調像で等信号,T2強調像で低~高信号を呈する大腿骨から骨外に突出する病変を認めた.針生検を行ったところ病理診断は骨内神経鞘腫であったため,病巣掻爬,同種骨移植,プレート固定術を行った.術中迅速および術後病理診断でも同一の所見であった.骨内神経鞘腫は稀な疾患であり,画像や臨床所見は非特異的であるため病理診断が必要であるが,骨腫瘍の鑑別診断として骨内神経鞘腫も念頭に置く必要がある.

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